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コイバナ!(短編) 作者:チャペル

 女子のコミュニティーと言うものは不思議なもので、普段はそれぞれの集まりに固執し干渉し合わず、むしろ警戒、場合によっては反目しあったりしている。ちなみにあたしのコミュニティーは谷口、国木田、あたしの三人で構成されるもので、立場的には良い言い方をすると完全中立、悪い言い方をすると半隔離状態と言える。この立場、特に悪い言い方の方の要因はSOS団に所属するあたしで、谷口と国木田はそのとばっちりと言った感も否めない。
 周りから見るとあたしは、『性格に難はあるもののイケメンにちやほやされやがって』と、『毎度涼宮に振り回されて同情するわ』と言う二つの相反する評価があり、どう扱うべきか困っていると言う話らしい。
 そんな感じでそれぞれ独立しているコミニティーなのだが、ダムが小さな穴から決壊すかのようにほんの些細なことで一つに纏まったりする。たやすく壁を壊す話題なんてのは数える程しかないのだが、そのほとんどは誰それと誰それがどうとかいう噂話、俗に言うコイバナと言うやつだ。
 この話になるとあたしでさえ大きなコミュニティーの一人としてカウントされる。一応言っておくと、あたしは完全に聞き手側である。




 この日も昼休みにクラス女子でコイバナに花を咲かしていたのだが、途中クラスメイトの一人――すまん、名前がよく思い出せないのでクラスメイトAとする――があたしの方をらんらんと輝く眼で見つめてきた。
「キョンちゃんって、結局涼宮くんと付き合ってるの?」
 クラスメイトAまでキョンちゃんと呼ぶのか…って、今何て言った?!
「あー、それ私も気になる!」
「うん、うん。なんだかどっちつかずな感じでやきもきしてたのよねー」
「って言うか付き合ってるんでしょ?!」
 ついさっきまで半分部外者だったのに、あたしが目を白黒させているうちに話題の中心になってしまっている。しかも話題が最悪だ。

「そうだ、谷口。あんたなら知ってるでしょ?」
 待て、待て、待て、待て!そいつに聞くな!
「ちょっ」
「アタシから見る限りでは…黒だね!」
 あたしの静止も虚しく、谷口は究極的にふざけたことを言いやがった。あたしは谷口を止めるために挙げた右手をぎゅっと握りしめて、後で絶対にぶん殴ると固く心に誓った。
「やっぱりそうなんだ」
 って、信じるなよっ!!

「皆、頼むから落ち着いてくれ。あたしとハルヒコはなんでもない」
 冷静に、諭すように言ってみたのだが、落ち着いたのは瞬きにも満たない時間だった。
「きゃー、ハルヒコだってぇ!もう、名前を呼び捨てにする関係なの?!」
「は?え?いや、だ、だから違うって!」
 もうしっちゃかめっちゃかで、何を言っても挙げ足を取られて冷やかされる始末だ。
 中学時代も似たようなことがあったけど、あの時は案外すんなり纏まったというのに、今回は異常なくらい周りの熱が高い。

 断言できる、あたしは今までの人生の中で一番がんばったね。





 努力ってのは実るものだと、昔の人も良いことを言ったものだ。昼休みの半分以上を使って必死に、本当に必死に弁解したおかげで表面上は、ハルヒコとあたしの恋人説は却下することができた。
「それじゃあキョンちゃん、フリーなら私の知り合いが気になるって言ってたから今日の放課後会ってくれないかな?」

 一難去ってまた一難。ホント、昔の人は良いこと言う。
 新たな爆弾を投下してくれたのは、またしてもクラスメイトAである。どうもクラスメイトAの要件は始めからそれだったようで、瞳には先ほどとは違い真剣な色が含まれている。


 それにしてもあたしが気になるって、どんな奇特な人間なんだ?
 これ以上ないってくらい一般人だし、自分でもびっくりするほど地味で目立たないと言うのに。
「あれ?知らなかったの?キョンってこの学校じゃ結構な有名人だよ」
 今までニコニコと笑っていただけだった国木田がそんな事を言ってきた。
「有名人?」
「うん。キョンが、というよりSOS団のキョンがってことだけど」
 納得は出来ないが、理解は出来る。
「だけどなぁ…」
「会うだけでいいの。ちょっと会って話してくれるだけでオッケーだから」
 いや、別に会うこと自体は構わないのだが、放課後となるとハルヒコがうるさいからな…
「それなら今度の休日でどうかな?」
「う〜ん…」
 あたしがどうしようかと頭を捻っていると、一人の女子が小さく息をのんだ。その女子の視線のさきにみんながどんどんとつられていき、同じように息をのむ。クラスメイトAまでもが息をのんだところで、あたしも皆の視線を追いかける。


 ハルヒコがいた。


 いつからいたのか解らないが、ハルヒコは教室の出入り口に突っ立っていて、あたしと目が合うとずんずんとこちらに向かってきた。

「キョン。今度の休みはSOS団の重要な活動があるから、忘れるなよ。それと、今日も大事なミーティングがあるからな。遅れるんじゃないぞ!」
「あ…あぁ」
 あたしの返答を聞くと、ハルヒコは「他の奴にも伝えなくちゃいけないから」と教室を飛び出して行った。

 いつもは一番後回しか、最悪伝えてすら来ないのに珍しいこともあったもんだ。





「あー、悪い。そう言うことでダメになった」
 振り返り、クラスメイトAに謝罪すると、彼女含め、ほとんどの女子がニヤニヤと嫌な笑いを浮かべる。
 わけが解らずにキョトンとしていると、女子たちはそれぞれ顔を見合わせ、同時に息を吸い込み声を合わせて合唱した。





「「「お幸せにぃ〜♪」」」






 少しだけ、物音一つしない灰色の閉鎖空間が懐かしくなったのは秘密だ。
2008年03月21日(金) 09:15:46 Modified by juffsa




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