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人外だらけの聖杯戦争17

   
   人外だらけの聖杯戦争17 最後の夜の前に


 バーサーカーやフー・ファイターズと戦った次の日の昼、灰色の雲に覆われ、日の射さない空の下、士郎と凛、セイバーとアサシンは、言峰教会の前に立っていた。

 なぜ彼らがここにいるのか。それを説明するために、その日の朝まで、時を遡ることにする。

   ◆

 フー・ファイターズが去り、キャスターとライダーが消えた直後、イリヤはその意識を失って倒れた。戦闘の疲れ、サーヴァントを失ったショックなどが重なったことで、心身に限界が来たのだろう。もちろん、気絶した少女に止めを刺すなどといったことが、残されたマスターたちにできるはずもなく、彼女は衛宮邸に保護されることとなった。
 朝日が昇っても眠り続けるイリヤをそっと寝かせたまま、士郎たちは朝食をとった。

『それで? これからどうするんだよ』

 アサシンがドッグフードを頬張りながらたずねた(口が塞がっていても話せるのは念話の長所である)。

「あのフー・ファイターズを名乗ったサーヴァントもどき………前回の聖杯戦争からの生き残りだと言っていたけど、あいつにもマスターが存在している。まだ見ぬ敵ということになるわ。最後にして最大の脅威………というところね」

 フー・ファイターズの力は見せてもらった。その戦闘力は、決してこちらを圧倒するものではないが、倒しても倒しても増殖する能力は、非常に厄介だ。限界が見えない。

「そんなわんこそばみたいな相手よりは、マスターを直接倒した方が確実であると思うけど………どこにいるのかまるで情報がないのよね。マキリの蟲なんかについてとか、かなり広く深く、情報を集めてあるみたいだけど」

 凛は難しい顔で唸る。

「到底一朝一夕で集まるような情報じゃない。でも、長く潜伏しているはずなのにまるで尻尾をつかめない………」

 ずっと引き籠っているならまだしも、情報収集などの動きがあるのに、それでもマスターの姿が見えない。冬木の外からやってきた魔術師が活動すれば、何かしら気付くべきことをするであろうに。
 工房をつくるにせよ、食糧や備品を調達するにせよ、そこに存在して生物として生きていく以上、そのための行動を起こし、その行動は他者の目に映ってしかるべきである。
 しかし、桜から聞いた話からして、間桐もその情報は掴んでいなかったようだし、イリヤスフィールの反応からしてもまったく予想外だったようだ。この町のことを最もよく知っている御三家の魔術師がそろって、存在を嗅ぎつけてもいない何者かがいる。
 あるいは魔術師でない可能性もある。聖杯戦争の始まりと前後して、この町の行方不明者の数が増えているが、あるいはフー・ファイターズがマスターから魔術供給ができない代わりに、贄として食らっているのかもしれない。

「解決策ってわけじゃないけど、ここは綺礼に報告した方がいいわね……」

 言峰綺礼は、聖堂教会から派遣された聖杯戦争の監督役であり、魔術の一般人への漏洩や、敗北したマスターの保護といった役目をになっている。第8のサーヴァント、フー・ファイターズという異常事態について、報告は行っておくべきだろう。
 幸い、今日は日曜日であることだし。

   ◆

 と、いった事情により、彼らは教会を訪問していた。ただ報告だけなら一人でもいいのだが、いつフー・ファイターズの襲撃があるかわからない以上、できるだけ二人でいた方がいいという判断により揃って来たわけである。
 しかし、

「留守か………?」

 士郎の言うとおり、教会には人っ子一人いなかった。扉には鍵がかかっていなかったが、開けてみても明かりのついていない静かな空間があるだけである。

「おかしいわね。行くという連絡は、今朝の電話で言っておいたのにいないなんて………」
『いや………そうでもないぜ?』

 凛は頭を掻いてため息をついたが、足元のアサシンは緊張した様子で答えた。

「………何よ?」

 そんなサーヴァントの様子に、凛も身構える。

『匂いがするんだよ。あの………プランクトン野郎の、腐った泥みてえな匂いが!! 【賢者を超えた愚者(ザ・フール)】!!』

 アサシンの守護霊が姿を現した瞬間、天井から黒い影が降ってきた。士郎と凛の間に着地した影を、【賢者を超えた愚者(ザ・フール)】の爪が襲う。その爪は、不可視の障壁によって防がれる。

「魔術による壁!? 魔術師か!」

 凛の指先からガンドが放たれる。だがそのガンドも、障壁にはじかれる。その様子から、凛はこの影が凄腕の魔術師であることを確信する。その障壁の質からして、あるいは凛さえ上回る力量を持っていると。

「『ウッシャアアアアアア!!』」

 続いてセイバーの刃が抜き放たれた。壁があろうと、壁をすり抜けて切り裂く魔剣が、人影に迫る。

 ザグンッ!!

