PINKちゃんねる-エロパロ&文章創作板「依存スレッド」まとめページです since2009/05/10

作者:4-263氏

 京介に拾われてはや二週間。季節は徐々に移り変わりを見せはじめ、じとりと汗ばむような日が続いていた。
 小萩は左脚に巻かれた布に手をやる。折り込んだ端からするするとほどいていく。
 いつもは京介に巻きなおしてもらっていたから、一人でほどくのは初めてであった。布を全て取り去ると、小萩はその場で立ち上がった。左脚には痛みも違和感もない。
(治ってしまった)
 へたり込みそうになるのをぐっとこらえる。
 京介に言おうか黙っていようか、考えた。黙っていれば、一日や二日は長く一緒に居られよう。
(その後はどうなる)
 やはり、小萩はここを去らねばならなくなる。また、道行く人の懐から財布をかすめ、名も知らぬ男に抱かれて、一人で生きていかなければならない。
 京介が自分の名を呼ぶ声を思い出す。その優しい声音に息を詰まらせた。それに慣れてしまった小萩は、もはや一人ぼっちで生きることに耐えられなかった。小萩は自虐的に唇を歪める。
(贅沢な体になったものだ)
 深い暗闇でずっと一人であったならばよかったのに、京介に光を与えられてしまった。自分が盲目ではないことに気が付いてしまった。暗闇を這いずっていれば、小萩はずっと自分は盲目だと信じて疑わなかっただろう。きっと、それはそれで幸せだったのだ。
 しかし光を知り、目に気付いた自分はもはや暗闇で生きることは叶わない。光の記憶を持ったまま、暗闇に落ちるのは怖い。
 両の足を踏みしめながら表へ出てみると、どんよりとした曇り空が広がっていた。湿り気を帯びた温い風が頬を撫でる。着物の裾が湿っぽく脚にまとわりついてきて気持ちが悪かった。
 かつては大店の暖簾がかかっていたという出入り口は既に面影すらない。小萩は黒く汚れた柱をするりと指でなぞる。
 向こうに、京介の姿を見つけた。見知らぬ綺麗な女性と話をしていて、胸が締め付けられたように痛んだ。
 小萩にとっては、京介は唯一無二である。しかし京介にとって、小萩は多数の知り合いの中の一人でしかないのだろう。小萩が居なくても、京介の生活には何の支障もない。
 そんなことは最初から分かっていたはずなのに、やりきれない気持ちになった。
 話し込んでいた様子の京介が、小萩に気が付いて視線を向ける。その後、女性と二言三言交わすとこちらへ足を向けてきた。とっさに逃げてしまいそうになるのを必死で我慢して小萩は竦んだように立つ。
「ただいま」
 京介はいつものように小萩に声をかけた。
「おかえりなさい」
 小萩は京介の着物の袖を握る。そうしていないと、頭がぐらぐらとして倒れてしまいそうだった。
 ぽつりぽつりと頬を水が伝う。もしかして、泣いてしまったのだろうかと頬に手をやる。
「中に入ろうか。雨が降ってきた」
 京介の言葉に杞憂を自嘲し空を仰ぐ。どろりとした雲が耐えきれなくなったかのように雨粒をこぼしていた。

 にわかに強くなる雨足に、家の雨戸を閉めてまわる。まわると言っても大きいのは建物ばかりで、実際使っているのは一部の部屋ばかりであるからほとんどの雨戸は閉めっぱなしだ。
 薄暗い室内で、紙を文机に広げている京介の背後に、足音を忍ばせて近づく。
「京介さん」
 京介は肩を跳ね上がらせて驚き、筆を取り落とした。紙にじわじわと墨が滲む。
「あ、ごめんなさい」
 転がり落ちようとする筆を拾おうと文机に近寄ると、京介は隠すように文机の上の紙を纏める。
「ううん、大丈夫だよ。ああ、雨戸閉めてくれてありがとう」
 なんとなく、その挙動に違和感を感じた。
「京介さん、あの」
 首を傾げ、どうしたのと目で問う京介に小萩は俯きがちに言葉を紡ぐ。
「あの……、足、治りました」
 京介はそう、と一瞬目を伏せた。それから「それは良かった」と笑う。
 小萩は京介と視線を合わせるように膝をつき、京介の首に腕を回す。
「小萩?」
 困惑したように、しかし確かに自身の名を呼ぶその唇に唇を重ねた。
 口内に舌を差し入れ、上顎を舐め、歯列をなぞる。ぴちゃぴちゃと音をたてて唾液吸い上げる。
「……ぷは」
 我を忘れて危うく酸欠になりかけた。呆然とする京介の口の端を垂れる、どちらのものとも知れない唾液を舌でざらりと舐めあげる。
 何か言いかけた京介の口を塞ぐように、もう一度唇を重ねた。唇を食み、舌を弄ぶ。
 どうせ、いずれはここを去らねばならない。大人しくいなくなるくらいなら、嫌われてもいいから、より近く京介を感じたかった。
 「女にはここぞって決断しなきゃないときがあンのよ」と、十ばかりの小萩を置いて男を追った母に、いい印象は持っていない。生きているか死んでいるかも知らないし興味もない。
 しかし言葉の意味だけは、やっと分かった気がした。
 京介の着物の間に手を忍ばせ、下着の上から陰茎をさする。既に僅かな熱を持ち膨らみはじめたそれに、小さく笑みを零した。
「……小萩っ!」
 咎めるように名を呼ぶ京介にも笑ってみせる。
「嫌なら、振り払ってもいいですよ」
 男ならば容易には逆らえない性欲を質にとった狡い言葉だ。案の定、京介は言葉に詰まる。
 京介の耳朶を食み、左手で帯を緩めながら右手は陰茎をさすり続ける。布の上から形を確かめるように、指先でなぞった。
 京介の荒い息を間近で聞きながら、小萩は下腹部がどんどん熱くなるのを感じる。脚の間が切なく疼く。
 京介のものを入れたら、きっとどうしようもなく幸せだ。欠けた何かを埋めるような幸福感を夢想し、小萩は内股を擦り合わせた。 布の下で張り詰めていく陰茎を意識させるように強く指先で押す。
「酷い男。女にこんなことまでさせるなんて」
 京介の耳元でくつくつと笑う。小萩は京介の望むようにはなれなかった。子供のようにと言われても理解できない。
 所詮、自分は女で京介は男だ。女の自分が、愛しい男の陰茎を体内に穿たれたいと願って何が悪い。
 着物を押さえていた帯を緩められ肌蹴た京介の胸元に唇をよせる。二三度口づけ、首筋に顔をうずめた。
「京介さんは私のことを子供のようだと言いましたけど、私は京介さんを父親のように思ったことはないです」
 首筋に何度も口づけながらそう告げる。
「だから、こんなことだって出来るんです」
 刺激をやわらげていた下着を片手で器用にほどいていく。緩んだ下着を熱り立つ陰茎が持ち上げた。
 右手で上下に扱き上げながら、固く立ち上がるそれの血管の一本まで記憶しようと見つめる。
「京介さん、好きです。大好き。本当は、ずっと一緒に居たかった」
 小萩は着物を緩めて脚を広げ、反り返る陰茎に跨り腰を下ろした。




←前話に戻る

次話に進む→

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Wiki内検索

累計依存者数

人!

現在名が閲覧中