「政治」Part2

2007/7/29「政治」


出演:鈴木謙介、柳瀬博一、仲俣暁生、佐々木敦、斎藤哲也、津田大介、森山弘之

※以下の発言まとめは、正確な番組での発言とは異なる場合があります。

MP3その3


鈴木:それではここで開票速報です。

〜開票速報:投票率は58.64%、前回を2.07ポイント上回る、一人区の結果は自民党で6勝23敗。89年の選挙の3勝23敗に次ぐ歴史的大敗。岡山では片山氏も敗北。佐賀で50年ちかく、富山でおよそ35年続いた自民党の連勝記録もストップ。民主党は21の選挙区のうち17で勝利。無所属では秋田などで勝利。

鈴木:先ほど、選挙システムが耐用年数きてて、って話がありましたけど、参議院不要論ってのもずっとあって。今回改選された議員の肩は6年間議員をやる。参院はタテマエとして、専門家の人がある程度長いこと努めて、ストッパーの役割を果たすという意義があるわけですけど。

柳瀬:もともと戦前の貴族院の流れで作っていて、見てる限り専門家もいないしw

鈴木:タレント候補が出てくるのが参院選ってイメージですよね。

柳瀬:二つの議会で相互チェックするという仕組みそのものは有効だと思うんですけど、言い尽くされてる話ですよね。

森山:民主党が参議院の最大派閥になって、衆議院とは違うというのは、マシになったと思うんですよ。

鈴木:捻れ構造が生まれたということで、マシかどうかはともかく、ある争点については衆議院を通るけど参議院は通らないとか。でも予算についても衆議院が優先するという規定がありますから。

柳瀬:政治評論家の方々も言ってるけど、早い段階で、衆院解散総選挙、政界大再編の動きが出てきてもおかしくない空気は自民党の中にも民主党の中にも間違いなくあるだろうなと。

鈴木:その流れでメール、僕は選挙活動とネットが切り離されてることに納得いってません。候補者や政党の情報を調べるのに四苦八苦。政見放送もオンデマンドにして欲しい。
ネット選挙がどう影響してくるか。韓国ではネットっていう流れがあって盧武鉉だった。それに対してどう乗っていくか。津田さん、ネット選挙解禁って話がありますが。

津田:二つありますよね。政見放送とかマニフェストとか、政治家にとって、この問題に対してはこう思ってるっていうのを網羅して、毎日新聞がやってたチェックリストみたいに、自分の選挙区で一番近い考えの候補はこの人だ、ってのがブラウザ上で選べるシステムはあるべきだと思う。

森山:もっと知りたいですよね。自分が論点とするところに対して、誰がどう思ってるのか。

津田:それがネットでやりやすくなるというのが一点。もう一つは投票の電子化。ヨーロッパだとスタートしてるところもありますからね。ネット化できるところはネット化した方がいいと思う。あと僕、今回初めて期日前投票に行って驚いたのが、区の中にいくつも期日前投票の投票所があるんですけど、夜8時くらいまでやってる。でも期日前投票だから僕一人しかいない。それに対して立会人も含めて5、6人いるわけですよね。これが全部の投票所にあるんだったら、ものすごい無駄な行政コストだなと。期日前投票ってシステムはいいんだけど、電子化した方が、税金の無駄遣いにならなくていいんじゃないかなっていう。

森山:投票に行くのもネットってどうなんですかね。僕、毎回選挙行ってるんですけど、日曜日に選挙に行くっていう行為に対して思うところがあるんですよ。

津田:全部電子化しろってことじゃなくて、選択肢のひとつとしてね。

鈴木:日曜日に投票に行くっていうのは、みんなが日曜日休みだった時代の発想なんですよ。ところがサービス業が増えてくると、日曜に働く人も増えてくる。昔は行楽のついでに選挙、なんてのがあって、転機が晴れると投票率が落ちるとか言われてたわけですけど、いまライフスタイルが多様化してて、政見放送が深夜・早朝にしか放送されないとか、さっき柳瀬さんが言ってた、演説なんて一回も聞けないなんて話。昼間車で回ってたら、会社勤めの人は絶対聞けないわけですよね。

柳瀬:あと、あまりの中身のなさですよね。あんな選挙演説ならいらないですよ。

仲俣:国会議員ってのは何をするのが仕事かっていうと、立法府だから法律を作るのが仕事ですよね。でも日本の政治家っていうのは法律を作らなくて、ほとんど官僚が作ってる。でも、いいなと思ったのは津田さんが最初の方で言ってた、国会議員が何をやってるかっていうのをネットで勝手に出しちゃうってのが進んでて。議員になった後の3年、4年、6年っていうのが何だったのかってのさえ出してくれれば、次は当選させないとなる。公約だって何を口実として通すかってのが大事なんだから。

森山:さっき気になったのは、仲俣さんが若いときに投票に行かなかったっていうのがあって、今回行ったのはなぜなんですか?

