ネコと私とガキっぽさ 作者:48.k
季節は秋。
喋る不思議ネコ、シャミセンが我が家に来たのが…えーと、昨日か。
ちなみに三毛猫であり、毛の色の種類と三味線の弦の本数を掛けたネーミングだとすれば、ハルヒコのネーミングセンスを少しばかり見直そう。は、いいとして、もちろんのことシャミセンはメスである。オスならこの撮影が終わった頃、弟には「友達に返す」と言っておいて売りに行くね。
そういえば、クランクインしてから何日目だっけ?毎日が充実しているせいでその辺の感覚が狂ってるな。悪い意味で、だが。
「ま、それだけ疲れてるんだろうさ。今日は今日とてまたわけわからん話を聞かされたからな」
しかもそのすべてがハルヒコに関係するものだってんだから、うんざりする。お前はどれだけ私の生活、あわよくば人生までを無茶苦茶にしたいんだ。当の本人には、そんな自覚は皆無だろうがね。
と、まあ徒然なるままにそんなことを考えていると、ふわふわと眠気がわいてきた。
「寝よう。明日も撮影あるだろうしな」
ベットに潜りこんで、その慣れ親しんだ気持ちよさに安堵感を覚えつつ瞼を閉じた、そのとき。
―――――ヴゥ〜ン・ヴゥ〜ン
携帯に電話がかかる。出るのも面倒、とは思ったが一応誰からかは見ておく事にする。
ま、こんな時間にかけてくるのは知ってる限り2人だけだ。そのどちらもがSOS団だってことは何も言うまい。
案の定、ハルヒコである。
「もしもしハルヒコか、こんな時間に何のようだ?」
『SOS団に時間なんて関係あるか。俺が今伝えたいから電話してんだよ、文句言うな』
電話に出たとたんこれじゃ、たまったもんじゃない。
まったく、やれやれだわ。
電話の内容はこうだ。「今から撮りたい画があるからシャミセン連れて、いつもの場所集合な」と、いつものことながらこちらの有無を聞かずに勝手に言うだけ言って電話を切った。
こうなっちゃ行くしかあるまい?……こっちは一応女のコだぞ。
とゆうことで、だ。
今私はシャミセンを自転車のカゴに入れ、マイバイクを駆っているわけだ。
「君もほとほと不運と見る。人では秋の夜は寒かろう?」
「ああ、そりゃあもー。あんたみたいに毛がないからね」
あと、しゃべんな。夜で人影もないからってしゃべるな。頼むから。
「む………にゃあ」
こんなときまでコイツに付き合う義理もない。
「ああ、もう!さっぶいな、ハルヒコになんかあったかいもん奢ってもらわないと気がすまないんだから!!」
一人ごちて、体を温めようと自転車をこぐスピードを早める。その考えに反して、風が鋭く肌を襲う。
「うう〜っ」
「ひとつ、いいかね?」
ぼそりとシャミセンが呟く。
とにかく、この寒さをまぎらわせたかったので「なに?」とぶっきらぼうに返事をする。
「君は、あの少年をどう思うね?」
「ハルヒコ?別になんとも思っちゃいないよ。恋愛対象としてならね。まあ、基本ウザイかな。あとわがまま。バカのひとつ覚え」
「そうか」
「なに、それだけ?」
一瞬考え込んで、シャミセンは口を開く
「いや、実に興味深い答えだと思う」
どこにどう興味を示しているんだか。答えた私はこれと言って深い意味なぞ塵芥ひとつひそませた覚えなんてない。
「それがだよ。君は無自覚でいながら、ある意味自覚している。そこに大変な興味を感じる」
無自覚とはなんのことだ、よもや恋心なんて言わんだろうな。あと自覚なら、あいつはとんでもなく世話の焼けるヤツだってーことぐらいだな。
よく言うだろう?『大きな赤ちゃん』ってやつだ。
「ふむ、ならいい。すまなかった、とてもくだらなかったな」
「…?いや、こっちこそ」
まあ、所詮ネコの戯言さ。と、流しておこう。
「遅いぞ、キョン」
「へいへい。すんませんでしたね」
シャミセンを腕に抱えながらいつもの駅前の広場まで歩くと、すでにSOS団全員が集合していた。
「罰として全員分のあったか〜い飲み物買って来い!!」
「なんでそうなる!?あんたが急に呼び出したんだからあんたが買って来い!」
と反論するものの、どうせ無駄と分かってるのでシャミセンを長門に預けてから自販機はどこかとキョロキョロしていると、そんな荒んだ心を癒す声が耳に届く。
「あの、キョンちゃん。僕の分はいいからね?」
ああっ、もうっ!何言ってるんですか。そんな産まれたての小鹿みたくフルフル震えて!!朝比奈先輩の分はたとえなにがあろうと買ってきますよ!!