 白刃は確実に人影をとらえ、斬撃を与えた。しかし影は怯みもせずに剣の間合いの外に跳び退いた。

「『………!! この感触、あのエルメロイって奴と同じだ!!』」

 セイバーの刃を突き立てても平然としていた、ランサーのマスター、エルメロイ。あの時と同様、影も深く切られてなお、痛む素振りも見せずに立っていた。

「なるほど………あのエルメロイって男も、貴方だったのね。『フー・ファイターズ』」
「………察しがいいことだ」

 人影は凛の呼びかけを肯定した。その顔は薄暗い礼拝堂の中ではよく見えないが、肌の色や黒い髪からすると、東洋人、おそらくは日本人らしい。身にまとう衣服は最高級のスーツであり、それが完璧に似合っている。
 人間にしか見えないが、さきほどセイバーに斬られた傷口から流れ出るのが、赤い血ではなく、黒い粘液であるということが、その正体を明らかにしていた。

「その黒い粘液、エルメロイも流していたわね。直に変身したって感じではない。伝説や民間伝承の中には、人間の皮を着ぐるみのように被ることで、人間に変装する怪物の類が存在するけど、貴方もそんなものなんでしょう?」
「これまたご名答! この人間は十年も前に死んでいてね、その体を借りてこうして動いているのさ。この体に残った知識や記憶を利用すれば、こうして魔術も使うことができる。中々便利なものだよ」

 人影――フー・ファイターズは、右手の人差指を伸ばし、士郎に向けて突き出す。士郎はその動作で相手が何をするかわかった。これまで何度も見たことのある動作だったからだ。そして、人差し指の先端に光が灯った。

「Fixierung(狙え),EileSalve(一斉射撃)」

 放たれた魔弾が、セイバーへ迫る。

「『はっ! こんなもん!!』」

 しかしセイバーはその弾丸を容易く跳ね返した。進行方向を変えた弾丸は、ステンドグラスを突き破って、耳障りな音をたてる。外の明かりが教会内に入り、少しは暗さが改善された。
 それによってフー・ファイターズの姿もよりはっきりと見えるようになり、その顔も、しっかりと確認できた。

「っ!? そ、そんな!?」

 凛が息をのむ。その顔色は蒼白で、動揺を隠す余裕もなく震えていた。

「どうした? 遠坂の家訓は、どんな時でも余裕を持って、優雅たれ……だろう? そんなことではいけないな」

 さらされたフー・ファイターズの顔は、あごひげを生やした、落ち着いた風采の男性であった。貴族的な端正な顔立ちをしているがか弱くは無く、むしろ鉄の強さを内包している。だが、一目見ただけで動揺するような顔とは言えない。

「そんっ、なっ、貴方はッ………」
 
 だが凛の異常は終わらなかった。舌も上手く回らないようで、つっかえながら絞り出すように言葉を口にする。



「お父様………ッ!!」

 フー・ファイターズは、前回の聖杯戦争のさ中で命を落とした、遠坂凛の父、遠坂時臣の姿で立っていた。

   ――――――――――――――――

「………やはり大分消耗しているようだな」

 言峰綺礼はいまだに眠り続けるイリヤスフィールを右肩に担ぎ、衛宮邸を出る。
 聖杯の器であるイリヤは、英霊の魂をその身に吸収するたびに、その身を聖杯へと近づけ、人間から、生物から遠ざかっていく。すでに5体の英霊を吸収した彼女の体は、相当の負担を背負っているはずだ。

(凛たちは今頃、教会で『時臣』の襲撃を受けていることだろう)

 朝に連絡を受けてから、即興でこの誘拐計画は練られた。
 教会に訪れた士郎たちが戦っている間に、イリヤを手に入れる。それだけの単純な計画。しかし、士郎たちが言峰を疑っていない以上、ほぼ確実に成功する計画。

(彼らの死にざまを見れないだろうことは残念だがな。『時臣』の【左手】に勝つことは、おそらくできまい)

   ――――――――――――――――

「お父様って………こいつが遠坂の?」

 セイバーではなく士郎が反応する。士郎にとって、義父である衛宮切継は言葉にすることも難しい特別な存在。そんな自分の想いと、凛を重ね合わせ、現状の辛さを認識する。
 いくらこの『時臣』が、姿が同じだけの別存在であると、頭で理解しているとはいえ、心は震えてしまう。