仲俣:選挙の制度の話で言うと、投票の仕方とかになるけど、一番大きかったのは小選挙区制の導入ですよ、ここ十数年で言うと。僕は当初小選挙区には反対だったんですね、弱小政党が通りにくくなるから。でもしばらくやってるうちに、小選挙区の使い方が分かってきたんですよね。とりあえずどっちか勝たせると、負けた方にいうことをきかせることができるわけですよ。で、次は負けた方に投票すると言うこともできる。だから今回の参院選の結果っていうのは一人区で決まったわけだから、やっぱ有権者って馬鹿じゃない、使い方を分かってきてるってことだと思うんですよね。

鈴木:耐用年数って言っても、選挙のあり方もネットを含めて変わっていくわけですからね。というわけで今日はLifeは選挙がテーマなんですけど、最新情報が。っても別に選挙の最新情報じゃなくて、2時までやってた開票特番のスタッフから、宮台さんが帰り際に残していった一言。「Lifeは何やるの?政治?あいつに政治のことなんて分かるのかな(笑)じゃあ〜」って帰ってったそうです。余計なお世話だ!確かにね、普段も酒飲みながらバカ話なわけで、、、って皆さんの前にビールが!ぷしゅっ。かんぱーい。
ホントはこうやってゆるーく政治の話を飲み屋談義みたいにしていきたいところなんですけど、テーマとしてはゆるくない話もありまして、メール、何が私の争点かと考えてみましたがいまいち分かりません。9条は絶対に守るべきだと思うので投票してきた、メール、参院選の争点は9条。今変える意義を見いだせない。フリーター、ニート問題の中で戦争しかないという意見も出ていますが、雇用と戦争は別問題。運動の回でも話題になったけど、戦争なんか行かないという話がありますが、共謀罪と同じく通ってしまえば他人事ではすまされない。メール、小田島等さんから。共産党に入れてきた。改憲絶対反対派なので、反対ならどこでもよかったのですが、ぼろ負け。なんだかキンクスみたいだな。パーソナリティの皆様に質問です。ぶっちゃけ9条は改憲されちゃうんでしょうか。10年後渋谷で軍人さんに蹴られたくないです。民主に任せて大丈夫なんですかね。
というわけで9条、それぞれ長い意見があると思うので、運動の回で平和の問題を提起されたのは森山さんだったので、もう一回その話してもらえますか。

森山:まず今回の選挙に絡めて言うと、要するに安倍が憲法改正の選挙にしたかったんだけど、それが論議のない選挙になってしまったというのが、一番残念ですね。

仲俣:むしろ争点にした方がよかったと。

森山:あとこれだけ言っておきたかったのは、要するに自民党はイラク戦争に賛成した党だった訳じゃないですか。それをどこのメディアもちゃんと言わない。色々見る限り、北大の中島岳志さんが強く言ってたくらい。それを論議しないとおかしいっていうつもりで選挙に行きました。

鈴木:メール、最近の関心は改憲について、日本を自立した国にってのがあるけど、僕らの世代にとって改憲を語る場合には、徴兵制の是非について語らないといけない。その点から言えば僕が護憲。美しい国、強い国よりエゴ全開で行きたい。
戦争に行かされるのは若い世代ですからね。

斎藤:改憲の話で言えば、教育基本法が去年末に通ったけど、あれは争点になってない。郵政選挙の勢いでそのまま通しただけ。

津田:国民会議に参加してたヤンキー先生も今回は自民党から出馬したし。

鈴木:着々と「戦争のできる国」っていう、森山さんが言ってた方向になろうとしているという危機感はあると思うんですけど。単純にイエスノーで聞きましょう。9条だけで、憲法改正に反対だという人は、、、佐々木さんと僕以外全員か。佐々木さん、賛成ですか?

佐々木:賛成でも反対でもないね、この問題に関しては。さっきのネット選挙もそうだけど、意志のある人がネットで全員イエスノーに参加できる形になったとき、一体この日本の中でどっちが多いのかっていうのに興味があるわけ。僕は割と改憲問題でも賛成・反対の議論、両方で議論が風発されてるから、多数決しちゃえばいいと思うんですよ。多数決の多い方でやればいいじゃんと。僕だって戦争のできる国はいやですよ。いやだけど、いいって人の方が多い可能性だってあるし、日本の外には戦争のできる国なんて山のようにあるわけだから、もし戦争のできる国ってことになって、そこで自分に選択を迫られたら、イヤだから日本を出て行くって選択だって、個人としてはある。

鈴木:もちろん、多数決しちゃえばいいじゃんの話の裏には、おそらく争点になるはずだった国民投票法っていうのがある。多数決をするとしても、その決め方は誰かが決めるわけで。

佐々木:決め方の問題はあるよね。

仲俣:国民投票法の最低投票率の問題が議論されているけど、俺はね、国民投票をやって、もっといえば改憲してもいいと思ってるんですよ。早く9条に対してみんながどう思っているのか、フェアな条件でやったらいいと思う。憲法を一切変えないということと、9条を守ると言うことは分けて考えたいという立場ですね。

森山:改憲をした方がいいという理由は?

