「ラジオ」

2007/1/6放送「ラジオ」


出演:鈴木謙介、柳瀬博一、森山裕之、津田大介

※以下の発言まとめは、正確な番組での発言とは異なる場合があります。

MP3その1


鈴木:今日はラジオがテーマ。サブパーソナリティのラジオ体験は?
まずは柳瀬さん。本厄終わりですか?

柳瀬:終わったはずなんですけどねー。

鈴木:今年43。テレビの方普通のメディアだった?

柳瀬:オリンピックの年の生まれだから、ウルトラマンを見たか見ないかの世代。初めて物心着いたときからテレビがあった世代じゃないかな。

鈴木:テレビが普通の世代のラジオ体験を語るということで。よろしくお願いします。次はゲストって言ってたらサブP扱いになってる津田さん。

津田さん:こんばんわー。

鈴木:津田さんはずっとネットラジオやってたんですよね。

津田:そうですね、3年くらい。

鈴木:今日はそういう立場からも話を聞かせてください。次は、森山さん。

森山:ご無沙汰です。

鈴木:勝負の時間とか言ってましたよね、正月。今日は弄り倒していくんでよろしくお願いします。
森山さん、QJでラジオ特集やったんですよね。

森山:一昨年、ラジオ特集号っていうのをやりましたね。

鈴木:この時代になぜラジオかって話もできるといいですね。
で、メール。仲俣さんから性懲りもなくメールがw
裏で小さくでもいいからRCサクセションの「トランジスタ・ラジオ」をかけて!歌詞通りに授業を受けながら、「君」のことを思っていました。ラジオはパーソナルメディア。
他のメールも。番組を通じて、リスナー同士の繋がりを求めていたように思います。読まれたらクラスの女の子に話しかけられたり。
メール、テレビを卒業して、自室で一人で聴くようになったラジオ。初めてのパーソナルメディアだった。洋楽を聴くようになってFM派になってエアチェック。
パーソナルメディアだという話。生まれたときからテレビだった世代と、ラジオの前でみんなで放送を聴いてた時代。

柳瀬:ラジオって、もともと公開放送だった時代、機械が普及するまではそういうのが始まりだった。

鈴木:みんなが持ってない時代は、メディアの前で繋がる時代だったけど、普及していくと、パーソナルメディアとして、自分とラジオ、ラジオを媒介にして知らない人や音楽と繋がる。

柳瀬:あと受験と繋がってますよね。

鈴木:ラジオの語学講座やってた人います?

津田:ラ講やってましたよ、テキスト買って。

鈴木:NHKですか?

津田:文化放送ですね。蛍雪時代の。でも、聴いてる途中で伊集院とか聴いちゃうんですよ。

鈴木:メール、伊集院と電気をよく聴いてた。頑張って番組に参加するようにしてた。
メール、深夜放送がラジオ体験。伊集院の番組がきっかけ。
メール、ニッポン放送の電気のオールナイト。みんなしゃべり方が瀧と卓球に。
伊集院、電気系の話は、僕と津田さんがど真ん中かな。

津田:高校から浪人にかけてなんで、そうですね。めちゃめちゃ聴いてましたね。

鈴木:あ、電気のカバーの「トランジスタ・ラジオ」ですね。

津田:両者のリスナーってかぶってるんですよ。伊集院のラジオに電気が乱入したりとか。それで電気を知らない人がオールナイトに行くきっかけになったり。

鈴木:今日はぜんぜん他局の話もアリという。

森山:僕、長野じゃないですか。TBSと文化放送とニッポン放送がちゃんぽんで買われてるんですよ。SBCって局なんですけど、今思うと、色々買われてたから、局とか間違うかも。

鈴木:地方って問題は大きいですよね。

森山:地方のヒーローはラジオから出てくるよね。

鈴木:僕の思い出だと、AMで人気パーソナリティだった人が東京に来て、つかこうへいに見出された。それが山崎銀之丞。
あとどうだろう、柳瀬さんの世代だとちょっとまた違うんじゃないですか。

