Ｆａｔｅ／Ｅｘｔｒａ Ｒｅｖｅｒｓｅ
西暦２０３０年、世界の３割は、『西欧財閥』の管理下に置かれていた。１９７０年代に起こった大災害をきっかけとして、人類は衰退の道を歩んでおり、その中で最大の勢力として、徹底した管理社会によって人類の延命を行っているのが『西欧財閥』であり、その『西欧財閥』の中心にある存在が『ハーウェイ財団』であった。
だがハーウェイとて、最初から『西欧財閥』を牛耳っていたわけではない。かつてはハーウェイとしのぎを削っていた存在があった。
その名は『スピードワゴン財団』。
しかし、核となる一族が戦いの果てに絶えてしまった結果、『スピードワゴン財団』は勢力争いに敗北し、今では『西欧財閥』の一部として、ハーウェイに利用される存在となっていた。それでも、消滅を免れているのは、彼らが独自に保有する知識と人材が、今なお高い価値を持つからである。
その高い価値を有する人材の中で、内外から最も恐れられている一人が、月へと足を、否、魂を踏み入れる。
世界をハーウェイの望むままにさせないために、今は亡き友たちが望まぬ未来を阻むために。
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・
・
レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイは、その人物を前にして、いつも抱く印象がある。
『善良そうな面持ち』『平凡』『臆病』
そして、
『内側に通った芯』『地に足がついている』『真っ直ぐに前を見ている』
この月の舞台で、成人から高校生ほどの姿に変わっていても、弱さと強さを兼ね揃えた、幾つもの印象は、変わらず感じられる。
この混沌とした、明日も知れない世界で、目の前の彼や、彼の所属する『スピードワゴン財団』の者たちは、なおも未来を目指している。それこそが、『星の一族』が遺した最大の遺産なのだろうか。
あるいはレジスタンス側の最有力者である遠坂凛や、アトラス院の刺客たるラニ�疾い茲蠅盒�敵になるかもしれない男に、レオは王としての威厳をもって、話しかけた。
「スピードワゴン財団から、まさか貴方が参戦するとは思いませんでしたよ。スピードワゴン財団の中核。レジスタンスからの刺客を尽く退け、あまつさえ、一部は味方に寝返らせてしまうほどの実力と人望の持ち主」
スピードワゴン財団の中で、最も『戦争に似つかわしくない男』。
「『悪人たらし』の広瀬康一」
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広瀬康一は、一回戦の相手を前にしていた。
蝶ネクタイをした少年のサーヴァントを連れた、妖艶な美貌とグラマラスな肢体を持つ尼僧。
「あらあらこれは可愛らしい殿方ですね。このような場で出会うとは残念なことです」
その言葉、その仕草は優しく、人を蕩かす魅力に溢れている。
けれど、康一の経験は、目の前の女性の危険さを鋭敏に感じ取っていた。
出会ったばかりの山岸由花子や岸辺露伴、そして何より、あの殺人鬼に似たもの。
己の目的のためなら人を踏み躙ることを躊躇わず、己が快楽のためならどれだけの罪を犯しても、全く心を痛めない。
そんな『ドス黒い悪』だ。
「一応言っておくけど……僕を甘く見ないでほしい。殺生院キアラ」
戦いは始まる。それも幾度も。
互いの命と、希望を賭けて。
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・
『シブイねぇ……まったくおたくシブイぜ。けど緑色の兄ちゃんよぉ、あんたは森を住処としていたらしいが、海は知っているかい？ 相手の消耗を強いるのが、自分だけだと思っちゃあいけねえよ』
かつて月の名を冠する刺客であった男が、月の海でいやらしく笑う。
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『流石にランサー、大した速さだ。だが、高さなら俺たちの方が上だ！ 頼むぜライダー……アームストロング！ 俺をあんたと並び立てる男にしてくれ！ 俺は、アポロ１１号になるんだァーーーッ！！』
社会に踏みにじられ、ズタボロになっていた男は、眠れる魔人の血を滾らせ、空よりも高い野望へと昇っていく。
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・
『月の裏側には、逃げ延びたナチスが基地を建造している。そんな都市伝説があったと言うが………残念ながら、それはなかった。流石に当時は【俺】のような、サイボーグを生み出すのが限界だった。それでも古臭いエジプトや中国ごときに負けることはない！ さあ行くぞ！ ドイツのォォ、科学力はァァァ、世界一ィィィ！！』
かつてタイプ・アースに至ろうとした存在が、星の彼方へと追放されるのを見送った男が、今度は自らが星の世界で力を振るう。
・
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・
『太陽の力を持った剣士（セイバー）が、貴方一人だとは思わないことね、ガウェイン卿。言っておくけど、私のセイバーは、無敵なんだから』
白雪の妖精の如き少女が、恐く微笑み、その背中を護るように、逞しく鍛え上げられた男が立つ。その首筋には、星の形の痣が、刻まれていた。
・
・
・
人の数だけ物語はある。月の聖杯戦争本選に選ばれた、１２８名。予選で落とされた、無数のウィザードたち。彼らにもそれぞれ、物語はあった。