仲俣:自分たちで変えられると言うこと、変えるか変えないかを決められると言うことを、一回やった方がいいということ。共産や社民は、改憲になったら絶対9条変えられちゃうって言ってたわけですよ。俺はそんなことないと思う。だから「やってみたら?」っていう。その体制を作れなかったら、左翼はもうダメでしょう。

佐々木:9条問題の背景にあるのは、9条の理念の是非じゃなくて、9条が決められるに至ったプロセス、手続き論ですよね。そこを一回括弧にくくる形で理念だけを論じることができないから、一回多数決をやって、そこで出た数字から考えられることもあるんじゃないのかなと。僕は単純に、それを知りたい。ホントのところみんなどう思ってるの。

森山:この状況で多数決をやることに意味がありますかね。

仲俣:ないと思うよ。

佐々木:たとえば護憲派の人たちっていうのは、改正論者の方が多くなるって思ってるわけですよ。ホントそうなのかなってのがよくわからん。

津田:でもそれで言ったら、変わると思うんですよ、その時期とか、問題が起こるタイミングで。30とか60%。その操作の可能性も含めて、出来事によるんですよね。

柳瀬:たとえば9条を自民党が争点にしようとしたのは、北朝鮮の拉致問題とセットだった。僕は9条ってのが自分の中で深く考えてもしょうがないという外枠としてあるのは、リアル・ポリティクスの話としてはこれは対米問題だということ。日本にキャスティングボードはないんですよ。六カ国協議の状態を見れば分かるとおり、他の五カ国は原子力のコントロールに焦点を合わせて、北朝鮮を収束させる方向に向かっている。僕の知ってる限りの情報で言うと、北朝鮮も含めてそこは握ろうと、日本だけが蚊帳の外になってますよね。

鈴木:森山さんの危機感は、護憲って言葉がまさに「旧来の自民党」と同じで、「ノー」の対象、何でもかんでも守るっていうふうに見られると。それが選挙制度と同じで耐用年数なのかなと思ったのが、いま速報で入ってきたんですけど、「何でも見てやろう」の小田実が先ほど都内の病院で死去しました。小田さんといえばベ平連ですが、戦後のね、1945年負けましたの後、憲法を作りましたって言っても、数年後には朝鮮戦争が起きて、日本の経済はそれで復活すると同時に、再軍備、警察予備隊から自衛隊へ、という流れの中で「反戦」も盛り上がってきたという「戦後史」が、いままさに「戦後レジームからの脱却」じゃないけど、現役世代の方々もお亡くなりになる年に来ている。っていうときに、それを渡された「戦争を知らない子どもたち」じゃないけど「反戦を知らない子どもたち」が、どういう態度を決めるのかという時代に来ている。
で、僕は森山さんに聞きたかったのは、戦争のできる国にしないために、何ができるのかを話した方がいいっておっしゃってたじゃないですか。具体的に何をやったらいいと思います?

森山:僕は国防ということを考えるなら、前の番組で宮台さんが仰ってたけど、一番には農業ですよ。自給自足がこれだけできてない国で、食糧自給率を上げることが国防のひとつだと思うんです。僕も、社民党や共産党の言い方が通じるとは思えないんですよ。だからこないだ読んで面白かったのは、内田樹さんや小熊英二さんが仰ってたんですけど、いま改憲して、9条を変えて軍備を持つとなると、国家予算がそこに相当つぎ込まれて、消費税も30%くらいになっちゃうんじゃないのと。それが、あえて言うと日本の国益にとって損だと、そういう反対の仕方にしても、、、

佐々木:うーん、それはかなりテクニカルな反論の仕方だよね。カネがあったらいいのかって話になっちゃう。

森山:彼らも彼らなりに、、、

佐々木:それはすごい内田さん的な、、、

柳瀬:論点ずれちゃうかもしれないけど、改憲議論の前に、リアルな話で言うと、60年間、人を一人も殺していない、戦争を知らない軍隊なわけじゃないですか、自衛隊って。イラクの派兵の時でも、明石さんが言ったカンボジアの時でも、非軍人が一人、二人亡くなっただけで、日本の政治はパニックを起こすわけですよね。正直、何人死ぬのを認めるかってのがリアルな軍隊であり、政治的な軍事活動。僕はそれはできないと思います。