柳瀬:70年代が深夜ラジオの聞き始め。僕の時代はオールナイトというと鶴光師匠ですね。エロ系の。その後ビートたけしさんとかになるんですけど。

森山:エロっていまだにあるんですかね。僕の時代だと大槻ケンヂのオールナイトニッポンでしたけど。それがラジオの醍醐味という。

鈴木:メール、自分がラジオに求めていたのはエロ。あえぎ声とか。きわめて実用的な。寸止めエロって若者に優しいですよね。いまだとネットで全部見れちゃう問題。寸止めってのが大事なんだよね。特にAM。

柳瀬:ネットのエロサイトは同時にそれを見てるって実感がない。ラジオは共通体験になる。

津田:インモラルなものを共有すると共犯関係生まれますよね。

鈴木:雨で濡れちゃった空き地のエロ本的な。

津田:キャッチ&リリースのエロ本ね。

鈴木:あと思ったのが、AMはリスナーと繋がるけど、音楽と繋がる、情報源って話。森山さんとか僕は地方だから切実だったんじゃないか。

森山:中学まではAM聴いてたんだけど、中3のときにFM長野が試験放送を始めた。NHK-FMは公開放送に行くほど好きだった。エアチェックもやった。

柳瀬:やったねーエアチェック。

森山:FMの音質がきれいで感動しました。

鈴木:昔QJでYOU THE ROCK★が、長野にいた頃、山の上に登って東京に向けてアンテナ向けてたっていう。東京に向けてっていうのが比喩じゃなくてね。

柳瀬:FMって入りにくかった。FM愛知ができたのが高校の時で、FM東京の番組を流してるんだけど、あれは聴きましたね。9時くらいからのプログラムいまでもそらで覚えてます。

鈴木:メール、ラジオの思い出はNHKのカヒミ・カリィの番組。とにかくマニアックだった。自分にとっての唯一の音楽情報だった。月一くらいでレコード屋でそれを探す。
FMでゲットした情報が音楽との出会い、すごい分かりますね。
音楽配信の調査とかやると、FMは今でも大学生の情報源になってる。まだネット時代でもラジオで受動的に聴ける、誰かがセレクトしてるものはニーズがある。

森山:どんどんFMも似たようなものが流れてきたよね。この番組を聴けば、全然聴いたことがない曲が流れるってことがなくなってきてる。

鈴木:この番組はFMどころかラジオですらありえない選曲とかしますけどね。

森山:僕とか山下達郎の「サンデー・ソングブック」聴いてた。

津田:あれはラジオ用にリマスタリングしてますからね。

鈴木:新春放談とかすごい楽しみだったなあ。

津田:80年代はFM雑誌もすごい力があったよね。実売で50万、60万部売れてた。

森山:あれが情報源としてすごい充実してたんですよね、洋楽の記事とか。

津田:で、カセットを買ってきてレーベルにレタリングして。

森山:レタリングって今の若い人分かるのかな。

鈴木:意外に分かってくれますよ。

柳瀬:カセットテープに凝りましたよね。メタルとか。

鈴木:ハイポジですよハイポジ。メタルは再生できないことがあるんでね。ラジオの役割の変化を曲の後で。

〜曲〜

MP3その2


鈴木:メール、大阪のFM802にはまってた。洋楽と邦楽が同時に扱われていた。昔のものもそこで。でもその後でJ-WAVEとかもメジャーなポップスばっかりになった。ラジオから受ける刺激がなくなってるね。
島宇宙化とか、若者文化の終焉。深夜放送ってのが若者を作った?

