PINKちゃんねる-エロパロ&文章創作板「依存スレッド」まとめページです since2009/05/10

作者:1-650氏

IN THE BLUE

映画が好きだった。学校から帰ってきて、眠るまで。学校の無い日はほとんど見続けていた。
ジャンルや監督、俳優などにこだわりは無かった。この部屋の同居人もよく一緒に見たりはするが、
良く分からない、と言って寝てしまう事が殆どなので、寂しくもあった。
そして、僕はいつも通り映画を見続けようとして、背中に重みを感じ、その思考は打ち切られた。「ミカ。どうしたんだい」
長い髪が僕の体にかかり、鬱陶しい。今年で19になる女の子とは思えない、拍子抜けするほど軽い、彼女の矮躯。
「眠いの」そのまましなだれかかる様に、俺に身を任せるミカ。「ベッドに行けよ」僕は体にかかる髪を愛でながら言う。
そうしている間にも、フィルムは進んで行く。フィルムの中の世界だけが、この部屋の中で唯一、活きている部分だ。
寝にくくないのだろうか、と軽く心配はありつつだが、思考は目の前のフィルムに集中した。
ビアーを口に含んだ役者は、そのままカメラに向かってそれを吹き出す。シーンが変わる。
これから、死んで行くふたり。悲しいそれは、だけど、一番美しい。死に際に見せるその光だけが。
そしてこの世界に等しい。薄れて行くその存在が。
その車は工場へと向かう。フラッシュバックする記憶、その栄華。いまは廃れ地に落ち砕けた栄光。
「さくちゃん」背中に自縛霊よろしく張り付いたミカが揺れる。「……起きてたんだ」
「寝てるとでも思ったの? あ、でも油断してるさくちゃんも、もえー」
ミカの重みが揺れる。背中で、とくん、とくんと鼓動に合わせてただ揺れる。
「油断なんかしてない」ささやかな重みが消える。そしてそれが移動して、僕の目の前に立った。
「さくちゃん」「見えないんだけど」ミカは薄い唇を尖らせ、僕をじろとにらむ。
「あたしより映画? 」ミカは眉を寄せる。そして、笑う。
くるくると変わる表情に、僕はあの青いフィルムの売女を連想した。
「泣くと思った? ねぇ。まさか」言って、それより映画とあたし――と、
また言いかけたので、僕はミカの手を取って半ば無理矢理に、自分の膝に座らせた。
「なぁに」幼いその顔と体。なのになぜか、そう言う横顔がとても妖しく、ひどく艶やかに見えた。
「ミカ」僕の手は熱を帯びている。いつもならば冷たく、死んでいる様だと揶揄されるその肌。
それが熱を持っている事がひどく汚らわしいような気がする。そんな感覚を打ち消す様、僕はミカに触れる。
「ぃや……」薄いスカートの中手を入れて、短いキスをする。その細いもも肉に優しく触る。ガラス細工を扱うように。
「…………さくのばか」ささやいて僕の顔に指を走らせるミカの表情はどこか熱っぽい。
この部屋に彼女が入って来た時から、求めているだろうとわかっていた。
だから、僕はそれに応える。向きなおったその躯に触れ続ける。
「脱がすよ」言うなり僕は少女を軽く持ち上げるようにして、スカートをするっと取り去る。
ピンク色の、豪奢な肌着を視界の端にとらえる。「へ、へ…変態」「ひどい言い様だ」
ミカは口をぱくぱくさせる。スカートから脱がせた事を怒っているらしかったので、その口を僕の口で塞いだ。
「んむっ!…………へんたい」そういうと僕との密着面積を少なくした姫君は、自分で上着を剥いだ。
「…………」僕は開きかけた口を閉ざす。

「やぁだ、見つめちゃって」下着だけになったミカ。何度も見たはずのその姿に、みとれた。
思えばこの奇妙な生活も長い。ミカに出会って、自然に惹かれあった。そこまでは、健全な恋だった。
きっと、どこかで間違った。間違ってしまった二人は、自分たちだけの楽園を作り上げた。
「さくちゃん、い、いいけど」生まれたままの姿で、少女ははにかんだ。
けして、魅力的とは言いがたいその肢体が、しかし僕には天使に見えた。
何かを呟いて少女の隅々まで触れる。意識ここにあらず、というふうを装って。
すべらかな肌、ささやかな膨らみを撫で下ろし、その下まで。
「ん……」少し顔を俯かせて恥じらうミカの視線は、どこか儚げだった。
口づけをする。ミカが僕の目蓋を舐め、熱い息とともに言葉を吐いた。
「いつも泣きそうな顔するよね」

フィルムが終わりを告げた。

何度も何度も貪りあって、汚れたシーツや、溜まった洗濯物をランドリーへ持って行く。
姫君は疲れて寝たようなので、その隙を見て。
ドラム式の層のなか、洗濯物は回り続けて、汚れは薄れて行く。
みつめる。回り続ける。ぐるぐると、ぐるぐると。なぜか泣きそうになる。
吐きそうになって、嗚咽が漏れる。

「さくちゃん……? 泣いてるの? 」
ぼろぼろの顔でランドリーの入り口を見上げる。
そこには、大きすぎるカーディガンを羽織った、小柄すぎる少女がいた。
「ミカ」「どこに行ったかと思ったの。さがし、ぅあっ!」
僕は少女に駆け寄って抱きついていた。
少女はたっぷり黙ってから、悟ったように、その薄い胸の中にある頭を撫でながら言う。
「……なんだ。いいよ、さくちゃんはほんとに甘えんぼさんだね」
「……ん」
僕はその評を甘んじて受ける事にした。

帰ったら、映画を見よう。甘いラヴストーリーを。
ミカにも分かるような、単純なラヴストーリーを見よう。



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