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【Fate/Grand Heaven】



【Fate/Grand Heaven】
 
西暦2015年。 魔術がまだ成立していた最後の時代。
社会は人間の手で構築されていたが、世界の真理を握っていたのは魔術師だった。
 
魔術は科学では解明できない過去の人間の技術を司り、科学は魔術では到達できない未来の人類の技術を積み重ねる。
 
彼等は決して相容れない学問の徒だが、ある一点において志を同じとしていた。
魔術であれ科学であれ、それを研鑽する人間がより長く繁栄すること―――即ち、人類史の守護である。
 
 
【人理継続保障機関”カルデア”】。
 
 
魔術だけでは見えない世界、科学だけでは計れない世界を観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐために成立された特務機関。
人類史を何より強く存続させる尊命の下に、魔術・科学の区別なく研究者が集められた。
 
西暦1950年、事象記録電脳魔・ラプラス成功。
西暦1990年、疑似地球環境モデル・カルデアス完成。
西暦1999年、近未来観測レンズ・シバ完成。
西暦2004年、守護英霊召喚システム・フェイト完成。
西暦2015年、霊子演算装置・トリスメギストス完成。
 
輝かしい成果は続き、人理継続保障機関により人類史は100年先までの安全を保証されていた。
 
だが2015年。

何の前触れもなくシバによって観測されていた未来領域が消失。
計算の結果、人類は2016年で絶滅する事が判明―――いや、証明されてしまった。
 
なぜ。どうして。だれが。どうやって。 多くの疑問に当惑するカルデアの研究者たち。
 
そんな中、シバは新たな異変を観測した。
西暦2004年 日本 ある地方都市。
ここに今まではなかった、「観測できない領域」が現れたと。
 
カルデアはこれを人類絶滅の原因と仮定し、いまだ実験段階だった第六の実験を決行する事となった。
それは、過去への時間旅行。
術者を霊子化させて過去に送りこみ、事象に介入する事で時空の特異点を探し出し、これを解明、あるいは破壊する禁断の儀式。
 
その名を”聖杯探索” ――― 【冠位指定(グランドオーダー)】。
 
 
.


「─────新たな特異点が見つかった?」
 
 
カルデアの管制室で、黒髪の少年は目の前の男に不思議そうに聞き返した。
 
 
「そう。 今までに人理を修復した『冬木』。 『オルレアン』。
 『セプテム』。 『オケアノス』。 『ロンドン』。 それに続く、新たな特異点が見つかったんだ。」
 
 
「はぁ…………しかし、それならばいつものように向かえばよいのではないでしょうか?
 何故、わざわざ先輩と私を? 何か、おかしなことでもあったのですか?」
 
 
穏やかな雰囲気の白衣の青年───ロマニ・アーキマン、通称Dr.ロマンがが真剣そうな表情でいう姿を、
薄紫の髪で眼鏡をかけた少女──マシュ・キリエライトは、彼女の先輩と同じく、不思議そうな顔で言った。
 
 
「それが、”おかしなこと”ばかりなのさ。」
 
 
「あぁ。 まずは、これを見てほしいんだ。」
 
 
ロマンはそういうと、資料を二人に手渡す。
それは、【地球環境モデル:カルデアス】を【近未来観測レンズ:シバ】により観測したデータ。
そこには、今まで四つの特異点を修復してきた彼らからしても奇妙なことが書かれていた。
 
 
.



「これは………同時に、いくつもの特異点が発生したというのですか?!」
 
 
「そういうことになる。 【1887年:イギリス】。 【1938年:アメリカ】。 【1987年:エジプト】。
 【1999年:日本】。 【2001年:イタリア】。 【2011年:アメリカ】。 この六つの特異点が、同時に観測出来た。
 奇妙なことに、今まで観測していたはずの場所なのに、”突然世界に現れた”様に、だ。」
 
 
「ついでに言うと、何故か他にも日本とアメリカで別の特異点が観測されたんだけど、
 その年代が特定できない。 なんだか、フィルターがかかったようで、ぼんやりとしているんだ。」


ロマニの言葉に続けるように、長い黒髪の絶世の美女──カルデアによって召喚された英霊、
レオナルド・ダヴィンチは、不思議そうに首を傾げてそう呟く。


「………原因は分からないけど、これは………」


「────”異常”だ。 突如六つの特異点が同時に、しかも突然観測できるなんて、訳が分からない。」


「それに………私はこの年代のこの場所に、何か大きな事件や出来事があった、とは聞いたことがありません。
 今までの特異点の様に、人類史に大きな影響を与えるようなことが、ここで………?」


「………”あった”のさ。 これは、魔術でも化学でもない………もう一つの”力”が関係する事件が。」


Dr.ロマンがそう言い、一つの話を始める。
それは、”死徒を生み出す石の仮面の話”であり、”刺された人間に力を与える鏃の話”であり、
”世界を支配しようとした吸血鬼の話であり─────奇妙な、”星の痣を持つ血統の話”である。

その話を、黒髪の少年───カルデアの唯一のマスターであり、狂った人類史を正す戦いを続ける少年──は聞いていた。
その服のタイに刻まれた─────────【SPW】のマークを揺らしながら。
 
 
.



 
 

 
 

【異例特異点 : 悪意再燃地点”カイロ”】

 
エジプトの街並みを眼下に、建物の屋上で閃光が奔る。
 
それは、緑の人型から放たれた翡翠のような銃撃の光であり、
それをいとも容易く切り払う、エジプトには場違いな侍が持つ、刀の閃きでもあった。
 
 
『いやはや………翡翠を銃弾にするとは、なんとも美しい技よ。』
 
 
「そう言ってくれるのは嬉しいが………見惚れていてばかりでは、足元をすくわれてしまうんじゃァないかい?」

「────喰らえ!!半径30m、エメラルドスプラッシュ───!!!!」
 
 
緑の人型を操る青年が叫ぶと、侍の周囲に張り巡らされた緑色の帯から、無数の翡翠が放たれた。
寸分の狂い無く同時に放たれたその翡翠は、真っすぐに侍を目がけて空を切る。
 
 
『全方向からほぼ同時に襲ってくる翡翠……ふむ、これは避けられん。』
 
『しかし、簡単に喰らってやるほど拙者は甘くはない…………見せてやろう、”秘剣・燕返し”を。』
 
 
迫りくる翡翠の輝きを見つめながらそう呟くと、侍は────
”この特異点に召喚されしサーヴァント”、【暗殺者(アサシン)】は、ゆっくりと愛刀を構え───優雅に笑った。
 
 
.







 
 
 
カイロの街中で、二人の男女が向かい合っていた。
金の髪を揺らし、柔和な微笑みを浮かべる女と、戦場に赴いた戦士の如き眼光で女を見据える男。
 
二人の間に、恋人同士のような優しい空気はない。
そこにあるのは、女が構えた一本の細剣(レイピア)と、男の傍に立つ銀の鎧の騎士が構える細剣(レイピア)による、決闘の空気だった。
 
 
「美しいレディ…………君のような人と戦うことは、この俺も本意ではないのだがね………」
 
 
『ふふふ……君には、僕のことがそう見えているんだね。 だけど…そんな余裕を見せている暇があるのかい?』
 
 
「俺の”シルバー・チャリオッツ”の剣を防ぎ、そして押し返した………君のその剣が、スタンドかい?」
 
「一度、刀その物がスタンドの奴とはやり合ったことがある……道具型のスタンドというのも、あり得る話だ。」
 
 
男がおどけたようにに細剣を見やるが、男の戦意は、一瞬も隙を見せない。
それは、男の傍に立つ銀の鎧から立ち上る戦意と冷静さが、言うまでもなく物語っていた

しかし、その男の様子を見て、女はクスリと笑いをこぼす。
それは、自嘲したような………しかし、その瞳の奥からギラギラとした意思を覗かせるような笑顔だった。
 
 
『残念だけど、そうじゃない。 君のような、【傍に立つ者(スタンド)】じゃない。』
 
『僕たちは、【唯の使い魔(サーヴァント)】さ。 唯の、奴隷のようなものさ………今は、ね。』
 
 
.