柳瀬:DJが「アニキ」的な存在。AMがエッチな話から人生まで教えてくれる。FMは音楽の先生だった。山下達郎とか渋谷陽一とか。知らないことを知るっていうのは、ネット上では無理。音楽は先生に教わった。

鈴木:「先生」と「情報源」は違う。情報源だとネットがある。ラジオにとってネットのインパクトは大きかった。

津田:自分で情報を引き出せるようになったのが大きい。受動なのか能動なのか。能動って一歩目の知識が必要だけど、ネットではまだそれが分かってない。

鈴木:ネットラジオをやっていた側から見て今のラジオってどう?

津田:ネットラジオとかPodcastとか見てて、出来のいい物って既存のフォーマットに近づいていく。実験的なことも楽しいけど、ラジオのフォーマットって完成されてるから。

森山:なんでネットラジオ始めようと思ったんですか。

津田:なんか発信したかったんでしょうね。最初はラジオごっこからはじめて、それが面白かった。

森山:ネットでしかできないことをやりたいと?

津田:いや、単純に喋ってみたかったんです。喋ってみたら面白かった。でもそうすると最初はぐだぐだだったから、台本を書いてってやっていくと、既存のものに近づいていきますよね。

鈴木:Podcastingのことがネットラジオだと思われてる。でもネットラジオブームのときのネトラジはリアルタイムで受け答えが面白かった。Poscastだとコンテンツが面白いか面白くないかだから、既存のものに近づいちゃうんですかね。

津田:Podcastって、コンテンツの自動録画システム、DVDレコーダーみたいなものなんですよ。Podcastそのものは、コンテンツを落とせるということでしかない。

鈴木:自動的に落ちてくるというところが新しいだけなんですね。

森山:ラジオ特集やったとき、J-WAVEのモーリー・ロバートソンが、自分の番組の終わった後でPodcast用のコンテンツを自分で録りに行くんだけど、そっちの方が圧倒的に面白いんですよ。ほんとに自分の放送局みたいな感じで、テレコ片手に街へ飛び出して。可能性感じましたね。

鈴木:ネットが出てきてラジオってどうなるんだって話をしたときに、局って縛りがない方が面白いっていう可能性はずっと語られてきた。でも最後はお金が問題になる。Podcastingでビジネスになってるものってあるんですか。

津田:模索はしてるけどほとんどないんじゃないですかね。実験的には始まってるけど、モーリーさんだって趣味の世界だから。

森山:ようやくスポンサーついたらしいですけどね。

津田:でもスポンサーが付くとその枠でやっていくしかないから。

鈴木:ネットで配信するようになったっていうだけで、形としてはスポンサーにお金を出してもらいながら、その枠内で好きなことをやる。それじゃネットでやった意味ないよねと。

津田:Podcastとライブの一番の違いって、保存されるかされないかなんですよね。ちょっと過激なことでも、生で一回言ったら消えてしまうんだったら言えることもあるけど、残るんだったら爆弾発言はできない。で、いまPodcastを音声認識でテキスト起こししてくれるPodcastleってサービスが始まってて。そういうのになると、喋ったことがGoogleみたいに検索できるようになるので、うっかりしたこと喋れなくなっていく。

鈴木:でもホントはその「うっかり」が面白いんですよね。困ったことに、ライブだからそのうっかりが面白いってあるじゃないですか。生で面白いもの、残して面白いものっていうのは違う。それを埋めるものがないまま、ネットラジオは趣味でやってるね、の一方で、ラジオ局はお金がないのか、売れるものばかりかけやがって、になっている。その辺は切ないね。

森山:ブログはなくなってないじゃないですか、お金入ってないのに。だから自分で配信できるPodcastってのはなくならないんじゃないか。ラジオ番組のまねごとみたいなのを、昔はテープに吹き込んでたけど、今は世界に配信できるわけじゃないですか。

鈴木:海外から聞いてくださってる方もいますしね。情報源という話。発信がしたいということは、情報があることが前提。でもそれは誰に届くのか?いままではラジオを介して向こうの人と繋がれる楽しみがあった。今は喋る人とリスナーの間のコミュニケーションになってる。僕はひところのブームが落ち着いちゃったなあという気分。
柳瀬さん、ネットと電波、ビジネスの話だったけど、今後、ネットが世の中に進出してくるとき、電波っていうのはテレビも含め、変わって行かなきゃならない。どういうのが見据えられているんでしょう?

