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人外だらけの聖杯戦争9 月下の開戦


   人外だらけの聖杯戦争9 月下の開戦


 士郎たちは、アーチャーに勝利し、臓硯を滅ぼし、間桐桜の身柄を救い出すことに成功した。桜は、アーチャーを操る『偽臣の書』をつくるために使った一つ以外の、残り二つの令呪を、士郎と凛に一つずつ渡し、聖杯戦争から完全に離脱した。
 対して、まだ戦いを続けなければならない士郎と凛は、桜から得た情報を元に、作戦会議を行っていた。焦点は『柳洞寺』。希少な霊地である冬木の町における、地脈の中心である円蔵山の頂上に建てられた寺院。
 魔術師が拠点とするにはうってつけの場所である。

「桜からの情報だと、そこにサーヴァントがいるとのことだけど……」

 凛は腕組みをしながら言う。
 間桐はアーチャーの分身を使い、町の隅々まで調べて他のマスターとサーヴァントについての情報を収集していた。その中でいの一番に調べたのが、この町最大の霊地であるこの場所だった。
 そしてその結果、十数体の分身は、あまりにあっさりと全滅したという。手も触れられずして骨を砕かれ、肉を裂かれ、時間にして一分と経たなかったとのことだ。アーチャーから放たれた毒矢はすべて防がれ、弾かれた。

「こちらにアサシンとセイバーがいて、アーチャーが倒れ、バーサーカーの正体はわかっている。残っているのはランサー、ライダー、キャスター。ランサーがあの隼だとすれば、攻撃のやり口からして、ここにいるのはおそらくキャスター……厄介ね」

 魔術の罠をこらした工房を築くことのできるキャスターは、防戦においては全サーヴァントの中でも最強を誇る。ましてや場所が霊地であるというなら、なおさらその力は強大なものとなる。
 状況説明を聞いていた士郎が問う。

「……例の行方不明は、キャスターが原因なんだろうか?」
「可能性はあるわね」

 聖杯戦争開始以前より起こっていた、冬木における行方不明者の異常発生。凛は、サーヴァントが魔力を得るため、人間の命を吸収しているのではないかと考えていた。
 キャスターがその犯人という可能性は大いにある。


「あくまで可能性というだけだけどね……。それより問題なのは、これから実際にどう動くかだけど、桜からの情報では、キャスターの力はまったくわかっていないに等しい。正面からかかるには、危険すぎるわ」
『裏をかくわけにはいかねえのか?』

 寝そべりながら、アサシンが意見する。

「残念だけど、円蔵山は霊山。それもかなり高い格の。その霊力の強さは自然のうちに結界を備え、霊的存在は、たとえサーヴァントであっても山門を通って正面からしか、入ることを許されないわ」
『それじゃあ思い切って正面から切り込んじまおうぜ!』

 セイバーが彼らしい、力技を提案した。

「だから、相手が待ち構えているところに、うかうか誘い込まれるわけにはいかないっての!」
『へっ、臆病者が』
「そっちが無謀なのよ。でなきゃただの馬鹿ね」
『なんだと妹に比べて体つき負けてる姉が!』
「……ああ? 今なんつったナマクラ」

 ギャーギャーと言い合いを始める二人の間に、士郎が割って入る。ちなみにアサシンは面倒くさそうにあくびしながら、後ろ足で首を掻いていた。

「落ち着いてくれよ二人とも……けど、一成から聞いた話では、別に変なことは起こってないらしいんだけど……」

 一成とは、士郎の友人であり、生徒会長である、柳洞一成のことだ。柳洞寺の跡取り息子である彼は、寺のことを誰より知っている。そこで士郎が、最近変わったことは無いか聞いてみたところ、返事は次のようなものだった。

『そうだな……なんとなく、境内の日当たりが良くなったり、猫が増えて、夜に鳴き声がうるさくなったり……そんな変化はあるが、特に悪いことはないぞ』

 むしろ、猫好きの僧などは凄く喜んでいるくらいだという。猫の糞が増えたのは困りものだが。


「サーヴァントが常に霊体化していれば、存在を他者に気付かれずにすむけど……」

 もし柳洞寺にサーヴァントがいるとすれば、そのマスターは寺の人間であろう。しかし、凛の知る限り、あの寺の人間に魔術師はいない。凛ほどの実力を持つ魔術師であれば、他の魔術師の存在を感じ取ることもできる。士郎が魔術師であるとは気付けなかったが、それは士郎が魔術師として半人前以下であることも影響している。
 つまり、柳洞寺にいるマスターは魔術師ではなく、偶然マスターになった一般人だと考えられる。そんな未熟なマスターが、ボロを出さず、他者にどこか怪しいと思われずに、マスターをやれるかは疑問だ。サーヴァントの霊体化さえままなるまい。

