涼宮ハルヒ性転換設定
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孤島症候群〜前哨戦〜

夏と言えば合宿!

そう我らが団長涼宮晴彦が叫び古泉一姫プロデュースの元、孤島へと足を伸ばす事になったSOS団一同
到着と同時にハイテンションを通り越して危ない薬でも決めたかのような晴彦の元気っぷりに当てられながらあたしは1つため息をついていた。

何も起こりませんように…。

しかしその願いも蝉の寿命と同じく儚いものだったと後々に知ることになるのだが、それはまた別の話
一通り屋敷の人達に挨拶を済ましたあたし達は晴彦先導の元海水浴と洒落込む事と相成り、あたしは一姫と共に部屋で水着へと着替え先に浜辺へと駆けて行った晴彦達を追った。

「青い空!茹だるような暑さ!透明感溢れる海!白い砂浜!」

膝上五センチ程度の少し大きめなトランクスタイプ――オレンジ色――の水着を履き、海を眼前に構え仁王立ちに何やら叫んでいる晴彦、ふと何やら不満そうな表情であたしに振り返り

「なのに…なんでお前はスクール水着等と言う場違い甚だしい格好してんだよ!」
「し…仕方ないじゃん、これしかないんだから」

確かに多少場違いにも感じたが、週一で喫茶店やらその他諸々の出費のせいで水着が買えなかったなどとはあたしの小さなプライド――どんなのだよとかツッコミは受け付けない――が邪魔して言えない
だけど他に人が居ないし、別に気にする事じゃないでしょ

「お前はわかってない!折角海に来たんだぞ?ビキニぐらい頑張って着ろよ!」

そう言いながらビッと頬を赤くしながら一生懸命ビーチボールを膨らましているビキニ姿の一姫を指差し

「古泉を見習え、確かにお前のお子ちゃまスタイルでは少し苦しいかもだが海にはそれなりの格好してこい!」
「スクール水着だってそれなりの格好に入るでしょ!っていうかお子ちゃまスタイルで悪かったな!」
「バカ野郎!俺にはスク水属性はないんだよ!」
「な…なんであんたの趣向に合わせなければならん!!」
「団員なら団長の趣向に合わせろ!!」
「無茶苦茶言うな!!」

ギャースカと犬同士が牽制し合うが如く吼えているあたし達を一姫と朝比奈先輩が微笑ましいものを見るかのような笑みで見ていたのがあたしの視線に入る。

ちょっと待て、あたし達の口論を見て何故にそんな夫婦喧嘩は犬も食わないとでも言いたげに肩をすくませる、あんたの事言ってんだよ一姫!
と、声高々に叫びたいが今はこの団長様をどうにかしなければと改めて晴彦の顔を見据え、口を開こうとしたあたしの横を右手に一撃で頭蓋骨を陥没させるほどに分厚い本、左手に無駄にカラフルなパラソルを持って長門が歩き過ぎる、その瞬間

「僕はいいと思う」
「「――はっ!?」」

そんな爆弾発言をさらりとマグニチュード8.0で揺れていたあたしと晴彦の間に落として行く。
――体が動かない。
あぁそうか、人間って奴は余りにも予想外の出来事に直面すると硬直化しちゃうもんね。
うん、いつかの朝倉襲撃の時にもあったあった。朝倉の奴が「イタズラする」なんて言って小太刀で上着を縦半分に切って隙間から覗くあたしの未成長な肌を見てクスリと笑った時なんて恐怖で体が今みたいに固まっちゃったもんね。
あれ?あれって朝倉が情報操作だかなんだかしたんだっけ?
まぁいいや、とりあえずあの時長門が来てくれ無かったらあたしの貞操は訳の解らない事を気さくな笑顔を浮かべながら語る宇宙人擬きに奪われてる所だった訳で…いや、本当に感謝してるよ。
「………」
この三点リーダーはあたしと晴彦の分。
うん、過去の思い出――忘れたくて仕方がないが――に耽って現実逃避するのはいい加減に止めよう。
えと…今のは長門流のジョーク?と言うかフォローなんだろうか?
長門のこの発言の真意を読み取ろうなんてのは日本アルプスをなんの装備も無しに登山すると言う程に考えるのも馬鹿馬鹿しく思えるもので

