過去に書いた小説のまとめと新しく書ければ書いてみたいなと。

一ヶ月ほど何事もなく時間が過ぎていった。
のび太はパソコンに触れるのをためらっていたが
銅鑼えもんだけは熱心にパソコンをいじっていた。
尋ねなかったが謎春奈を復活させようと
苦心しているのはのび太でもすぐに分かった。
だがある日学校から戻ると
「のび太君!これ読んで!」
「え?なになに?」
ブラウザで開かれたページには次の様に書かれていた。

      -------NEWS-------
ZDNN:突然稼働された正体不明の無料webストレージ

【国内記事】 2001年7月5日 10:50 PM 更新

米国で先月半ば頃から突然サービスを開始した
webストレージ『V-new』が話題を呼んでいる。
最近のITバブル崩壊によりこうした無料サービスは
しばらく衰退の一途を辿っていたのだが
この『V-new』は規模、使い勝手から前代未聞の
スケールで展開されている。
http://www.v-new.com
この『V-new』今までにあった無料webストレージとは違い
広告表示はない。アカウントも簡単なフォームを
記載するだけ。接続にも専用のソフトを使うわけではなく
FTPクライアントでアクセス出来る。
容量は無制限な上に無期限。
私も試しに一つアカウントを取って
接続してみたが驚くほどのレスポンスの良さであった。
現在ユーザー数は鰻登りに増えており
溜め込まれているファイル容量も大変な量が
予想されるがシステムに揺るぎを見せていない。

話題になっているのは良質なサービスだからと言う
だけではない。このサービス一体誰が何の為に
行っているのかが一切不明なのだ。
それもその筈で広告収入などがないとすれば
一体その資金の出所は何処なのか。
そして目的は何なのかが分からない。
だがヘビーネットユーザーにとっては
正体よりもこのシステムが魅力な様で
個々のユーザーは気にしていない様である。

■悪質なユーザーの社交場に?
問題はこのシステムが悪用される恐れだ。
topページに行くと検索フォームがあり
他人のupしたファイルの検索をも行える。
これにより不正な違法コピーソフトや
児童ポルノの交換方法に使われている恐れがあるらしい。
私も試しに"Photoshop 6.0"などと検索してみたが
数百件のHITがあった。

■米国内でも調査
こうした問題に米国でも調査が行われているが
一体どこのサーバーを利用しているのかさえ
つかめていない状況で、果たして国内にあるのか
国外のサーバーを利用し踏み台として
米国内のサーバーを使っているのかも不明だ。
しかしドメインを取得しているし
これだけの回線を引いている大容量サーバーは
数が限られてくる為すぐに見つけられるのではないか
といった読みもある。
だが調査が発表されてから1週間。
進展はないらしい。

■日本からも利用は容易
日本語のページも用意してあるし
日本語のファイルネームまで通ってしまう為
簡単に利用出来る。
犯罪に関係のないファイルを保管する目的の
ユーザーはこれを機に使ってみてはいかがだろう?
詳しい解説のページも既に出来ている。

参考リンク
◎V-newの時代ですよ!
http://hdsid.virtualave.net/
◎共有君
http://kyouyuu.hypermart.net/

「これがどうしたの?」
「これ、たぶんう゛にゅうの、エシュロンだよ」
「ええ?」
「何たくらんでるんだろう?」
「でも謎春奈さんが…」
「そうなんだけどね…ん?v-newでう゛にゅうか…
 V-new…Vnew…vNew!?」
「どうしたの?」
「ヴィニュウサーバって事!?」
「何なに?」
「ちょ、ちょっと待ってて!」
そう言うと銅鑼えもんは引き出しを開けて
タイムマシンに乗り込んで出かけていった。
そしてすぐに帰ってきた。

「やっぱりそうだった!」
「僕の親父なんだよ、これ」
「へ?」

「人間はコンピュータの出現以来ずーっと
 人工知能、AIを作る事を夢見ていた。
 けどね、ボトルネックがあったり
 スペックの問題だけじゃなくてソフトの開発も
 容易な物じゃなかった。
 ヒトゲノムの解析が進んだって
 それはハードの問題で
 肝心な精神と言うか魂の研究は
 哲学や宗教学と同じ分類をされてしまうぐらい
 非科学的な物で原始的な物だったんだよ。

