「大人になるということ」Part3
2007/2/26放送「大人になるということ」Part3
出演:鈴木謙介、仲俣暁生、佐々木敦、柳瀬博一、斎藤哲也、津田大介、森山弘之
※以下の発言まとめは、正確な番組での発言とは異なる場合があります。
MP3その6
鈴木:今日は、3月、、、いきなり間違えちゃった、今日は2月24日の深夜、、、あっっ、26日ですね。もうだめだーw ビールいこうかな、ぷしゅっ。ぷはー。
メールなにから読もうかな。メール、将来の選択の幅が狭くなって、現実が迫ってる。何になれるの?っていうのが大人を感じるところ。
決めなきゃいけないという話ですよね。
メール、昨晩、祖父が他界しました。身近な人を亡くし、こういうのを抜けていくのも大人になることかなと。その死を受け容れること。
この方、自分でおっしゃっているとおり、生まれるのと同じくらい、死ぬのってものすごい周囲の努力がいるわけで。人ひとりを戸籍から消すために、こんなにたくさんの努力をしなきゃいけないのかっていうくらい、色んなことを、誰かがしなきゃならない。その誰かに自分がなったときに、ちゃんとそれを取り仕切れる大人になっていられるかどうかっていうのは、結婚や出産より重たいですよね。あっ、みんな黙っちゃった。
佐々木:大切な人の死っていうのに出会っていくのはありますよね。
津田:それがいつなのか。中学なのか高校なのか、大学なのか、社会人になってからなのか。それによってずいぶん違いますよね。
柳瀬:昨年の末に叔父が亡くなったときに、いとこが辛い思いをして。古い言葉だけど、喪主を勤め上げるというので思ったのは、喪主をちゃんとやる、肉親の死を看取り、周囲に伝えて記憶に残すっていうのは、大人の仕事なんだろうなと思います。
鈴木:僕も最近、そういうことがあって。周りでだんだんなくなる方が出てきて。残された人が、死んだことにするのにどれだけの苦労をするのかってことを思ったら、簡単に死ぬとか口にできないなあと思いました。大事なことですよね。
メール、中学生の頃、大人というのは恋に生きている人だと思ってた。恋バナを日常的に耳にしてたけど、恋には興味もなかった。いままで恋というのものを知らずに来ました。今は二十歳だけど、最近よく喋る女の子のことが思い浮かぶ。これが恋なのか?
斎藤:森山さんの出番ですよw
柳瀬:エコー付きでねw
森山:完全に恋ですね。
一同大爆笑
鈴木:噛んでるしw
斎藤:何のコメントにもなってないw
鈴木:これから彼はどうしていけばいいんですかね。
森山:思い浮かぶんですよね。講義で見かける人でしたっけ?
鈴木:そんな話出てないよ!あなたのイメージでしょそれ!
佐々木:作っちゃってるよ。飲んでないはずの人が。
森山:どんどん自分の中で物語ができちゃって。でもそれは完全に恋なんですけど、次には、うーん。時々話すっていっても、どういう話なのかっていうのがね、重要ですね。こないだ話しましたけど、空気を読まないと、大変なことが起きますからね。続報をお待ちしております。
鈴木:具体的に森山アニキが相談に乗りますんでよろしくお願いします。次のメール、Lifeは社会学の講義を思い出す。金銭的なものの大人条件もあるけど、結婚を見据えた交際ができるかどうか。先々どろどろじみたものが待っている気がします。終末感がw
24歳で終末感を感じられてもなー。柳瀬さん?
柳瀬:いやぁ〜、早すぎるよね、どう考えても。
鈴木:だめなオヤジだw
森山:結婚する前に離婚のどろどろとかねw
鈴木:順番が「結婚、セックス、子どもの教育」ですからね。
柳瀬:順番も大きく間違ってる。
津田:それがさっきの、選択肢が多すぎて考えすぎて止まっちゃうって話ですよね。
柳瀬:僕も42で何も持ってない。友達になれそうな気がする。
鈴木:ロールモデルとして、完全に親戚のダメなオジサンが酒飲みながら説教してる絵ですよね、これ。
柳瀬:僕が言ったダメなおじさんの役ですよね。
鈴木:役ってかそのものじゃないですか!演じてないよ!
津田:まあでもあと18年はこれができるってことですよね。
鈴木:18年もこれやるの?