「そういうことだ。さて、顔見せも済んだところで………」

『時臣』の右手に炎が生まれる。遠坂時臣の魔術属性は『火』。火の魔術は最も得意とするところであり、今生み出した炎も、大きさは野球ボール程度だが、岩をも熔かす威力を充分に秘めている。

「本格的にやるとしようか」

 小さな火球は急激に膨張し、直径1メートルほどの巨大な球体となって発射された。

『呆けてんじゃねえぞマスター!!』

 アサシンが【賢者を超えた愚者(ザ・フール)】で凛をかばおうとするが、いかんせん、【賢者を超えた愚者(ザ・フール)】の速度はそう速いものではない。凛に手が届く前に、凛の身が炎に飲み込まれるのは避けられなかった。

「………舐めんな!!」

 ビリビリと空気を震わせるほどの声を張り上げ、凛の手から宝石が放たれる。この聖杯戦争のとっておきとなる切り札の一つが、その威力を解放した。
 宝石に込められた魔力は一条の光線となり、炎の塊を貫き、そのまま吹き飛ばし、かき消してしまう。それでもなお威力はおさまらず、『時臣』の右肩をかすめて、背後の壁に直撃し、爆発を引き起こす。

「―――――ッ!!」

 爆風はさほどでもなかったが、壁には象も出入りできそうなほどの大穴が空き、かすめただけの『時臣』の右肩から先の腕は、綺麗に消滅してしまっていた。


「よくも、よくも私にお父様の姿を攻撃させてくれたわねぇ? ぶちのめしてから、またぶちのめしてあげるから覚悟なさい!!」
「なるほど………動揺を怒りで吹き飛ばしたか。余裕はなく、優雅でもないが、手強いものだな」

 言いながら『時臣』がパチリと指を鳴らすと、壁を壊した余波でついた火がかき消える。強烈な覇気を身に浴び、それでも『時臣』は余裕を崩さず、その仕草は優雅と言えた。

「やはり、使うべきだな」

 そして彼は、【左手】をかざす。

 左手と重なるように、人間のものではない別の左手が浮かび上がり、浮かび上がった左手の甲からソフトボールほどの大きさの塊が、セイバーに向けて発射された。

「『ぬお!!』」

 咄嗟にその塊を県で弾く。速度は野球選手が投げるボールくらいのものだったが、剣を通じて感じた重量感からして、生身の体にあたっていれば、肉がへこまされてめり込まれていただろう。
 そして弾かれた塊は教会の祭壇に向かって飛んでいき、飾られた磔刑にされたキリスト像に命中する。直後、キリスト像は粉々に吹き飛んだ。
 凛は、その爆発を見て緊張を高める。優れた魔術師である彼女には、今のが魔術によるものでないことがわかったのだ。魔術であれば強力であっても、凛になら対処できるが、これはそう簡単にはいかないということが。

 爆発が納まった後、爆発の中心部からさきほどの塊が転がり落ちた。爆発したと思えたそれは傷一つ見受けられなかった。
 キュルキュルと音をたてて動き出したそれの外見は、どくろの顔にキャタピラがついた小型戦車というようなものであった。

『…………コッチヲミロ〜〜〜』

 不気味な声で、それは鳴いた。

   ◆

 それは【温もり潰す妄執の左手(シアー・ハート・アタック)】。かつて、第四次聖杯戦争で言峰綺礼が召喚したアサシンのサーヴァントが使用した『第2の爆弾』。

 前回のアサシンのサーヴァントの名は吉良吉影。最初から最後まで、一見忠実に行動しながら、心の奥底どころか片鱗さえも見せようとはしなかった男だった。
 しかしその宝具は異常なまでに強力だった。

 触れたものすべてを爆破する、『破壊』に関しては第四次聖杯戦争随一の力を持つ、【髑髏をかざす爆殺の女神(キラー・クイーン)】。

 敵を自動追跡する爆弾戦車、【温もり潰す妄執の左手(シアー・ハート・アタック)】。

 そして戦争中は結局使えなかったが、時間を爆発させて巻き戻すという【敗死を強いる静かなる過去(バイツァ・ダスト)】。

 自身の知性、判断力も高いものだったが、いつ寝首をかかれるかわからないというアーチャー『DIO』の判断もあり、キャスター『ファニー・ヴァレンタイン』との戦いの中で見捨てられ、消滅した。
 ただ、その戦いの中で切り落とされた左手は、綺礼によってフー・ファイターズに移植され、今に至るまで存在してきた。

 いつか使うかもしれない、強力な武器として。

   ◆

『コッチヲミロ〜〜〜』

 そしてついに、世界最強の男をも殺しかけた爆弾は、再び動き出す。



  ……To Be Continued
2010年11月21日(日) 21:34:48 Modified by ID:rYhLxnf/bw




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