PINKちゃんねる-エロパロ&文章創作板「依存スレッド」まとめページです since2009/05/10

作者:◆9Wywbi1EYAdN氏


とある研究室で2人の若い男女が何かを造っていた。

「ちょっと。それ取ってくれる?」
「はい、これだろ?」
「そこのも」
「ほれ」
「そうそう。 これでこうして …っと、あとさっきの計算結果は?」
「えーっと……端から40mmだな。あと2〜3mm左でもOKだ。」
「そう?それじゃあここをこうして。宮都(ミヤト)、ちょっと裏からおさえといてくれる?」
「わかった。え〜っと、12mmのスパナは何処やったかな…」
「あとそれもやっといてくれる?」
「大丈夫。明日穴を開けるから。それよりもそれ大丈夫か?」
「ああ、髪?これくらい平気」


そして少し離れた場所には男が2人。
温厚そうな20歳程の学生と、この研究室の主である40歳程の教授。

「あの2人、相変わらずいろいろやってるな。いつも2人っきりで」
と教授が学生に話しかける。学生はパソコンから目を離し
「ええ。しかし今度は一体何を造ってるんでしょうかね」
「前回は…たしか発電機だったっか。オープンスクール用の。行列出来てただろ?」
「ああ、自転車漕ぐと電球が光る奴でしたね」
「最初は見学に来る高校生には子供っぽいと思って止めたんだが、中々に好評だったな」
「こんな研究室にあそこまでの行列が出来たんですからね〜」
教授は頷きかけて
「どういう意味だ?返答次第では研究室から永久に出て行ってもらうぞ?」
と言ったが、学生は真面目くさった表情で「冗談です」と返す。
「まぁ取り敢えず2人に聞いてみますか。」学生は笑いながら2人に声をかけに行く。

「2人とも疲れただろう?お菓子と紅茶でもどうだい?」
その声に先ほど宮都と呼ばれた男、というよりも少年が反応する
「ん? …ああ、もうこんな時間だったんですか。准(ジュン)、今日はもう終わりにしよう」
宮都は一緒に作業していた少女に声をかける。しかし女は渋い顔をしながら
「え〜今いいとこなのに。」
と、まだまだ作業を続けたいことをアピールする。しかし
「すでに今日のノルマは終わってるだろ。もう少し余裕を持ってもいいぐらいなんだし、三田(ミタ)先輩の誘いを断るのももうしわけないだろ?」
と優しく諭され、作業を中断し、3人一緒に教授の下へと向かう。

その後しばらく4人で談笑をしたがここで三田が本題にはいった。
「ところで、小宮(コミヤ)君と夏目(ナツメ)さんは一体何を造っているんだい?」
「ああ。気になって夜も眠れない。このままでは俺も過労死してしまう。」
教授は大袈裟に両手を上げ、いかにも疲れた表情をする。宮都はそれを見て少し笑うと、こちらも大袈裟に観念したような表情を作り
「死なれては困ります。この研究室、1番規則が甘いので居心地がいいんですから。」
と言うと、准もそれに続き
「お菓子持ち込み放題、テレビ見放題、遊び放題、何でもし放題ですからね」と続けた。
「まぁ、それはこの部屋の主に似たんでしょうね。この前も期末試験で授業の感想だけで60点の問題出したでしょう?武田(タケダ)教授の微生物概論簡単すぎって専らの噂ですよ」
三田は呆れたように言ったが当の武田はそれを聞いて満足そうに
「そうか!それは良かった」というが三田は
「そんなんじゃクビになりますよ!どうしてそういい加減なんですか」
「いいか、三田。我々教授とは本来、学生たちの未来のために様々なことを教えることだ。しかしそれには学生たちの意欲・関心が無ければならない。
しかし悲しいことに今の学生のほとんどはそのようなものを持っていないんだ。だから私は講義を通して皆にその気持ちを育ててもらおうと思ってだな…」
「で? 本音は?」「採点が楽!!さらに全員が単位を取ってくれるから俺の教授としての株も上がる!!まさに一石2鳥ではないか」
宮都と准は2人して笑っているが三田はというと、突っ込む気も失せたのか頭を抱えてため息をついている。

「それで?いったい何を造っているんだ?」
武田は笑いながらもう一度聞いた。なんだかんだで興味があるらしい。
准と宮都は顔を見合わせて同時にうなずくと宮都が口を開いた。
「綿あめ機です」
「「は?」」
これには唸っていた三田はおろか武田までもが素っ頓狂な声を上げる。
「あれ?ご存じないんですか。真ん中の筒にザラメを入れて回転させるやつですよ」
「いや、そうではなくて…なぜそんなものを?」
「だいたい俺の研究室は微生物がメインなんだが…」
2人して怪訝な顔を宮都と准にむける。それに対して准が
「だってこの研究室私たち4人しかいないじゃないですか。それだと少し淋しいし。ですから面白いものを造って皆さんにこの研究室に興味を持ってもらいたくて」と笑いながら言う。10人中10人がつられて微笑んでしまいそうな暖かい笑顔だ。それを聞いた武田は
「聞いたか三田!!これが俺の講義の成果だ!!
こんなに可愛い研究生2人に想われて…俺は幸せだ!!」
武田は感激の余り腕を大きく振り回し三田に大演説をした。その結果、テーブルの上のティーカップが落ちて割れたため宮都がこそこそと掃除を始める。
「おっと!スマン。だがこれ程までに我が研究室のことを思ってくれていたとは…」すでに涙ぐんでいる。これまでどんな教員生活を送ってきたのか…
その後酒を持ち出し飲み始めた武田。ハイテンションのまま談笑が再び行われこの後1時間以上も続いたのだった。


