涼宮ハルヒ性転換設定
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ハルヒコの変換Kyonko's side vol.2 作者:チャペル

注:これは木塚様の『涼宮ハルヒコの変換』のキョン子視点です。
  木塚様の了解をとった上での3次創作と言う位置になります。
  原作となる涼宮ハルヒコの変換vol.2を先に読むことを強く推奨します。
  まだ一話も読んでないと言う人はこちらから涼宮ハルヒコの変換vol.1







 朝の心配もなんのその。
 ハルヒコには特に目立った変化もなく、いつも通り真面目に授業を受ける私の後からポニーテイルの先ををいじくっていた。迷惑この上ないが、後々のことを考えるとぼーっと外を眺めていられるよりずっとましと言うものだ。
 だが、そんな平和も昼休みまでだった。

 いつものごとく休みになった瞬間ハルヒコは何処かに出掛け、私は谷口、国木田と共に弁当を食べようとしていた。さて今日のおかずは何かな?と蓋を開けたところで名前のよく覚えてないクラスメイトの男子に古泉一姫が呼んでいると声を掛けられた。
 例の私の予感が空襲警報のサイレンのように警鐘を鳴らしていたのは言うまでもない。


「それで、何があった?」
 一姫に呼ばれ、そのまま文芸部部室に連れて来られた私は超能力者と宇宙人と未来人に問い掛けたのだが、なにやら牽制しあっているようで誰も口を開くことなく時間だけが刻々と流れた。
 このままじゃ私が昼飯を食べる時間が無くなってしまう。
「…実は少々面白、おっと、失礼。こほん、やっかいなことが起きたようなのでお呼びしたのですよ」
 すごく聞き捨てならないことを言ったような気がするが、今はそれどころじゃない。くどいようだが昼飯は食べたいのだ。
 説明をそくすように視線を一姫に向けたのだが、返事は別のところからきた。
「あなたの異次元同位体がこの世界に紛れ込んできている」
 異次元同位体?なんだそれは?
「多次元並行世界における根源的同一存在」
 …余計に解らん。
 一姫。
「簡単に言いますと異世界人ですよ。キョンちゃんと少しだけ違うキョンちゃんと言ったところでしょうか」
 つまり、私に瓜二つの輩がいるってことか。
「彼とあなたの身体特徴はほとんど一致しない」
 ちょっと待て。今、『彼』って言わなかったか?
「ええ。どうやらキョンちゃんの異世界人は男性のようですよ」
 瞬間、何故だか今朝あった男子が頭をよぎった。ダルそうな雰囲気、私の下駄箱を自分のだと言ってきた行為、上履きの名前を見た時の反応。
 まさか、アイツが私?
「それで原因はやっぱりあいつか?」
「そう。おそらく涼宮ハルヒコが原因であると予測される」
 なんてこった…朝の嫌な予感大的中じゃないか。
 長門の話によると放課後に会わせるとのことでこの場は解散となり、最後に朝比奈先輩がおっしゃられた「でも、キョンちゃんの男の子バージョンなんて楽しみ」と言う無邪気な発言が空きっ腹に堪えた。



 放課後SOS団を休むのをハルヒコにどう伝えたものかと悩んでいると、ハルヒコの方から今日は皆用事あるから休みだと伝えられた。相変わらずお役所に見習わせたいくらい仕事が早いなあの三人は。
 そして昼休みの約束通り、あたし達は男のあたしが待つSOS団御用達のファミレスへと向かった。

 長門、朝比奈先輩、私、一姫の順に店に侵入する。
「朝比奈さん!!」
 瞬間、見覚えのある男子が立ち上がって朝比奈先輩を大声で呼んだ。
 突然大声で呼ばれた朝比奈先輩は可哀そうに、小動物のように飛び上った。そんな朝比奈先輩の反応に男子は一瞬嬉しそう顔をするも、すぐに愕然とした顔になる
「…男…なんですね。」
 正直言えば私は朝比奈先輩は性別が入れ替わっても容姿が変わらないって思っていた。しかし、今の反応を見る限りあっちの朝比奈先輩は実に女の子らしいお姿のようだ。…羨ましいなんて思ってないぞ。
「じゃぁ、君がキョンちゃ…キョン君?」
「朝比奈さんは…ほとんど変わってないんですね。」
 どこか安堵した様子で朝比奈先輩と話していた男子は次に私へと視線を向けた。

