結婚の深層 グッゲンビュール・クレイグ
＃１
「この本はつねに個々のことがらを取り扱っている。だが、著者グッゲンビュールが根本的に前提としているのは個性化の普遍性ということであって、彼はこの考えに宗教的とも思えるほど真剣に取り組んでいるのである。それゆえに、彼はこれを徹底化し、通常の中に異常性をもつ性や、異常の中に通常性をもつ結婚にも、これをみようとするのである。そして、このような種類の逆転は、この本全体を通して次から次へと現れる。極端なことが極端に、すなわち、単純に、明確に、直接的に述べられているのである。この本はいかなる妥協の余地もないほど徹底して、結婚という大きな現代の症状と取り組んでいるのであるが、著者が示そうとしているように、結婚というものは、元型的な力なのであり、この力はこの症状に固有な社会的的、個人的な諸問題よりもずっと基本的に重要なのである。著者は個人個人の相違点を見失うことなく、これを基本的な元型として明らかにしようとしている。そして、この結婚の元型を、それが現れる個々の現象の中で示そうとしているのである。」（ヒルマン）
＃２
「『天使も恐れて近寄らないところに、愚か者はあえて近づく』という言葉があるが、著者は読者諸氏を天子も足を踏み入れようとはしない場所へ連れて行く。だが、そこで我々は愚性ばかりでなく、何よりも先ず、悪魔的なるものが作用していることを感じるはずである。著者はその作用の中に愛すべき価値―恋愛、魅力、結婚契約、離婚、個性化、心理療法、性などを次々と見抜いているのである。そして、我々は著者がおだやかな仕方で否認したり、本気で嘲笑したり、あるいはまた微妙な区別を、例えば幸せと救い、生殖と性、道徳的に受け入れられる性と性的幻想などの間にみていることの中に、著者の悪魔愛好性を見出すことができるのである。そして、我々が自明なこととして受け入れてきた倫理的立場が、いつのまにか崩されてしまうのである。いや、それ以上に、著者はユダヤ・キリスト教的伝統にのみよりかかるのではなく―そこでは一神教が一夫一婦制に反映しているのだが―、神話のもつ魅惑的なイメージや、異教の多神教的文化の視野の中にある個性化の元型的背景への接近をも、我々に可能にしてくれるのである。まさに、これが悪魔愛好主義でなくてなんであろうか？」（ヒルマン）
＃３
「彼（＊グッゲンビュール）は男と女を苦しめる親密な生活、すなわち、そこに彼らの天国と地獄があり、そしてまた、そこでこそ我々のコンプレックスと個性化とが日々出会うのだが、、そのような男と女という最も親密なことがらに彼の全精力を集中しているのである。」（ヒルマン）
＃４
「この本の真の価値は、心理学的観点からみれば、この本を特徴づけている宗教的見地にあるのでもなく、また、その叙述の単純明快さにあるのでもない。心理学的に重要なのは、数え切れないほど多くの貴重な精神医学の臨床経験に基礎付けられた著者の洞察の独自性であり、それは我々の社会的、エロス的な生活の影について、また、我々が結婚や離婚の中で抱く事故錯覚について、されにまた、個性化に関して我々がもつ幻想について、著者が行なっている洞察の中に存在するのである。読者はこの本をジェームス・ジョイスが「良心の呵責」とよんだような、自己省察が生み出す喜びと不快の混在した恐るべき困惑をもって読むはずである。つまり、この本は結婚と性について取り扱った本ではなくて、ほかならぬ私というものを取り扱っているのである。考え、感じ、信じ、振舞うのは私なのである。どれほど、それが本当のことか、そしてどれほど私は愚かなことか。だが、私が人生の中で戦うべき戦いこそ、じつは限りなく貴重で、意味の深いことなのではあるまいか。」（ヒルマン）
「この本はつねに個々のことがらを取り扱っている。だが、著者グッゲンビュールが根本的に前提としているのは個性化の普遍性ということであって、彼はこの考えに宗教的とも思えるほど真剣に取り組んでいるのである。それゆえに、彼はこれを徹底化し、通常の中に異常性をもつ性や、異常の中に通常性をもつ結婚にも、これをみようとするのである。そして、このような種類の逆転は、この本全体を通して次から次へと現れる。極端なことが極端に、すなわち、単純に、明確に、直接的に述べられているのである。この本はいかなる妥協の余地もないほど徹底して、結婚という大きな現代の症状と取り組んでいるのであるが、著者が示そうとしているように、結婚というものは、元型的な力なのであり、この力はこの症状に固有な社会的的、個人的な諸問題よりもずっと基本的に重要なのである。著者は個人個人の相違点を見失うことなく、これを基本的な元型として明らかにしようとしている。そして、この結婚の元型を、それが現れる個々の現象の中で示そうとしているのである。」（ヒルマン）
＃２
「『天使も恐れて近寄らないところに、愚か者はあえて近づく』という言葉があるが、著者は読者諸氏を天子も足を踏み入れようとはしない場所へ連れて行く。だが、そこで我々は愚性ばかりでなく、何よりも先ず、悪魔的なるものが作用していることを感じるはずである。著者はその作用の中に愛すべき価値―恋愛、魅力、結婚契約、離婚、個性化、心理療法、性などを次々と見抜いているのである。そして、我々は著者がおだやかな仕方で否認したり、本気で嘲笑したり、あるいはまた微妙な区別を、例えば幸せと救い、生殖と性、道徳的に受け入れられる性と性的幻想などの間にみていることの中に、著者の悪魔愛好性を見出すことができるのである。そして、我々が自明なこととして受け入れてきた倫理的立場が、いつのまにか崩されてしまうのである。いや、それ以上に、著者はユダヤ・キリスト教的伝統にのみよりかかるのではなく―そこでは一神教が一夫一婦制に反映しているのだが―、神話のもつ魅惑的なイメージや、異教の多神教的文化の視野の中にある個性化の元型的背景への接近をも、我々に可能にしてくれるのである。まさに、これが悪魔愛好主義でなくてなんであろうか？」（ヒルマン）
＃３
「彼（＊グッゲンビュール）は男と女を苦しめる親密な生活、すなわち、そこに彼らの天国と地獄があり、そしてまた、そこでこそ我々のコンプレックスと個性化とが日々出会うのだが、、そのような男と女という最も親密なことがらに彼の全精力を集中しているのである。」（ヒルマン）
＃４
「この本の真の価値は、心理学的観点からみれば、この本を特徴づけている宗教的見地にあるのでもなく、また、その叙述の単純明快さにあるのでもない。心理学的に重要なのは、数え切れないほど多くの貴重な精神医学の臨床経験に基礎付けられた著者の洞察の独自性であり、それは我々の社会的、エロス的な生活の影について、また、我々が結婚や離婚の中で抱く事故錯覚について、されにまた、個性化に関して我々がもつ幻想について、著者が行なっている洞察の中に存在するのである。読者はこの本をジェームス・ジョイスが「良心の呵責」とよんだような、自己省察が生み出す喜びと不快の混在した恐るべき困惑をもって読むはずである。つまり、この本は結婚と性について取り扱った本ではなくて、ほかならぬ私というものを取り扱っているのである。考え、感じ、信じ、振舞うのは私なのである。どれほど、それが本当のことか、そしてどれほど私は愚かなことか。だが、私が人生の中で戦うべき戦いこそ、じつは限りなく貴重で、意味の深いことなのではあるまいか。」（ヒルマン）
2005年07月30日(土) 11:04:44 Modified by gedo5