と、口にも表情にも出さず、ありがとうございます、とだけ言っておく。
「では、私はコーヒーを」
「うるさい。黙って」
「ふふ、冗談です」
せっかくのいい気分が台無しだよ。一姫め、何から何まで…特に胸とか忌々しい。
「長門は?」
「………」
微かに首を横に振る。
いらない、とゆうことらしい。
「なんだよ、みんないらねえのかよ?ちぇ、なんか俺が悪いみたいじゃん」
「すねんな。たまたま皆いらないだけだろ。ハルヒコは何がいい」
「……」
「いらんのか?」
「もういい。いくぞ」
なんなんだ、まったく。
ハルヒコはどうも夜のデートシーンからのユウキ乱入による修羅場が撮りたかったらしい。1時間ほど近所の公園で撮影する。
これは、もう。どこからどう見ても変人の集まりにしか見えんな。
「イツキを渡せ」
「だ、だれがお前なんかにイツキちゃんを渡すものかぁ!」
おい、一姫。なんであんたはニコニコしてるんだ。
シリアスなシーンなんだからもうちょっと心配そうな顔しとけよ。
「どうしても渡さないなら、仕方ない」
「な、なにをするつもりだぁ!」
「いや、今日はもう遅い。今度会ったとき、お前を全力で倒す」
すたすたすたー、と黒い魔法使いっぽい宇宙人がその場を離脱した。
ってオイ。意味わからんわ!なぜ退く?ここは「実力行使だ」とかいうとこだろー?
いやまあ、すでにこの映画自体意味がわからんから、今更意味不明なシーンがひとつふたつ増えたところでなんら変わりはないが。
「よっしゃ!オッケーオッケー!コレでミチルの最終決戦に向けての気持ちが固まったシーンが出来たぜ!!」
そんな重要っぽいシーンがこんなグダグダでいいのかよ………。
「お疲れ様ー!じゃあ今日は解散だ!!」
結局、こいつはなにが撮りたいんだ?
帰り道、再びシャミセンが口を聞いた。
「君たちのアレは何がしたいのか、理解に苦しまざるおえない」
「珍しいな。まったくの同意見だ」
「時に、あの少年を『大きな赤ん坊』と表現した君に言いたいことがある。その表現は当たらずとも遠からず、だ。と思う」
それはそれは、違う表現があるなら聞かせてくれよ。と視線だけで訴えてやる。
「あの少年は少なからず『赤ん坊』ではない。アレを表現するならば………無邪気、ではないだろうか?」
「無邪気??」
首をひねって考えてみると、なるはど、そかもしれないな。
ハルヒコには、立派な(?)理性がある。どちらかと言うと『子供』じゃないかな。
「でもなんでわざわざ言うんだ?」
「いや、深い意味はない。ただ君はあの認識を変えたほうがいいと、そう思っただけだ」
「そりゃ、どーも」
なんだっていいだろ。
どっちにしろだな、ハルヒコがネコにすら『子供』だと言われたことの方がポイントだ。
ざまあみやがれ。
「あと、君はもっと素直になればいいと思うぞ」
「黙れ。ネコはネコらしくにゃあにゃあ言ってろ」
「………むう。……にゃああ」
余計なお世話だ。
それに、ガキのお守りはこれくらいの態度がちょうどいいんだよ。
などと言い訳がましいことを言う私も、ガキなんだろうなあ。ふふ、笑える。こりゃ、シャミセンに一本取られたな。
喋る不思議ネコ、シャミセンが我が家に来たのが…えーと、昨日か。
ちなみに三毛猫であり、毛の色の種類と三味線の弦の本数を掛けたネーミングだとすれば、ハルヒコのネーミングセンスを少しばかり見直そう。は、いいとして、もちろんのことシャミセンはメスである。オスならこの撮影が終わった頃、弟には「友達に返す」と言っておいて売りに行くね。
そういえば、クランクインしてから何日目だっけ?毎日が充実しているせいでその辺の感覚が狂ってるな。悪い意味で、だが。
「ま、それだけ疲れてるんだろうさ。今日は今日とてまたわけわからん話を聞かされたからな」