 
 
 
カイロの路地裏。 そこで、褐色の肌をし、黒髪を頭頂部で短いドレッドのように束ねたブ男の前に、
白色のローブを纏った、女性と見紛いかねない長髪の美青年が立ちふさがっていた。
 
奇妙な短剣を構えた青年の前で、ブ男は背に赤い鳥頭の男の像(ヴィジョン)を揺らめかせながら、青年を見据えていた。
 
 
「なんだこの男は………?! 私の炎だけではない……”土”、”水”、”風”………?!」
 
「貴様のスタンド能力………どうやら、相当凄まじいものの様だな………?」
 
 
油断なく男を見据えるブ男に対し、青年は興味深そうにブ男の後ろの像(ヴィジョン)を見ていた。
青年が放った”土”、”炎”、”水”、”風”の力を、悉くその像(ヴィジョン)は炎によってかき消したのだ。
 
 
『スタンド………魔術とは異なる、精神の力………』
 
『魔力もない人間が、これほどまでの炎を操るとは………興味深い。』
 
『”あの男”が言った通りかもしれない………この力を解明すれば………私は……根源に………!』
 
 
.


 
 

 
 
 
(オイオイオイ?! なんなんだ、コイツはァ〜ッ?!)
 
 
カイロのとある路地裏─────だったはずの、迷宮のような場所で、一匹のボストンテリアが周囲を睨んでいた。
 
 
(俺は、確かあのブ男と一緒にいたはずだが………訳が分かんねぇ?! 今までの場所とは、”ニオイ”も明らかに違うッ?!)
 
(俺はいったいどこに迷い込んだ……いや、”何をされたんだァ?!)
 
 
混乱するボストンテリアの背後に、巨大な影がうっそりと現れる。
 
3mはあろうかという巨躯に、牛のような仮面、拘束具。
そして、大斧を背負ったその影は、ゆっくりとそのボストンテリアに手を伸ばし────────
 
 
.



 
 
 

 
 
 
「………つまり、テメーは俺たちの味方ってことでいいんだな?」
 
 
紺色の学生服を着た、威圧感のある男の前で、
兜を付けた少女は、金の三つ編みを揺らしながら頷く。
 
 
『えぇ。 【裁定者(ルーラー)】のサーヴァント、”ジャンヌ・ダルク”。 貴方たちの盾となりましょう。』
 
 
学校の授業でも習うような偉人が目の前にいるという事実に、
学生服の男は少し戸惑っているが、その素振りを外に出さずに聞く。
 
 
「…一つ聞かせろ。 お前らがさっき言っていたことは………事実なんだな?」
 
 
『その通りです。 貴方が今まで倒した敵…そして、すでに死んだ仲間が復活したのは、【聖なる遺体】と呼ばれるものの力。』
 
『それは、サーヴァントが願いを叶えるために戦う儀式…【聖杯戦争】で求める【聖杯】よりも、さらに大きな力を持つ物。』
 
『そして、その力が………この世界を、この歴史を、歪めている原因なのです。』
 
 
先程出会った、死んだはずの”花京院”に、”アヴドゥル”、”イギー”。
そして、彼らが戦ったという謎の敵、【サーヴァント】。
 
未だに信じられない事ばかりだが、話をしている横で、
死んだはずのイギーが、【サーヴァント】らしい角が生えた尋常ならざる巨人に撫でられている様子を見れば、頭ごなしに否定することもできない。
 
 
「俄かには信じがたいが………さっきの男が連れてたお前の仲間に、実際に蘇った俺の仲間………
 まったく、【スタンド】以外にも、こんな力があったなんてな………」
 
「それに、さっきの男………お前が、マスターと呼んでいた奴。 アイツの名は?」
 
 
先程出会った男……巨大な盾を携えた鎧の少女と共に現れ、
彼らに今起きている事態を説明し、自身のサーヴァントであるというジャンヌを男に一時預け、
他にも起きている異変の元へ向かった、黒髪の少年の名を訪ねると、ジャンヌは少し困ったように頬をかく。
 
 
『私のマスターの名前ですか? それが………何故か、名前はまだ教えてもらえていないのです。』
 
『魔術師は、名前を知られると何か不都合でもあるのか、と思いましたが、そういうこともないので、ただ恥ずかしがり屋なのかもしれませんが………』
 
『…けれど、私と彼の間にある絆は、本物です。 私のマスター………”スピードワゴン”との。』
 
 
.




【異例特異点 : 黄金狂気殿”ローマ”】
 
 
 

 
 
 
ローマのとある公園。 そこで、一人の帽子をかぶった男が、可憐な少女の前で困惑したように頭をかいていた。
 
 
「………あー、えーっと? それで、俺は何をすればいいんだ、”メガミサマ”?」
 
 
『何よ、決まってるでしょ。 とりあえず、そうね………折角の現世だし、買い物でもしたいわね。』
 
『ひとまず、ハンカチ、安物じゃない化粧品に、最新号のファッション雑誌。
 それを買ってきてくれなきゃ死んじゃうわよ?』
 
 
年上の、拳銃を持っている男に臆さず、悪びれもせず彼女は笑ってそういう。
男は、その言葉を聞いても怒りはせず、逆にげんなりとした顔になる。
 
 
「………どっかで聞いたことあるようなセリフだぜ………女ってみんなこうなのかァ?」
 
「デモヨォーッ、ミスタ!! カワイイ子ジャネーカ!」 「ソーソーッ! 可愛イ女の子ノ我儘クライ聞イテヤロウゼ!」
 
「だからってよ………おい、No.3、No.1?! お前ら目がハートだぞ?! 何があった!?」
 
 
ぎゃぁぎゃぁと、男の周りに浮かぶ6匹の小人と戯れている男を見て、少女はため息をつく。
 
 
『何をぐずぐずしてるのよ。 ほら、さっさと買ってきなさい。』
 
『まったく………こういう時にいないんだから、駄メドゥーサも、アステリオスも。 もし会えたら、お仕置きしなくっちゃ。』
 
 
.


 
 

 
 
 
『”スパイス”、か。 僕たちの時代だったら、財宝みたいなものなんだけどね。 ね、アン。』
 
『えぇそうね、メアリー。 でも、女の子は誰もがお宝ってことなんじゃないかしら?』
 
 
「ずいぶん余裕ね………っ!!」
 
 
笑いながら話している二人の女に向かって、少女は傍らに立つ人型に命じ、殴りかかる。
しかし、銀の髪をした女はそれを軽く避け、逆に自身の持つ曲刀で切りかかる。
 
 
「”スパイス・ガール”ッ!!」
 
 
人型が叫び声を上げながら殴り掛かるが、女はそれを身軽にかわしていく。
 
しかし、連打(ラッシュ)の中で少女が追撃を仕掛けようとしたその時、
後ろに控えていた金の髪の女が放った銃撃が、少女を牽制する。
 
 
『”殴ったものを柔らかくする”……だっけ。 成程、そんなことされたら僕の武器もダメになるし、ダメージも大きい。』
 
『ですが………”銃弾”ならば、柔らかくしても、衝撃は響きます。 さて、あとどのくらい持つかしらね、メアリー?』
 
『そうだね、アン。 もうすぐ、じゃないかな。』
 
 
「………全く、嫌になるわね………」
 
 
談笑している二人を睨みながらも、少女の瞳の闘志は消えない。
必死に勝利に食らいつこうとする少女の瞳には、黄金の輝きが見えていた。
 
 
.