鈴木:僕もそう言うことを思っていて、さっきの森山さんの食糧自給率を上げるって話には真っ向から反対したいんですけど、その話の前に、「できない」って話をなんで強調してるかっていうと、徴兵制が敷かれるってよく言うじゃないですか。

森山:それはあまりにわかりやすい飛躍したあれだけどね。

鈴木:あのね、僕が徴兵制が敷かれてみんな戦争に行かされるって話がイヤなのは、こういうことなんですよ。いま、世界中で徴兵制って、期間を短くしたり、良心的兵役拒否を認めるって話になってるわけです。それはなぜかというと、辛いからなんですよ。『戦場における人殺しの心理学』って本があるんだけど、人を殺すって、普通の人間にはできないんですよ。それは相手との距離が近くなるほど難しくなる。銃で撃ち殺すってのができる人もいるけれど、第一次大戦くらいまでは、みんな自分の撃った弾が人に当たらないように、あさっての方向に向けて銃を撃ってたわけですよ。で、ホントに接近性になったら、両目に指を突っ込んで脳みそをかき回すって殺し方があるわけですけど、言った瞬間、うわっ、って思うでしょ。この「うわっ」っていう人間性を抹殺していくプロセスが徴兵制の中で行われる軍事訓練だと。
で、戦争状態にある韓国ですら、それに耐えられなくて自殺したり脱走したりって奴がぼんぼん出てくるという現状がある。まさにいま「人を殺してない軍隊」って話がありましたけど、徴兵制を敷いたら、簡単に人が殺せるようになる、って言ってるように聞こえるんですよ。それがやなんですよね。普通は、徴兵制で取られて、たとえば直接戦で3秒でどうやって人を殺すか、なんて訓練をやるわけですけど、そんなことを教えられたら、普通の人はイヤでイヤで逃げ出したくなるものだ、という人間性を信頼しているから、徴兵制が維持可能なシステムだと思わないし、先進国で維持不可能になってるという現実があると。

佐々木:この間、大学の生徒と飲みに行って、みんなでイエスかノーか話になってて、9条の話で言ってたのは、さっきも言ってたけど、もし改正されたら、自衛隊というのは人を殺すことがない軍隊としてずっと来てる。殺す可能性があるということは殺される可能性もあるということだから、間違いなく自衛隊に志願する人は減ると思うわけ。そうすると足りなくなるから徴兵制が現実味を帯びてくるということはある。でもいまチャーリーが言ってるみたいなことがあるとすると、アメリカのように、お金のためとか、社会的な部分で嫌々ながらも人を殺すと言うことで、パートタイム的に兵隊になる人が出てくる、ってのが一番現実的にありうる。

鈴木:だから僕、結論だけで言うと9条改正してもいいと思ってるのは、自衛隊を認めるか認めないかという話はあるけれど、認めるという前提で、同時に9条に「前文の精神に則り、良心的兵役拒否を認める」ときちんと書けって話なんです。そういう改正ならありだろうと。とはいえ貧困な人から兵役に就くことになって、イラク戦争の時のように、白人の偉い議員の息子は戦争に行かなくて、貧しい黒人兵ばかり前線に行く、みたいなことが日本でも起こるかもしれないじゃん、ってのにどう対抗するか。だって北朝鮮とかリアル危機だぜ、って人もいるわけで。そのときに、さっき森山さんが紹介してくれた北大の中島さんが最近出した『パール判事』という、極東軍事裁判の時に「全員無罪」って意見書を出したことで知られるインドの判事の評伝があるんですけど、その中で、パール判事のこういう発言を紹介してるんですね。
「日本はなぜ戦争したか。食料、衣料、あるいは油が足らない等々のためであろう。しかしそれを得んがために乱暴な戦争に訴えるのはよくない。戦勝国は、日本に向かって今度の戦争の原因となった不足のものを与えて、将来武力を用いないように、互いに戒め合うべきである。戦争によって戦争はなくならない」
これは1950年、日本が再軍備していくぞという時代に言ってるんですけど、この発言で何が一番大事かっていうと、資源が足りないので戦争を起こしたのだったら、資源を与えろって言ってるんですね。これって実は反戦とか、世界の紛争問題でよく出てくるスキームで、戦争を止める最良の手段は、戦争に反対することではない、みんなを豊かで幸せにすることなんですよ。みんなが豊かで幸せになったら、なんでこの生活を捨ててまで人を殺しに行かなきゃいけないんだ、って思っちゃうでしょ。あるいは誰かのものを奪わないと生きていけない、って思わなくなるでしょ。だから、みんなを豊かで幸せにする必要がある。って言うんで、さっきの農業で自給自足で自立するべきだという考えには真逆の立場なんです。むしろ、世界の相互依存を強めて、海外に対して投資をどんどん増やして、貧しい国を減らしていくことが、世界の平和にもっとも貢献することになるっていうスキームが、グローバリゼーションの中でよく言われるのね。

森山:それと改憲の話はどう関わるの?

