みどり・市民派をめざす 井奥まさきが収集した情報、書き込んだ情報を整理して公開するために作った公開用のウィキです。

 公務員をめぐる論点(制度・報酬など)が最近の地方自治政治では大きな争点になっていると思われます。今回は、比較的新しい制度である「再任用制度」について私たちの市で行われた議論を書いてみます。

再任用制度導入側の論理


 再任用制度は、平成13年(2001年)の地方公務員法改正によってあらたに生まれました。人事院の総務局生涯設計課のパンフレットによれば、平成13年(2001年)から公的年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられているとの背景が説明されています。そして、「定年(60歳)と年金支給開始年齢(60歳から65歳へと段階的に引き上げ)との間にすき間が生じないようにする」「職員が長年にわたり培ってきた能力・経験を発揮」という目的が書かれています。
  他に高砂市では
1)高齢者雇用促進法が施行され、雇用者の責務が発生していること(民間もすでに60%近くが何らかの形で導入している。)
2)再雇用制度(高砂市の場合、嘱託制度のこと)では安定した職を約束できない、より責任のある部署を担ってもらう 
 といったことが説明されました。

再任用制度にはフルタイムと短時間がある


 もう少し詳しく中身をみていきましょう。再任用制度には、フルタイム勤務(週40時間)と短時間勤務(週16時間から32時間までの範囲内の時間)の二種類があります。フルタイム勤務の職員は職員定員に換算され、短時間勤務職員では定員換算されません。
 再任用の職員は、臨時的な意味合いの強い嘱託制度よりも身分は安定しており、期末手当もあります。正規職員と同じく、職務級があります(1級、2級・・・というやつです)が、昇進はありません。
 これらのどの制度を活用するかは、各自治体の考え方によることになります。具体的には、フルタイム勤務・短時間勤務の人数、待遇(どの級数扱いにするか)といった点に違いが出ます。導入の際には、それらの予定を聞くことが必要です。

高齢者対策という説明との矛盾


私たちが通常こうした制度で想像するのは、
1)60才前に退職した人を再度雇用する 早期退職の代替え措置
2)公務員だけでなく民間に広く門戸を開いたもの というものでしょう。
しかし、実際の「再任用制度」は違います。まず、対象は公務員だけであり、60才前に退職した場合でも、再任用の対象になるのは60才以降です。逆に54歳以前退職者は対象になりません。

 さて、そもそも公務員には、労働者としての立場税金を使う立場と双方があるはずです。

 前者「労働者の権利擁護」という視点では、この制度は必要かもしれません。しかし、それも二つの考え方があります。60才以上まで働くことが幸福なのかどうか。組織平均年齢が高止まりとなり、組織全体として年齢バランスがとれなくなり、若い世代の労働者に負担がくるのではという危惧です。
 そして後者、市民からの視点で言えば、「公務員優遇」としかこの制度は見えません。
「民間の60%が高齢者対策に導入」といっても、実感とはかけ離れます。定年まで正規社員で勤める一部の人間に限った統計ではないでしょうか。また、失業者やパート労働者は考慮に入れていないのは明らかです。

退職手当の仕組みからの批判


 ちなみに、退職手当の仕組みからの批判もあります。公務員に失業保険がないのは、「身分保障」があるから・・・という説明の他に、「退職金の中に含まれているから」という前提があるからなのです。「雇用保険より条件が良いから」公務員は雇用保険法から適用除外されています。仮に、勤続年数の関係で退職手当が「退職手当+雇用保険6カ月分」より低い場合は、特別退職手当が支給されます。これは、国家公務員退職手当法 第9条10条に書いてあります。地方自治体では独自であるいは組合を設立して支給していますが、同じ条文・考え方のはずです。(兵庫県の退職手当組合は同じでした。)
 こうした実状を見ると、退職後に再任用制度を活用して年金受給まで勤めるのは「雇用保険分の二重取り」との批判が出ます。
 また、国の方で定年延長の動きもあり、その側面から「必要ないのでは」という批判もあります。

再任用を導入するとしても


 私たちの高砂市では最終的に原案撤回となりました。しかし、すでに導入されているところも多いでしょう。とはいえ、兵庫県の自治体で見ても「制度は導入しても運用は停止」などさまざまな実態があります。あなたの自治体での実態調査が必要です。
 もし導入するのならば、公務員の二つの立場である「税金を使う側」として効果のある採用を行うことが必要だと思われます。具体的には「従前の勤務実績等に基づく選考により(第28条の5)」と書かれている法律の主旨を尊重し、選考委員会を実質的に行うことが求められます。特に市民も参加した選考委員会とすることは主張する価値があります。
 また、失業保険支給相当分が加えられている退職金の6カ月分は採用を見合わせる(年金受給の半年前には完全退職する)といった運用面での工夫が必要です。
 なにより、「なぜ民間人材登用も含めた嘱託制度ではダメなのか」といった根本的な議論と市民への納得できる説明が必要だと思います。

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