みどり・市民派をめざす 井奥まさきが収集した情報、書き込んだ情報を整理して公開するために作った公開用のウィキです。

人事院勧告にもとづく、各自治体の給与削減について


各自治体では11月臨時議会を開催して、あるいは専決処分を行い、12月議会で報
告という形で2003年度の人事院勧告にもとづく給与改定(削減)を行おうとして
います。

なぜ今年に限ってこのような事態がおきたのか、どういうふうな視点から切り取るべ
きかの論点を整理してみました。
1)人事院勧告制度と自治体の給与のかかわり

地方自治法202条2により、一定規模以上の自治体には「人事委員会」をもうけ、
給与水準などもここで審査することになっています。しかし、多くの自治体では人事
委員会はなく、国の同種の制度である「人事院」による勧告制度を参考にしていま
す。
仕組みとしては、人事院が4月1日時点の民間給与を調査し、夏あたりに適正な水準
を勧告します。それにもとづき、各自治体で判断することになります。
公務員は民間水準を参考にして給与を決める方式だったわけです。
2)今までの自治体の対処

各自治体ではこの夏の報告をもとに12月議会までに労使間で交渉を行い、12月議
会に提案。4月から11月分の給与の差額は12月の期末手当で調整を行ってきまし
た。
昭和35年の勧告以来、平成13年まで本給は必ず右肩上がりでした。(手当で一部
減額になった時はあります)
それならば、「利益の遡及適用はできる」ということで問題はなく、公務員は12月
期末手当をあたかも「余分のボーナス」のようにもらえたわけです。
もう一度整理すると、こうなります。
月30万円の給与水準から32万円に上昇したとします。4月から11月までは昨年
度水準の給与をすでに支払っていた。その分の人事院勧告による伸びのプラス、すな
わち月2万円の8ヶ月分で16万円を12月期のボーナスに加算するのです。そし
て、12月以降は月々は32万円の水準で移行するというのです。
昭和49年では29.64%の伸び、期末手当0.4ヶ月の伸びをしたのですから、
その時の12月期末手当は大きなものだったようです。
いずれにしても、大きく言えば、制度としては「12月にその年度の給与水準を決め
る」ということが一貫して行われてきたわけです。
3)今年の特殊事情

今年は、二つの要因から特殊な事情が起こりました。
一つは、不景気を反映してここ2年つづくマイナスの水準であったこと。
平成11年より今までにない水準の期末手当削減が行われましたが、さらに平成14
年からついに聖域とも言える「本給削減」の勧告を行うことになりました。今年も同
じくマイナス1.1%の勧告となったわけです。
もう一つの要因は、昨年度において今まで6月、12月、3月の年3回支給されてい
た期末手当が6月、12月の支給に変更されたこと。
昨年度はマイナス部分を、12月議会で結論を出し、3月手当で調整することが可能
でした。今回はそれが不可能となったわけです。
そこで、11月臨時議会を開催し、結論を出して12月議会で調整しようとするもの
です。
4)組合の主張

これに対して、組合側は「不利益の遡及適用ではないか」と反発しています。
12月期末手当でマイナスの調整をすることは、すでに支払われた給与を「返せ」と
するようなものだと言うのです。
そもそも人事院勧告は「参考」にすぎず、機械的に適用すべきでないと言う主張もあ
ります。事実自治労が出している資料によると昨年度のある段階で1031の完全適
用団体に対して、一部実施100団体ほど、実施せず100団体ほどがあるという風
に「各自治体で考えればいい」という主張も成り立ちます。
また、そもそも論として「公務員給与が下がることによる民間給与や経済に与える影
響」という議論もあります。
5)国・県の反論 期末手当の調整だけ

国レベルでは「不利益の遡及手当」という論点に対して、平成14年11月7日衆議
院総務委員会でやり取りを行っています。
議員の質問に対して、梶田政府参考人は「今回の12月期の期末手当による調整措置
でありますが、これは法の施行日以降の将来の給与である期末手当の額を調整するも
のでございまして、改正後の給与法を遡及適用いたしまして、既に適法に支給された
給与をさかのぼって不利益に変更するものではございません。したがいまして、法律
の遡及適用に伴う問題はないというふうに考えています。」と答弁しています。
すなわち、期末手当を「たまたま」減額するのだから、遡及適応ではないというので
す。
また、それの証拠として「早期退職者(4月から11月に辞めた人)からは取らな
い」ことをあげています。
6)不利益遡及適用もありうる!?

しかも、平成14年11月14日の参議院総務委員会では、「それでは不利益の遡及
適用は絶対しないのだな」という議員の質問に対し、周到にも抜け穴も用意していま
す。
それは昭和53年7月12日の最高裁の判決によるものです。おおざっぱに言えば、
「公共の利益の場合は内容を総合的に判断して不利益遡及もありうる」としたもので
す。
とはいえ、「といいながらも、それは一般的な話であり、今回は不利益の遡及適用で
はない」というのですから、官僚答弁って本当に・・・
多分、将来どうしようもなくなった時に「不利益遡及適用もありうる」とする言い訳
を残すためでしょうね。
7)私たちの立場

「労働者の立場」に立つ政党は明快に「労働者の権利擁護」として組合側の主張にも
とづいた主張を行うでしょう。行政側は、勉強していれば5)6)の答弁を用意して
いるでしょう。では、私たちの立場は・・・私は「地域事情による」としか言いよう
がありません。
組合が圧倒的に強い場合は、かえって「税金を使われる側」としての市民の視点が必
要でしょう。組合が弱く、労働者の権利をおびやかす風潮が強く、誰もその立場で主
張しないのであれば、最低限の主張は必要でしょう。少なくとも、上の議論をふまえ
た上で自分の論理構築をすることが必要ではないかと思い、高砂市の議論を紹介しま
した。

(緊急のため、主義に反して西暦併記ができませんでした。また、細かな点は私もま
だ勉強不足です。ぜひみなさんと議論をしていきたいと思います。)

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