 
 
 

 
 
 
「………【サーヴァント】、【聖なる遺体】、【聖杯戦争】、【カルデア】………成程、話は理解できました。」
 
 
『ほう、それはいい。 理解力のある読者がいると話が楽に進む!』
 
『尤も、バカみたいに深読みして自滅したり批判を始める読者ほど面倒なものはないがな!』
 
『まぁそいつらも読者は読者だ。 まったく、作家とは面倒な職業だ。』
 
 
特徴的な金の髪をした青年が理知的な目でそういうと、
青年の前に座っていた青い髪の少年は、その姿に似合わぬ声でぼやいた。
 
 
「それにしては、楽しそうですけどね…………そうそう、終わったら、僕の話でも書いてもらいましょうかね?」
 
 
『ハン、俺にドキュメンタリーを書けとでもいうのか鬼め! 俺は童話作家だ、それ以外の仕事を持ち込むな!』
 
『ましてや、ドキュメンタリーだと? あんなラストも思い通りに書けない奴なんぞ面倒にもほどがある!!』
 
 
「………だから、読みたいんですよ。 面倒くさがりな貴方が、それでも書き記してくれる、僕の物語が。」
 
「貴方のことは、結構気に入ってるんですよ、僕も。 なんだか、落ち着く声だな、と思いまして。」
 
 
青年は優しい表情で少年に笑いかける。
少年は、その笑顔を見て、露骨に面倒くさそうな表情を浮かべてため息をついた。
 
 
『………フン、声フェチが。 いいだろう、俺が暇になった時に、気が向いたら書いてやる。』
 
『但し、覚悟しておけよ? お前が、いやお前を含む英雄たちが挑むのは、世界の崩壊だ。』
 
『”悪”でもあるお前がどのような物語を紡ぐか………そのくらいは、見届けてやろう。』
 
 
.


 
 

 
 
 
【異例特異点 : 悪意潜伏町”杜王町”】
 
 
 
『ほうほう………実に面白い!!アナタは実に面白い人物ですな、コウイチ!』
 
 
「それ、褒められてるのかなぁ…? 前にも、似たようなことを露伴先生に言われたけれど…」
 
 
杜王町の一角、カフェ・ドゥマゴで、中世ヨーロッパ風の洒脱な衣装を身に纏った伊達男と、
背の低い学生服の少年という、チグハグな組み合わせの二人が話をしていた。
 
 
『えぇえぇ、褒めておりますとも! アナタがこの町という狭い舞台で織りなした一つの話!』
 
『悍ましくもあり美しくもある奇妙な戦いの話! あぁ、なんと素晴らしいのでしょう!!』
 
『”綺麗は穢な、穢なは綺麗 (Fair is foul, and foul is fair.)”!! あぁ、アナタは主役ではありませんでしたが、確かにそこにいた!』
 
『いい、実にいい! 是非、アナタを主役に一本作品を書かせていただきたいものですな!!』
 
 
伊達男が大げさな身振り手振りで、まるで舞台の役者かのように叫び続けるのを見て、学生服の少年は困ったような笑顔を浮かべた。
 
 
「シェイクスピア、っていうのがすごい人なのは知ってるけど……『変わった人間』なんだなぁ〜っ。」
 
「露伴先生といい、『作家』っていうのは、こういう人たちばかりなのかな………?」
 
 
.


 
 

 
 
 
「チィッ────チョコマカ逃げ回ってんじゃぁねーぜッ!!」
 
 
ガオン!! と、奇妙な音が響くと、学ランを着た不良の前に、まるで瞬間移動したかのように、
突然植木鉢が引き寄せられる………が、不良は傍らに立つ人型に命じ、その植木鉢を殴り壊した。
 
そして、その不良が狙ったもの………露出度の高い鎧兜と白装束を纏った黒髪の少女は、
ヒラリと着地し、手の中の日本刀を構える。
 
 
『成程………”空間を削る”。 それが、貴方の能力ということですか。』
 
 
「チッ………得意そうな顔してんじゃねーぞ、このダボがァッ!!」
 
「変態みたいな格好してるし、女だが………この虹村億泰にケンカ売ったんだ、容赦はしねぇーぞ、ゴラァッ!!」
 
 
不良が言葉を荒げて威圧するが、少女は素知らぬ顔で胸を張る。
 
 
『えぇ、勿論、こちらも容赦はしませんので構いません。』
 
『貴方の能力は大体理解しました。 ここから先、私を捉えられるとは思わないほうがいいですよ。』
 
『私、こう見えて………天才ですから。』
 
 
.


 
 

 
 
 
とある漫画家の邸宅。
その一室で、一人の黒い服を着た可憐な少女と、
ギザギザのバンダナを付けた、一人の漫画家が向かい合っていた。
 
 
『ねぇねぇ、あなたもお話を書くんでしょう? どんなお話を書くのかしら?』
 
『やっぱり”めでたしめでたし”で終わる素敵なお話かしら?』
 
『アンデルセンみたいに、意地悪なお終いは私、嫌いだわ。』
 
 
「………成程ねぇ。 【ナーサリーライム】。 子供たちが愛した童話への信仰が、概念となり、【サーヴァント】になった………」
 
「【聖杯戦争】なんて聞いて、正直探せばいくつも同じジャンルの作品がありそうな在り来たりな物かと思ったが…面白いじゃないかッ!! 」
 
「”子供たちの英雄”なんだろう、君は? なら、君をじっくり調べれば、僕の作品にも新たな面白さが加わるかもしれない………」
 
「君のリアリティを、僕のものとさせてもらおうかッ!!」
 
 
可憐な姿をしながらも、強烈な威圧感を放つその少女に対し、
漫画家は楽しそうに笑い、その手にペンを構える。
 
 
『まぁ、人のものを取ろうなんて悪い子ね!』
 
『悪い子にはお仕置きしなくちゃ! そうでしょ”ジャバウォック”!!』
 
 
少女がそういうと、その隣に突如として巨大な怪物が現れる。
それは、「ジャバウォックの詩」に登場する、正体不明の怪物。
 
その怪物にかかれば、唯の漫画家風情では一瞬で消し飛ばされるであろう事実を前に、
漫画家は笑顔を崩さず、ゆっくりとそのペンを振るった──────
 
 
「────天国の扉(ヘヴンズ・ドアー)!!!」
 
 
.


 
 

 
 
 
「……………若い姿の承太郎さんが現れたうえに、死んだはずの重ちー………」
 
「それだけでもうお腹いっぱいだっつうのに、その上【サーヴァント】? 訳が分からねッス………」
 
 
『まぁ、長ェ話だしな………ぶっちゃけ、俺もよくわからねぇところあるし。』
 
『ま、俺たちはゴールデンに俺たちの敵をぶっ飛ばせばいいってことだ!!』
 
『頼りにしてるぜ、坊主!』
 
 
髪を金色に染め、派手な格好の筋骨隆々とした青年から、バンバンと背中を叩かれ、
今時珍しい髪形をした学生服の少年は痛そうに顔をゆがめ、その腕を払う。
 
 
「坊主って………俺だって高校生だっつーの!! っつーか、信じられないのはアンタもだアンタも!」
 
「金太郎がこんなチャラチャラしたチンピラっぽいやつだとは思わなかったっつーの!」
 
 
『アレは俺の子供のころなんだよ。 今の俺はバーサーカーだから無理だが、
 ライダーなら俺の最高にクールゴールデンなベアー号を見せてやれんだけどな………』
 
『ありゃぁすげぇんだぞ? クマなのになんか変形するデビルモンスターマシンだ。』
 
 
「クマが変形………グレート。 そりゃ一度見てみてぇけどよ………」
 
 
『ま、機会がありゃぁ見せてやるぜ。 俺のゴールデンでグレートなベアー号をな!』
 
『だからよ────機会が来るまで、死ぬんじゃねぇぜ?』
 
 
.