しかもそのすべてがハルヒコに関係するものだってんだから、うんざりする。お前はどれだけ私の生活、あわよくば人生までを無茶苦茶にしたいんだ。当の本人には、そんな自覚は皆無だろうがね。
と、まあ徒然なるままにそんなことを考えていると、ふわふわと眠気がわいてきた。
「寝よう。明日も撮影あるだろうしな」
ベットに潜りこんで、その慣れ親しんだ気持ちよさに安堵感を覚えつつ瞼を閉じた、そのとき。
―――――ヴゥ〜ン・ヴゥ〜ン
携帯に電話がかかる。出るのも面倒、とは思ったが一応誰からかは見ておく事にする。
ま、こんな時間にかけてくるのは知ってる限り2人だけだ。そのどちらもがSOS団だってことは何も言うまい。
案の定、ハルヒコである。
「もしもしハルヒコか、こんな時間に何のようだ?」
『SOS団に時間なんて関係あるか。俺が今伝えたいから電話してんだよ、文句言うな』
電話に出たとたんこれじゃ、たまったもんじゃない。
まったく、やれやれだわ。
電話の内容はこうだ。「今から撮りたい画があるからシャミセン連れて、いつもの場所集合な」と、いつものことながらこちらの有無を聞かずに勝手に言うだけ言って電話を切った。
こうなっちゃ行くしかあるまい?……こっちは一応女のコだぞ。
とゆうことで、だ。
今私はシャミセンを自転車のカゴに入れ、マイバイクを駆っているわけだ。
「君もほとほと不運と見る。人では秋の夜は寒かろう?」
「ああ、そりゃあもー。あんたみたいに毛がないからね」
あと、しゃべんな。夜で人影もないからってしゃべるな。頼むから。
「む………にゃあ」
こんなときまでコイツに付き合う義理もない。
「ああ、もう!さっぶいな、ハルヒコになんかあったかいもん奢ってもらわないと気がすまないんだから!!」
一人ごちて、体を温めようと自転車をこぐスピードを早める。その考えに反して、風が鋭く肌を襲う。
「うう〜っ」
「ひとつ、いいかね?」
ぼそりとシャミセンが呟く。
とにかく、この寒さをまぎらわせたかったので「なに?」とぶっきらぼうに返事をする。
「君は、あの少年をどう思うね?」
「ハルヒコ?別になんとも思っちゃいないよ。恋愛対象としてならね。まあ、基本ウザイかな。あとわがまま。バカのひとつ覚え」
「そうか」
「なに、それだけ?」
一瞬考え込んで、シャミセンは口を開く
「いや、実に興味深い答えだと思う」
どこにどう興味を示しているんだか。答えた私はこれと言って深い意味なぞ塵芥ひとつひそませた覚えなんてない。
「それがだよ。君は無自覚でいながら、ある意味自覚している。そこに大変な興味を感じる」
無自覚とはなんのことだ、よもや恋心なんて言わんだろうな。あと自覚なら、あいつはとんでもなく世話の焼けるヤツだってーことぐらいだな。
よく言うだろう?『大きな赤ちゃん』ってやつだ。
「ふむ、ならいい。すまなかった、とてもくだらなかったな」
「…?いや、こっちこそ」
まあ、所詮ネコの戯言さ。と、流しておこう。
「遅いぞ、キョン」
「へいへい。すんませんでしたね」
シャミセンを腕に抱えながらいつもの駅前の広場まで歩くと、すでにSOS団全員が集合していた。
「罰として全員分のあったか〜い飲み物買って来い!!」
「なんでそうなる!?あんたが急に呼び出したんだからあんたが買って来い!」
と反論するものの、どうせ無駄と分かってるのでシャミセンを長門に預けてから自販機はどこかとキョロキョロしていると、そんな荒んだ心を癒す声が耳に届く。
「あの、キョンちゃん。僕の分はいいからね?」
ああっ、もうっ!何言ってるんですか。そんな産まれたての小鹿みたくフルフル震えて!!朝比奈先輩の分はたとえなにがあろうと買ってきますよ!!