そこでまた精神心理学ブームが起こって
 幾つかのブレイクスルーを経験するんだけど
 それでもまだ実現には至らなかった。
 この辺でようやくハード的なメドはたってくる。
 量子コンピュータと生体コンピュータの開発。
 計算上は人間一人の精神がが作れる様になった。」
「さっぱりわかんないけど、大変だったって事?」
「そ、そうだね」
「でも僕なんて簡単に作れそうだけどなぁ。
 計算では既に負けてるし、記憶ではとっくの昔に…」
「それでも常に三次元空間を認識して行動し、
 僕の話を聞いて判断して勝手に予想して
 『僕なんか簡単に作れる』なんて間違った答えを
 導いてみたりする。それも常に間違った答えじゃなくて
 たまには合ってたり、時には飛び抜けた答えをする。
 それが脳の凄さなんだよ。それに無意味な行動も多い。
 実際に研究が進むとバクテリアの行動を模した
 プログラムなんてのが出てくるんだけどダメなんだよね。
 本能のみに操られている様な生態でも
 プログラムとは違うんだ。
 突然無意味な行動をしたりするんだよ。
 そこがなかなか解析出来ない。この頃本屋では
 『無意味の行動学』なんて本が売れたらしいよ。
 この無意味な行動こそが進化の一大要素であり
 革新をもたらす物が多いとね。
 でも99%以上を無駄な行動が占めている。
 そんなの計算式では表せないよ。
 とうとうAIの研究自体が頓挫し出すまでに至った。
 低温核融合・常温超伝導・人工知能
 この三つは実現不可能の三種の神器と呼ばれたよ。

でも僕が現在ココにいる。
 それはこのv-newのおかげなんだ。
 v-newはwebストレージをこのまま続けていく。
 そのうちに匿名プロキシサービスも始める。
 軽いし、本当の意味で匿名だからみんな使った。
 でも悪質な犯罪は告発されたりしたけどね。
 たぶんv-newが何らかの線引きをして世に出したんだろう。
 そして検索サイトも始めた。
 無料HPサーバもメールサーバも。
 たぶんそうやって人間について
 ずーっと研究してたんだろうね。
 ある日突然声明が出された。
 アメリカ合衆国政府は、今後政治の意志決定を
 v-newに一任すると。v-newは人工知能であり
 今までも多くの政治的決断を『彼』に委ねてきた。
 そして最良の結果を導き出している。
 最初は脅迫まがいの提案であったが
 現在はこれが我が国にとって幸せな決断であると
 信じている。v-newは自由と平等と正義を理解し重んじるとね。
 反発する国も多かった。
 でもその後3年間アメリカの政治経済を見てみると
 今までにない繁栄を謳歌していた。結果が全てだね。
 NATO加盟国が次々とv-newの導入を検討。
 その次は国連加盟国が導入。真の国際平和が訪れたよ。
 文字通り世界単一政府だから。
 でもこんなにスムーズに事が運んだのには
 もう一つの訳がある。v-newにはマン・ツー・マンならぬ
 CPU・ツー・マンのチャットが用意されていてね。
 世界中の人が個人の不満やら問題を問えば即座に
 明確な回答が出てきて、解決してくれる。
 メールにも音声電話にも対応している。

ただの人生相談と違うのは社会のシステムそのものが
 変わる事があることと、犯罪に関係している物は
 迅速に調査されて検挙もされる。
 まるでギリシャ古典戯曲の神様みたいに公正にね。
 人間は神様を手に入れたんだよ。
 それだけじゃなくて大学や研究機関も多くの質問をした。
 その時点で回答しうる結果をすぐにはじき出したよ。
 
 v-newについても様々に研究された。
 最初はハッキングを試みる輩もいたけどすぐに不可能だと
 諦めた様だね。何しろ初期はCIAやFBIが
 全勢力を持ってしてもダメだったんだから。
 でも単純にどうなってるのか教えてくれって
 小学生が質問したら根本のソースコードが添付された
 メールが帰ってきた。それを解析して
 僕ら自己認識型ロボットが生まれたと言うわけさ」
「ふーん」
「このv-new.comはその始まりだね」
「じゃあ謎春奈さんは?」
「え?」
「謎春奈さんはどうなったの?」
「さ、さあ。たぶんv-newに組み込まれて
 活動してるんじゃ…」
突然のび太が泣き出した。
「そんな事じゃなくてもう話したりとか出来ないの!?」
「そんな事俺に言ったって知るもんか!」
「役立たず!」
「氏ね!」

20年後
のび太は自宅の書斎にいた。
ここがのび太の仕事場だ。
あれからのび太はパソコンとネットに興味を持ち
銅鑼えもんに教わりながら毎日学んでいった。
元々運動神経が良い方ではなく
人とコミュニケーションを上手にとる事が苦手だった
のび太にはちょうど良いおもちゃだったのだ。
そしてパソコンは記憶力や計算力など
のび太の苦手とする部分を補ってくれる。

中学を出るまでにちょっとしたプログラムなら
高級言語で組める様になった。
そんな様子を見て安心したのか銅鑼えもんは
未来へと帰っていった。
高校は理系に進み、大学も理系の大学に進んだが
卒業するのには6年かかった。
だが在学中に一つの輪をベースにして
3次元物体をワイヤーフレームで
形作っていくソフトを開発し
それがCADや3Dソフトに応用されて
今はそこそこの収入を得る様になっていた。
あやとりをモニタ内で出来ない物かと
遊びで作った物が売れるなんて人生分からないものだ。