柳瀬:その辺は政治問題ですよね。テレビで言うと、デジタルの問題もあるし。チャンネルをどこに与えるかという話と、ネットのように誰でもできるという話と。そして政府がどこに権力を配分するかという問題もある。
ひとつ言うと、ラジオっていうのはそもそも政治的なメディアだった。アメリカのVOAもそうだけど、いっぺんに同じ声が人の耳にはいるというのはものすごく強い。ヒットラーだって使ってた。NHKが使った最強のツールはラジオ体操。戦前は軍国主義、戦後は民主主義を広げるためということで肯定された。今かかってるコステロの歌は、ラジオが以下に人びとを洗脳するかっていう話を歌ってる。80年代はビデオ・キルズ・ラジオスターだったけど、70年代はラジオやばいぜ、だった。ラジオは人間が耳から言葉を接種する存在である限り、強力なメディアであることは間違いない。

鈴木:火星人襲来があったり、テレビになると今度は身だしなみに気を遣うことになったり。メール、ラジオというとラジオCMが印象的。印象に残りやすいものですよね。

森山:中学の時、AMで一局しかないから聴けない番組がある。夜になると入ってくる東京の放送のCMで、野田クルゼの奴とか聴くと、ああ、遠いところの話だなあって。有楽町とか赤坂って固有名詞が。

鈴木:CMじたいに東京を喚起する力があった。電波が届くところまでが東京。

柳瀬:夜中になると遠くの放送聞こえるんですよね。

鈴木:ここで曲。僕がセレクトで持ってきた曲。TBSの大先輩、伊集院氏に敬意を表して、荒川ラップブラザーズの「アナーキー・イン・AK」。

〜曲〜

MP3その3


鈴木:メール、女の子と車に乗るときはFM。
メール、投稿しまくってたけど、調子に乗って黙殺されて以来、この番組に至るまで投稿することがなかった。
メール、一日5時間くらい聞いてた。みんなネタのレベルが高かった。ハガキ職人。
この中にハガキ職人います?

森山:地方の番組限定のハガキ職人だった。地方は載りやすい。全国の番組に投稿するなんてすごいことだった。東京にはすごい奴がいるわけですから。

津田:まずは地区予選から。

柳瀬:ドカベンみたいだねw

森山:でもすごい気に入られて、そのうちスタジオに呼ばれて、出演するようになって。

鈴木:当時からサブパーソナリティ扱いかよ!

森山:ラジオ好きだったんですよ。今でもラジオ聴きます?

鈴木:ラジオ聴きますよ。FMですけど。

森山:ラジオ特集やったときって、テレビとか飽きちゃったんですよね。ラジオとかもう一回聴いて、面白いなと。

鈴木:メール、最近のラジオはテレビ化してる。新聞を読んで感想を言うだけ。子どもでもできる。
相手のいうことがメッセージとして伝わっちゃうメディアなんですよね。

柳瀬:声って外側の部分まで伝わる。この人とあの人では、同じことを喋っても全然印象が違う、みたいな。

鈴木:伊集院さんがね、あの喋りであんだけ面白くて、でも名前からすごいかっこいい人だと思われてたっていう。

柳瀬:私の時代はそれでいったら小林克也さんなんて、どんだけかっこいいんだろうと思ってた。

鈴木:あと城達也さんとかね。ジェットストリームでしょ。それぞれの忘れられない番組挙げましょうよ。

森山:母親が家で洋裁やってたんで、常にAMでかかってた。小沢昭一さんの話が面白くて、幼稚園の頃かなあ。

津田:僕はAMだとOh!デカ。あとFMだとBOOWYの布袋さんがやってたミュージックスクエア。その後その番組で書けた曲が本になったんだけど、それがすごいいいディスクガイドになってたんですよ。