『わかんねえことだらけなら、やっぱ乗り込むしかねえよ!』
「だから正面からじゃなきゃ、結界に阻まれるって、何度言えばわかんのよ駄剣」

 凛が冷めた口調で言う。また言い争いが始まるかと思いきや、

「……阻まれる?」

 士郎はふと思いついたことがあった。

「なあ遠坂。ひょっとしたら、正面から入らなくてもいいかもしれないぞ」

   ―――――――――――――――――――――――

 その夜、凛とアサシンは月明かりを浴びて、柳洞寺の正門前に立っていた。柳洞寺は夜の静謐な空気に満ち満ちており、人に畏れを抱かせる。

「さすがは霊山。改めて思い知るわ」

 それでも凛は家訓である『常に余裕を持って、優雅たれ』を実践し、笑みさえ浮かべて、敵地へと足を踏み入れる。

 ニャアニャア
 フニャア
 ギャース
 フギャフギャッ
 フーッ、フーッ
 ニャーッ

「けど、確かに聞いたとおり、猫が多いわね」
『うざってえな』

 石階段を上がるごとに、猫の鳴き声が増えていく。しかし罠や攻撃が仕掛けられる気配は無い。
 そしてそのまま誰にも邪魔されることなく、彼女たちは階段を上りきった。


「何よ拍子抜けね」

 凛は肩をすくめる。山門の前は、多くの猫たちがたむろしていた。白猫、黒猫、虎猫、三毛猫、和猫、洋猫、多種多様な猫がパーティーでも開いているかのように、集っていた。

「この量はちょっと凄いわね……。ひょっとして、ここのサーヴァントは猫に関係している……いやもしかして、猫がサーヴァントという可能性も……」

 今まで、犬、鳥、猿、剣、そして鼠のサーヴァントがでてきた経験からして、その可能性を思いつく凛。その思いつきは『半分』まで当たっていた。

『ウニャウニャ……何だお前たち』

「『!!』」

 凛とアサシンの脳裏に、念話が響いた。凛は魔弾の構えを取り、アサシンはスタンドを展開する。その直後、二人は強い衝撃に弾き飛ばされた。

「くっ!」
『うおおっ!』

 二人は呻く。凛は魔術による防御をしていたからよかったが、今のは並みの人間であれば、重傷を負うに違いない一撃だった。しかも、その攻撃がまったく視認できなかったのだ。

『大丈夫か?』
「ええ……今のは、感じからして、弾丸みたいなものを飛ばしたようだったけど……」

 何かが放たれた方向――山門の上を睨む。そして、そこにいた存在を見て、凛は言葉を失った。



 それは一見して植物のようだった。門の梁から生えた、緑色の葉と茎、そして大きな花。だが、大きな花弁二枚によってできた花の中、おしべやめしべのように突き出たそれは、巨大な目玉であった。爛々と光り輝くその目は、じっとりと凛たちを見つめ、その下にある裂け目、おそらく口である部分からは、威嚇するような音を出していた。

 どう見ても、尋常の生物ではない。

『ニャ……そこの犬は、こないだの鼠と同じで、妙な力を持ってるみたいだな。けどなんであれ、俺の縄張りを荒らすなら許さないぞ』

 念話が届く。どうやら、この奇妙な植物がサーヴァントであるのは確かなようだ。

『特に犬は嫌いだし、徹底的にやってやるぜ……【ストレイ・キャット(大気操る彷徨える本能)】』

 月明かりの下、宝具の真名が唱えられた。

   ―――――――――――――――――――――――

「遠坂は大丈夫かな……」

 その頃、士郎は山道を通り、山門の裏側から柳洞寺に潜入していた。

『あの女のことより、斬り応えのある敵を早く見つけようぜ』

 セイバーががなる。サーヴァントが通れぬはずの結界がある方向から、彼は入ることができた。
 すべては彼の宝具となる能力、あらゆる物質をすり抜ける力、【魂刈り取る冥府の神(アヌビス)】によるものだ。おそらくこの聖杯戦争で、この山の結界を抜けられるのはセイバーのみであろう。
 これにより、凛とアサシンは正面から、士郎とセイバーは裏から、寺に入ることができる。すなわち、挟み撃ちのかたちだ。



「本格的な戦いになれば、マスターも寝てはいられないはず。外に出てくるのを見つければ……」
『いや……むしろこっちが見つかったようだぜ』

 セイバーが士郎の体に乗り移る。それが、戦闘開始を意味することを、士郎は理解していた。

「こんな夜更けに、忍び込んでくる者は……盗人か、それに類する悪意あるものと予想していたが」

 背後から声がする。その落ち着いた、硬い声に、士郎は聞き覚えがあった。

「あなたは葛木先生……ですね」
「そういうお前は、衛宮士郎」

 ゆっくりと振り向く士郎の目に、夜の闇に溶け込むように自然に、しかし決して無視できない重い存在感を抱えて、一人の男が立っていた。
 眼鏡をかけた、鋭く端正で、無表情な面持ち。びしりと伸びた背は、彼の真面目さをうかがわせる。
 彼の名は葛木宗一郎。士郎の通う学園の、社会科教師であり、この寺に居候している人間だ。

「刀まで持っているとは穏やかでないな……。少々乱暴にしてでも、取り押さえさせてもらうぞ」

 葛木が拳を握る。その拳が士郎には、獣の牙のように見えた。


【CLASS】キャスター
【マスター】葛木宗一郎
【真名】元タマ
【性別】男
【属性】混沌・中庸
【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷E 魔力B 幸運A 宝具EX

【能力】
陣地作成・C
 魔術師として有利な陣地を作り上げる技能。日当たりや水はけをコントロールし、自分の過ごしやすい空間を作れる。
道具作成・−
 保有S『本能』を得た代償に、本能の対極である理性の産物『道具作成』の能力は失われている。

【保有S】
光合成・A
 雨の日の昼間程度の光があれば、光合成をして力を得ることができる。ゆえにマスターに魔力がなくても関係ない。ただし、光が無いところでは無力になる。
本能・EX
 理屈を超えた直感により、根拠無しに物事を理解し、最善の行動を取ることができる。

【宝具】
ストレイ・キャット(大気操る彷徨える本能)・EX
破壊力B スピードE 射程距離なし 持続力A 精密動作性E 成長性C
 空気を操れる。弾丸にして攻撃したり、クッションにして防御したりできる。






 
 
 ……To Be Continued

                       
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2009年04月12日(日) 01:23:41 Modified by ID:P58hRsZsNg




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