最終更新: izon_matome 2010年02月18日(木) 05:42:22履歴
作者:6-308氏
俺……白澄秀(しらずみ しげる)が中学を卒業して数日経ったある日のことだ。彼女……黒崎綾音(くろさき あやね)が家に来たのは。
黒崎綾音は正直気味が悪く、まるで幽霊のようだった。長く綺麗な黒髪も整えられることもなく、髪からたまに覗く目にも生気は宿らず。ただ存在しているだけ、死んでいないだけとしか表現できないありさまだった。
彼女が何故家に来たのか? 俺は勿論両親に聞いた。理由は両親の親しい友人であり、彼女の両親である人が事故で死に、親戚がいなかった為人の良い両親が引き取ったらしい。
結局俺はさすがに気味が悪いから追い出してくれ等と我侭言えずにとりあえず彼女によろしくと言って自分の部屋へ戻った。
その日の夕食。彼女が着たからかいつもより豪華な食事だった。ただ、主賓である彼女がまだ到着していない。
「秀。綾音ちゃんを呼んで来てくれない?」
「……分かった」
正直彼女と関わるのは極力避けたかったが、これから一緒に住むのだ。そうも言ってられないだろう。
「……黒崎さん。ご飯だぞ」
俺の隣りにある彼女の部屋(元・空き部屋)をノックして返事を待つ。返事が無いので再びノックして呼びかける。
「……黒崎さん。……入るぞ?」
寝ているのかもしれないので一回断りをいれてドアノブを捻る。幸い鍵は掛かってなかった。
「……黒崎さん? 電気すらつけないでどうした?」
電気をつけてみると、彼女はベッドに座ったままだった。トランクもそのままなので部屋に入ってからずっとそのままなのだろう。
「黒崎さん? 父さんと母さんが待ってるからとりあえず来なよ」
俺は手を取って立ち上がらせた。そのまま引っ張って食事場まで誘導。
「それじゃ揃ったところで、いただきます」
父さんの号令で食べ始める。ただ黒崎さんは箸すら持っていない。
「どうしたの? 嫌いな物あった?」
母さんが心配そうに黒崎さんに聞く。しかし無反応。
「食欲が無いのかい?」
父さんも心配そうに聞く。やはり無反応。
俺は我関せずとただ箸を進めるばかり。
「……困ったわね。食べないと体に悪いわよ?」
「ちょっとだけでも食べて……ね?」
二人とも必死に構うが無反応な彼女。やれやれ。
「……あ〜ん」
試しに具を一つ摘んで彼女の口元まで持っていってみた。無反応だが口に当てると口を開けたのでそのまま入れる。
「おいしいか?」
やはり無反応の彼女だが、口は動かしている。飲み込むのを待ってから次はご飯を食べさせてみる。次は口元に持っていっただけで口を開けたので放り込む。
それからいつもの倍以上の時間をかけて夕食は終わりを迎えた。
次話に進む→
俺……白澄秀(しらずみ しげる)が中学を卒業して数日経ったある日のことだ。彼女……黒崎綾音(くろさき あやね)が家に来たのは。
黒崎綾音は正直気味が悪く、まるで幽霊のようだった。長く綺麗な黒髪も整えられることもなく、髪からたまに覗く目にも生気は宿らず。ただ存在しているだけ、死んでいないだけとしか表現できないありさまだった。
彼女が何故家に来たのか? 俺は勿論両親に聞いた。理由は両親の親しい友人であり、彼女の両親である人が事故で死に、親戚がいなかった為人の良い両親が引き取ったらしい。
結局俺はさすがに気味が悪いから追い出してくれ等と我侭言えずにとりあえず彼女によろしくと言って自分の部屋へ戻った。
その日の夕食。彼女が着たからかいつもより豪華な食事だった。ただ、主賓である彼女がまだ到着していない。
「秀。綾音ちゃんを呼んで来てくれない?」
「……分かった」
正直彼女と関わるのは極力避けたかったが、これから一緒に住むのだ。そうも言ってられないだろう。
「……黒崎さん。ご飯だぞ」
俺の隣りにある彼女の部屋(元・空き部屋)をノックして返事を待つ。返事が無いので再びノックして呼びかける。
「……黒崎さん。……入るぞ?」
寝ているのかもしれないので一回断りをいれてドアノブを捻る。幸い鍵は掛かってなかった。
「……黒崎さん? 電気すらつけないでどうした?」
電気をつけてみると、彼女はベッドに座ったままだった。トランクもそのままなので部屋に入ってからずっとそのままなのだろう。
「黒崎さん? 父さんと母さんが待ってるからとりあえず来なよ」
俺は手を取って立ち上がらせた。そのまま引っ張って食事場まで誘導。
「それじゃ揃ったところで、いただきます」
父さんの号令で食べ始める。ただ黒崎さんは箸すら持っていない。
「どうしたの? 嫌いな物あった?」
母さんが心配そうに黒崎さんに聞く。しかし無反応。
「食欲が無いのかい?」
父さんも心配そうに聞く。やはり無反応。
俺は我関せずとただ箸を進めるばかり。
「……困ったわね。食べないと体に悪いわよ?」
「ちょっとだけでも食べて……ね?」
二人とも必死に構うが無反応な彼女。やれやれ。
「……あ〜ん」
試しに具を一つ摘んで彼女の口元まで持っていってみた。無反応だが口に当てると口を開けたのでそのまま入れる。
「おいしいか?」
やはり無反応の彼女だが、口は動かしている。飲み込むのを待ってから次はご飯を食べさせてみる。次は口元に持っていっただけで口を開けたので放り込む。
それからいつもの倍以上の時間をかけて夕食は終わりを迎えた。
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