学校臨床心理学・入門

＃１
学校臨床心理学とは、「学校での臨床心理学」と「学校と臨床心理学」の２つの視点を合わせもつ実践的な研究領域である。…次の２つの問いについて考えてみてもらいたい。第１の問いは、「児童生徒にとって、そして教師にとって学校とはどんな場所なのだろうか」。学校という場を知るところから、スクールカウンセラーの活動が始まり、「学校での臨床心理学」もスタートするのである。第２の問いは、「学校教育と臨床心理学との方法論や観点のはどういう点で異なるのであろうか」。学校教育と臨床心理学の間にある違いが理解されるとき、互いに補い合って児童生徒を支えることが可能になるのである。違うからこそ協力しあえることを実践のなかで明らかにしていくことが「学校と臨床心理学」の視点である。

＃２
不登校、いじめ、学級崩壊、「キレる」子ども、非行など、昨今の児童生徒が示す問題行動の多様化と深刻化への国の施策として、１９９５（平成７）年度から文部省は「スクールカウンセラー活用調査研究委託」事業をスタートさせた。この事業によって、これまで日本では少数の私立学校で独自に配置される程度であったスクールカウンセラーは一躍注目されることになった。スクールカウンセラーの配置は学校現場におおむね好評を得て、１９９５年度には全国１５４の公立小・中・高等学校に配置されたものが、２０００年度には２２５０校へと拡大された。そして２００１年度より本格的な国の補助事業に切り替えられ、２００５年までには全国すべての中学校にスクールカウンセラーを配置する方向が示されているという。公立学校に配置されているスクールカウンセラーは週８時間以上１２時間以内の非常勤職員として位置づけられ、原則的な資格要件としては、①臨床心理士、②精神科医、③児童生徒の臨床心理について高度な専門的な知識・経験を有する大学教授など、のどれか１つに該当する者となっている。現状においては、スクールカウンセラーを配置している多くの学校では、相談室とは別に職員室にスクールカウンセラーの机を用意するなどして、スクールカウンセラーを学校のスタッフの一員として受け入れるとともに、公務分掌上の位置づけに取り組んでいる。また、スクールカウンセラーの多くは教員資格をもたないことから、学校の運営のあり方などについて積極的に学ぶ姿勢が求められている。

＃３
スクールカウンセラー事業では、スクールカウンセラーの職務内容として、次の４点が掲げられてきた。①児童生徒へのカウンセリング、②カウンセリングなどに関する教職員および保護者に対する助言・援助、③児童生徒のカウンセリングなどに関する情報収集・提供、④そのほかの児童生徒のカウンセリングなどに関し、各学校において適当と認められるもの。スクールカウンセラーによる実際の活動は、各学校の教育相談体制、教職員のスクールカウンセラーに関する理解や受容のあり方、配置されたスクールカウンセラーの経験や能力によって、その範囲や内容は異なるものの、次のようにまとめることができる。

（１）児童生徒への直接的な支援活動