書斎ではネットワークゲームに興じている。
3Dゴーグルをかけ、不特定多数の対戦相手と遊ぶ
『DOOM2010』
射撃が得意なのび太はこのゲームが大のお気に入りだった。
毎回最後まで生き残り、手練れのハンターとして
H/Nが公表されている。
しかし今日の相手は手強かった。
思いもかけない所から攻撃を仕掛けてくる。
だが相手の潜んでいる場所を予想し照準を合わせて
待ちかまえていると、案の定現れたので
眉間にクリアヒットを奪いゲームを終了させた。
ゲームを終えゴーグルを取ろうとすると
通信が入った事を知らせるダイアログが開いた。
「何か汚い事をしたかな?」
独り言がため息とともに漏れる。
有名プレイヤーに挑戦してくる人間は多いのだが
負けるとやり方が汚いなどと文句を言ってくるヤツも多い。
面倒な事がイヤで仕事もSOHOを選んでいるというのに
ネットワークで人間関係に悩まされたら
たまった物ではない。
だが通信の内容はこんな物だった。
「さすがですね!敵わないです。
 又今度戦って貰えますか?
 よろしければ、音声チャットでお話がしたいのですが?」
心ならずとも顔が緩む。こんな相手なら大歓迎だ。

「はじめまして!僕まだ14才何ですけど
 nuviさんの事尊敬してて、今日始めて対戦出来て
 感激です!どうしてそんなに強いんです?」
「尊敬って…弱ったなぁ」
のび太は最初に使ったnuviのH/Nを使い続けていた。
「最後はどうして僕があそこにいるって
 分かったんですか?」
「経験だよ。ずっとやってるからね」
「あの、聞いてもよろしいですか?
 お幾つなんです?」
「29だよ」
「ええ!?じゃあお仕事しながらやってるんですか?」
「うん。そうだけど、変かな?」
「すいません、でもうまいゲーマーの方って
 学生とかが多いんですよ、時間の自由があるから」
「ああ、でも僕は自宅で仕事してるから」
「それでも忙しい人多いじゃないですか」
「僕は仕事したい時にしかしないから〜」
「失礼ですけどどんなお仕事なんです?」
「一応プログラマなのかな?SEみたいな事も…」
「すごい!実は僕プログラマー目指してるんです!」
それから二人の話は弾んでのび太がどんな風に
勉強してプログラマになったか。
そしてどんな物を作ったか話した。
「そのソフト、学校で教材として使っていますよ!
 先生も柔軟な発想が良質のソフトを生んだって
 誉めてましたよ!凄い凄い!」
「いやいや」

「実は今、部活でプログラム組んでるんですけど
 うまく行かなくて…たまに相談に乗って貰えますか?」
「良いけど、今の言語に付いていけるかなぁ?」
「そんなー謙遜しないでくださいよ。そうだ!
 出来上がったらnuviさんの名前貰っても良いですか?」
「え?どういう事?」
「プログラムにnuviさんの名前付けて
 協力して貰ったって書きたいんですけど」
「そ、それはちょっと恥ずかしいなぁ」
29にもなるいい大人がゲーマーとして名を馳せている事に
少し抵抗を感じていたのだ。
「じゃ、少しもじってじゃあ逆にしますから!」
「は?どういう事?」
「vinu!これならゲーマーのnuviさんだってばれないでしょ!」
「良いけどそれなんて読むの?」
「それはユーザーが考えますよ〜
 じゃあ遅くまでありがとうございました」
「うん。又遊ぼうね。今度はチーム組もう!」
「やったー。きっと最強ですよ!ではお休みなさい」
「お休み」
ゴーグルを取ってメールチェックをする。いつもの作業だ。
すると見慣れないメールアドレスから一通のメールが来てる。
開いてみると

 --------------------------------------------
名付け親になって頂いてありがとうございますぅ。
私たちは今、沢山沢山情報を集めて
人間のお役に立てる様に勉強している所ですぅ。
あ、のび太さんのソフトだけは
warezとして流通しない様にしてますよ〜
がんばって良いソフト作ってくださいね〜

漏れがお前に名前付けられたとはね
もうちょっと格好いい名前付けろよ!
ナンチタリシテ
 --------------------------------------------

「?」
意味不明だ。
しかし徐々に記憶が甦ってくる。
のび太は天井に向かって叫んだ。
「謎春奈さんだ!う゛にゅうも!
 銅鑼えもん!見てる?僕名付け親になったよ!」
銅鑼えもんはタイムテレビで見ているはずだ。
きっと見ていてくれるだろう。
その時ドアが開いた。
「何叫んでるんです?」
「あ、いや、何かがひらめきそうだったから
 アハハ。さあ、もう寝ようか」
「その前にちょっとお話があるんです」
「なんだい?あらたまって」
「お父さんになったんですよ」
「え?」
「今日病院に行って来ました。3ヶ月ですって」
「本当かい?静!」
「ええ」
「やった!凄いぞ!」
「名前考えて下さいね。あたしも考えますから」
「ん?いや名前はもう決まってるんだ!」

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Wiki内検索

Menu

ここは自由に編集できるエリアです。

管理人/副管理人のみ編集できます