 
 

 
 
 
【異例特異点 : 潮流闘技場”エア・サプレーナ島”】
 
 
 
『はぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』
 
 
紫の長髪に、純白の服。 聖女のような雰囲気をまとったその女は、
雄叫びと共に、目の前にいる女に十字架を模した杖を叩きつけようとする。
 
 
「───蛇首立帯(スネックマフラー)!!」
 
 
しかし、その杖は目の前の女のマフラーによって絡め取られ、
痺れるようなエネルギーによって、その動きは止まってしまった。
 
 
「仙道波蹴(ウェーブキック)ッ!!」
 
 
『チッ………だらぁぁっ!!』
 
 
動きを止めた聖女に対し、女はエネルギーを込めた膝蹴りを叩きこもうとするが、
杖を手放し、エネルギーを振り払った聖女は、拳を握り、膝蹴りを拳で相殺する。
 
 
『なかなかやるようだけど………私、素手のほうが強いのよね。』
 
 
「フン………抜け目のない奴ね………」
 
「それにこの力(パワー)………波紋が流れても融解しないところを見ると、吸血鬼ではないッ!」
 
「けれど、蹴りを放った私のほうが衝撃を受けるようなこの威力………只者ではないことは明らかッ!!」
 
 
女はそういうと拳を構え聖女を睨みつける。
聖女も、杖を拾おうともせず、好戦的な顔で拳を握り締め、構える。
 
 
「いいわ………私は自分の使命を守り通さねばならない………かかってきなさい!!」
 
 
.


 
 

 
 
 
とある城の訓練場………中心に無数の棘が生えた波紋の訓練場に、一組の男女がいた。
 
一人は、翠緑の衣装を纏った野性味と気品を併せ持つ少女。
獣の如き眼光を向け、男に向けて弓を構えている
 
一人は、金の髪をした偉丈夫。
彼の周囲にはシャボン玉が浮遊し、奇妙なことにそのシャボンはその場で回転し、空中に留まっている。
 
 
「ヘイ、セニョリータ。 そんな危ないものは捨てて、一緒にこのシャボン玉で遊ばないかい?」
 
 
『否、断る。 そんなものよりも、この私にはこの弓と矢のほうが余程楽しい。』
 
『………そんなもので遊んでいないで、来るのなら来い。 言っておくが………私を女だと甘く見るなら、それは間違いだ。』
 
 
「ハハハ…大丈夫だよ、セニョリータ。 俺も女性を見る目はあるつもりだ………」
 
「………太陽の下に出ていながら、この威圧感と圧倒的な殺意………」
 
「成程な。 これが、ジョジョと一緒にいた女が言っていた、【サーヴァント】、という奴か。」
 
「だがな、セニョリータ。 こちらを甘く見てもらうのも困るのさ………」
 
 
偉丈夫がそういうと、彼の周囲に浮いていたシャボンが回転を速め、その形を円盤状に変えていく。
その間も、男は手をこすり合わせ、大きく振ることで周囲にシャボン玉を生み出し、同じように回転させる。
 
女はそれを見て警戒を強め、弓を引き絞る力を強めた。
その姿を見て、男はニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。
 
 
「君の弓矢と、俺のシャボン………どちらが強いか、勝負と行こうか?」
 
 
.


 
 

 
 
 
「おぉ、かっちょいい船じゃぁねーか!! すっげぇなぁ、かっこいいぜ!!」
 
 
『分かってるじゃないかい、ジョセフ! この”黄金の鹿号”が、アタシの宝具さ!』
 
『この船なら、地球の裏側にだって連れて行ってやるさ!』
 
 
巨大なガレオン船を前に子供のようにはしゃいでいる男を見て、
隣に立っている、顔に大きな傷のある女性はカラカラと笑った。
 
 
「かっぴょい〜い! とんでもねぇ敵が待ってるって聞いて、最初は面倒だとも思ったが…
 この勝負…ついてるネ、のってるネ! こぉーんな頼れてかっこいい味方がいるなんてよォ!!」
 
 
『そう言ってくれるかい、嬉しいねぇ。』
 
『アタシも、アンタのことはあのジョータローとかいう奴からいろいろと聞かせてもらったよ。』
 
『アンタみたいな奴のほうが、アタシとしては楽しいしね。 勝つも負けるも、派手に使い切ろうじゃないか!』
 
 
「おう、思いっきしハデにブチかましてやるぜっ!!」
 
「それと………この船、乗ってみていいか? 一度こういうのに乗ってみたかったんだよなァ〜ッ!!」
 
 
『あー………それは、もうちょっと考えさせてくれ。 まだ、心の準備ができてなくてな……』
 
 
「心の準備ィ? なんだ、中が汚いとかかァ?」
 
 
『いや………未来のアンタの評判からして、ちょっと、乗り物に乗せるのが縁起悪いっていうか………』
 
 
.


 
 

 
 
 
【異例特異点 : 世界輪廻地点”ケープ・カナベラル”】
 
 
 
「オラァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」
 
 
『甘い………ッ!!』
 
 
ドレッドの頭の女の傍らに立つ人型が、二つの槍を構える美青年に向かい、拳を振るう。
しかし、美青年はその槍を巧みに振るい、攻撃をいなす。
 
 
「チィッ!! チョコマカ避けてんじゃァねーぞ、このドグサレ野郎が!!」
 
 
『フン、野蛮な………しかし、その剛力は侮れんな………まるで、獣の様だ。』
 
 
「ンだとォ?! テメェの面もケダモノみたいに歪ませてやろうか、ゴラァッ?!」
 
 
女が語気を荒げてそういうも、美青年はその端正な顔を崩さない。
手に持った赤い槍と、黄色の槍を構えてその目に殺気を滾らせる。
 
 
『相当なパワーにスピードだ………この私でもかわし切れず、槍でガードしてしまうほどに………』
 
『だが、お前のその人型では、私に決定的なダメージは与えきれない。 その拳では…我が槍を破壊することも叶わないだろう。』
 
 
「ヘン………だったら、試してみるかァ?」
 
 
好戦的にギラギラと美青年を睨む女。
その傍らに立つ人型の手には、一枚のシールが揺らめいていた………。
 
 
.


 
 

 
 
 
「ジョリーン、ジョリーン、ジョリーン、ジョリーン、ジョリーン……………。」
 
 
『クリスティーヌ、クリスティーヌ、クリスティーヌ、クリスティーヌ、クリスティーヌ……………。』
 
 
ケープ・カナベラルの一角で、二人の男が戦いを繰り広げていた。
一人は緑の長髪に、網のような服を着た奇妙な男。
もう一人は、顔半分を白い仮面で隠し、異形のツメを振るう黒髪の男。
 
地面や周囲の建造物の壁から突如現れる人型は、
大きく拳を振るい、仮面の男に襲い掛かるが、容易くツメで切り払われてしまう。
 
 
「ジョリーン、ジョリーン、ジョリーン、ジョリーン、ジョリーン……………。」
 
 
『クリスティーヌ、クリスティーヌ、クリスティーヌ、クリスティーヌ、クリスティーヌ……………。』
 
 
 
「ジョリーン、ジョリーン、ジョリーン、ジョリーン、ジョリーン……………。」
 
 
『クリスティーヌ、クリスティーヌ、クリスティーヌ、クリスティーヌ、クリスティーヌ……………。』
 
 
 
呪文のように愛する女の名を呟き続けながら戦う二人を見て、
緑の長髪の男の仲間である、野球のユニフォームを着た少年はドン引きしながらその身を隠していた。
 
 
「あ、あの二人………見た目も全然違うし、
 仮面の男はスタンドも使わない、【サーヴァント】とかいう奴らしいけど………一つだけわかる!!」
 
「あの二人………『同じタイプの変人』!!」
 
 
「ジョォォォォォリィィィィィィィィィィィィィンッッッ!!!!!」
 
 
『クリスティィィィィィィィィィィィヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!』
 
 
.