柳瀬:AMは鶴光なんですけど、FMでは、FM-TOKYOがやってた「マンハッタン・オプ」。10分くらいの番組。一週間で物語を解決するハードボイルド。パーソナリティが日下武史さんで、原作が矢作俊彦さん。なんつうかかっこよかった。

鈴木:僕それ、オヤジが持ってたんで小説の方で読みました。

柳瀬:谷口ジローさんがイラストの、ソニーマガジンの奴ですね。いいですよねー。

鈴木:その名前をここで聞くと思わなかった。

森山:ラジオドラマっていいですよね。

鈴木:僕の体験だと、FM-TOKYOのジェットストリームのいっこ前の番組で、JTが提供してたJT Yah Yahって番組があって、これはオールディーズの特集番組で、曲もいいんだけど、CMがすごくよくて、エディ・コクランとか、タイムズとか。それで黒人音楽にはまって、それ以降の音楽人生をおかしなことにするっていう。
メール、コサキン、伊集院でラジオを聞き始めた。今も朝から聴いてる。ICレコーダーがなくて不便。
昔はカセットでしたけど、今ないんですかねIC。

津田:チューナー付きの、ってことなんじゃないですか。パソコンに繋げたり、ステレオに繋げたりすればいいんですけどね。

鈴木:マイクで録ったりすると、オカンに「ごはんよー」なんて言われたりしてw
ラジオのチューナーって、AMラジオだとパソコンに繋げるものすらないんですよね。

津田:昔AMのステレオ放送ってありましたけど、あれはどうなんったんですかね。

鈴木:言っておかなきゃなーと思ったのは、AMとFM、洋楽と邦楽、ステレオとモノラルの壁って、これからネット化してったら関係なくなっちゃう。そしたらコンテンツが面白いか面白くないかってだけのことになる。で、AMからLifeみたいな実験的な番組が出てくる。それが次の時代のフォーマットになってる、、、といいなあと思いながら僕はこの番組やってるんですけどね。そういう可能性も含めて、新しいものに魂を移していくっていう。
今日はみんなメール長かった。

森山:みんな現役でラジオ聴いてるからね。思いがあるよね。僕、J-WAVEで沢木耕太郎さんがやってるクリスマスの番組がすごく好きで、ああいう季節を感じるものってありますよね。ラジオって、そういうものを自分に残すよね。

柳瀬:その瞬間と時代を繋ぐという。

津田:FMで、音楽が少なくなってトークが増えているっていうのも、人がそういうものを求めているからかもしれない。ラジオと音楽だけでもできますよね。

MP3その4


鈴木:今日はラジオってことで、メールいただいてます。メール、ラジオで名前を呼ばれるのはステータスだった。素人がプチヒーローになれるのはラジオだけ。

森山:公開の放送で「選ばれる」っていううれしさね。

津田:送ってから一週間っていうタイムラグがいいですよね。今はネット化してるから、リアルタイムになっちゃってるから。

森山:それつまんないよね。

津田:そう思う人もいるし、そうじゃない人もいるし。

鈴木:リアルタイムだと内輪感が強くなっちゃうんだよね。ネットラジオだし人数も少ないから。
メール、初めて聴きます。全国子ども相談室とか、FM局の開局ラッシュ。FM雑誌も最高4誌あったが今はゼロ。QJも読みました。今はTBSリスナーです。
ラジオは局単位ですよね、あまりザッピングしない。
メール、投稿が読まれて深夜に一人でガッツポーズ。深夜枠の番組を増やして欲しい。
固有名詞って覚えてますよね、番組名まで含めて。

柳瀬:ワイドショーのパーソナリティって、全員ラジオ出身ですよね、久米宏、小倉智昭、みのもんた、タモリ。雑多な人たちをまとめて一本にまとめちゃうあの感じって、ラジオで鍛えられたんじゃないか。テレビの総ワイドショー化って、なんかラジオ回帰なのかも。

