自己開示行動に対する認知と対人魅力… 高木浩人
『自己開示行動に対する認知と対人魅力に関する研究―親密な関係と親密でない関係の比較―』 高木浩人 １９９２ 実験社会心理学研究３２
＃１
本研究の目的は、自己開示が対人魅力に及ぼす影響、及び、開示行動に対する認知が、関係の親密さの程度によってどのように異なるかについて検討することである。自己開示が対人魅力に与える影響についての従来の研究は、その多くが初対面場面を設定し、開示内容の内面性、望ましさ等の影響について検討してきた。しかし、対人関係の形成や発展において自己開示が重要な役割を果たしていることは多くの研究者が指摘している（Altman&Taylor,1973:榎本,1983）。にもかかわらず、関係が進展した段階についての研究は数少ない（Chelune et al.,1979:榎本,1983）。したがって、親密な関係における、自己開示の対人魅力に与える影響について検討する必要がある。そして、親密な関係について検討するには、親密さの程度の異なる関係間の比較という視点をもつことが必要である。こういった視点は、親密さのそれぞれの段階の特性を明らかにし、対人関係の親密化過程における自己開示の機能について検討する際にも、有効な手がかりを与えてくれるものと考えられる。
＃２
以上の点に関して、Chaikin&Derlega(1974)の研究が興味深い。Chaikinらは、内面的な開示が行なわれるか否か（２水準）と、関係の親密さ（初対面―知人―友人の３水準）を操作した実験を行なった。その結果内面的な開示は、初対面の相手よりも親密な相手に対して行なわれる方がより適切であるとみなされ、好意が生じやすいことが明らかとなった。つまり、Chaikin&Derlega(1974)の研究は、関係の親密さによる相違について、自己開示の適切さという側面から検討しているのである。自己開示の適切さは、開示行動に対する被開示者の認知と捉えることができる。すなわち、Chaikiｎらの研究は、関係の親密さの程度について検討する際、開示行動に対する認知過程に注目する必要があることを示唆している。そして、認知過程に注目することは、関係の親密さについての論議の幅を広げる上で極めて有意義であると考えられる。
＃３
さて、同様に、開示行動に対する認知過程について検討することの必要性が指摘されているのが、開示内容の望ましさについての研究領域である。Dalto,Ajzen&Kaplan(1979)は、望ましい内容の開示を行なう人物は、望ましくない内容の開示を行なう人物よりも好まれること、開示内容の内面性はそれ自体としては対人魅力に効果を及ぼさないことを見出し、自己開示が対人魅力に与える影響において重要なのは、開示内容の望ましさであるとした。Daltoらによれば、望ましい内容の開示が行なわれたとき開示者は、望ましい属性の持ち主であると判断されることで魅力が高まり、望ましくない内容の開示が行なわれたときには望ましくない属性の持ち主であると判断されることで魅力が低まるのである。しかし、中村（1986a）は、開示内容の望ましさと対人魅力の間には直線的な関係ではなく、逆U字の関係のあることを見出している。すなわち、自己を誇示するだけでなく、ある程度卑下してみせるような開示を行なうことが最も高い魅力につながったのである。この場合は、誠実さといった望ましい側面を相手に印象づけることによって魅力が高まるのである。つまり、中村（1986a）の結果は、開示内容の望ましさが対人魅力に与える影響について考える際、開示内容から開示者の持っている属性が推察される過程ではなく、開示行動そのものに対する被開示者の認知過程についても検討する必要があることを示唆しているものと考えられる。
＃４
以上より、関係の親密さの程度に関する研究と、開示内容の望ましさに関する研究の2領域において、開示行動に対する認知過程に注目する必要性が指摘されていることが分かる。そこで本研究では、関係の親密さと開示内容の望ましさを操作し、関係の親密さが異なるとき、開示内容の望ましさによって、対人魅力、及び開示行動に対する認知がどのように影響されるのかについて検討する。
＃１
本研究の目的は、自己開示が対人魅力に及ぼす影響、及び、開示行動に対する認知が、関係の親密さの程度によってどのように異なるかについて検討することである。自己開示が対人魅力に与える影響についての従来の研究は、その多くが初対面場面を設定し、開示内容の内面性、望ましさ等の影響について検討してきた。しかし、対人関係の形成や発展において自己開示が重要な役割を果たしていることは多くの研究者が指摘している（Altman&Taylor,1973:榎本,1983）。にもかかわらず、関係が進展した段階についての研究は数少ない（Chelune et al.,1979:榎本,1983）。したがって、親密な関係における、自己開示の対人魅力に与える影響について検討する必要がある。そして、親密な関係について検討するには、親密さの程度の異なる関係間の比較という視点をもつことが必要である。こういった視点は、親密さのそれぞれの段階の特性を明らかにし、対人関係の親密化過程における自己開示の機能について検討する際にも、有効な手がかりを与えてくれるものと考えられる。
＃２
以上の点に関して、Chaikin&Derlega(1974)の研究が興味深い。Chaikinらは、内面的な開示が行なわれるか否か（２水準）と、関係の親密さ（初対面―知人―友人の３水準）を操作した実験を行なった。その結果内面的な開示は、初対面の相手よりも親密な相手に対して行なわれる方がより適切であるとみなされ、好意が生じやすいことが明らかとなった。つまり、Chaikin&Derlega(1974)の研究は、関係の親密さによる相違について、自己開示の適切さという側面から検討しているのである。自己開示の適切さは、開示行動に対する被開示者の認知と捉えることができる。すなわち、Chaikiｎらの研究は、関係の親密さの程度について検討する際、開示行動に対する認知過程に注目する必要があることを示唆している。そして、認知過程に注目することは、関係の親密さについての論議の幅を広げる上で極めて有意義であると考えられる。
＃３
さて、同様に、開示行動に対する認知過程について検討することの必要性が指摘されているのが、開示内容の望ましさについての研究領域である。Dalto,Ajzen&Kaplan(1979)は、望ましい内容の開示を行なう人物は、望ましくない内容の開示を行なう人物よりも好まれること、開示内容の内面性はそれ自体としては対人魅力に効果を及ぼさないことを見出し、自己開示が対人魅力に与える影響において重要なのは、開示内容の望ましさであるとした。Daltoらによれば、望ましい内容の開示が行なわれたとき開示者は、望ましい属性の持ち主であると判断されることで魅力が高まり、望ましくない内容の開示が行なわれたときには望ましくない属性の持ち主であると判断されることで魅力が低まるのである。しかし、中村（1986a）は、開示内容の望ましさと対人魅力の間には直線的な関係ではなく、逆U字の関係のあることを見出している。すなわち、自己を誇示するだけでなく、ある程度卑下してみせるような開示を行なうことが最も高い魅力につながったのである。この場合は、誠実さといった望ましい側面を相手に印象づけることによって魅力が高まるのである。つまり、中村（1986a）の結果は、開示内容の望ましさが対人魅力に与える影響について考える際、開示内容から開示者の持っている属性が推察される過程ではなく、開示行動そのものに対する被開示者の認知過程についても検討する必要があることを示唆しているものと考えられる。
＃４
以上より、関係の親密さの程度に関する研究と、開示内容の望ましさに関する研究の2領域において、開示行動に対する認知過程に注目する必要性が指摘されていることが分かる。そこで本研究では、関係の親密さと開示内容の望ましさを操作し、関係の親密さが異なるとき、開示内容の望ましさによって、対人魅力、及び開示行動に対する認知がどのように影響されるのかについて検討する。
2005年08月25日(木) 07:38:44 Modified by gedo5