これは、主人公が戦わなかった、トーナメントの『逆位置』の物語。
【Ｆａｔｅ／Ｅｘｔｒａ Ｒｅｖｅｒｓｅ】
公開未定
だがハーウェイとて、最初から『西欧財閥』を牛耳っていたわけではない。かつてはハーウェイとしのぎを削っていた存在があった。
その名は『スピードワゴン財団』。
しかし、核となる一族が戦いの果てに絶えてしまった結果、『スピードワゴン財団』は勢力争いに敗北し、今では『西欧財閥』の一部として、ハーウェイに利用される存在となっていた。それでも、消滅を免れているのは、彼らが独自に保有する知識と人材が、今なお高い価値を持つからである。
その高い価値を有する人材の中で、内外から最も恐れられている一人が、月へと足を、否、魂を踏み入れる。
世界をハーウェイの望むままにさせないために、今は亡き友たちが望まぬ未来を阻むために。
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レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイは、その人物を前にして、いつも抱く印象がある。
『善良そうな面持ち』『平凡』『臆病』
そして、
『内側に通った芯』『地に足がついている』『真っ直ぐに前を見ている』
この月の舞台で、成人から高校生ほどの姿に変わっていても、弱さと強さを兼ね揃えた、幾つもの印象は、変わらず感じられる。
この混沌とした、明日も知れない世界で、目の前の彼や、彼の所属する『スピードワゴン財団』の者たちは、なおも未来を目指している。それこそが、『星の一族』が遺した最大の遺産なのだろうか。
あるいはレジスタンス側の最有力者である遠坂凛や、アトラス院の刺客たるラニ�疾い茲蠅盒�敵になるかもしれない男に、レオは王としての威厳をもって、話しかけた。
「スピードワゴン財団から、まさか貴方が参戦するとは思いませんでしたよ。スピードワゴン財団の中核。レジスタンスからの刺客を尽く退け、あまつさえ、一部は味方に寝返らせてしまうほどの実力と人望の持ち主」
スピードワゴン財団の中で、最も『戦争に似つかわしくない男』。
「『悪人たらし』の広瀬康一」
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広瀬康一は、一回戦の相手を前にしていた。
蝶ネクタイをした少年のサーヴァントを連れた、妖艶な美貌とグラマラスな肢体を持つ尼僧。
「あらあらこれは可愛らしい殿方ですね。このような場で出会うとは残念なことです」
その言葉、その仕草は優しく、人を蕩かす魅力に溢れている。
けれど、康一の経験は、目の前の女性の危険さを鋭敏に感じ取っていた。
出会ったばかりの山岸由花子や岸辺露伴、そして何より、あの殺人鬼に似たもの。
己の目的のためなら人を踏み躙ることを躊躇わず、己が快楽のためならどれだけの罪を犯しても、全く心を痛めない。
そんな『ドス黒い悪』だ。
「一応言っておくけど……僕を甘く見ないでほしい。殺生院キアラ」
戦いは始まる。それも幾度も。
互いの命と、希望を賭けて。
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『シブイねぇ……まったくおたくシブイぜ。けど緑色の兄ちゃんよぉ、あんたは森を住処としていたらしいが、海は知っているかい？ 相手の消耗を強いるのが、自分だけだと思っちゃあいけねえよ』
かつて月の名を冠する刺客であった男が、月の海でいやらしく笑う。
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『流石にランサー、大した速さだ。だが、高さなら俺たちの方が上だ！ 頼むぜライダー……アームストロング！ 俺をあんたと並び立てる男にしてくれ！ 俺は、アポロ１１号になるんだァーーーッ！！』
社会に踏みにじられ、ズタボロになっていた男は、眠れる魔人の血を滾らせ、空よりも高い野望へと昇っていく。
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『月の裏側には、逃げ延びたナチスが基地を建造している。そんな都市伝説があったと言うが………残念ながら、それはなかった。流石に当時は【俺】のような、サイボーグを生み出すのが限界だった。それでも古臭いエジプトや中国ごときに負けることはない！ さあ行くぞ！ ドイツのォォ、科学力はァァァ、世界一ィィィ！！』
かつてタイプ・アースに至ろうとした存在が、星の彼方へと追放されるのを見送った男が、今度は自らが星の世界で力を振るう。
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『太陽の力を持った剣士（セイバー）が、貴方一人だとは思わないことね、ガウェイン卿。言っておくけど、私のセイバーは、無敵なんだから』
白雪の妖精の如き少女が、恐く微笑み、その背中を護るように、逞しく鍛え上げられた男が立つ。その首筋には、星の形の痣が、刻まれていた。
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人の数だけ物語はある。月の聖杯戦争本選に選ばれた、１２８名。予選で落とされた、無数のウィザードたち。彼らにもそれぞれ、物語はあった。
これは、主人公が戦わなかった、トーナメントの『逆位置』の物語。
【Ｆａｔｅ／Ｅｘｔｒａ Ｒｅｖｅｒｓｅ】
公開未定
2015年06月28日(日) 22:24:26 Modified by ID:U2AS0iGpzg