柳瀬:その後の人生保証しないけどね。
鈴木:メール、17歳、まっさきに思いついたのはエヴァンゲリオン。感銘を受けたのが、作中で描かれている大人になること。ヤマアラシのジレンマとか。子どもと大人の対比。現実に立ち向かい、誰かのために行動する。今でもああいう素敵な大人になりたい。
エヴァで言えばあれですよ、大人のキスですよ、ミサトさんの。あっ、誰も見てなかった。大人が子どもに接するときに、人間として接するのを学ぶのもエヴァの重要なテーマですよね。大人には大人の都合があって、子どもを利用しようともするし。大人が人間としてみられるようになる瞬間っていうか。そこは大人っていう存在を意識したのは、俺の場合それかな。大人って言うとお父さん、お母さんの延長だったわけですけど。
柳瀬:最初に大人を身近に感じたのは、ダメな叔父がいて、叔父、叔母っていうのは、父母とは違って、大人なんですよね、こっちと関係ないから。ダメなオジサンっていう、全然大人じゃなかった人なんだけど、彼らがある種の大人の面白さ、危なさを、子どもの目線で伝えてくれる人だった。こういう人が周りにひとりふたりいたんですよ。
斎藤:境界にいるんでしょうね、寅さんとか。
柳瀬:そうそう。まさに寅さん。藤原和博さんが言う「斜めの関係」にあるひと。大人を教えてくれる人は、大人マーケットからはちょっと外れている人だったりして、思春期には重要なんだろうな。藤原さんと本を作っているとき、そういう人がいなくなってるって話をしたんですよ。ホントの大人より、マージナルないい感じの人が見えなくなってて。いるといないとは大違い。
森山:そういう人たちを許さない社会になってるんじゃないか。ミュージシャンや文学者が、飲む打つ買うをしてナンボってのがあったけど、それ自体が崩壊してきたっていうか。95年の阪神大震災とオウムでサブカルっていうのが決定的な打撃を受けて、それ以降、まっとうにならざるを得ないというか。若い人たちのまっとうな生活への志向だったり、家族への回帰だったり、素面だったりっていうのは、日本の社会自体が大人になったんだろうな。
斎藤:会社でも、窓際とかがいる余地がなくなって、代わりに派遣だったりパートになっていった。
鈴木:そういう人たちの中で、のんびり働けるかっていうとそうでもない人もいて。派遣しかできないという人もいる。もちろん望んでやってる人もいる。そういう人たちとは関係も作りにくいし、あと派遣の方は残業もさせられないので、正社員とのモチベーションの差が出てきたりとか。
やっぱね、この番組ですよ。明らかに寅さんがいっぱいいて。最近10代、地方の方がいっぱいメールをくれるようになって。もう少しお付き合いいただきたい。
メール、いまラジオをつけてびっくり。こういう番組に頑張ってほしいです。
人を元気づけると、元気づける言葉をもらえる。マスメディアをネタに実況するのも楽しいけど、自分が発信する立場になったら、信頼できる人とこういう話をしたいので、すごく嬉しいです。
なんか人がどんどんトイレに行ってるよ!大丈夫かこの番組。というわけで前半はここまで。
MP3その7
鈴木:時刻は四時半、まだやるぞ。メール、ビールが美味しく飲めるようになると大人。大学でも飲めなかった。
ビールいつから飲めるようになりました?俺、23か4くらいです。
柳瀬:その質問、いい質問ですね。10代から飲んでたんですよ、早い話。
津田:高校生の時とか、美味しいとか思わないですよね。
佐々木:なんでもありだなw
柳瀬:大学時代は、野蛮なサークルにいたので、あらゆる一気をためしまして。
佐々木:僕の頃、チップスター一気ってありましたよ。
森山:世代を感じるなー。
柳瀬:我々の頃は、土手鍋に色んな酒が入ってて、しかも牡蠣が浮いているという非常に辛い一気がありまして。いやいやそんな話じゃなくて、案外、ウイスキーやチューハイは美味しかったんだけど、ビールは大して美味しいと思わなかったんですよ。ところが会社に入って、最初の原稿書いた後で打ち上げしたときのビールがすごく美味しかったのを覚えてる。ビールのあの乾いたときにすっとくるのどごしがうまいと思うようになったのはサラリーマンになってから。ビールが美味しいっていうのは、勤め人になったなっていうことだと思った。
鈴木:海外だとビールの味が違うので、日本だけだと思うけど、岡村靖幸の歌詞でも「今なら仲間とバーボンソーダ飲めるけれど本当は美味しいと思えない」ってのがありますよね。みんな思いながら飲んでた。
津田:社会人になると突然美味しくなるんですよね、あれなんででしょうね。
一同:そうそう!