森山:QJでラジオ特集したとき、さんまさんも同じことおっしゃってました。ラジオで鍛えられた芸人は違うし、だから番組はやめないと。

津田:テレビとラジオ、両方やってる人って、使い分けてますよね。伊集院さんもそうだし、ナイナイとかも。

森山:送り手側も、さんまさん、談志さん、松本人志、欽ちゃん、みんな「ラジオ」ってことなら出てくれたんですよ。みんな熱いんですよね。こういう人たちブッキングできないですよ。

柳瀬:この人達、みんなライブの人たちですよね。さっきゲッペルス的な話したけど、不特定多数を相手にライブで喋れる人って、やっぱり他にはない強さ。みんなそれを自覚してるんだと思う。

森山:談志さんは、最後全てをラジオで喋っておきたいっておっしゃってて、感動でしたね。

津田:久米さんもそうですよね。

鈴木:メール、今ラジオを聴くのは、レアな情報を手に入れることができるから。テレビよりラジオが勘弁で安価。
メール、ラジオはともだち。テレビだと観客として一方的に投げつけられる、ネットはマスターベーション的。でもラジオは送り手と聞き手の距離がすごく近い。スタッフの気持ちになって聴いちゃいます。オールナイトニッポン派対パックインミュージック派。私はパック派だった。ある日永六輔さんがスポンサーに反対して番組を降板した事件があった。テレビは映像で情報を丸呑みにさせてしまう。
音は「入ってくる」って話で、いま渋谷で待ち合わせてると、ほとんどの人がケータイを見て、音楽を聴いてる。視覚と聴覚で全然違う情報を受け取ってる。これからネットで動画配信が増えてくる。そうなったとき、ネットとラジオって今は相性いいけどどうなんだろう。

津田:ビデオポッドキャストが出てきたときに、歩きながら見られないじゃないかって言われてたけど、電車の中で移動中に動画見てる人が増えてきた。YouTubeで見られるような10分くらいのダイジェストものって確かに便利。コンテンツの質と、あとラジオの方で言えばどういう環境で聴かれるのかっていうのが重要。車で聴くっていうときに、ネットのものは車の中で聴けるソリューションがほとんどない。そのうち環境がどうなるかで大きく変わると思う。

柳瀬:技術環境の変化は重要ですよね。

鈴木:ラジオっていうのは「どこでも聴ける」から意味があった。もう一つは、地方っていう問題が大きいと思ったのは、移動手段が地方に行くとほとんど車。そうするとチャンネル争いが起こる。そういうのと、パーソナルメディアを地下鉄で自分専用に聴ける環境は違うよなと。

柳瀬:ラジオの広告費がネットに抜かれた。でもアメリカでは移動がほとんど車だからいまだにラジオが強い。ラジオとビジネスの融合がある。

津田:衛星ラジオもありますから。あんだけでかい国土でも、車で絶対聴ける。それが日本との違い。日本でもモバホとかありますけど、誰が使ってるんだっていう。

森山:衛星ラジオって?

津田:衛星から送られてくる電波でラジオが放送されてるという。

鈴木:全国で1000万人くらい。

津田:クリアチャンネルっていう大きな系列があって、そこが編成権もあって強い。

森山:なんでアメリカではラジオのチャンネルが多いんですかね。

鈴木:まずアメリカは、新聞を作るのが容易ですよね。言いたいことがあったら自分のメディアを立ち上げろっていう。希少な電波を分けるんだから、公共性のあるところにしか使わせない日本と違って、メディアはできる限りオープンにさせる。一定の予約購読者を集めれば新聞として認める、とかね。ラジオだとカレッジラジオもあるし。