と、口にも表情にも出さず、ありがとうございます、とだけ言っておく。
「では、私はコーヒーを」
「うるさい。黙って」
「ふふ、冗談です」
せっかくのいい気分が台無しだよ。一姫め、何から何まで…特に胸とか忌々しい。
「長門は?」
「………」
微かに首を横に振る。
いらない、とゆうことらしい。
「なんだよ、みんないらねえのかよ?ちぇ、なんか俺が悪いみたいじゃん」
「すねんな。たまたま皆いらないだけだろ。ハルヒコは何がいい」
「……」
「いらんのか?」
「もういい。いくぞ」
なんなんだ、まったく。
ハルヒコはどうも夜のデートシーンからのユウキ乱入による修羅場が撮りたかったらしい。1時間ほど近所の公園で撮影する。
これは、もう。どこからどう見ても変人の集まりにしか見えんな。
「イツキを渡せ」
「だ、だれがお前なんかにイツキちゃんを渡すものかぁ!」
おい、一姫。なんであんたはニコニコしてるんだ。
シリアスなシーンなんだからもうちょっと心配そうな顔しとけよ。
「どうしても渡さないなら、仕方ない」
「な、なにをするつもりだぁ!」
「いや、今日はもう遅い。今度会ったとき、お前を全力で倒す」
すたすたすたー、と黒い魔法使いっぽい宇宙人がその場を離脱した。
ってオイ。意味わからんわ!なぜ退く?ここは「実力行使だ」とかいうとこだろー?
いやまあ、すでにこの映画自体意味がわからんから、今更意味不明なシーンがひとつふたつ増えたところでなんら変わりはないが。
「よっしゃ!オッケーオッケー!コレでミチルの最終決戦に向けての気持ちが固まったシーンが出来たぜ!!」
そんな重要っぽいシーンがこんなグダグダでいいのかよ………。
「お疲れ様ー!じゃあ今日は解散だ!!」
結局、こいつはなにが撮りたいんだ?
帰り道、再びシャミセンが口を聞いた。
「君たちのアレは何がしたいのか、理解に苦しまざるおえない」
「珍しいな。まったくの同意見だ」
「時に、あの少年を『大きな赤ん坊』と表現した君に言いたいことがある。その表現は当たらずとも遠からず、だ。と思う」
それはそれは、違う表現があるなら聞かせてくれよ。と視線だけで訴えてやる。
「あの少年は少なからず『赤ん坊』ではない。アレを表現するならば………無邪気、ではないだろうか?」
「無邪気??」
首をひねって考えてみると、なるはど、そかもしれないな。
ハルヒコには、立派な(?)理性がある。どちらかと言うと『子供』じゃないかな。
「でもなんでわざわざ言うんだ?」
「いや、深い意味はない。ただ君はあの認識を変えたほうがいいと、そう思っただけだ」
「そりゃ、どーも」
なんだっていいだろ。
どっちにしろだな、ハルヒコがネコにすら『子供』だと言われたことの方がポイントだ。
ざまあみやがれ。
「あと、君はもっと素直になればいいと思うぞ」
「黙れ。ネコはネコらしくにゃあにゃあ言ってろ」
「………むう。……にゃああ」
余計なお世話だ。
それに、ガキのお守りはこれくらいの態度がちょうどいいんだよ。
などと言い訳がましいことを言う私も、ガキなんだろうなあ。ふふ、笑える。こりゃ、シャミセンに一本取られたな。
2008年03月17日(月) 01:53:26 Modified by ID:Frnyrfjnbg