柳瀬:大学生で美味しく飲んでる奴っていないんじゃないかな。
斎藤:大学生って「とりあえずビール」って言わないじゃないですか。
佐々木:言わないねー。
斎藤:「とりあえずビール」って言えるようになることが大人力ですよね。
鈴木:次のメール、大人になることで思うのは、「少年のような心」と「少年の心」がごちゃまぜにされること。だめんずに通じるけど、夢を追うのは「少年のような心」なのでOKだけど、いつまでも売れないのにミュージシャンや昆虫採集に精を出すのはダメ。
うーん。どうしましょうかね。
斎藤:ハイ・フィデリティって小説がそれですよね。
津田:でも、実現可能な夢を追う時点で大人ですよね。
鈴木:この人は、少年のような心はだめだけど、リアル少年のままはだめってことですよね。
斎藤:ハイ・フィデリティは、好きな女の子に、自分の好きな曲を渡しちゃうんですよね。
鈴木:我々も、必ず一度はやりましたっていうw
柳瀬:マイカセットw
斎藤:じゃなくて、この子が好きそうな曲を、
鈴木:渡せるようになることが大人。どうだろそれ。単に姑息になっただけでは。
柳瀬:マーケティングができるようになったっていう。
鈴木:昔、ジッタリン・ジンのアニーって曲で、好きなこの家の周りを自転車でふらふらして、偶然すれ違わないかなーって歌詞があったじゃないですか。これ、少年のような心ですけど、大人になってやったらただの犯罪者ですからね。
佐々木:ストーカーですからね。
鈴木:難しいですよね。中学生がやったらOKだけど、大人がやったらアウトなことっていっぱいあるじゃないですか。
柳瀬:恋愛にまつわる対外の行動は、大人がやるとストーカーですよね。
佐々木:もしくは犯罪ね。
鈴木:なぜあれは子どもにだけ許されるのだ。
斎藤:その境界線って何歳くらいなんですかね。
鈴木:難しいね。
柳瀬:低年齢化が進んでますからね。
鈴木:少年法と共にね。
森山:Tバック小学生が出てますからね。
鈴木:U-12って言うんですか?最近。
佐々木:違う方向に展開してるw
森山:でも僕もそのジッタリン・ジンの歌詞は完全にやりましたよね。
鈴木:聞いてないよ!やってるとみんな思ってるけど宣言しなくていいよ!
森山:自転車じゃなくて歩きですけど。
鈴木:聞いてないってw 次のメール、スペインで聞いてます。グローバル化してるな。こっちは日曜の夕方です。いいなあー。共感したのは、自民党が悪で社会党が正義の味方っていうのが違うと気づいた。昔は正義は勝つと思ってた。ジモトの中日新聞の論評欄を読むようになって、絶対の正義はないと気づいた。
メール、33歳の方。素人童貞問題を蒸し返していいでしょうか。一応経済的に自立してるけど、恋愛には興味がない。パラサイトシングル。関心がない訳じゃないけど、オクテなのでいまだに素人童貞。まだ結婚を諦めきれない。両親のこともあるし、世間の目も気になる。劣等感があって本当の大人になれない気がします。
斎藤:北方健三さんがいれば、言うことは決まってますけどね。
津田:素人童貞ってことは行ってるんじゃないですか一応。
佐々木:厳密には童貞じゃないですよね。どっちでもいいと思うんだよなあ。
鈴木:北方健三さんの時代は、ソープに行って童貞を捨てるということが、そのまま素人の方との恋愛に繋がった。現在はそうではないということですよね。あれは自信を付けるということだったわけじゃないですか。今ではプロの方で童貞を捨てても自信はつかないということですよね。
仲俣:この人はあまり恋愛も必要としてないわけだから、別にいいんじゃないかと思いますけどね。
鈴木:東京・地方の問題もありますよね。地方の街を歩いてると、いい年をした男が、子どもを連れずに昼間歩いているということがないですから。
佐々木:世間体の問題ですよね。
鈴木:そういうのもあって、だが自信もつかない。森山さん、どうですか。
森山:別にいいんじゃないかなー。
佐々木:そんなことで付く自信なんて大したことじゃないよ。
鈴木:お仕事もして自立されているわけですからね。それが自信ですよね。
森山:恋愛なんて、いいことばかりじゃないですからね。
津田:僕は真っ向から違ってて、僕は童貞捨てたとき、次の日空の色が違って見えたんですよ。ものすごく風景が違って見えて。僕はあれで、大人っていうんじゃないけど、モノクロの世界からカラーの世界へいったくらいの気分だった。
森山:ワセジョ?ワセジョ?