 
 

 
 
 
『………っつー訳だ。 だいたい理解できたか?』
 
 
「えぇ………正直、ついていけないって思ったけど、ここまで来たら信じるしかないわね。」
 
 
露出の多い、深紅の服を着た少女の前で、星の痣を持つ女はため息をついた。
 
 
「生身でスタンドとやり合える上に、剣からビームが出たり、幽霊みたいになれる……
 スタンドでそこまで多芸なことができるとは思えないし、できたとしても私を騙すメリットはないでしょう?」
 
「それに………若返った父さんがいた、っていうのが決定的だったわね………」
 
 
女は、自分の父親が若返った姿で現れ、その上傍らに見知らぬ金髪の女を連れていることに
ひどく狼狽していた先程の自分を思い出し、頬を赤らめる。
 
その様子を見た深紅の少女は、呟くように女に尋ねた。
 
 
『………アンタは、父親と仲がいいのか?』
 
 
「え? 私? んー…………正直なところ、全然だったわね。」
 
 
『………その割には、父親のことを話してる時、楽しそうな顔してたぞ。』
 
 
「今は多少仲は改善された、って感じだけど………元々はひどかったのよ?
 『父親面で指図するな』、とか『テメェ』とか、いろいろ言ってたし………」
 
 
『………じゃ、何で今はそんなに楽しそうなんだ?』
 
 
少しふてくされた様子でそういう少女に、女は笑って答える。
 
 
「父さんを理解できたからよ。 今までずっと、父さんは私のことなんか心の中から消していると思っていた。
 けど、それは違った。 父さんは、私のことを思ってくれていた。 私は、父さんを理解しようともしていなかったのよ。」
 
「私は別に歴史が得意だった、とかじゃないから、貴女のことはよくわからないけど………
 貴女も、父親と何か確執があったんでしょう?」
 
 
『………あぁ。 だが……父上は、俺に………』
 
 
悲しそうに下を向く少女に、女はそっと近寄り、その肩に手を置いて笑いかける。
 
 
「もしあなたが父親が憎くて、復讐がしたい、なんて考えていても、私は止められないし、止めないわ。
  復讐をやめろなんて説得は誰にだってできやしない。」
 
「けれど………その前に、話し合って、理解し合おうとすることは出来るはずよ。」
 
「『ひとりの囚人は壁を見ていた』……『もうひとりの囚人は鉄格子からのぞく星を見ていた』……
 貴女は、どっち? そうやってただ壁を見ている? それとも………星を見て、希望を見たいと思わないかしら?」
 
 
その言葉を聞くと、深紅の少女はフッと笑い、ゆっくりと顔を上げる。
その顔には、晴れ晴れとした好戦的な笑みが浮かんでいた。
 
 
『………決まってる。 俺は、星を見る。 星を見て………いつか、その星をつかんで見せる。』
 
 
.


 
 
 

 
 
 
【異例特異点 : 鮮血始原邸宅”ジョースター邸”】
 
 
 
ジョナサン・ジョースターの住まうジョースター邸………
今、そこは無数の屍生人(ゾンビ)が徘徊する魔の館と化していた。
 
そして、その館において太陽のような輝きを放つ二人の戦士がいた。
 
 
「ズームパンチィッ!!」
 
 
『風王鉄槌ッ!!』
 
 
丸太のような手足を持つ精悍な青年が拳を振るうと、奇妙なことにその腕が伸び、
真正面にいた屍生人の顔面を打ち抜き、その肉体に流れるエネルギーによって、屍生人を消滅させた。
 
そして、その青年の隣で戦う可憐な女騎士は、輝く聖剣を振るい、
強力な突風によって屍生人の群れを押し返し、聖剣の光によって屍生人たちを群れごと消滅させる。
 
 
「ふゥッ─────これで、どれくらい倒したかな………」
 
 
『少なくとも、100は優に超えています。 しかし、この数………大丈夫ですか、ジョナサン?』
 
『私は、肉体的疲労を感じないサーヴァントです。 ですが、貴方は人間。』
 
『その太陽の力………【波紋】があったとしても、貴方の体力はもう限界でしょう。』
 
『私の風王鉄槌であれば、館の外へ脱出させることは出来ます。 一度、撤退しては………』
 
 
「─────いいや。 それは出来ない。 セイバー、そんなことはこのジョナサン・ジョースターには出来ないッ!!」
 
 
背中合わせに立つ女騎士にそう言い放ち、青年は拳を構え、呼吸を整える。
コオオオオ、と音を立てる特殊な呼吸法によって、体全体にエネルギーを張り巡らせているのだ。
 
 
「僕は本当の紳士を目指しているからだ! そしてここは、僕の家なんだ………!!
 
「どんな相手がいようと………例え、数え切れないほどの敵がいようとも………
 紳士は勇気を持って、戦わなくてはならない時があるんだッ!!
 
 
そういうと、青年は拳を構え、屍生人の中へと突っ込んでいく。
その姿を見た女騎士はクスリと笑い……そして、己が聖剣を構える。
 
 
『───よいでしょう!! 貴方のその紳士としての誇りを貫くために…この私も、共に戦いましょう!!』
 
 
女騎士はそういうと、聖剣を輝かせ、青年と共に屍生人の中へと飛び込んでいく。
 
 
その姿を闇の中から見つめる──────巨大な影があることも知らずに。
 
 
.


 
 

 
 
 
「女だてらに鎧を着こみ、剣を振るう………成程。
 【サーヴァント】とかいう訳の分からん奴が隣にいては、ジョジョも戦いづらかろうと思ったが……中々やるではないか。」
 
 
屍生人の群れの中で拳と聖剣を振るう二人。
その二人を見据えながら、鮮血のように赤い服を着た吸血鬼が立っていた。
 
 
「お前たちの奮闘ぶり、認めよう!!
 よくぞ我が夜の亡者(しもべ)達を前にここまで持ちこたえたな!!」
 
「だが、屍生人共は無尽蔵ッ!! そして、【サーヴァント】がいるのは、貴様に限った話ではないッ!!」
 
 
高らかに言う吸血鬼の背後に、巨大な漆黒の影が現れる。
それは、三只眼に全身を禍々しい刺青と黄金で彩った、漆黒の巨人。
両手に巨大な戦斧を携えたその巨人の周囲から、無数のの骸骨兵(スケルトン)がカタカタと音を立てて現れる。
 
 
「屍生人(ゾンビ)!!骸骨兵(スケルトン)!!
 こいつらを前に、貴様らはどれだけ持ちこたえられるだろうなぁ………さらに!! ここから、とっておきのダメ出しもくれてやるッ!!」
 
