涼宮ハルヒ性転換設定
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孤島症候群〜前哨戦〜後日談

とある日のとある昼下がり、毎週恒例不思議探索と言う名の我が町こんな町ぶらぶらツアーを慣行中な訳で
長門とペアになったあたしは伺う事すら面倒に感じる程に規定事項な二人での行き先を提示する。
「図書館でいい?」
「………」
こくりと、端整な顔を下へ軽く引く。これが長門流の肯定の仕草だと理解しているあたしはつらつらと歩を進める。
ひぐらしが鳴いている。
孤島での事を夏はあたしに思い出させてくれるが…一部忘れたい事もあると、あたしは声を大にして言いたい。まぁ、詮なき事だけどさ。
「待って」
そんな事を考えていたあたしの背後から声をかけられる。長門?珍しいね、あんたが待ってなんて言うなんて。
「どうした?」
「君に聞きたい事がある」
「ん〜…長門に解らない事はあたしにも解らないと思うが」
「聞いて欲しい」
自分の意思を主張するなんて長門にしては大変珍しい事である。何かしらの異変があった時はいつも最善の策を開示してくれるし、でもそういう訳じゃないんでしょ?
「違う」
ふむ、じゃあなに?聞くだけ聞いて、解らなかったらもっかい二人で考えよう。
あたしの提案に先程と同じように頷き、ゆっくりと口を開いてその『聞きたい内容』を吐き出した。
「つるぺたスク水萌えって何」
「………」
長門を見上げるあたし、あたしを見下ろす長門。
――えぇ、どうしようもないくらいに固まってしまってます。フリーズドライでもチタンでも超合金Zでもここまで固まる事は出来ないだろうね。
右手を腰に当て、重心を斜めに置き、若干だらけたような体勢で固まるあたしに長門は首をちょこっと掲げてみせた。
返事がない、ただの屍のようだ――
そんなナレーションが頭に響く。
「あのな、長門…」
「同じ質問を朝比奈みつるにもした」
朝比奈先輩になんてことを聞く。あの人は萌えの権化かもしれないが――晴彦談――萌えについての知識なんて全くさっぱりないと思うが…っていうかあんたが人の話を遮るなんて珍しいね。
「そ、そう…なんて言ってた?」
「君の水着姿を見てどう思った、と逆に聞かれた。質問を質問で返すのは頂けないと思う」

うん、そうだね。朝比奈先輩もなに言ってんだろうね?今ちょっだけ黒微笑を浮かべる彼の顔が浮かんだのは気のせい…だよね?
「僕は良いと思うと答えたら彼は、それが萌えだと言っていた」
「あはは……」
あたしってもしかして玩具みたいな扱いされてる?
苦笑しながらがくりと項垂れるあたしに長門は少し躊躇いがちに声をかけてきた。
「聞いて欲しい」
「え…?」
一瞬なんのことか解らなかったあたしは晴彦が言う間の抜けた顔をしてたと思う、でも長門はそんなあたしを気にするような素振りも見せずに――
「僕は君に萌えた」
なんて言ってきた。
硬直化再び。なんか今年の夏はよく固まるなぁあたし…。
「………」
路傍の石のようにコロコロと転がって行く意識を取り戻した時には長門は数歩先へ進んでいた。
「ちょ…ちょっと待ってよ!」
慌ててその背中を追いかける、長門の左隣で息を整えるあたしは文句の1つでも言おうとし、長門の顔を見上げ絶句した。
「………」
本当に微細だが、小さい小さい変化だけど…長門は目尻を下げ、口元を持ち上げていた。
「長門…笑ってる?」
「………」
長門は答えない。
そこではたと気付く、こいつ…
「からかった…の?」
「………」
長門は答えない、こういう時の長門は狡いと思う。
「もう…馬鹿!」
ひぐらしが鳴いている。それに呼応するように、あたし達を照らす太陽はその輝きを一層に増した気がした。

夏はまだ続きそうだ――
2008年03月11日(火) 17:25:59 Modified by ID:h/g2F3B6bg




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