 やれやれ…ここまできたら認めざるおえないか。
「あんたが私って訳か…。」
 私がそう言うと案の定男子もこいつが俺かって目で見てきた。
 どうやらこの男子が異世界のわたし…つまりはキョン♂…ああもう、ややこしいな。私は私、こいつはキョンってことにしとこう。
 キョンと私が見つめあっていると、いつのまにか私の横に並んでいた一姫が楽しそうな声を出した。
「それにしてもおもしろい事になりましたね。」
 おそらくキョンの反応をからかいたかったのであろうが、キョンはじっと一姫を見て首を捻った。
「えっと。誰だ?」
 キョンは気づかなかったようだが、一姫の笑顔に不満の色が一瞬混じり、私は心の中でキョンに讃辞を送った。
「分かりませんか?あなたの世界の私はどんな男性なのやら。」
 一姫らしくもないヒントと、一姫らしい皮肉満載のセリフにキョンは何かに気づいたように目を見開いた。
「お前…」
「わかっていただけましたか?古泉です。」



 問題が起きた時のあたし達の常として一姫が解説を始める。
 キョンの世界の一姫がどんなだか分らないが、一姫の解説にいちいち反応しないところを見ると、どちらも似たり寄ったりのようだ。
「原因はやっぱりハルヒか…」
 ハルヒ?何か聞き慣れたものより足りない。ハルヒコじゃないのか?
「ハルヒというと…この世界での涼宮ハルヒコですね?」
 なるほど、性別が合わせて名前も変わってるのか。面倒なことだ。
「それにしても興味深い事です、お話を聞くにどうやら此方と其方の世界での違いは性別だけで、私達のプロフィールなど、他の違いは特にないということですね。」
 一姫は完全に人事かのように、明らかに面倒で厄介なことだと言うのに嬉しそうに質問している。
「お前は超能力者で、朝比奈さんが未来人、長門は宇宙人。で、俺は真人間だ。」
「正解です。」
 キョンの答えにいつも以上の笑顔で一姫が応答する。
 その笑顔にキョンがすこし頬を染めたのを私は見逃さなかった。おいおい、こいつだけは止めとけ、見た目だけだぞ異世界の私。

「あっ!!」
 突然朝比奈さんが声をあげた。
「どうしたんですか、朝比奈さん?」
 キョンの問いに朝比奈先輩はわたわたとしながら必死に説明する。
「えっと。今、特殊な時間断層が発見されたみたいで…その…多分、キョン君がいた世界の時間が止まっているんだと思う。」
 どういうことですか?と私が口に出そうとした一瞬前にキョンがまったく同じセリフをはきだした。
 どうもタイミングと思考がひどく似通っているようだ。
「あなたがその世界を抜けた時から時間が止まっていると考えるのが自然でしょう。私が考えるに、あなたが戻る事が出来れば、時は流れ出し双方の世界で今通り生活が開始されるのだと思います。違いますか?」
 パチンと指を鳴らし得意そうに説明をした一姫は長門に流し目を向ける。
 別に一姫の流し目に反応したわけではないと思うが、長門が実に短く反応した。
「違わない」
 よくみた覚えがあるやり取りを終えると、一姫は私の方をわざわざ向いてわざとらしい笑顔を浮かべる。
「当たりました。」
 相手をすると増長してひっついてくるので放置する。私にはそっちの趣味はない。
 一姫も今は私よりも目の前の事象が面白いのか、いつもより早く話を再開した。
「と言う事は、あなたが帰るまで其方の世界の時間は止まっている事になりますから、ゲームクリアの時間的な制限はなさそうですね。」

