ワイナー
１）
ワイナー理論は、期待×価値モデルの枠組み、より具体的にはアトキンソン理論の枠組みを、ハイダーの原因帰属理論の観点から再解釈し、発展的に継承したものと解釈できる。
２）
アトキンソン理論に代表される期待×価値モデルは、行動理解に対してより幅広い枠組みを提供し、新たな実証研究に多くの示唆を与え続けてきた。しかし、従来の期待×価値モデルは、期待及び価値がどのような認知的働きから生まれるかについて十分に言及していなかった。これに対し、ワイナーらは、結果に対してその原因をどのように推測するか、その認知処理のあり方が期待や価値を規定すると考え、この点を明確化した。
３）
理論化に際して、まずワイナーとククラは、ハイダー（1958）の帰属理論（→原因帰属）とロッターの社会的学習理論から、人が成功・失敗の説明に用いる主要な原因として、能力・努力・課題の困難度・運の４要因を抽出した。次に彼らは、この４要因をより根底的な特質の観点から分析し、統制の位置（locou of control）次元と安定性次元という２つの原因次元を設定した。原因次元とは、各帰属因を特徴づけ整理するための理論的視座の一種でる。統制の位置次元は、ロッター（1966）の統制の位置に着想を得たものである。そこでは、その帰属因が基本的には物理的な意味で行為者の内部にあるか外部にあるかが問われる。能力と努力は行為者にとって内的（internal）要因であるのに対し、課題の困難度と運は外的（external）要因と見なされる。統制の位置次元は、期待×価値モデルの“価値”に影響を与える次元として考察される。
４）
ワイナー理論では、価値の具体的内容としてアトキンソンにならって誇りと恥の感情を用いている。そして、同じ成功や失敗をしても、それを内的要因に帰属するか外的要因に帰属するかで、誇りや恥の感じ方が異なってくると指摘する。例えば、成功したのは運のよさによると考えるよりも、自分の努力の賜物であると考える方が誇らしさを強く感じるであろう。また、失敗を課題の難しさに帰属するよりも、自分の能力不足のせいだと考える方が恥ずかしさをより強く感じるであろう。
５）
この次元は、ロッターの命名をそのまま受け継ぎ、統制の位置次元と呼ばれるが、実際には両者には違いがある。ワイナーはこの次元を、その帰属因が物理的な意味で行為者の内にあるか外にあるかを問う帰属因の分類概念として用いる。これに対しロッターは、自分の反応とそれに伴う強化の随伴性の観点から統制の位置の概念を提唱し、内的―外的次元を設定した。統制の位置が内的であるというのは、個人内の特性ないしは行動と強化が随伴している状態を指す。したがって、ワイナーがいうように“努力”が帰属因として、すなわち“努力すること自体”を、行為者が内的であると見たとしても、当該事態における結果が“努力”と随伴しており、行為者が“努力”によって結果を自らの統制下に置くことができると認知するかどうかはまた別の問題であろう。この違いは、期待の規定因をめぐる論争を生むことになる。むしろ、ワイナーが当初、内的―外的という次元によって意図した分類は、ハイダーが人―環境という用語で行なった分類に相当する。
ワイナー理論は、期待×価値モデルの枠組み、より具体的にはアトキンソン理論の枠組みを、ハイダーの原因帰属理論の観点から再解釈し、発展的に継承したものと解釈できる。
２）
アトキンソン理論に代表される期待×価値モデルは、行動理解に対してより幅広い枠組みを提供し、新たな実証研究に多くの示唆を与え続けてきた。しかし、従来の期待×価値モデルは、期待及び価値がどのような認知的働きから生まれるかについて十分に言及していなかった。これに対し、ワイナーらは、結果に対してその原因をどのように推測するか、その認知処理のあり方が期待や価値を規定すると考え、この点を明確化した。
３）
理論化に際して、まずワイナーとククラは、ハイダー（1958）の帰属理論（→原因帰属）とロッターの社会的学習理論から、人が成功・失敗の説明に用いる主要な原因として、能力・努力・課題の困難度・運の４要因を抽出した。次に彼らは、この４要因をより根底的な特質の観点から分析し、統制の位置（locou of control）次元と安定性次元という２つの原因次元を設定した。原因次元とは、各帰属因を特徴づけ整理するための理論的視座の一種でる。統制の位置次元は、ロッター（1966）の統制の位置に着想を得たものである。そこでは、その帰属因が基本的には物理的な意味で行為者の内部にあるか外部にあるかが問われる。能力と努力は行為者にとって内的（internal）要因であるのに対し、課題の困難度と運は外的（external）要因と見なされる。統制の位置次元は、期待×価値モデルの“価値”に影響を与える次元として考察される。
４）
ワイナー理論では、価値の具体的内容としてアトキンソンにならって誇りと恥の感情を用いている。そして、同じ成功や失敗をしても、それを内的要因に帰属するか外的要因に帰属するかで、誇りや恥の感じ方が異なってくると指摘する。例えば、成功したのは運のよさによると考えるよりも、自分の努力の賜物であると考える方が誇らしさを強く感じるであろう。また、失敗を課題の難しさに帰属するよりも、自分の能力不足のせいだと考える方が恥ずかしさをより強く感じるであろう。
５）
この次元は、ロッターの命名をそのまま受け継ぎ、統制の位置次元と呼ばれるが、実際には両者には違いがある。ワイナーはこの次元を、その帰属因が物理的な意味で行為者の内にあるか外にあるかを問う帰属因の分類概念として用いる。これに対しロッターは、自分の反応とそれに伴う強化の随伴性の観点から統制の位置の概念を提唱し、内的―外的次元を設定した。統制の位置が内的であるというのは、個人内の特性ないしは行動と強化が随伴している状態を指す。したがって、ワイナーがいうように“努力”が帰属因として、すなわち“努力すること自体”を、行為者が内的であると見たとしても、当該事態における結果が“努力”と随伴しており、行為者が“努力”によって結果を自らの統制下に置くことができると認知するかどうかはまた別の問題であろう。この違いは、期待の規定因をめぐる論争を生むことになる。むしろ、ワイナーが当初、内的―外的という次元によって意図した分類は、ハイダーが人―環境という用語で行なった分類に相当する。
2005年09月12日(月) 19:59:06 Modified by gedo5