人外だらけの聖杯戦争２４
人外だらけの聖杯戦争２４ 新たなる旅路
聖杯戦争が終わって、衛宮士郎の世界はまた日常に戻った。
間桐桜は遠坂桜として、遠坂凛の妹に戻ることになり、イリヤスフィールは藤村大河の家に引き取られることになった。
士郎はこれからも凛の弟子として魔術を習うことになっている。今の士郎はもはや無視しておくには強すぎるし、放任するには未熟すぎる。その特別な投影魔術は、そのままにしておけば、いつ他の魔術師の実験材料として狙われてもおかしくないのだ。
「投影、開始（トレース・オン）」
今の士郎の日課は、ある武器を作りだすことである。水に濡れたような輝きを放つ、怜悧な剣。銘はアヌビスとなるのだろうか。
（意志を宿したものを投影するのは無理だろうけどな………）
しかし、これが最も手に馴染んでしまっているのは間違いない。これを瞬間的に投影できるようにし、別世界の士郎が基本的に干将・莫耶を使ったように、この剣を使った戦闘術を基本形としておのれの型を組み立てていこうと、この世界の士郎は考えている。
この聖杯戦争で、士郎は自分の歪みをセイバーに突き付けられた。輝彩滑刀からの記憶で、衛宮切継の戦いを知った。その残酷で卑劣で、哀しい戦い方から、切継が何になりたくて、なれなかったのかを、少しではあるだろうけど、感じ取れた。
（安心してくれ爺さん………あんたの夢は）
だからこそ、
（それでも俺が叶えるから）
士郎はこれからも、己の夢に挑み続ける。
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円蔵山、柳洞寺。何度もの戦いの果てに、酷く荒らされたものの、各方面からなる隠蔽作業のおかげでどうにか参拝客も来られるように落ち着いていた。一部の人間にとっては残念なことに猫の数は以前同様に戻っているようだが。
そして相変わらず寺に住み込んでいる葛木宗一郎は、水槽の前にいた。以前は亀が入っていた水槽には、今は全体に水が入り、一匹の魚が泳いでいる。やや変わった形をしており、人によっては珍しい熱帯魚か何かかと判断するだろう。しかし実は、このような種類の魚は、自然界のどこにもいないのだ。
『………なあ』
『魚』が口を利いた。
「………何だ」
葛木は驚くことも無く、豚肉の切り身を水槽に落とす。
『食べ物をもらえるのはありがたいが、本当にいいのか？』
『魚』の頭が歪み、宇宙人のような奇妙な顔が浮かび上がる。
『私は、お前のサーヴァントを殺したといってもいい存在なのだぞ？』
その『魚』―――『フー・ファイターズ』はどうにもわからないと、そう言った。
戦争最後の夜、爆破され焼き尽くされたはずの『フー・ファイターズ』は奇跡的に『ＤＩＳＣ』を失うことなく、指先の欠片程度の一部分だけであるが草むらの中に落ち、わずかな夜露を受けて、夜の間は命を保つことができた。
しかしそのままであれば、次の朝が来て、昼を迎えるまでには完全に死滅してしまうことは確実だった。それを偶然にも見つけ、救いだしたのは葛木宗一郎だったのだ。
『直接殺したわけではないかもしれないが、それでも原因には違いない。それをなぜ』
「………私にも実はよくわからないのだが」
葛木に恨みというものは無い。キャスターもライダーも恨みを抱いて消えていったのではなかった。本人たちが恨んでいないのに、自分が恨むというのは理屈に合わないというふうに、葛木は考える。彼らとの良き思い出を、恨みなどで汚したくないという思いもあった。
しかし、それだけでは『フー・ファイターズ』を助けた決定的な理由にはならない。その理由となるものとはおそらく、
「似ていると、思ったから、だろうか」
暗殺の道具として育てられた葛木宗一郎。同じく道具として生み出された『フー・ファイターズ』。イリヤスフィールへ問いかけられた、その身に宿した葛藤。それが、自分と重なってしまった。だからかもしれない。それほど可哀そうと思ったわけでもないが、見捨てる気にはなれなかった。
『………そうか』
『フー・ファイターズ』にも、いくらか思うところはあったのか頷き、問答は終わった。
「………まだあるが、いるか？」
『………頂こう』
そして葛木はまた、水槽に豚肉を落とした。この奇妙な似た者同士がどうなっていくのか、誰もわかりはしないが、ただその空気は悪いものではなかった。
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「そうか………第５次聖杯戦争はそういうことになったのか。道理で第４次聖杯戦争がああだったわけだ」
時計塔で、そう呟いたのは第４次聖杯戦争の数少ない生き残りである、ウェイバー・ベルベット―――今はロード・エルメロイ�鏡い噺討个譴討い訝砲世辰拭�
「こいつは、とっとと聖杯の解体の申請をした方がいいかもしれないな。あんなものをほっておいたら、またどうなるかわからない」
ウェイバーは報告書を片手に呟きながら、どうにも嫌な予感が抑えきれないでいた。かつて彼も関わったとはいえ、１０年も前のことであったので一度聖杯戦争について調べなおしたところ、最近、別の人間が同じように調べた痕跡があったのだ。
「聖杯戦争に興味があった………だが今回は参加していない。ならばそいつは、もはや参加できないと知った時、どうするか。クソ、穏便にすむと考えるのは、楽観的な考えだろうな」
痕跡から、誰が調べたのかはすぐにわかった。
性別は女、名はスカーレット。黒髪で、スタイルも良く、美人でもある。だが上流器質な傲慢さがあり、気に入ったものにはとことん入れ込むが、気に入らなくなった途端、徹底的に残酷になる面も持つ、危険な香りのする女性。
一目で印象に残るほど存在感があり、若くして腕の立つ魔術師であったが、ウェイバーは正直嫌いだったし、関わり合いを避けていた。
しかし、その背後関係を見直すと、無視できないものがあった。彼女の家系はジプシーの魔術師のもので、予知、占術、感応、心霊などに長けた術師の一族であった。
そして、これはウェイバーだけが知ることだが、その一族は、ある巨大な、巨大過ぎる悪に全面的に協力していたのだ。
「名はスカーレット………姓は『エンヤ』、か。クソ、一体いつまであの怪物は私に祟るというんだ」
来るべき厄介事を思い、時計塔の名物講師は己が髪の毛を掻きむしるのだった。
……To Be Continued？
2011年02月09日(水) 01:06:54 Modified by ID:x8ogxvHq6w