柳瀬:向こうのポップスターはカレッジラジオから出てくる。REMとか。

津田:ナップスターが出てきたときも、そういうのが背景にあった。

鈴木:著作権問題でネットラジオが有料化するかも、ってときにも騒ぎになりましたよね。ラジオ文化の根付き方、マスメディアの意味が違っている。

津田:日本の方が、ラジオってサブカルなんだと思いますよ。

鈴木:じゃあ後半ではそのサブカル話しましょう。

MP3その5


鈴木:サブカルとラジオの相性が日本でいいのはなんで?思い出すのは、ラジオDJって政治的な影響力あるよね、と。

柳瀬:バニシング・ポイントって映画がある。デンバーからサンフランシスコまで一日で車を届けるという賭けをするんだけど、それを偶然知ったデンバーの田舎の、部屋ひとつでやってるような黒人のラジオDJが、ずっと応援するんだよね。ラジオDJがすごい重要な役割を持ってるんだけど、反戦とかそういう政治的メッセージを裏で結びつけるのはDJなんだよね。

鈴木:政府に目をつけられるDJとかいるし、アメリカのテレビのキャスターだって、自分の意見を番組で発信する、筑紫さんとか久米さんみたいな。部屋ひとつみたいなラジオも結構多くて、これが自分たちの言いたいことを発信する。一方で日本は、テレビで原稿読んでるだけじゃんなんて批判は出てこない。テレビ放送が始まったばかりの頃は、台本通りに劇団の人が喋ってた。いまだにNHKは討論番組でも台本を書く。80年代になって素人もの、ハプニングものが流行するんだけど、、、あ、そうだ、うちの黒幕に聴いてみよう。
黒幕、テレビでハプニングを持ち込んだのがコント55号だとすると、ラジオの場合はどうだったのかなあ?

長谷川:さっきもパックインミュージックの話が出てたけど、あの頃、70年代ってテレビに差を付けられたラジオが新しい鉱脈を見つけなきゃってときに、有名じゃないけど、若い人に支持されている人、マニアックなセンスを持っている人を出そうってことになったんじゃないか。

鈴木:あーそうか。つまりラジオはテレビに追いやられてて、テレビはお茶の間を占拠してたんだけど、まだ子ども部屋は占拠してなかったっていう大前提があったんですね。ラジオの深夜放送は若者のメディアだった。で、若者全体が大人と違うものを享受したいみたいなニーズがあった。それが続いてきて、若者のサイズが少しずつ小さくなって、島宇宙になったんだけど、日本で土壌のなかった音楽をかける番組が意味を持った、と。

柳瀬:日本のラジオ史においてアイロニカルなリーダーになった人、三木鶏郎さんって人がいる。武田徹さんの『NHK問題』にも出てくる。なぜ公共放送がジャーナリズムたり得ないという話。この人はNHKで、すごくアイロニカルな政治風刺をやってたんです。1950年代の話ですけど、時の吉田茂なんかをばっさばっさと切っている。最後は圧力で潰されちゃうんだけど。でも彼は政治的な発言をしたかった訳じゃなくて、アイロニーでやってた。で、それをやめてからは、商品連呼型のCMを作っていくんだけれど。
当時のNHKラジオ、ものすごい力があったときに公然とそういうことをやってたんだけど、そこは三木さんの皮肉屋としての性格でやってたわけで、跡を継ぐ人がいなかったんですよ。

鈴木:新聞メディアの草創期っていうのは、イエロージャーナリズム的な萬朝報っていうのが、その普及に一役買ったっていうのと同じ、、、

柳瀬:そうそう。武田さんと僕は昔、ピーター・ハミルという人の本を訳したことがあるんです。その時に色々調べたら、政治新聞、大新聞って言うのは、自由民権運動の時にたくさん出てくるんだけど、これが全部潰されちゃうんですよね。

鈴木:あと、関東大震災でほとんど潰れたってのも大きい。残った大阪毎日とかは大阪のメディアですよね。

柳瀬:いまのメディアは大阪のタブロイド紙を合併してできたもの。それで大政翼賛に簡単に行っちゃったのは、ジャーナリズムがないからなんですよ。戦後のNHKのトップには、朝日の社長とか、岩波の人が入ったりしてる。
もう一冊面白いのは、『日本テレビとCIA』って奴で、これはCIAが日本のテレビを使って日本人をブレインウォッシュ(洗脳)しちゃおうって話。これをアメリカの公開資料から見つけてくる。ラジオもテレビの系列だし、ジャーナリズム的なものってないんですよね。

