管理者の自己紹介
自己紹介
私はガン患者
2001年、私はガンになりました。
部位は鼻、診断名は腺様嚢胞癌でした。
2006年現在再発もなく元気です。
自己紹介の代わりに私とガンの話を書いてみたいと思います。
症状〜告知
2001年秋のこと。いつものように頭痛を抱えていた。最近頻繁に頭痛がする。動いていると気にはならないレベルなのだが、静かにしているときや、休みの日は軽い頭痛がある。
左の額のあたりがズキズキと痛む。思えば３月にも頭痛がした。
このときはさらに強烈な頭痛で、痛みが止まらず夜間診療を行っている近くの脳神経外科に駆け込んだ。
それほどの痛みではないが、少し調子が悪い。
そう言えば３月にＭＲＩを撮ったときに、鼻茸があるといわれたな…。
鼻も見てもらうといいかもしれない。
鼻自体は学生の時から悪く、慢性化していて悪いという感覚すらもうなくなっている。
近くの医大で診察を受けることにした。まず、耳鼻科。
こちらは鼻茸と鼻中隔湾曲症が指摘された。「年内に手術をお勧めします。」担当医師は言った。
でも、頭痛がなくならない。あわせて脳外も受診した。一回目はボルタレン等を処方されるのみ。
頭痛は大別すると緊張型頭痛と偏頭痛に大別されるみたいだが、特徴はどちらにもわからない。
当初は偏頭痛とばかり思っていたが、医者によると偏頭痛の痛みはもっと極端で、こんなにおとなしくはないという。では、いったい…。
二度目の受診でＭＲＩを撮ってもらうことにした。
結果は脳自体に異常はないが、鼻空の部分に白いもやがかかっているのが自分にも見える。
「次回、耳鼻科にかかるときに担当の先生に異常ある旨を伝えてください」とのこと。
耳鼻科の先生に伝えると、すぐCTの手配をしてくれた。造影剤を使うものだった。
１１月１９日ＣＴ撮影。１１月２０日結果を伺う。結果は極めて怪しいことになった。
妻と一緒に写真を見たが、大きな腫瘍らしきものが写っている。
鼻の奥から発生してさらに奥まで続き、先端は頭蓋骨の下端にまで至っているではないか。ただの鼻茸という話ではなかったのか！
「まだ悪性のものと決まったわけではありません。鼻の中には色んなものが発生します。中にはカビなども発生することもあるのです。とりあえず細胞を取って検査しましょう。」
生体検査を行うことになった。
「ベットがなかなか空かないので検査入院の形をとりたいと思います。１１月２７日から入院できますか」嫌だも何もあるわけはない。黙って細胞検査を受けるのみだ。
もう、気が気ではない。あわてて健康食品も取り寄せることにした。
神にも祈った。どうか悪い病気ではありませんように。
１１月２５日少し離れた公園に車で行く。
すばらしい天気。秋の日のいい一日だった。珍しく頭も痛まない。気分も良い。
子供達は大喜びでアスレチックやすべり台をしている。
デジカメで何枚か写真を撮りながら思った。生きている事はやはりすばらしいことだ。
感謝しなければならない。何もないことを。どうか何もないことを祈る…。
１１月２７日入院。同日細胞の採取を行う。結果は５日後くらいにわかるとの事。
とりあえず他にすることもないので、外泊する。
１２月５日細胞検査の結果が出る。いよいよ結果が出るのだ。
「ガンです」主治医が言った。その瞬間は何も考えなかった。何も感じなかった。
ただ視線だけが正面の主治医から徐々に床に向かって行くのがわかる。
病院の床はこんな柄だったか。そんなことを思っている。
「腺様嚢胞癌」という種類のガンであること。悪性腫瘍であること。普通のガンとは違い、転移しにくくまた、全身に転移もないこと。
かつて治療実績が一例のみあり、その方は元気で社会復帰していること…。
主治医は色々話しているがあまり覚えていない。妻の泣き声だけは聞こえる。
そのまま継続入院となり、翌日から治療を受けることになった。
放射線治療〜抗癌剤投与
１２月６日放射線治療開始。頭の痛みはＭＳコンチンを処方されているので、特に痛くない。それだけでもかなり救いだ。
放射線は毎日２グレイ、午前と午後に分けて照射する。新たな健康食品も追加した。
なんとしてもこの放射線治療で効果があって欲しい。
実際のところ放射線治療というのは私の場合特に副作用がなく、治療なんだかどうなんだかわからないものであった。
「ビービー」という音のみで、特に痛くも痒くもない。
楽な治療だというのが正直な感想だった。
それと同時にＭＳコンチンの効き目が出始めて、頭痛もなくなったと同時にだんだんと元気が出始めた。
