コムスン問題-1

グッドウィルの「介護」譲渡、きょう交渉入り…30社名乗り
介護事業所指定の虚偽申請などが明るみに出たグッドウィル・グループは13日、臨時取締役会を開き、「コムスン」を含むすべての介護事業を、外部に売却する方針を正式に決めた。コムスンの樋口公一社長は決定後、厚生労働省を訪れ、コムスンなど傘下6社が行っている介護事業から全面撤退する方針を報告した。

 グッドウィルの折口雅博会長は同日夜、譲渡先について「約30社から申し込みが来ている。明日こちらから連絡して(交渉の)約束をする」と述べ、14日に交渉入りする考えを示した。

 優先順位は介護事業を一括して引き受ける同業他社が高いとし、7月末までに決定する意向を表明した。

 一括譲渡に積極的な介護最大手のニチイ学館について「意向は報道を通じて知っている。(交渉日程が)明日以降組まれていく」と交渉に意欲を見せた。老人ホーム事業の買収に前向きな居酒屋チェーンのワタミについても「訪問介護などもやろうと思えばできるのではないか」とし、一括譲渡が可能な有力候補になりうるとの考えを示した。

 厚労省への報告で樋口社長は、コムスンは来年3月末まで介護サービスを続け、来年4月以降のできるだけ早期に、介護の実績と信用のある外部企業に譲渡する方針を伝えた。

 これに対し、厚労省の阿曽沼慎司・老健局長は

〈1〉3月末まで利用者へのサービスや従業員の雇用を確保する
〈2〉譲渡先は法令順守を徹底した企業とする
〈3〉関係各方面、都道府県の意見もよく聞いて決める

――の3点に注意し、事業譲渡を進めるよう指導した。

介護の一括譲渡厳しく…地方切り捨ての懸念も

 グッドウィル・グループの介護事業からの撤退が13日、正式に決まった。譲渡を見越した企業が「受け皿」に次々名乗りを上げているが、この機会に得意分野を拡大しようという思惑も見え隠れし、グループが望む事業の一括譲渡が実現するかどうかは不透明だ。大手の退場に、「介護難民」を出さずにスムーズな移行が実現するのか。自治体や利用者の不安は尽きない。

 「できればすべてまとめてがベスト。どうしても難しいなら事業ごともあるかもしれないが、一括譲渡が理想だ」。13日、厚生労働省に今後の対応方針を報告したコムスンの樋口公一社長は、記者会見でグッドウィル・グループの介護事業について、一括譲渡を目指すことを明言した。

 しかし、グループの介護事業買収に名乗りを上げた企業の多くは、得意分野の強化が狙いで、うまみのある事業の争奪戦となりそうな気配だ。通所介護など施設介護事業の買収を目指す「ツクイ」、認知症の高齢者を介護する「グループホーム事業」に意欲を示す「セントケア・ホールディング」、有料老人ホームの買収を希望する「ワタミ」や「ベネッセコーポレーション」……。

 「引く手あまた」のように見えるが、企業論理が優先されれば、離島や山間部が切り捨てられる懸念はぬぐえない。

 12日に開かれた全国の都道府県などの介護保険担当者の会議では、買収話も飛び交う中で不安の声が漏れた。コムスン以外の訪問介護事業所が休止中の利尻富士町などを抱える北海道の担当者は「いろいろな事態に備えないと」と話す。

 山梨県の担当者は「認知症の利用者は、ヘルパーが変わると不安を感じて具合が悪くなりやすい。コムスンの人材を生かす形が一番」と注文。訪問介護の一括買収を希望する「ニチイ学館」の事業所が十数か所ある秋田県の担当者は「同社とコムスンの事業所のエリアが重なるケースがある。統合で、ヘルパーの配置も再編され、利用者がなじみのヘルパーに頼めなくなるのでは」と心配する。

 コムスンは7月末までに事業移行計画を示すよう求められているが、利用者本位の受け皿が用意されるためには、厚労省の指導力が不可欠だ。大手企業の幹部は、「大手同士がくっついて、また同じような不正が起こったら、それこそ大変なこと。厚労省はリスク分散のためには、分割がいいと考えているのではないか」と話し、その面でも一括売却は難しいとの見方だ。

「夜間サービス続けて」「将来見えない」…利用者に広がる不安
 事業が譲渡されても、今まで通りのサービスを受けられるのか。

 千葉県船橋市に住むALS(筋委縮性側索硬化症)患者、長嶋明美さん(43)は、介護保険を使い、コムスンのヘルパーに毎晩、薬の服用や就寝の準備、おむつ交換などをしてもらっている。コムスンのように夜間や早朝のサービスを行う事業所は少なく、「一人暮らしなので、夜間のサービスがストップしたら、本当に困る」と語る。有料老人ホームで暮らす利用者の場合は、入居一時金の償却方式や介護職員の配置などが、事業譲渡後も当初の契約通りになるかどうかが心配の種だ。

 有料老人ホームの入居相談を行う「タムラプランニング&オペレーティング」(東京)の田村明孝社長によると、過去の例では、入居者との契約内容は守られているケースが多いという。「ただ、資本力の低い企業に譲渡された場合、将来どうなるかは見えにくい」と田村さんは話す。

 従業員への影響も大きい。グッドウィルの介護関連企業の従業員約2万7000人が加盟する労働組合「UIゼンセン同盟日本介護クラフトユニオン」は11日、グッドウィルに対して、介護関連事業の一括譲渡を要求した。事業の切り売りで雇用が守れなくなることを警戒している。

(2007年6月14日 読売新聞)

訪問介護向け食事提供
ワタミ社長「グッドウィル」引き受けで
 居酒屋チェーン、ワタミの渡辺美樹社長は21日、読売新聞のインタビューに応じ、介護事業者の業界団体と共同でグッドウィル・グループのすべての介護事業を引き受けた場合、訪問介護の利用者向けに食事を提供するサービスを行う考えを明らかにした。 ワタミは現在、27棟の有料老人ホームで1日あたり3000食以上を提供している。渡辺社長は「訪問介護では、ヘルパーが料理ができないという苦情が一番多い。ワタミの加工品を提供すれば煮るだけ、焼くだけで済む」と述べた。食事の提供は、共同で事業引き受けに名乗りを上げた業界団体「民間事業者の質を高める全国介護事業者協議会」(民介協)からも要請を受けているという。
(2007年6月22日 読売新聞)

介護は、食べる、出す、寝る、起きる・・・というような人間の基本を支えることからしなければいけないのにできていないのかなとおもうよ。
2007年08月05日(日) 21:00:50 Modified by kazuhiro3122




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