鈴木:で、改憲の話っていうのは、軍隊を持って、昔の小沢さんが言ってた「普通の国」として、馬鹿にされないようにしようという話だったんだけど、今の世界というのは、アメリカをのぞいて、軍事力を使って締め付けをする世界の警察になることよりも、対外投資を通じて貧困国を減らし、貧困国が減ると、自国に来る移民、不法労働者が減ることから、自分の国の経済も守れるというスキームを対案として出した上で、「反戦」っていう理念を貫くための現実的な手段がそれだよって言えば、護憲できると思う。でもそれなしに護憲オンリーでやるのは求心力がないだろう。だったら自給率を高めるより、世界との相互依存を強めて戦争できない状態に持って行こうぜってのが僕の立場。

森山:それは分かるんだけど、それでなぜ改憲しなきゃいけないの?

鈴木:改憲をしなきゃいけないってことじゃなくて、平和憲法の理念を守る手段の話。それと別に、今起きてる出来事に何らかの判断をしなきゃいけないということはあって、自衛隊を認めるって話か認めないって話か、どっちかにしないと憲法に自衛隊のことは書いてないので、コントロールが効かないんですよ。なので改憲した方がいいと。

佐々木:解釈改憲でいくよりは、きちんと書いた方がいいと。

鈴木:そこで少なくとも最低ラインとして、良心的兵役拒否だけは絶対書き込んだ方がいい。その意味でも、書かれていないことについて解釈を争うくらいなら、書いた方がいいという立場なんですよ。

斎藤:解釈じゃ何でいけないの、って話はないんですかね。

鈴木:もちろんそういう立場もあるでしょう。

佐々木:ただ、解釈によっていろんな色づけができるってときに、それに反対する人っていうのは、その解釈を可能にするポリティクスを操作できる側に対しての警戒感が強いと。単純に解釈するだけだったら、条文がプレーンであればあるほど、真反対の解釈もできてしまう。それ自体は悪い事じゃないけど、それがイーブンな形で論争できないってことに問題があるんだよね。

鈴木:政治システムにゆだねて解釈を任せるくらいだったら、直接国民が選ぶという道はあるだろうし、さっき耐用年数って言ったけど、平和憲法の理念が耐用年数に来てるかどうかじゃなくて、平和憲法を規定した条文に耐用年数が来ているんであれば、条文は検討の対象になってもいいと思う。ってのは若干考えてるんですね。

森山:変える必要あるのかなーでも。

鈴木:そこは論争あるけど、「変えない」って選択もいまじゃできないって話をしてるんですよ。

佐々木:思うのは、こういう風に話をすると、盛り上がってる感があるけど、身も蓋もないことを言うと、もし北朝鮮が万が一日本に対してクラッシュしたら、数日間で日本は戦争のできる国になるってことがあるわけですよ。

斎藤:今の憲法のままでも?

佐々木:というか、今の憲法がどうしたこうしたってこと自体を根こそぎどうでもいいものにしてしまうようなね。アメリカが「一緒にやらないと日本も守りきれないよ」って話になったとき、それでずるずると変わってしまうというのはあり得ない事じゃない。そのクラッシュ自体があり得ないという読みはあるけど、もし起きてしまったら、人間の根本的な愚かさみたいなことも含めて、今まではどこか繊細に論議しようとしていたことが全部おじゃんになる。

鈴木:その前にタガをはめておいた方がいいと。9条改憲云々ってのは、それとして独立してるんじゃなくて、世界の貧困とかに直結した問題だと思っていて、曲の後で、若いリスナーから出てきた格差と貧困の話もあるので、そっちの話もしていきましょう。

〜曲〜

鈴木:今日のメールで多かったのは、メール、今日は出口調査のアルバイトでした。バイトの面々はロストジェネレーション組。年金も払えないロスジェネ組はいっそうの疎外感。メール、ニートやフリーター、派遣の問題はどこに行ったの?年金問題は段階の心を揺さぶったけど、後付で払えるリカバリー可能な問題。でもニートや派遣は既に現実に起きていて、一日遅れればそれだけ手遅れになっていく。年金運営は若者運営の問題に従属している。若者が幸せでないとこの先は立ち枯れる。
年金に関してはそれはあるんですよ。これからもらえるかどうか問題ってのはあるけど、それの対応をしたりシステム作ったりしてひーひー泣いてる奴らは俺の世代だったりするので。なんで俺たちは自分が払える状態ですらないものを、いまのためにひーひー言わされてるんだろうって。そこが安定しないと年金運営安定しないんですけどってのをどう考えるのか。そもそも高齢の方の方が選挙に行くって前提が成り立ってるんだとすれば、高齢者向けのテーマを選んだ方が得だというのはあるのかもしれないけど、そういう意味でも忘れられている感はありますよね。斎藤さん、今回若者格差はあまり争点になってないですけど。