放射線のみの治療なので、土日は基本的に治療がない。
毎週土日には外泊をすることにした。
病院の狭いベッドで寝るよりも快適だし、何より家族と一緒だから落ち着く。
反面週の中ごろになると、むしょうに悲しくなる。
妻と子供達は毎日来てくれた。
ほとんどの日は一日２回。昼と夜の食事を病院のデイルームで一緒に取った。
夜、家族を送って行くのがむしょうに寂しいのだ。
子供達の手を引いていつも駐車場につながるエレベーターまで送って行く。
「おとうさんいつ退院する？」下の子が時々たずねる。
「もうすぐだよ。もうすぐ退院するからね」
「やったー」
話しているうちにエレベーターのドアが閉まる。
閉まりきる瞬間まで顔を見ていようと目を凝らす。小さな手を振る子供達。こんな毎日が続いた。
１２月１７日主治医から新たな治療の提案があった。抗癌剤の提案だ。
ただし、通常の静脈からの注射ではなく、大腿部の動脈からカテーテルを通し、患部まで到達させ薬を散らす方法だ。（動注というらしい）
頭頚部の例では仙台のガンセンターで８０例ほど行われているが、良好な治療成績を収めているらしい。
ただ、最近になって脳梗塞でなくなった人も３人ほどいるらしい。
血管の中に老廃物が多いと、カテーテルを挿入する場合それが剥がれて脳に到達し脳の血管が詰まってしまうらしい。
かなり迷ったが、治療を受けることにした。
なんとしても良くならなければならない。不安はあるが他に選択の方法はないではないか。
動注の日程は２６日に決まった。もう後へは引けない。
１２月２６日。いよいよ当日がやってきた。
前の日はあまり眠れなかった。食欲もあまりなかった。
開始時間は昼の１３時３０分からだ。時計ばかりが気になる。
怖いのだ。正直怖い。もしものことがあったらどうしよう。
脳梗塞にでもなったらどうしよう。そんなよくないことばかりが頭をよぎる。
１２時３０分ころ、手術着に着替える。
主治医の補佐のＹ先生が現れた。「おしっこの管をいれましょう」
ゼリー状の麻酔を管の周りに塗って尿道に差し込んで行く。
「大きく深呼吸して、はい、いいですよ」呼吸に合わせて管が差し込まれて行く。
ひどい痛みはないが、気持ちいいものではない。残尿感も感じる。
まもなく肩にリラックスする注射を打たれ、ストレッチャーで一階の造影室まで運ばれる。
大勢のスタッフがいる。
カテーテル挿入する放射線科の先生の自己紹介があったがあまり覚えていない。
セットが完了して、太腿の動脈あたりの麻酔が始まる。
何かアルコールのようなもので塗っているような感じだ。
少し鈍痛があり、カテーテルの挿入が始まった。たちまち頚部を通過して、患部に至る。
腫瘍に対しての栄養血管を同定するために、なんども造影剤が投入され、撮影される。
造影剤が投入される度、顔面を痛みが走る。
血管を見つけ出し、アクプラチンを投入。全量の約６割を左から投入する。
続いて残りを左から投入。
やたらと喉が渇く。時間がじりじりと過ぎていく。早く終わって欲しい。
「お疲れ様でした、終了です。薬はしっかり入りましたよ。」
やっと終了した。効果の程はまだ不明だが、とりあえず終了した。
終了後抜いていた食事を取った。副作用もなく３分の２ほどをたいらげた。
普通は食事が取れないらしいが特に影響はない。これも健康食品のおかげなのかも知れない。
その後脱毛も吐き気もなく過ごす事ができた。
あるホームページとの出会い〜一時退院
病院も１２月２８日をもって今年度は終了。帰宅できる患者は一時帰宅する。私も帰宅することにする。１月７日までの少し長い正月休みだ。
休みの間はかなりの時間をインターネットに費やした。自分の病のこと。他の同病者のホームページなど。色々見て回る。
「ガンの患者学研究所」
何気なくクリックしてみる。
「ガンは治る。進行したガンも、手遅れと言われた末期ガンも、やはり治る。治す力は、すでにあなた自身の中にあるのです…。」
驚愕するようなトップページが現れた。
ずっと治らないと思っていた、そして誰も「治る」ということを首肯しなかった私の病を初めて「治る」と言ってくれた人が出てきた。
むさぼり読んだ。ホームページの隅から隅まで読んだ。
何か新しい情報はないか…。読めば読むほど疑問が氷解していく。安心する。楽になる。うれしくなる。
救われたような気持ちになった。これで病とも闘える。
このホームページがなければ、多分自分の病を深く考えることもしなかっただろう。