 
吸血鬼がそういうと、ゆっくりと一人の男が現れる。
”DIO”の装飾がついた、騎手のような男だ。
 
 
「いいだろう………すでに死んでいるこいつらに俺の能力が効くかはわからなかったが………こういうのも、面白い。」
 
 
男はそう言いながら、漆黒の巨人に触れる。
すると、今まで狂ったような戦意を滾らせながらも、こちらを静かに見据えていた巨人の瞳に、狂気が宿る。
 
 
『■゛■゛■゛■゛■゛■゛■─────ッ!!!!!』
 
 
巨人の咆哮と共に、その体はメキメキと音を立てて作り替えられていく。
頭部には巨大な角が生え、体中に鱗が現れ、その口からは禍々しい牙を覗かせている。
 
数秒もすると………漆黒の巨人は、悪魔のような角を生やした巨大な恐竜………
巨大な”ティラノサウルス”のような姿へ、変貌していた。
 
口からは涎をたらし、その陰からは白骨でできた恐竜の骸骨兵(スケルトン)が這い出ている。
 
 
その禍々しい姿を見て、ジョナサンとセイバーは険しい表情になり…
吸血鬼は、その姿を見て邪悪な笑みを浮かべる。
 
 
「【不死の軍団】!!【サーヴァント】!!【恐竜】!! この三つの力が合わさった【バーサーカー】にッ!!
 抗えるものなら抗ってみるがいい………ジョジョォォォォォォォォォォォォッ!!!!」
 
 
.



 
 
 
【異常特異点 : ■■■■■”スティール・ボール・ラン”】
 
 
 

 
 
 
北アメリカの荒野。 間違いなく荒野であるはずのそこは、
現在は海が近づいてきており、まるで海岸のような様相に変わっていた。
 
そして、そこに二人の男がいた。
一人は、褐色の肌と太陽の色をした眼を持つ男。
もう一人の男を見下すような、見定めるような目で観察している。
 
もう一人の男は、馬の蹄鉄のような飾りを付けたバンダナの男。
下半身が動かないのか、地面に座り込み、褐色の男を睨みつけている。
 
 
『ほう………余を前にして、その悍ましい殺意のこもった眼………面白い。』
 
『弱きもの、斯様に弱く在れども自らの願いにあっては誇りと尊厳………そして、殺意に満ちて眼開き続ける…』
 
『良い。 貴様を、今一時、余と肩を並べる”戦士”として認めてやろう。』
 
 
褐色の男は尊大にそういうと、パチリと指を鳴らす。
すると、バンダナの男の隣に倒れていた一匹の老いた馬が、ゆっくりと立ち上がった。
 
 
『我が宝具…【光輝の大複合神殿(ラムセウム・テンティリス)】の力により、仮初の不死を与えた。』
 
『此度の戦いの間、この馬はもはや傷つくことも、衰えることもないだろう。』
 
 
褐色の男がそう言う最中、バンダナの男は馬に乗り込む。
そして、先ほどより幾分殺意を薄めた目で褐色の男を見据える。
 
 
「………アンタは、何故僕を助けた?」
 
「アンタはさっき言った。 『世界を救う戦いがある』、と。
 『【聖なる遺体】がその戦いに関係している』、と。 『この戦いに勝てば、お前の友は戻ってくる』、と。」
 
「確かに、僕は【聖なる遺体】を求めている。 アンタの言うことは、僕によっても好都合だ。」
 
「………だが、何故だ。 わざわざアンタのその力でスローダンサーを治してまで、
 何故僕のような体もろくに動かない男の力を借りようとする? 何が目的だ?」
 
 
バンダナの男はそういうと、褐色の男に指を構える。
その指の先では、男の爪がまるで弾丸のように回転し、褐色の男を狙っている。
 
それを見ても、褐色の男は尊大なままで態度を変えず、言い放つ。
 
 
『目的、そんなことは決まっている! 余が戦うは、受肉し、統治者となり、民を導くため!!』
 
『しかし、その民が住まう世界に滅びを齎そうとする者がいる!!それをこの余が打倒さぬ理由はない!!』
 
『この戦いはまさしく世界を救う戦いである!
 余は、余が統べるためにこそあらゆる敵を灼き尽くし、遍くすべてを救おうぞ!』
 
『しかし、敵は余も知らぬ【スタンド】とやらの力を使う。
 余は王の中の王である。 故に、得体も知れぬものと戦うのに、無策で挑む道理はない。』
 
『さらに、貴様の力は興味深い。 その”爪弾”………余とて、何の準備もなく喰らえば、ひとたまりもないであろう。』
 
『故に───────余が認めるほどの力を持つ、貴様の力を借りたいのだ。』
 
 
太陽の如き笑顔でそういうと、褐色の男はバンダナの男に手を差し伸べる。
その笑顔を向けられ、バンダナの男は逆に困惑したような顔になるが………ゆっくりと、その手を握った。
 
 
「………いいだろう。 僕も、疑い過ぎていたようだ。」
 
「僕が今まで戦っていたのも、国のため、民のため、っていう奴だったからね。」
 
「だけど………利害が一致しているっていうのなら、信用できる。」
 
「アンタと一緒に行こう………ライダー。」
 
 
.


 
 

 
 
 
【異常特異点 : ■■■■■”杜王町”】
 
 
『……………………。』
 
 
「……………………。」
 
 
杜王町のとある公園。 そこに、無機質な表情をした二人の男女がいた。
一人は、褐色の肌をした白銀の髪の女性。 公園の雰囲気には似つかわしくない、三条の輝きを放つ剣を携えている。
 
もう一人は、前歯がすきっ歯の、水兵のような服装をした男。ぼんやりとした顔で、白銀の女性を見ている。
 
 
「えぇーっと………それで、なんだっけか。 キミは、オレの味方ってことでいいんだな?」
 
 
『あぁ。 このアルテラは、お前の味方だ。 お前と共に戦おう。』
 
 
白銀の女性がそういうと、水兵のような男はぼんやりと頭をかく。
 
 
「ふゥん………なんだか、誰かと一緒に戦う、っていうのは経験がないから、少しばかり不安だな………」
 
 
『そうなのか?』
 
 
「あぁ。 っていうか記憶がないんだ、オレには。」
 
 
男のその言葉に、白銀の女は表情を変えずに、そうか、と呟き、男のほうを見た。
 
 
「キミも………なんか、クーキョっていうか、そんな感じがする。
 なんとなくだけど……俺と、同じ感じがする気がする……って感じ。」

「キミは、【サーヴァント】とか言ってたな? 【サーヴァント】は、記憶がないものなのか?」
 
 
男の問いかけに、白銀の少女は首を振って否定する。
 
 
『いや……私に、生前の記憶はある。 だが………あるだけで、そこに思い出はない。』
 
『私は、ただ戦うだけの戦士だった。 戦い以外に私が持つものは何もない、機械のようなものだった。』
 
『私の力は”破壊”するだけのもの。 戦士でなければ、不要なものだ。』
 
『だから私は………”戦い”以外の自分を見つけたい。』
 
『戦う以外に、私に一体何ができるのかを、知りたい。』
 
 
無機質ながらも熱のこもった口調でそういう彼女を、男は真剣な眼差しで見つめていた。
 
 
「………なら、絶対に負けられないな、俺たちは。」
 
「キミは、”戦う以外の道”を。 俺は”自分の記憶”を手に入れるために。」
 
「─────絶対に、勝とう。」
 
 
男がそういうと、女は少し驚いたような顔をし…そして、年相応の美しい笑顔で微笑んだ。
 
 
.


