みどり・市民派をめざす 井奥まさきが収集した情報、書き込んだ情報を整理して公開するために作った公開用のウィキです。

尼崎で講師として講演した内容のレジュメです。

「難解?!自治体財政『誰でも判る読み方』」

〜高砂市の事例から〜
2004.10.16
兵庫県高砂市議 井奥まさき

ステップ1 基本的な流れを身につけよう!
基礎知識の収得、予算の流れ

ステップ2 予算を読むには視点が必要
何をチェックすべきか 戦略目標を持つ

ステップ3 「議員」のできること
何ができるのか 議会改革と密接につながっている

ステップ1 基本的な流れを身につけよう!


1)地方自治体の会計は1年ごとの「大福帳」「小遣い帳」である
企業などの会計は「貸借対照表」いわゆるバランスシートになっている。 自治体は「年度」ごとに縛られている「大福帳」である。
例えば、起債=借金をしても歳入=収入 となる 企業の場合は、「貸借対照表」と「損益計算書」に分かれている。  借金をすれば「カネ繰り」では収入になるが、「負債」は増える。 そして、その増減は一致する。
別の観点から言えば、土地を売り払うとする。 これは企業会計から言えば、「資産」が減り、現金収入が増える。 ところが、行政では「収入増」だけである。


 そして、1年ごとである
3月当初予算→6月補正→9月補正→12月補正→3月補正 3月31日までが会計年度。ただし、5月31日までを「出納閉鎖期間」とし、
   支払いなどをその間に行う。
ポイント1 「補正予算」などでカネの流れを追ってみよう
 また、ハコものを作る場合、企業会計には「減価償却」という考えがある
1億円のものを作った場合、20年後に建て替えるのならば、 500万円ずつ資産価値が下がり、その分お金(減価償却費)を置かね ばならない。 (実際はこんな単純ではなく、除却などの処理があるが) 退職金に関しても、企業ならば「退職金積み立て」をおいている。 しかし、行政は「財政調整基金」「各種基金」という形をとり、 上のような明確な観点を持っていない。 多くの自治体でこの点で問題を抱えている。

ポイント2 企業会計の視点をさらに加えてチェックしてみよう
(例 負債の観点、減価償却の観点)
※ちなみに現在導入されつつある「自治体バランスシート」は、基準の取り方に問題意識がなく、「とりあえず形だけ」が多い。「バランスシート」導入だけに熱心な議員が多いと思うが、制度ではなく実質が問題。



2)会計にもいろいろある
一般会計が一番の基本となるが、それと区別して「特別会計」をほとんど全部の自治体が設けている。また、「企業会計」もある。この間でお金をやりとりしている点が把握を困難にしている。ちなみに「企業会計」は貸借対象表、いわゆるバランスシートである。 さらに、市が出資している法人もある。一部は年1回の報告を義務づけられている。
例えば高砂市では 一般会計 一般会計
特別会計 国民健康保険特別会計 老人健康保険特別会計 介護保険特別会計 下水道特別会計
企業会計 水道事業会計 病院事業会計 など
出資法人 土地開発公社 施設利用振興財団 勤労福祉財団 など








3)財源構成に敏感になる
 例えば1億円の学校を建設するとする。  通常のパターンでいえば、「補助金」「補助裏起債」「一般財源」という構成になる。補助金のない場合は「起債」と「一般財源」になる。
・パターン1  補助金(4分の1=25%) 2500万円 補助裏起債(上を引いた残り4分の3に対する9割=67.5%)  6780万円 一般財源(全部の残り)720万円

・パターン2
起債(8割=80%) 8000万円 一般財源(全部の残り)2000万円
補助金に関しても、国の場合、県の場合と違いがある。上のモデルのように通常は補助金がついた方が起債充当率も有利である。そのため、「補助金がつきました!」と誇らしげに行政は言います。
チェックポイントとして、 1)補助金がついたからといってその事業そのものが必要かどうか 2)一般財源と起債の比率 3)起債に対する地方交付税の算定

4)各種指標の意味を把握する
たくさんの財政指標があるが、「指標のための指標」も多い。 個人的には「財政力指数」「起債制限比率」「経常収支比率(特に人件費比率)」を見ればいいのではないかと思う。 初期のポイントとしては、「各款の比率、伸び率」などというものもあるが、ハコモノで動くのであまり意味はない

  ポイント1 地方交付税交付金団体かどうか
 この範囲において「財政力指数」は意味がある。1.0を大幅に切る自治体に関しては「財政力指数」はほとんど意味がない
自力と言うよりは国からの動向に左右される
地方交付税交付金とは: 国が必要と思われる事業費を積み上げたもの=基準財政需要額(A) 自治体が持つ独自の収入の75%(B)
(B)―(A)が赤字の場合、国がそれを補填してくれる。 (親の仕送りのようなもの、全国どこでも同じ暮らしができるように)
しかし!国もお金がなくなってきており、最近は臨時財政対策債という 「現金の代わりに借金してもいいよ」というお金も増えている。
※こうした前提抜きに「お金が足らないのなら、儲ける手段を考えればいい」という話は成り立たない。