わが身の不運を呪い、同じような生活を送っていたに違いない。
以後、あらゆる面においてこのホームページの内容は私の人生に影響を与えた。
休みが終わり、病院に戻った。早速主治医が抗癌剤を再度勧めてくる。
「耐性ができないうちに腫瘍を叩いておいたほうが良いと思います。」
こちらは、休み中の勉強ですでに抗癌剤は見切りをつけていた。
「もう抗癌剤はやりません。手術を検討したいと思います」
主治医は何度か勧めたが、私は頑として首を振らなかった。
以降主治医はあまり抗癌剤治療を勧めなくなった。
放射線は１７回終了した後にストップした。予後に取っておきたいとのことだった。
他に治療もなく、手術を検討することになった。現在ならなんとか内視鏡で取れるかも知れないとのこと。
２月２７日に予約を入れ、１月１９日に一時退院することになった。
自助療法の取組み〜再入院
一時退院してからは、本格的に代替医療・自然療法を生活に取り入れることになった。食事は玄米菜食を基本に、肉・魚・卵・牛乳は一切取らない生活を心がけた。
また、全く運動をしなかった過去を反省し、毎日４０分ほど散歩（早歩き）を行った。
自然療法の「あなたと健康社」へ行き、ビワ温灸や手当ての方法も習い、みようみまねで自宅で行った。
また、代替医療も取り入れるため、重野クリニックに行き漢方のサプリメントも処方していただいた。
体が変わってきた。
まず、便通がよくなった。毎日大量の便が出始めた。
それと同時に体重が落ち始めた。１６５�僉Γ僑記圓△辰紳僚鼎郎能�的に５５�圓泙把祺爾靴拭�
ズボンのウェストも８３�僂�ら７６�僂泙能名�した。
体が軽くなる。また、散歩していても始めは息が上がっていたのが軽くジョギングしても平気なほどになった。
こうなってくると、方法の正しさに自信がついてくる。”このまま治るのではないか”とも思えてくる。生きることに対して意欲も湧いてくる。
１月２８日手術前の診察を受ける。いつものようにスコープを鼻から入れる。
主治医が驚いたように言った。「驚いた！すごく小さくなっています。著効ですよ。これは！」
聞くと当初の腫瘍の大きさの約２０％くらいまで縮小しているらしい。
「やった！」心の中で密かにガッツポーズ。主治医は抗癌剤が効いたと思っているが、私は諸々の自然療法が効を奏したと思っている。
「これで手術はやりやすくなります。今本を書いているのですが、是非症例として活用させてほしい。」まあ、私の腫瘍でお役に立てるなら。
手術前の検査は異常なし。万全を期して手術当日を迎えることになった。
手術〜退院
手術日の２日前、２月２５日に再度入院することになった。二回目の入院ということで顔見知りの看護婦さんもおり、慣れた感じであった。
しかし不安は否めない。初めての経験。大丈夫なのか。
手術という方法を選んだ時も相当迷ったが、今もって悩んでいる。そのまま代替医療を気長にやって、体に負荷をかけないほうがいいのではないかとも考えた。
しかし、自分の性格からして、腫瘍とずっと共存することには精神的に耐えれない。一度リセットしてリスタートしたほうがいいと判断したのだ。
前日は眠れなかった。３時間くらい寝ただけだった。
大丈夫。なんとかなる。昨日の先生の診察ではさらに縮小して１�僂�らいまで小さくなっているらしいではないか！きっと成功する。自分にそう言い聞かせた。
前処置の麻酔以降はよく覚えていない。
「こんな麻酔では効かない」
「酸素マスクは嫌だ」とか色々文句を言っていたらしい。
手術は無事終了した。
目視できるガンはすべて取りきれたらしい。
術後１日目には感染のため、熱が出たが、それもなんとか収まった。
苦痛らしい苦痛は特になかった。もちろん鼻をいじったので快適であるとはいえない。
でも、自分の心が何よりも安定して、選んだ道の正しさを確信できた。
入院から１０日目、２００２年３月７日
おりしも私の誕生日に退院することができた。
今年の桜には間に合う。長い冬だった。
もちろんこれから冬が来ないとは限らない。
でも、少しだけ向き合う方法を得たような気がする。
これも家族のおかげ、両親のおかげ、病院やスタッフの方のおかげ。
そして、何よりも病そのもののおかげだ。
神様はきっとこんなことに気付かせるために病をくださったに違いない。
自分とは、人生とは、そして幸せとは何か。
今ならその問いにほんの一部だけ答えられそうな気がする。
2006年03月01日(水) 07:13:32 Modified by il3s_marusama