 
 

 
 
 
【■■■特異点 : ■■■■■”???”】
 
 
 
薄紫に染まった大地に、宇宙空間のような星空。
ただそれだけしか存在しない場において、その男はまるで”星”のように輝いていた。
 
その輝きは、星の痣の一族たちと、超級のサーヴァント達。
そして、カルデアのマスターであろうとも、その男を前にして、無策に突っ込むことを躊躇わせた。
 
死人の如き青白い肌、腰まで伸びた長髪、顔には星形の模様。
異様な風体でありながら、その男は圧倒的な悪意と共に、その場に立っていた。
 
 
≪この、「基本世界」においては………ジョースター共が私を倒したと聞いていたが………≫
 
 
≪今のこのDIOには、貴様ら程度は話にならんぞッ!!!≫
 
 
その男……DIOがそう叫び、こちらに一歩足を進めたその時、彼らは動いた。
 
 
「『ソフト&ウェット』!!」
 
 
定助が自身の首の痣からシャボン玉を生み出し、地面に向かって投げつける。
 
 
「地面から『摩擦』を奪った……行けっ!!」
 
 
定助がそういうが早く、『摩擦』を奪われ、ツルツルになった地面の上を、二つの影が疾走する。
 
 
『続きなさい、モードレッド!!!』
 
 
『おうよ、父上ッッ!!』
 
 
スキル『魔力放出』によって、地面の上を弾丸のような速度で滑っていく二人のサーヴァントは、
共にその宝具である、”聖剣”と”魔剣”を構える。
 
 
『約束されし(エクス)───────!!』
 
 
『我が麗しき(クラレント)─────!!』
 
 
 
≪THE WORLD(ザ・ワールド)………≫
 
 
.




輝きを増していく二つの剣を見ても、DIOは余裕の表情を崩さず、
自身の傍らに、白銀と黄金に彩られた【スタンド】を呼び出す。
 
 
『─────勝利の剣(カリバー)!!!!』
 
 
『─────父への叛逆(ブラッドアーサー)!!』
 
 
そして、二人の剣から放たれた地獄の業火の如き赤雷と、
黄金のフレアの如き光の断層が重なり、真っすぐにDIOに向かう──────しかし。
 
 
 
≪………OVER HEAVEN(オーバー・ヘヴン)!!!≫
 
 
 
DIOが天国へ到達したことにより進化した己が【スタンド】の名を叫ぶと、
”ザ・ワールド”はその拳を振るい………聖魔の剣による攻撃を、いとも容易く”消失”させた。
 
 
『なっ─────』
 
 
 
≪生っちょろいぞ、【サーヴァント】どもッ!!≫
 
 
 
DIOがそういい、そのままアルトリアとモードレッドに”ザ・ワールド”を向かわせようとするも、その体に影が落ちる。
 
 
『熱砂の獅身獣(アブホル・スフィンクス)よ!!』
 
 
オジマンディアスが叫ぶと、
その背後から獅子の体と、人の貌を持った怪物が現れ、赤熱化した巨大な爪でDIOに襲い掛かる。
 
 
 
≪学習をしないマヌケがッ!!≫
 
 
 
しかし、そのスフィンクスも”ザ・ワールド”の拳によって殴り飛ばされ、消滅してしまう。
………だが、消滅する最中、その背から一匹の馬が跳び立った。
 
 
「タスク─────ACT4ッ!!」
 
 
 
≪無駄無駄無駄………≫
 
 
 
撃ち抜かれると、次元すらを超えるエネルギー【無限の回転】によって、相手に対するジョニィの意志を必ず実現させる【タスク ACT4】。
例を挙げるとすれば、もし相手に対して殺意を持って撃ち抜けば、
撃ち抜かれた相手はいかなる抵抗を持ってしても、殺害というジョニィの意志からは逃れられない…
 
しかし、その絶対ともいえる【無限の回転】のエネルギーすら、DIOの”ザ・ワールド”の拳で振り払われ、消え去ってしまう。
 
 
 
≪さぁて………無駄な抵抗も終わったか? そろそろ、【聖なる遺体】と………貴様らの命を、頂いておこうか。≫
 
 
 
DIOがそう言い、ゆっくりと近づいてくる………しかし、その時。
 
 
 
『───”白鳥のように飛び立て。この池は、おまえたちの住む場所ではない”。』
 
 
≪む………?≫
 
 
 
自身によく似た声が響き、DIOがそちらに顔を向けると、そこにいたのはこの場に似つかわしくない一人の少年。
サイズの合っていない白衣を付け、メガネをかけたその蒼い少年はタブレット機器を掲げ、そう詠唱する。
 
その詠唱が終わると同時に、DIO以外の者は光り輝き、一瞬にしてその場から消えてしまった。
 
 
 
≪………フン、役立たずがこの場になぜいるかと思ったが………仕事をさせてしまったか。≫
 
 
≪まぁいい………すべてに勝利し、頂点に立ち、支配するのは………この、DIOのみ!!!≫
 
 
 
.


 
 

 
 
 
 
『………さて。 それでは、どこから話すべきか。』
 
 
杜王町にあるカフェ・ドゥマゴ。
そこで一人の青い少年………アンデルセンが、
星の痣の一族、サーヴァント、そして自分のマスターの前で話を始めた。
 
 
『マスターとそこのマッシュポテト頭には前にロンドンで言ったが、
 他の連中は知らんだろうから最初から説明してやろう。 新規層は大切にしないとな。』
 
 
『まず、【サーヴァント】を呼び出す英霊召喚とは本来、人類存続を守る抑止力の召喚であり、霊長の世を救うための決戦魔術だ。』
 
『”霊長”と”築き上げられた文明を滅亡させる”【ただひとつの敵】を討つために彼らは七つの器を持って現界し、【七騎の英霊】として召喚される。』
 
『そしてその英霊の中でも、そのクラスの頂点に立つ者………即ち、【冠位(グランド)】の器のサーヴァントは【世界に対する英霊】だ。』
 英霊でありながら生者であるため、マスターに召喚されなくとも単独で行動できる上に、通常のサーヴァントと桁違いの力を誇っている。』
 
『サーヴァントは、大なり小なり生前より強化されている。
 俺なんぞ、生前に魔術なんてさっぱり使えんかったし、筋力だって英霊として最低ランクであろうと常人の10倍はある。』
 
『────つまり、あの”DIO”とかいう奴は、それを狙っている。』
 
 
アンデルセンの流れるような言葉の最中、突如投げ込まれたその言葉に
場の空気が今まで以上の緊迫感を帯びる。
 
 
『【聖なる遺体】と【聖なる杯】……ハン、体そのものとただの食器では内包される神秘は比べ物にならんだろうよ!』
 
『その力に指向性を持たせ、自身を【英霊】へと変化させる………
 いや、そんなことをしなくとも、この世界で死んだ”DIO”の器を乗っ取って召喚されてもいいか。』
 
 
『【世界に対する英霊】として、【冠位(グランド)】の器のサーヴァントとしてこの世界に召喚されることによって、
 自身の全ての能力を強化し、【サーヴァント】としても、【スタンド使い】としても、最強の存在となり、すべてを支配しようとしている。
 
『──────フン、在り来たりでバカバカしい素人のやりそうな展開だ!』
 
『強いものをさらに強くしたらいいだとか、素人考えにもほどがある。
 暇つぶしに読む小話としてはいいかもしれんが、連載も長編も望めんな!』
 
 
「………それで、もしそうなった時、俺達に対抗策はあるのか?」
 
 
『無い。』
 
 
.


