人間論 ロジャーズ
＃１
人が最も達成しようと望んでいる目標、すなわち、人が知らず知らずの間に追求している目標は、その人自身になりきることである、と私はいうのであるが、このとき、その人自身になりきるというのはどういう意味なのか説明してみたい。人が彼なりに込み入った問題で悩んで私のところへくる時に、その人が安全で自由になれるような関係をその人との間につくりあげることが最も有効であると感ずるのである。相手が自分の内面的な世界の中で感じる感じ方を理解したり、相手をありのままに受容したり、また、自由な雰囲気をつくりだしたりして、その中で相手が望む方向に考えたり、感じたり、ふるまったりできるようにすることが私の目的である。相手は、果たして、このような自由をどのように使うのだろうか。私の経験するところでは、相手はこの自由を使って、ますます自分自身になってくるようである。彼は、今まで、人前をとりつくろったり、仮面をかぶって、役割を演じながら生活を送ってきたのであるが、それらを脱ぎ捨て始めるのである。彼は、もっと本質的なもの、もっと本当に自分らしいものを発見しようとするように思われる。最初に、彼は自分が仮面をかぶっていることにある程度気づくようになり、その仮面を脱ぎ捨てようとするのである。ある若い女子学生がカウンセリングの面接の中で、自分が仮面をかぶってきたこと、そして、この気楽な、お気に入りの仮面の下に、本当の自分がたしかにあるのかどうか、どうも不安であると述べている。
＃２
真の自分の一部であると考えていた仮面を脱ぎ去るということは、まさに、心の中をかき乱されるような経験であるが、しかし、自由に考え、自由に感じ、自由にありのままの自分になれる時にこそ、人間は、仮面を脱ぎ捨てるという目標に向かって進んでいくのである。
＃３
経験に開かれているということは、防衛とは正反対のことである。
＃４
つまり、人間はたえず流れゆくプロセスであり、決して、固定した静的な実存ではない。人間は、たえず変化し続ける川の流れのようなものであり、堅固な物体のかたまりのようなものでなく、一定量の特性をもったものでもなく、たえず変化し続ける可能性の布置（constellation）といったものである。
＃５
望ましい心理学的風土の中で、生成のプロセスが起こるのであり、このプロセスの中で、個人はいままでの生活の中でかぶっていた防衛的な仮面をつぎつぎに脱ぎ捨てていき、かくされていた自分自身のいろいろの側面を十分に経験するようになり、これらの経験の中で、そのような仮面にかくれて生活していた自分が自分自身と違ったものであることに気づき、現在の自分がまったく以前とは違った人間になっていることに気づくのであるということを述べてきたのである。
＃６
真の自己自身であるということは、悪、邪悪、無統制、破壊的であることを意味しているのではないかというのが、私が描いてきた人生の道に対するごく普通の反応である。それは、世界の中にいるある種の悪魔を解き放つことを意味しているのではないか。…怒りが本当の反応であるとき、怒ることができるように徐々になっていく自分に気づき、しかしそのような受け入れられた透明な怒りが破壊的でないことにも気づく。…彼がこれらの感情を彼の中で流れるままに、あるがままに許すほど、それらの感情は、彼の感情の全体の調和の中で適当な位置を占めるようになる…彼はそれらの感情と混じりあい、平衡を保っている他の感情をもっていることにも気づく。かれは、敵意や肉欲や怒りと同様、愛ややさしさや、思いやりや協力も感じる。彼は興味と楽しさと奇妙さを感じる。彼は怖れと同様に、勇気と冒険を感じる。彼がこの複雑さと密接に受容的に生きるとき、彼の感情は彼をある無統制の邪悪の道へ誘い込んでしまうというよりも、むしろ建設的な調和の中に働くのである。
人が最も達成しようと望んでいる目標、すなわち、人が知らず知らずの間に追求している目標は、その人自身になりきることである、と私はいうのであるが、このとき、その人自身になりきるというのはどういう意味なのか説明してみたい。人が彼なりに込み入った問題で悩んで私のところへくる時に、その人が安全で自由になれるような関係をその人との間につくりあげることが最も有効であると感ずるのである。相手が自分の内面的な世界の中で感じる感じ方を理解したり、相手をありのままに受容したり、また、自由な雰囲気をつくりだしたりして、その中で相手が望む方向に考えたり、感じたり、ふるまったりできるようにすることが私の目的である。相手は、果たして、このような自由をどのように使うのだろうか。私の経験するところでは、相手はこの自由を使って、ますます自分自身になってくるようである。彼は、今まで、人前をとりつくろったり、仮面をかぶって、役割を演じながら生活を送ってきたのであるが、それらを脱ぎ捨て始めるのである。彼は、もっと本質的なもの、もっと本当に自分らしいものを発見しようとするように思われる。最初に、彼は自分が仮面をかぶっていることにある程度気づくようになり、その仮面を脱ぎ捨てようとするのである。ある若い女子学生がカウンセリングの面接の中で、自分が仮面をかぶってきたこと、そして、この気楽な、お気に入りの仮面の下に、本当の自分がたしかにあるのかどうか、どうも不安であると述べている。
＃２
真の自分の一部であると考えていた仮面を脱ぎ去るということは、まさに、心の中をかき乱されるような経験であるが、しかし、自由に考え、自由に感じ、自由にありのままの自分になれる時にこそ、人間は、仮面を脱ぎ捨てるという目標に向かって進んでいくのである。
＃３
経験に開かれているということは、防衛とは正反対のことである。
＃４
つまり、人間はたえず流れゆくプロセスであり、決して、固定した静的な実存ではない。人間は、たえず変化し続ける川の流れのようなものであり、堅固な物体のかたまりのようなものでなく、一定量の特性をもったものでもなく、たえず変化し続ける可能性の布置（constellation）といったものである。
＃５
望ましい心理学的風土の中で、生成のプロセスが起こるのであり、このプロセスの中で、個人はいままでの生活の中でかぶっていた防衛的な仮面をつぎつぎに脱ぎ捨てていき、かくされていた自分自身のいろいろの側面を十分に経験するようになり、これらの経験の中で、そのような仮面にかくれて生活していた自分が自分自身と違ったものであることに気づき、現在の自分がまったく以前とは違った人間になっていることに気づくのであるということを述べてきたのである。
＃６
真の自己自身であるということは、悪、邪悪、無統制、破壊的であることを意味しているのではないかというのが、私が描いてきた人生の道に対するごく普通の反応である。それは、世界の中にいるある種の悪魔を解き放つことを意味しているのではないか。…怒りが本当の反応であるとき、怒ることができるように徐々になっていく自分に気づき、しかしそのような受け入れられた透明な怒りが破壊的でないことにも気づく。…彼がこれらの感情を彼の中で流れるままに、あるがままに許すほど、それらの感情は、彼の感情の全体の調和の中で適当な位置を占めるようになる…彼はそれらの感情と混じりあい、平衡を保っている他の感情をもっていることにも気づく。かれは、敵意や肉欲や怒りと同様、愛ややさしさや、思いやりや協力も感じる。彼は興味と楽しさと奇妙さを感じる。彼は怖れと同様に、勇気と冒険を感じる。彼がこの複雑さと密接に受容的に生きるとき、彼の感情は彼をある無統制の邪悪の道へ誘い込んでしまうというよりも、むしろ建設的な調和の中に働くのである。
2005年08月04日(木) 00:48:07 Modified by gedo5