斎藤:メールでも何通かあったけど、若者の一部の層では、今の格差って言うのに敏感になって票を投じた人は相当数いたんじゃないかなと。面白いのは、最近のビジネス誌って、その辺に関してはビジネス誌っぽくないんですよね。社会派の、派遣・偽装請負の話。そういうところからも、国全体で考えるようになってきてますよね。

仲俣:民主党は、派遣を自由化した法律には賛成してるんでしょ。僕はやっぱり格差問題を世代問題にしちゃいけないと思うんですよ。若い世代の敵が上の世代だと思ったら、それは法律を変えた人の思うつぼで、それは労働市場の自由化っていうネオリベ的、アメリカ的な発想の中で出てきたものだから、それに歯止めがきかなくなってたっていうのが問題。法律で変えられることがあれば変えればいいし、民主党に投票した人は、それを民主党に突きつければいいと思うし。今後の問題だよね。

津田:今後の民主党って、ある種棚ぼたで勝っちゃった訳じゃないですか。でももともとは、自民党、民社党、社会党の一部を寄せ集めて出てきた党じゃないですか。いま、自民党より右よりの人もいれば、逆に左よりの人もいるっていうのがすごいことになってて。ある程度力を持っちゃったことで、党内調整とかがすごく難しくなると思うんですよね。

柳瀬:そこで一番ポイントになるのは、労働組合問題なんですよね。今回の社会保険庁でも、ベースにあるのはダラ官って言われる、国家公務員の中の現場の人たちが不当に力を持って仕事しなくなってしまったという問題がある。これはかつての国鉄だとか、電電公社、三公社五現業をマーケットに出すときに一番問題になったところ。左翼的な政党の一番の問題がそこで、労働組合ってのがある種の既得権益を持っちゃった構造になって、それが結局、大企業だとかかつての三公社五現業、役所で労働貴族を作ってしまった。これに一度ノーが突きつけられたわけだけれど、ところがそこからオルタナティブとして出てきたのが、労働者の権利を事実上ないがしろにする、好きなときに搾取できるシステムだった。だから従来の労働組合に代わる、労働者の権利を守りながらマーケットにセットするっていう仕組みができてないんですよね。その部分で勝った側としては、両方の人間がいるわけです。リバタリアンもいれば、労働貴族の末裔みたいな方も。自民党以上にこの部分は分かれてきますよね。

鈴木:まさに今、自民党の中でも論壇でも話題になってる。

柳瀬:さっきも話したけど、自民も含めて、どっちにつくのかっていうので政権再編の論点になってもおかしくない。

仲俣:小沢一郎はそれをねらってたわけで。

鈴木:そこのねじれって言うのが、ヨーロッパだと、国家福祉をどうするかって問題に争点がいきやすかったから、十年前にヨーロッパで起きた問題の繰り返しだっていう部分があるんだけど、ひとつ条件が違うのは、日本って福祉を企業が担ってたということ。80年代には、よく日本って成功した社会主義国家だなんて言い方をするんですけど、福祉の公的支出は最低水準で、ほとんど中小企業がやってると。そこを採り上げて、日本は成功した新自由主義国家だ、なんて話もアメリカではあったんですよ。若者も、だから国じゃなくて、企業に対して「正社員にしてくれ」って言ってたんですよ。ところがこの数年の間に、ニート問題とかがあって、メールでもあったけど、若者バッシングみたいなものが盛り上がってきて、どうやらこれは政策的に、大きな政治の流れの中で俺たちは損したらしい、というのが分かってくる。それで政治の季節ってのが若者たちの間に盛り上がってきたんじゃないかと。これまでだったら、個別の企業に要求してたことだったと思うんだけど、今その辺で活動している人たちは、それはあなたと企業の問題ではなく、社会との問題なんだ。だから政治で解決しなきゃいけないってことをすごく訴えるじゃないですか。