津田:そういうところにロマンがあるっていうのは分かるんですよね。
柳瀬:ざっくりた話で言うと、彼と同じような境遇の、魅力的な女性はたくさんいるんですよ。
津田:ホントに今は恵まれて、繋がれるから。mixiで同じ地域とか、語れる趣味で繋がれるでしょ。
柳瀬:異性の友達をいかがわしくないルートで作る手段って、いまはいくらでもあるから。気軽に行けばいいし、求めている女性もたくさんいると思う。我々の時代はねー、
鈴木:はいはい次いこう。メール、森山さんが「社会に入る」っていってましたけど、別の価値観の世界に入り直す、チューニングを合わせて社会人になることが、単純に大人になることだとは思いません。すぐにチューニングを合わせられるようになる、ニュートラルな人が大人なのかなと。社会人だから大人ってわけじゃない。
その通りなんですよね。この人、長文メールの要点をピックアップするという知恵を身につけていて、皆さんも読まれたいという人は、A4で0.5枚以内に収めていただきたい。
斎藤:企画書の書き方ですよね。
柳瀬:それも大人力ですよね。
鈴木:A4で3枚とかいう人がいて、4000字くらいあるんですよ。レポート書けますよ。
佐々木:それだけ書いてもらえると言うことは有り難いですよね。
鈴木:文章力のある人が多いですよね。
佐々木:メール読んでると、感心しますよね。
鈴木:一回聞いたら分かりますからね。次も長いメール。大人になったと思ったのは、ある本との出会い。社運のかかったプロジェクトの代表をまかされた。一緒に仕事をすることになったのが、全然尊敬できない奴だった。媚びたくはないと思って悩んでた。その時に出会ったのが福田一也の「悪の対話術」。大人は狡いと思ってたけど、目から鱗が落ちる内容だった。おかげでプロジェクトは成功。相手に勘違いをさせるくらい操ることができた。
自分の体験の中で得たものは大きいですよね。次のメール、村上春樹も大人になるのは30くらいでいいって言ってたからまあいいかと思ってはいるけど。孤独を恐れず、受け容れられる人が大人というのが結論。みんな調和して島宇宙に閉じこもってる。これを打ち破るのが必要なんじゃないかと思う。その能力を持ったときに大人になれる。簡単には大人になれない。理想の大人は村上春樹。
柳瀬:よし今の子にはちょっと反論してあげよう。大人になるってことは、一人でいるってことが、いかにつまんなくて限界があることかっていうのに気づくことなんだよね、絶対に。さっきちょっと話をしたんだけど、僕の経験で言うと、一人旅がつまらなくなった時期があって、30過ぎで、アジアの島を旅をしてたんですけど、余った時間をどうしようもなくなった退屈なシチュエーションが生まれちゃって。昔は退屈なんて旅先には存在しなかった。一人でいることが全然面白くなくなっちゃった。かくいう僕はいまでも結婚はしてないけど、孤独が面白いっていうのは若さの特権だと思う。世の中って言うのは人の組み合わせでできていて、一人で生きられるって傲慢さから抜けられるのが次のステップ。それで失うことはたくさんあるけど、今の方は、いいも悪いもなくまだ子どもなんですよ。まだ若い。
鈴木:僕はいまやっと一人旅が楽しくなってきた頃で。昔は旅も好きじゃなかったから、孤独って言うか、完全に一人、孤立だった。一人と集団の関係って、経てみないと分からないところがある。鴻上尚史の「朝日のような夕日をつれて」の台詞で、「ひとりでは耐えられないから、ひとりでは何もできないから、ひとりであることを認めあうことは、たくさんの人と手をつなぐことだから、たくさんの人と手をつなぐことは、とても悲しいことだから」っていうのがありますよね。あれ、自分の心の中で繰り返してて、まだ分からないんですけど、この人は柳瀬さんから見ると子どもなんだけど、多分今の俺と同じところなのかなと。
柳瀬:勘違いしてほしくないんだけど、上とか下とかじゃなくて、この人が大人だと思ってるのは、もう少しすると、違って見えてくるんじゃないかなってこと。大人になれって言ってる訳じゃないんですよ。
斎藤:大人=同調圧力に巻き込まれることってイメージが強すぎるんじゃないかな。もう少し面白いですよ。