「あの…よかったらキョン君の世界のSOS団の話してくれないかな?」
 一姫が話を纏めると今まで聞きたくてうずうずしていたのか、尻尾をふる犬のような様子で朝比奈先輩が質問する。
 とは言え、確かにそれはとても興味を魅かれる。私が知っているSOS団とは似ているが違うSOS団だなんて、出来の悪いファンタジー小説より何倍も面白そうだ。
「それは興味ありますね。さっきは詳しく聞けませんでしたからね。ぜひ、聞かせてください。」
 一姫からも懇願されてキョンは最後に私をちらりと覗き見ると、面倒くさそうに話し始めた。
「分かったよ。まずSOS団が出来たのは…」



 驚くことにキョンの語ったSOS団談義は細部の違いこそあれほとんど一致した。
 気付いた時にはあたし達が語り、キョンが同意するなんて形になっていて、特に一姫は余程ツボにはまった様子で、よく解らん論理をいくつも掲げて『パラレルワールドの因果と事象』とか言う自己論を展開している。
 いつものことなので溜息混じりにそっぽを向いたら、同じような表情をしたキョンが目に入った。
 どうも話を聞く限りではSOS団の性格や行動はほぼ同じらしい。
「あんたも苦労してるんだな」
 自然とそんな言葉がもれた。
 対するキョンも私に同情するような視線をよこす。

「お前はあまり驚いてないんだな。」
 言われて少し考える。
「驚いてるさ。けど色々な事に巻き込まれた所為で、このくらいはたいした事ないと思えるよ。」
 キョンと会話して一つ解ったことがある。今まで意識したことは無かったが私の口調はキョンとほぼ同じ、つまり私は男言葉で話しているようだ。キョンの雰囲気まで私に似ているものだから気が付いた。


「そういや、だいぶ暗くなってきたな…」
 そうキョンが呟いたので外に視線を向けると、もう夜の帳が降りている。
 もう今日は精神的に疲れたので家に帰ったらお風呂に入ってさっさと寝よう。そういや、家って言ったらあっちの世界じゃ家族はどうなってんだ?まさか、親父がお袋になってるのか?それとも…
 と、そこまで考えたところで引っかかった。
「そういえば。寝泊りはどこでするの?あんたの家ってないんじゃない?さすがに私の家はまずいだろうし。」
 男女ってこともあるし、親父とお袋がチェンジしているかもなんて幻視は忘れたい。
「そういえば、そうだね。キョン君の家はキョンちゃんの家だから。あれ?じゃぁキョンちゃんの家はキョン君の家だから、キョン君の家はキョン君の家で…」
 朝比奈さん、訳が分からなくなってますよ。

「私の家に泊まればいい。」
 解決案を出したのはSOS団一頼れる男子、長門有希だった。
 なるほどそりゃ名案だ、と思ったのだが、何故かキョンは目を白黒させて挙動不審になっている。そんなキョンに長門は冷静に言葉を重ねる。
「この世界の私は男。問題ない。」
 あ、そっか。キョンのせかいでは長門は女なんだよな…って、今なんかおかしくなかったか?あーなんだ?そう、長門のやつ『私』とか言ってた。いつもは『僕』じゃないか。
「今気づいたんだが、長門喋り方変わった?」
「彼の世界の私との情報交換がうまくいかなかった。断片的な情報結合のため一部の情報が混合されている。気にしないで。」
 なるほどね。
 ホントにややこしいことだ…

「この際細かい事はおいて置きましょう。とりあえず、原因解明まであなたは長門さんの家で待機していてください。」
 一姫やけに楽しそうだな?
「だって面白いじゃありませんか。ダブルキョンですよ。なかなか見れません。」
 それは冗談のつもりか?


 私とキョンは重なるように溜息をついた。
2008年03月17日(月) 08:43:00 Modified by hinoruma




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