佐々木:だから、ニート、フリーター問題が話題になるときに、いつも違和感があるのは、人にはニートやフリーターになる権利があると思うわけ。で、しかもニートやフリーターでも飢えないインフラの話ってのもあり得ると思うわけ。いまのチャーリーの話に引っかけて言うと、そういう状況に不満を抱えてる人たちが求めてるのは、終身雇用や護送船団方式に近いものなんじゃないか。そういう昔に帰れってのがこの結果に出てきているという話もあったけど、それはもうできないってことになるとすると、考え方とすると、福祉国家、極端にはベーシックインカムの話になる。でもそれも日本では難しいとなると、ぐるっと一周回って、やっぱり終身雇用的なシステムはありだったんじゃないのと。

鈴木:実際そう言う話も出てきているし、企業がやってたことの強みは何かっていうと、企業の業績がよくなったらもう一回それができる。いまの大学生とかは就職状況が改善されて、すごく安定志向が強いので、終身雇用的な願望が強い。で、今は売り手市場で人が取れないので、どんどん福利厚生強くしていきましょうって話になる。と、若い「これからの世代」と「これまでの世代」に挟まれた人たちって言うのが、上と下から挟撃され、使い捨てられ、忘れられ、しかも全体のパイからすると小さいわけだから、松本さんも言ってましたけど、オルタナティブな手段でわーっとやった方が、貧乏人もなんとかなんじゃねえの、ってのが出てくる。なので、今日前半にね、選挙行ってもみたいな話をさんざんしたんだけど、それで誤解をされた部分もあるみたいで、メール、冒頭で放送されたインタビューで気になったのは、何も変わらないという意見。それは自分が変えようとしないからで、受動的な視点で政治を見ているからだと思う。国民の意識改革が必要だ。
これ、選挙じゃ何も変わらない、って話だったんですよね。だから意識の低い若者ってのとは違うのかなと。あと、投票に行ってない人は政治にもの申す資格がないって話をしたときに、メール、政治に文句を言う資格がないっていうのを否定する発言が出たときに、ただちに否定さえもしないのに失望した。候補者が選べない場合は白票という手段がある。それもせずに文句を言うのは言語道断。ただちに訂正することを望む。それから、メール、選挙に行かない奴は政治に文句を言う資格がないという話がありましたが、まったくその通り。どの候補者も支持できないなら白票を投じるべき。選挙に行かないことを正当化するな!反省を求めます。
というわけで、斎藤さん、反論をどうぞ。

斎藤:政治に参加する=投票ってのは違うじゃないですか。その人たちに聞きたいのは、投票だけが政治に参加することなのかっていったら全然ちがくて、松本さんもさっきいってたけど、選挙じゃ何も変わらないから運動をやるんだってのがあるし、政治家と仲良くなって、自分のやりたい政策を実現してもらうっていう。

鈴木:圧力団体とかロビイングとかね。僕、投票行かないことを正当化しようとしたわけではなくて、投票以外の手段で政治参加するのはどうだろうって話をしたかったのね。だから白票を投じてないから発言する資格がないっていうのは、、、

仲俣:いや俺これは恐ろしいと思ったね。選挙に行かないと政治に参加したことにならないと思ってる人が若い人にこんなにいるんだったら、俺は声を大にして言いたいけど、政治ってのはそんなもんじゃない。

佐々木:それはそうだし、政治参加しない自由ってのも認めてくださいよ。

鈴木:いや、この方々の意見だと、参加しないんだったら文句言うなって話なんだけど、ただね、僕が何を言いたかったかって言うと、先日、フランス人の学者とラウンドテーブルを持つ機会があったんですね。そのときに話が出たのは、運動の回でもあったみたいに、デモをやりますっていうと、両側をジェラルミンの盾で囲まれて、自分たちの言いたいことが争点にもならない、外にも伝えられないという状況がある。それを言ったら、フランス人の同世代の学者たちがみんな一様にびっくりしてて。なんせあの国は、政治参加って言ったら投票以前にデモがある国だから。投票の前に何かを直接訴えるということがあって、その代替手段として選挙が出てきたという当たり前の歴史を踏んでるわけですよ。選挙ってそうでしょ。政治参加って民主主義の原則があって、でも全員参加できないから選挙をやってるわけですよ。とかってのがあるから、ああ歴史が違うんだねーって話になるんだけど、でも彼らも同じ問題を抱えてて、CPAっていう若者の雇用の法律に対して暴動が起きたりとかいう現状がある。問題は同じなんだけど、その手段として選べるものが限られてるよねって話をしたのね。で、いまこうやって、やっぱ選挙だ!って話?意思表示をした方がいいとは思うけど、その前に政治参加の動機付けについて考えた方がいいと思うし、もう一つは、すごく言いたいのは、先進国って軒並み投票率が下がるんですよ。それはなぜかって言うと、さっき言った話で、みんな個人の生活が豊かになって平和になるからですよね。平和について考える人がいて、その人たちが何かをしてくれることは大変大事なんだけど、多くの人が平和について考えなくていいっていうのが一番平和なことだと思う。だからある意味で、投票率が下がるって言うのは豊かな証拠なんですよ。そこはジレンマなんだけど、民主主義の。でもだからダメだ、って言っちゃうと、ある種の全体主義的な感じはするんですよね。