「それでは私たちはもうそろそろ帰ります」21時を少し過ぎた頃、宮都が帰り支度を始める。それにつられて准も帰り支度を始めた。
「そうかい?お疲れ様。また明日」三田は微笑みながら宮都と准に返す。
「武田教授はどうします?すっかり眠っちゃってますけど」准は心配そうに聞くが、三田は微笑んだまま
「どうせもう少し残るつもりだったから。僕が起こすから大丈夫」
と返した。結局この研究室には武田想いの学生は3人いるのである。

研究室から出た2人は研究棟に配置してあるロッカールームに荷物を取りに行く。廊下は冷え冷えとしていて少し薄気味悪い。
「暗いね」「まぁ節電中だからな」
「手、握っていい?」「なんだ、未だに暗い所駄目なのか?」
「え……う、うん」
准は一瞬何かを言いかけたが、思い直したようだ。そのまま宮都に話を合わせる。
「ほら、いくらでも掴まってくれ」
「うん。ありがと」
2人は荷物を取ると研究棟を出る。ここは森に囲まれているのでより一層不気味である。
一応明かりはあるのだが、それでも虫やフクロウの鳴き声などを聞いてしまうと…
「何回通ってもやっぱり不気味ね」
「確かにな。ほら、ちゃんと握って」「うん」
宮都は准の気を紛らわせるために話しかける。
「准、寒くないか?」「ううん。全然平気」
「そうか。それにしても最近めっきり寒くなったな。地球温暖化なんて嘘なんじゃないか?」
「そうね。まぁこうやってくっつく口実が出来るからうれしい限りなんだけど」
「別に口実なんていらないだろ、これくらい幼馴染なんだから普通だし」
「…う、うん。でもやっぱり理由は欲しいじゃない。」
准は何やら複雑な顔をしている。しかし宮都は気付かず、
「ああ。それにしても武田教授があそこまで感激するとは…驚いたなぁ。」
「それだけ宮都の発想が良かったってことでしょ。
それに綿あめ機なんて少し楽しみだし。半年後はもう少し増えるかなぁ」
人数が増え賑やかになっている所を想像したのか、准の顔がほやほやっとする。その顔を見た宮都もつられて微笑んでしまう。
そうして他愛無い雑談をしていると
「よし。抜けたぞ」
「え?あ、本当だ…」
実際、距離はそんなに無いので呆気ないほどに早く抜け出せた。
「よし。もう平気だろ?」
宮都は准の手を離すと歩きだす。
「あ……」「ん?どうした?」
「いや、何でもない」「…?」

そのまま大学を出て数十分後、最寄りの駅に到着した。
「そういえば今日でしょ?例の日。ちゃんと準備出来てるの?」
駅で電車を待っている最中に准は宮都に聞く。
「もちろんだ。俺を誰だと思っている?ちゃんとあいつに似合いそうなものをきちんと予約してある。
帰りに受け取りに行くことも伝えてあるから大丈夫だ」顔をほころばせながらそう答えた。
「本当に妹想いね。妹さんが羨ましいな〜」
「まぁな。大事な妹の為なんだから」
「その割には妹さんにはその愛情が伝わっていないみたいじゃない?」
「誰にでも反抗期というものはある。決して俺は嫌われてはいないと思うぞ。いや嫌われていない!」そう断言する宮都。
ふーん、と少し冷たい返事をする准。それが悔しさから来るものだと宮都は気付かない。
この下校中だけは私の事だけを見て欲しい。そんな独占欲が生まれる。
もちろん、自分から妹の話をした事はすっかり失念している。
「ねぇ宮都。駅から家までおんぶして?」
「ん?足でも痛めたか?」
「少し疲れちゃったから…ダメ?」
「ダメ」
「酷い!こんな美少女が頼んでるのに」
「そんな我儘イチイチ聞いていたらつけあがっちゃうだろ。
言うことを聞かない猫みたいに」
「にゃぁ〜」「痛い!」猫パンチが宮都の頭に炸裂した。
(全く、しょうがない奴)
「わかった、わかった。おんぶしてやるよ」
やれやれ顔を作り宮都がそう言うと准がいきなり宮都の背中に飛び乗った。
「うん。ありがと」
「なぜここで飛び乗るんだよ」
「電車が来るまでの時間も追加」宮都からは見えないがものすごい幸せそうな顔をしている准。
宮都はやれやれといった仕草をしながらも幼馴染の重みを感じながら電車が来るまでの短い時間を待つのであった。