  ポイント2 起債制限比率が15%、20%を超えないか 将来にわたっても大丈夫か
一般的に15%が黄信号、20%が赤信号という。 長期財政計画も出させてチェックが必要
ちなみに20%を超えると「赤字再建準用団体」
ポイント3 経常収支比率 これが高い自治体は、特に「削る」議論が必要。多くは人件費が原因。
※尼崎市と高砂市はこのへんはよく似ている。
5)地方自治法に規定された予算の用語を覚える
1条1項 総額を規定 2項 歳入歳出予算 款項目節に分かれる 歳出 1款 議会費・・・ 2表 債務負担行為 3表 地方債 4表 継続費 5表 繰越明許費 

ステップ2 予算を読むには視点が必要


1)前年度と比較する(予算書を見比べる)
2)政策重点項目についてチェックをする
増額を要請する(例 学童保育の充実…など)
3)市の目玉事業をチェックする
基本的には「削る」議論となる(例 ダム建設調査費の削減…など)
4)事業の財源構成をチェック(補助金があるのかないのか…など)
5)財政議論をする(長期的展望、市のビジョン)

どうしても行政も含めて「細部」「個別」に流されがち、「視点」を心がける

ステップ3 議員のできること

基本的に議会全員が一致してようやく「大統領」たる首長に対決できる程度。現状では議会の多数を取ることすら不可能に近い。

1)情報をわかりやすくする=資料をくわしくする
地方自治法は「款項」までとしている。「説明」には義務がない。 まず、「説明」を詳しくさせる。(口頭、あるいは書き込みで) さらに「説明の資料」を丁寧にわかりやすくさせる。
これは議会だけでなく、最終的に市民にもわかりやすい。
多分、この攻防でエネルギーの大半は費やすと思われる。 ポイントとして まず所属した委員会で粘ってみる   閉会中に職員と議論をし、準備をしておいてもらう   委員長や議長につぶされないように根回しをする (場合によっては文書で申し入れ)   「口頭より文書提出させること」を心がける   
2)予算執行に注文をつける
執行にあたって裁量権がどれだけあるのかがポイント。
 例えば高砂市ではバス路線に注文をつけ、当初予算の資料から変更があった。
ハコ物なら部屋や備品の追加などは可能
執行注文の究極の形が「付帯決議」 それ以外でも「行政側の答弁を引き出す」(専門用語で担保を取る) 「委員長報告に盛り込む」
(これも「一部の委員から」と「委員会全体が一致して」とでは重みが違う)
という形で注文をつけることが可能

3)予算の根拠となる条例を否決、修正あるいは継続審議する
水道料金などが典型。通常はそれに伴い、後の補正予算で修正。

4)予算を原案撤回、あるいは議会で修正する
減額修正も「かん項」議決の問題 増額修正は「首長の予算提出権を犯す」かどうかの問題


さまざまなテーマと力関係にそって、1)〜4)( 2)でもさまざまなレベルあり )を使い分け、一歩でも前進を勝ち取っていく
その時の武器は…「理」をみがくしかない! 地方自治法を徹底的に勉強すること コンメンタール、自治六法 その自治体の状況を把握すること 例規集を読みこなす 申し合わせ事項・前例の把握 ネットワークで対抗する 「他の自治体で行っていた」「議長会でも提言している」 「議員必携にも書いてある」

最後に・・・議員をめざす皆さんへ

1)「議員になったつもり」で政策を作る
・ どうせ議員になったら毎日しなくてはいけない。
自分の興味あるテーマで
情報公開コーナー、窓口を利用して情報収集
政策立案と提言、自分の選挙に役立てる
・財政的視点を忘れずに
お金はどこから?
・ 政策と姿勢は違います
「9条護持」「明るい尼崎をつくります」だけでは「姿勢」
新人は「姿勢」中心でもいいが、ぜひ「政策」も

2)私の工夫したこと
・ 自分の特長は何か、どれが市民のニーズかを考えた
仲間ともそのことを考えた
「子ども」「国際」
・・・やがて「NPO」「図書館」「高齢者大学」
・ もし議員になったら何をするかを考えた
選挙中訴えたことでまず、第一回の一般質問を行った
市長と議会の関係の悪さを考え、議会改革案を自分なりに考えて議員になった
・街頭演説、ビラ、個々面接が連携できるように考えた 証券会社の営業にヒントを得て、ビラを配ったところに・・・
・ 信頼できる事務局長を置く、専従でスタッフを雇う
一人で基本的にやるしかないが、二人は必要
一人は全体を見渡す事務局長(特に本番)
もう一人は、事務をするスタッフ(有給)

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