佐々木:気持ちは分かるんだけど、原理的な意味での政治意識と、ある種の当事者性みたいなことっていうのが短絡すると危険だなと思うのね。

柳瀬:まさにそうで、選挙で、っていうのは政治活動のほんの一部でしかないわけですよね。だから選挙で誰かに票を投じればそれで終わりかっていうと、そんなことはない。普段どうやって生きるかこそが個人の政(まつりごと)であるからして、そこを考えた上で選挙に行くのか行かないのかってのを含めた、行動のパターンが政治だから。選挙が政治だっていうのが、メールをいただいた方たちの意見なのかなと、それだけで判断すると。

津田:バーチャルなものなんでしょうね。

柳瀬:それでできることは、今の日本の状況を見れば分かるとおり、ほんの一部だから。どう生きたいのかを具体的に考えるのも立派に政治の一部だから、それで何をするのか、どんな仕事をするのか、誰とどんなコミュニケーションをするのかってこと、全部政治ですよね。

森山:でも両方ですよね。そういうことを言ってるうちに色んな事がどんどん決まっていくじゃないですか。

柳瀬:そうなんだけど、選挙だけを取り出してみるのは危ういっていう。あと、自分と意見の違う奴を認めないというのは、結構危ない話なんですよね。

佐々木:でも今回は、行けば変えられるっていうのは、証明されたよね。

鈴木:メールでもいただいていたのは、政治的な話をするようになって、友だちとの意見の違いみたいなものが明らかになって、そこで微妙な空気が流れるってのはあるわけですよ。石原慎太郎が好きだって友だちがいて、みたいな。そこである種うーん、みたいなところはあるんだけど、政治参加ってときに俺が今日ずっと考えてたのは、選挙ってすごく大事だし、開票速報とか見ながら、あれこれ論じてしまうくらいの関心はあるんだけど、それがどう自分の政治に降りてくるのか分からない。
それで思い出すのは、柳田国男が、戦後、社会科教育の改革をやろうって言って、「社会」って言葉を「世間」に変えろってゆってたんですね。つまり、世間の今身の回りに起こっていることについてどう理解するか、ってところから始まるのが「社会科」教育であると。普通今の社会科教育とかって、政治や方のシステムについて学ぶわけですよ、三権分立とか。で、それに関わる手段は選挙だけですよって言われちゃってるからね。意思表示って他にもいっぱいあって、政治参加そのものもまつりごとなわけだから、自分の生活の中にどう降りてくるか、のとき、運動の回で森山さんが言ってた、豆腐屋で豆腐を買うって話に繋がってくるんだと思うんですよ。そこにどうやって降りていけばいいか、って話ができればいいなって思ってた。選挙の結果については思うところもあるし、実は俺は火曜の新聞で選挙についてコメントしないといけないので、今日これから帰って朝から昼までにそれを書かないといけなかったりするわけですけど。

森山:選挙も使える手段だからさ、使った方がいいって。

鈴木:それはもちろん。

森山:それも政治参加の大きなひとつだからさ。

鈴木:選挙することによって「使われる」感があるんですよ。

森山:使えるって、使えると思うよ。

鈴木:新しい手段が、とか、政治の季節の盛り上がりっていうのは当然念頭にはあるんだけど、それを考えるとき、選挙にフォーカスして話をしましたけど、耐用年数って話が出てきたり、そのシステム自体が問われてるという部分と、昔のシステムの方がよかった、変えないでくれという部分とある。

仲俣:使い方次第だったりするしね。

鈴木:というわけで選挙の方ですが、開票速報に行きます。

〜速報:党派別当選者数は、自民37、公明8、民主60、共産3、社民2、国民新党2、新党日本1、その他7、残りは比例代表の1議席となっております。また、昨日投票が行われた、衆議院の補欠選挙の結果です。岩手一区では民主党。熊本三区では自民党系無所属の候補が当選。投票率は一昨年より下回っております。

鈴木:さて、生放送でお送りしてきましたけど、ここ3回くらい続けてきた硬いテーマの総決算で、僕も投票に関心が出てきて政治を見る目が変わったみたいな、CMみたいなことはあるんですけど、今後、これからどうなっていくかを選んだわけだから、これからも注目をしたいと思っています。で、次回のテーマは「ひと夏の想い出」。8月の26日深夜です。夏の終わりということで柔らかモードで。ひと夏の経験とか、久しぶりにバカ話をね。

「政治」Part3?
2007年08月09日(木) 09:39:27 Modified by life_wiki




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