現在21時40分。電車内は人も疎らでそのほとんどが眠っていた。
そんななか、宮都は眠る事はおろか座ることも出来なかった。なぜなら…
「ん〜 スースー えへへ〜」
背中で大切な幼馴染が幸せそうな表情で眠っているからだ。(宮都からは見えないが)

結局あの後、電車待ちの間に准は眠ってしまい少し揺すっても全く起きる気配がなかったのだ。
最初は無理にでも起こそうと思ったが、強く揺するとまるで赤子のように泣きそうになったので断念した。
それにこの状況は宮都も嫌いではない。


2人は最寄りの駅に到着した。改札口では駅員に事情を説明して、定期を出す必要がなかった。
何故か駅員がニヤニヤしていた気がする。

准の家までの約10分の道のりを宮都は黙々と歩いた。
静かに歩き、なるべく揺らさないように。
やがて宮都は目的の家の前にたどり着いた。
木造で2階建ての一軒家だ。表札には『夏目』と記されている。准の家だ。
宮都は呼び鈴を鳴らした。すると「ハ〜イ」と返事があり、30歳位と思われる女性が出て来た。
身長は170cmほど。宮都より少し高い。准と同じ金髪を腰まで伸ばしている。アメリカ出身で国際結婚をした人。平たく言えば准の母親だ。
「あら、宮都君。こんばんは」
女性は微笑みながら言う。准と同じ見る者を安心させる笑顔だ。
「こんばんは、エリザさん」
宮都も返事を返す。
「あらあら、准ったらまた眠っちゃったの?いつもごめんなさい。」
「いえ、これは俺がやりたくてやっている事ですから。気にしないでください」
「そう言ってもらえると助かるわ。ありがとう。良かったらご飯でもどう?智久(トモヒサ)さんも会いたがっているでしょうし」
「ありがとうございます。でも今日はご遠慮させて頂きます。この後用事があるので」
「そう?それじゃあまた今度招待するわね」
「楽しみにしてます」
エリザは強引な性格だが、宮都に対しては決して無理に誘ったりしない。このようなところに宮都は好感を持っていた。
宮都はフッと笑うと、エリザに准を渡そうとするが、准は首にガッチリとしがみついて離れない。
「准、起きなさい。もう家よ。いつまでもしがみついちゃ迷惑でしょ」と強めに准を揺する。
すると准は寝ぼけ眼ながらも一応起きたようで、フラフラした足取りでエリザに掴まった。
「それじゃあ俺はこれで。准、また明日な」と帰ろうとする。

すると………ドサッ
いきなり後ろから准に抱きつかれた。しかも涙目で。
「イヤッ!まだ一緒にいたい!!」
今まで眠っていたとは思えない程の声で叫ばれた。しかも耳元で。
宮都はキンキンする耳を押さえながら准を抱えて
「もう22時過ぎてるんだ。また明日会えるだろ?」
と言うが准は
「泊まってって!私から離れないで!」
聞く耳持たずである。
准はいつも寝起きはこうなるのだ。それも、宮都に対してだけ。親にもこんな態度をとったことは一度もない。
「今日は俺も用事があるんだから。プレゼントも取りに行かなくちゃならないし」
そして一息ついて
「それにこの前も泊まったばっかりだろ。夏目さんにそんなに迷惑はかけられない」
「イヤ!私を置いていかないで。何でもするから!なんで私をいじめて楽しんでどっか行っちゃうの?」
寝起きでさらに泣いているので、文法もメチャクチャである。
しかし宮都は冷静に、それでいて微笑みながら
「また明日だ。たった一回寝るだけで会えるんだから。な?
俺も明日准に会えるのを楽しみにしてるよ」
准はまだ不服そうだったが
「明日、迎えに来てくれる?」
と涙目で聞いて来た。
「もちろん。いつもそうだろ?」
そして宮都は不敵な笑みを浮かべながら言った。
「俺が今まで約束を破ったことがあったか?」

この返事に安心したのか准は軽く頷くとそのまま眠ってしまった。
「そろそろいいかしら?」
エリザが遠慮がちに声をかけて来た。軽く苦笑している。
「いつもいつもごめんなさい。普段はこんな我儘言わないんだけどねぇ」
「大丈夫ですよ。生まれた時からずっと一緒にいるんですから。全部わかってます」
宮都は表情に陰りを見せて
「それに…准には大きな借りがあります。一生かけて返さなくてはいけない大きな借りが。それに比べたら………」
それを聞くとエリザは少し怒って口調で
「そんなこと言わないで。今ではもう大丈夫なんでしょ?」
「ええ」
会話が途切れる。そんな中で准の寝息だけが規則正しく聞こえる……
「それじゃ、今度こそ准を預かるわね。本当にありがとう」
エリザは少し大きめの明るい声を出す。気を使ったらしい。
そのまま宮都に近づき准を支える。

宮都は今度こそ准をエリザに預けると礼をして夏目家を後にする。
「『置いていかないで』か……
俺はあの時……どんなふうに周りから見られたんだろうな…」
ぽつりと呟く。宮都は何かを思案していたが、しばらくして溜息を吐くと歩きだす。
「……………………寒いな」
彼は大事な妹のためにアクセサリーショップに向かって歩いて行った。

続く?



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