鈴木:イヤな奴と仕事ができるようになったっていうさっきのメールは、よくわかるなあと思ってて。僕、自分の生き方として、何を選んできたかっていうと、やりたいことはよく分からなかったけど、やりたくないことははっきりしてたんですよ。簡単に言うとサラリーマンにはなりたくないって奴で。やりたくないことをやらないためにどうするか、っていうのをすごく考えたんですよ。そのためにどうするかっていうと、この番組がそうなんですけど、僕がこの番組をやることで、少なくともTBSが損をしないってことを分かってもらうことですよね。もう少し先に行くと、自分がやりたくないことはやらないって姿勢を貫いても、相手が得をするっていうか、そういう状況に持っていってあげれば、自分がやりたくないことはしなくて済むだろう。それを実践しているのが今。マスメディアに出るってことですごく最初悩んだんだけど。やりたくないことをやらないっていうのは、結構知恵がいるんで、その知恵を身につけるために、孤独もそうだけど、誰とどういう関係を持つかっていうのが大事になってくると思う。
今日、就職に悩んでる人のメールが多かったじゃないですか。昔はまがりなりにも職業に安定が就いてきたから、心が不安定でも何とかなった。いま、心が不安定だと生活も不安定になるから、安定させなきゃってことになるんで。ひとつヒントとして俺がいま思うのは、そういうことかなと。
仲俣:僕も今のメール読んで、柳瀬さんと同じことを感じたんだけど。大人が孤独を引き受けるのはそうだと思うけど、自己責任って付いちゃったでしょ。そこが違うんだよね。すごい好きな歌で「はじめ僕はひとりだった」って曲があるんですけど、若いときは一人でも耐えられるんですよね。大人になると、別の意味での寂しさが分かって、それを認められるようになる。でもそのことに怯えなくていいんだよね。自己責任なんてないわけで。だからそういうことを柳瀬さんはおっしゃりたいのかなと。
鈴木:チャンドラーの名言ですよね。「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きている資格がない」。
仲俣:もうすぐ村上春樹の新訳で「ロング・グッドバイ」が出ますけどね。
鈴木:ああいう大人。チャンドラーにしてもヘミングウェイにしても、ああいうのがいなくなった。僕は大人になりたいのにならせてもらえない感じってのがあるから、今日は柳瀬さん、仲俣さん、佐々木さんのお話は参考になったなあ。
仲俣:寂しいって言っていいんですよ。それと大人であることは矛盾しないんだから。
柳瀬:レイモンド・チャンドラーもフィリップ・マーロウに「灯台のように寂しい」って言わせてますしね。
鈴木:いい台詞だなあ。
津田:社会に出ると否応なしに他人から評価されるじゃないですか。学生の時ってそういうのがかっちりしてないじゃないですか。さっきの人脈の話とも繋がるけど、評価されることで大人の世界に入れる人もいれば、評価されることに耐えられない人もいるだろうし。
仲俣:童貞を失うのと同じくらいの恐怖なんだと思うよ。
柳瀬:かなり強烈なイニシエーションですよね。
鈴木:それこそいま就職試験のシーズンですけど、評価基準が分からなくて鬱になる話は「働くということ」でもしましたけど、大人の方が余裕なくなってる感じも若干しますね。大人に余裕がないと、大人にしてあげるシステムが、まともに機能するわけないから、大人もしっかりしろと、子どもの僕は思います。
斎藤:そう思いますよやっぱり。
鈴木:もう朝の5時だよ、みんな伸びとかしてるよ。最後にこのメール。僕が大人になったと感じたのは二十歳の春。川辺の桜並木を見上げたとき、桜の美しさに気づいたとき。前の年の春の自分とは明らかに何かが変わったと思った。
変わっていく自分の感覚に敏感であること、それを認められること、それを恐れないこと、ですよね。
というわけで、長々とスタジオで酒飲みながら、最後はいい話も飛び出して、これからみんな大人なので、仕事いきますからね。
森山:さっきチャーリーが、やりたくないことはやらないのが知恵だっていってたけど、僕は流されたっていいと思う。色々想像しないで、受けたことはやっちゃっていい、あとで失敗したら、それは分かるしね。
鈴木:失敗を許してくれる環境があれば幸せだっていうのもあるから。崖っぷちだと大人になれない。
津田:想像してやりたくないなあと思って、でやってみてやっぱりイヤだったら、やりたくないことだってリアルに分かるから、無駄じゃないですよ。
斎藤:失敗してもそれが自分の否定にならなきゃいいんですよ。それはその場面での失敗であって。
鈴木:評価っていうときにね、色んな人から色んな評価をされているんだったらいいけど、就職だったらそれしか定規がない。大人がもっと評価の物差しを増やしてあげて、今の再チャレンジみたいなのとは違う形で、また入り口にいけるといいのかなと思いました。
今日はもう史上最多のメールが。次回は3月10日。テーマは「憧れの男性」。
2007年03月11日(日) 23:39:20 Modified by life_wiki