「なぁ有紀…それってどういう意味だ?」
「?」

意味を問われている筈の長門が首をかしげる
「もしかしてお前、つるぺたスク水萌えなのか?」
「真性のアホかお前は」
と言うかそこからいい加減離れろ、いくらあたしでも流石に泣けてくるよ。

「つるぺたスク水萌えってなに」

いや、だからあたしをブラックダイヤモンドみたいな瞳で見ないでよ
悩ましげに思案している晴彦の顔を見上げると晴彦はパッと取り繕ったような笑顔を見せて

「まぁそれしかないんならしゃあないわな!今回はそれで我慢してやるよ」

こいつ無かった事にしやがった!?っていうか我慢してやるってあんたは何様だ!とツッコミたかったが後が面倒なので自重する。晴彦はそのまま朝比奈先輩と長門を引き連れ海へと神風特攻隊も真っ青な突撃を決行した。

「水着が無かったのなら私に言って頂ければ用意しましたよ?」
晴彦達を横目に見送るあたしに一姫が声をかける。

「いや、『機関』に世話になるの嫌だし」
「そうですか…なら水着を買いに一緒に行きましょう」
だからお金が無いんだって!とはやっぱり言えない
「いや、既に時遅しってやつだよ」
「いえいえ、夏はまだ終わりませんよ?もしかしたら涼宮君がまた海へ行こうと言い出すかもしれません」

確かに、夏休みもまだ半分以上残っているし…年中元気百倍のあいつの事だからそれくらいありそうだ。

「ふふ」
「なによ、気色悪い」
不意に一姫が珍しく上辺だけではなく心から笑うような声を出した。
「いえ、ちょっとした憧れだったんですよ。心を許せる友人と水着を一緒に選び買うと言う事が」
「………」
「私が貴女にぴったりの水着を選びます、願わくは貴女も私に合う水着を選んで欲しいものですね」
そう言う一姫の顔は笑みを浮かべてはいたが何処か寂しそうに見えたのは気のせいだろうか?晴彦や機関の事があってこの子は他人に深く踏み込む事が出来ないみたいな事をいつだったかふとした時に溢した事があった。
それを思い出したあたしは――
「うん」
と答えていた。
一姫は一瞬鳩が豆鉄砲を食らったような顔を見せてから何時もの0円スマイルを浮かべ楽しみですと喉を小さく震わせた。
行きましょうと一姫は先程膨らましていたビーチボールを片手にあたしの右手を取り、晴彦達の元へと駆け出した。

************

夕焼けが海を赤く照らし黄昏めいた時間に差し掛かると晴彦がそろそろ帰るぞ、と皆を集めた。
一姫と海中バレーをしていたあたしは荷物を纏めていた長門の所へ、一姫は大手を振って100Wの笑みを煌々と発している晴彦の所へと向かった。
疲れてしまったのか途中で寝てしまった朝比奈先輩を起こし、あたしはクーラーBOXを肩に掛けて前を歩く晴彦達の背中を小走りで追い掛ける。っていうか仮にも女の子にこんなもの持たすなと心の中でごちたその瞬間――

「きゃっ!?」
ステンと砂浜に足を取られて転んでしまった、恥ずかしい…思い切りお尻を打ったせいでジンジンと痙攣するような痛覚を手のひらで撫でながら耐える。

「おいおいお前なぁ、なんでもないとこでコケんなよ」
「うっさい」
「大丈夫ですか?」
「………」
「あわわわ!えとえと、バンソーコーバンソーコー!!」

各々の反応見せてくれるSOS団の面々。
晴彦は後頭部をガシガシと掻きながら呆れたような口調であたしを見据え、朝比奈先輩は慌てふためきあたしに何故か空気が抜けたビーチボールを渡してくる。一姫はあたしに走りより心配気な声であたしを気遣い、長門は無言のまま右手を差し出していた。
あたしは長門のその手を握り引っ張られるまま勢いよく立ち上がる、と
「痛っ!?」
右足首に捻られたような刺激が襲う、どうやら捻挫してしまったようだ。
痛みに堪え切れずあたしはふらつき手を握っていた長門の胸にその身を預けてしまう。
「あ、ご…ごめん」
「別にいい」
「捻挫、のようですね」
謝罪をいつものように淡々と流す長門、一姫は少し腫れたあたしの右足首を割れやすい硝子細工を触れるような手付きで触診し、タオルを一枚取りだし上下を縦に交互に鋏で切り包帯代わりですとあたしの足首に少し固めに巻いた。テーピングみたいだ。
「………」
「ん?」
ふと晴彦の視線に気付く、その表情は不機嫌そのままでその時初めてあたしは長門に抱き付くような格好でいることに気付く。
「―――っ!?」
脱兎の如く長門の胸から脱出したがあたしの足は今は自分の体重を支える事が出来ないようで、そのまま尻餅を突くような形で地面にアヒル座りでへたりこんでしまう。
「あたた…」
「ちっ、仕方ねぇな。雑用のくせに団長に世話かかすなよ」
等と悪態を着きながら晴彦は自分が持っていた荷物を長門と朝比奈先輩に渡しあたしの目の前で背中を見せてしゃがみこんだ。
意味が解らない、こいつは何がしたいのだろうか?
「ほら、おぶってやるからさっさと乗れ」
「へ?」
晴彦のぶっきらぼうな声に驚いたあたしは思わず彼の顔をまじまじと眺めてしまう。