 
 
どこか舞台俳優のように語り続けるアンデルセンに、学生服の男……承太郎が
真剣な眼差しで聞くが、アンデルセンはその言葉をバッサリと切って捨てる。
 
 
『奴が【冠位(グランド)】の器のサーヴァントとして召喚されるのならば、
 推定だが【裁定者(ルーラー)】のクラスになるだろう。』
 
『【聖なる遺体】の力によって召喚されるならば、それは【聖杯】の意思によって呼ばれたこととほぼ同義だ。
 あれだけの力があれば、無理やりそのクラスにねじ込むことも不可能ではないだろう。』
 
『もしそうなれば、奴のあの謎の力に加えて、【裁定者(ルーラー)】のクラススキルとして、
 サーヴァントの真名を知ることができる【真名看破】と、
 サーヴァントに使用可能な令呪を各サーヴァントごとに二画保有、加えて10キロ四方に及ぶサーヴァントに対する知覚能力が与えられる。』
 
『サーヴァントで対抗できないのだ、後は【ガイア】に任せるしかないかもしれんが、
 あの神獣であるスフィンクスでさえ対抗できなかったのだ、どうなることか分からん。』
 
 
『………では、どうするというのですか、ハンス・クリスチャン・アンデルセン。』
 
 
旗を携えた金の髪の女性…ジャンヌがそう問うと、
アンデルセンは心底面白そうににやりと笑った。
 
 
『決まっている! 貴様らが好きなアニメでも特撮でもよくある手を使えばいい!』
 
『”改造人間”には”改造人間”で!! ”怪獣”には”怪獣”で!!
 ”スタンド使い”には”スタンド使い”で! そして………”サーヴァント”には、”サーヴァント”で。』
 
 
そう語るアンデルセンの手には、自身の宝具である一冊の本と、
更にもう一つの本………【” JOJO’S BIZARRE ADVENTURE ”】と書かれた本が、携えられていた。
 
 
「相手が【サーヴァント】になるというのなら………こちらも、同じ手で対抗してやればいいだけのことだ。」
 
 
.


 
 

 
 
 
【■■■特異点 : ■■■■■”???”】
 
 
 
≪なん………だと………?! 貴様ら………ジョースター共ッ?!≫
 
 
 
「どうした、DIO………鳩が豆鉄砲を食ったような顔してよ………」
 
 
【聖なる遺体】の力で、ジョースターの血統を呼び出し、
今度こそ一人残らず消し去ろうとしたDIO。 しかし、その顔には、驚愕の色が浮かんでいた。
 
 
 
「今こそ、浄めてやるッ!!その穢れたる野望を!!」
 
 
ジョースターの血統による奇妙な冒険の始まりの男、ジョナサン・ジョースター。
今、その身には青と銀に彩られた甲冑を纏い、背には蒼のマント。
そして、その手には黄金の輝きを放つ聖剣を構えている。
 
 
 
「人をバカにしたてめーの態度を……文字どおり打ち砕いてやるぜ!!」
 
 
ジョナサン・ジョースターの孫であり、策略の天才たる波紋使い、ジョセフ・ジョースター。
今、その身は豪奢な黒いコートを羽織り、頭には黒と金の海賊帽。
右手には鋼鉄のクラッカーを構え、左手にはクラシックな拳銃を構えている。
 
 
 
「今、この東方仗助はよォ〜……テメェを、ゴールデンに、グレートに…最高にブチのめしたいと思うぜッ!!」
 
 
ジョセフ・ジョースターの息子であり、この世のどんなものよりも優しいスタンドを持つ男、東方仗助。
今、その身には威圧感のあるコートを着、額にはグラサンをかけ、腰には金色の【GREAT】と刻まれたバックルが輝いている。
その後ろに立つ自身のスタンド、”クレイジー・ダイヤモンド”と共に金と黒の大斧を構える。
 
 
.


 
 
「お前の行動は……全て、”無駄”なんだ。 …あんたははたして滅びずにいられるのかな?」
 
 
魔人の血を受け継ぐ黄金の少年、ジョルノ・ジョバーナ。
今、その身には黄金の鎧が纏われ、金の髪は逆立っている。
その背後には、己がスタンドである”ゴールド・エクスペリエンス レクイエム”が腕を組んで立ち、
背後の揺らめく空間から顔を出す無数の武具と共に、圧倒的な威圧感を放っている。
 
 
 
「ここで決着をつけるッ!!」
 
 
承太郎の娘であり、星の光を見つめ、希望を目指す女、空条徐倫。
今、その身は深紅の衣に包まれ、その髪は伸びて金に染まっている。
右手には赤雷を迸らせる魔剣を構え、左手からは無数の糸が伸び、揺らめいている。
 
 
 
「もう『迷い』はない…存分に足掻いて見せろよ。」
 
 
『マイナス』である自分が『ゼロ』に戻るために戦う、”漆黒の意思”を持つ男、ジョニィ・ジョースター。
今、その身は褐色の肌となり、彼が騎乗するスローダンサーにも黄金の装飾が煌いている。
彼の手には爪弾が回転しており、黄金の回転が自らの身に無限のエネルギーを蓄えていく。
 
 
「お前のセリフは〜聞こえないなあ…オレはもう聞きたくない…フザけたセリフは聞かないことにした!!」
 
 
記憶を失いながらも、『呪い』を解くために……『真実』を探し求める男、東方定助。
今、その身にはには、輝く刺青が刻まれ、無機質ながらも、黄金の意思をその瞳に輝かせている。
背後に立つスタンド、”ソフト&ウェット”は三条の輝きで彩られ、右手には三条に輝く剣を構え、剣身からは無数のシャボン玉があふれている。
 
 
.

 
 
「その程度が、お前の『真実』ならば……」
 
 
無敵のスタンド使いであり、かつてDIOを打倒した男、空条承太郎。
今、その身は純白のマントによって包まれ、その背後には一本の輝く旗がはためいている。
傍らに立つスタンド、”スタープラチナ”もマントで包まれ、その額には白銀のフェイスガードが輝いている。
 
 
「………『俺達』には、勝てねぇぞ………DIO。」
 
 
 
DIOと対峙する承太郎の後ろでは、大盾を構えたマシュと、その隣にカルデアの魔術師にして、
【”デミ・サーヴァント”であるジョースター達のマスター】たる黒髪の少年………スピードワゴンが、その手に刻まれた令呪を構えていた。
 
 
「令呪を用いて全画用いて命ず! ”ジョースターの血統達よ!! 今こそ、全ての元凶であるDIOを倒せ”!!」
 
 
スピードワゴンがそう詠唱すると同時に、
その傍らに立っていたアンデルセンがペンを走らせ、自身の宝具を発動する。
 
 
しかし、その姿を見たDIOは、憎々しげに顔を歪ませ、己がスタンドである”ザ・ワールド オーバーヘヴン”を呼び出す。
 
 
≪くだらんッ!! 数をそろえて、サーヴァントの力を得た……その程度で、このDIOに対抗できるとでも思ったか!!≫
 
 
 
≪お前たちがいくら自分を強く仕立て上げようと、このDIOには敵わん!!
  お前たちはこのDIOにとって……………モンキーなんだよ、ジョジョォォォォォ!!≫
 
 
 
『お前たちの物語を書き上げよう………そう………タイトルは………』
 
 
 
 

 
 
 
 
【Fate/Grand Heaven】
 
 
これは、その青春の物語。
 
これは、その誇り高き血統の物語。
 
これは、未来への遺産を守る物語。
 
これは、砕けえぬ心の物語。
 
これは、黄金なる意思の物語。
 
これは、石作りの海から脱却する物語。
 
これは、己のマイナスをゼロへと戻すための物語。
 
これは『呪い』を解く物語。
 
 
そしてこれは─────────未来を取り戻す物語だ。
 
 
2016年03月09日(水) 22:51:39 Modified by ID:nVSnsjwXdg




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