鈴木:なんかメディア論の授業みたいだ。僕もそういう話は授業でするんですけど、意外に忘れられてますよね。で、政治的なアジテーションじゃなくて、世の中とずれた目線、斜め目線って感じになる。

森山:電気グルーブなんてまさにそうだよね。

柳瀬:僕らの世代だと、スネークマンショーがそれにあたるのかな。サタデーナイトライブ、モンティ・パイソン的なノリですよね。スタンスとしては三木鶏郎さんの延長だと思うんですけど。

森山:その話を聞いて、日本にもモンティ・パイソン的なものがあったんだなあって。モンティ・パイソンだって、イギリスの国営放送から出てきてますからね。

津田:ラジオって声しかないっていう柳瀬さんの話。それが渇望感をもたらしてるのかなと。ラジオはサブカル、じゃあネットは?っていったときに、ラジオは色んなものの「ハブ」だったのかなと。ネットは音声も動画もテキストもあるけど、マルチビューワでワンストップ。そこで購入もできる。ラジオだと紹介まではできるけど、自分で買いに行かないといけない。それが渇望感に繋がってるんじゃないか。

鈴木:ネットでこれいいなあと思うと、ワンクリックで買えちゃう。この番組のウェブもね、すごいアフィリエイト貼ってますけど。でも僕はあのアフィリエイトこそハブになってると思う。あんなアフィリエイト貼る番組サイトないよ!あれはうちの黒幕が頑張って貼ってるんですけど。でも、今はあれではじめてクリックできるけど、これからは喋った瞬間に、集合知じゃないけど、誰かがあれをアフィリエイトにしてくれるのかもしれない。そういうときに、渇望感みたいなのがあるか。後で見に行けばいいや、にならないか、ってことですよね。それは、この番組でずっと言ってる、「ネット以前・以後」ってことに繋がるのかなと。
今日はすごい話広がったけど、なんでじゃあそもそもLifeってラジオでやってるのかって話。この番組、実はサブパーソナリティ含めて紙媒体の人ばかり。普通だったら雑誌でやる話なんだけど、なんでやってるのか。危機感を持ったメディアがサブカルを取り込んだって話、さっきあったけど、今はネットもあるし、FMが邦楽を扱うようになって、AMの主戦場だったところを食ってる。そういう状態の中で、AMってどんどん厳しくなるだろうってときに、オファーを受けて、思ったのが、こんだけ切羽詰まってんだから、何でも好きなことやらしてくれんじゃないかって。
しかも、それが成功したら、AM/FMの垣根もなくなるネット時代、認められるようになるんじゃないかと。それで受けたんですよね。ピンチのメディアから新しいものが出るはずだ、と思ってやってます。
だから、ラジオの雰囲気が体に染みついてて、紙媒体っぽいネタを持ち寄ってやってるこの番組、もっと面白くなるんじゃないかなーなんて。

森山:黒幕だって、テレビに思うところがあってラジオにきたわけでしょ?

長谷川:もともと、ラジオに就職したとは思わなかった。でもTBSに入って、色々思うところがあって、希望してラジオにきたんですよ。そういう人はあまりいないんですけど、でも今Lifeをやれてるし。

森山:初めて会ったときにその話をされて。それでこの男は信用できると。

鈴木:ラジオってテーマは、今日もメールいっぱいきたし、ラジオだったら出てくれるって話は森山さんもしてましたけど、人を分けるリトマス試験紙になりますよね。そのことは肝に銘じて、これからもやってきたいと思います。
2007年02月05日(月) 11:16:43 Modified by ID:pYp5FHWYpg




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