後ろからだしうっすらとしか見えなかった、男の子らしくがたいの良さでその背中は固い。その事実を改めて意識すると余計に顔が熱くなる…嫌が応にも晴彦が男の子と言う事をあたしの脳を通り越して勝手に心臓が反応してしまう。
「なぁ」
そんな思案を払拭するように頭を左右に振るあたしに晴彦は静かに声をかける、表情は見えない。
「なに」
「お前さ…」
こんなのあたしらしくないと頭ではわかってはいるのだけれど、心臓はその足を速める一方で――
「ほんと貧乳だよな」
「…………は?」
世界が停止したかのような錯覚に目眩を覚えながらあたしは漸く1つだけ言葉を出した。
「背中に胸が当たってる感触が全然しないんだが、貧乳スク水なんて一部の人間しか萌えないんじゃないか?」
「………」
「無駄とは思うが古泉にどうしたらいいか聞いてみろよ」
「………」
「あ〜あ、こんな女っぽくない女おぶってもなんの面白味もねぇや…おい、ちゃんと捕まれよ。落ちるぞ?」
「………」
「全く、ほんと手の掛かる団員だ――ぜっ!!!?」
晴彦の首に回していた腕を十字に結び、あたしはそのまま横向きに傾ける。その刹那、ゴキンと小気味の良い音があたしの鼓膜を刺激する。
ん〜良い音。

「よいしょ…っと」
頸を横に傾けたままゆっくりと膝を地面に付け倒れる晴彦の背中からあたしは離れ、痛む足首を庇うようにひょこひょこと歩きながら帰路へと着く。

「―――」

えぇそうですとも!どうせあたしはつるぺたですよ!
一姫みたいにモデル体型なんかじゃありませんですことよ!
あたしだって歳相応の女だから少しは気を使えっての!
ぷりぷりと憤慨しながら帰宅したあたしを一姫、朝比奈先輩は目を丸くして出迎えた(長門は相変わらず無表情)
「あの〜涼宮君はどうしたんですかぁ?」
「知りません!」
「ぴっ!?」
朝比奈先輩の質問に語気を若干(←これ重要)荒くし答える。先輩はそんなあたしに怯えるように一姫の背中に隠れてしまう。
「あの…一体なにがあったんです?」
「だから知らないって!」
一姫の問いにも問答無用と言うように無下にし、あたしはびっこを引きながら自室へと戻る。
「ほんと、バカ…」
暫くすると森さんが痛む足首に湿布と包帯を巻いてくれた後、ベッドへその身を投げ出し1人ごち、静かに瞼を降ろす。
晴彦の広くて大きな逞しい背中の感触を思い出しながら、目を覚ませば夕食で、その席には飲み慣れていない酒を振る舞われ翌朝には痛む頭を抱えながら朝食に顔を出すと新川さんがある事件を報せにやってくるとは知らずに
あたしはゆっくりと寄り添って来た睡魔を優しく抱擁し、その微睡みの中に意識ごと体を投げ出した。

――これは蛇足だが、夕食の時に晴彦は海パン姿のまま現れ
「なぁなんで俺が浜辺でノビてたか知ってる奴いる?なんかやたらと首痛いんだが…」
等とほざいていた。
あの迷惑な能力も忘却した記憶と共に消してくれればなぁとあたしはか細くため息をつく
「やれやれ」
と――。
2008年03月11日(火) 15:23:47 Modified by ID:h/g2F3B6bg




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