2008/8/10日放送「地方を考える」Part2

Part2
charlie:「文化系トークラジオLife」,今夜は「地方を考える」をテーマに赤坂TBSラジオのスタジオから朝の四時まで生放送でお届けしております。先ほどゲストの本谷有希子さんに選んでいただいた「Go! Go! Heaven」なんですけど,なんでSPEEDなんですか?

本谷:一応今日「地方を考える」ということで,あたしが地方にいた頃にとにかくSPEEDとかを聴きまくってたんで。車社会で,車に乗ってる時間が長いんで。

charlie:そういう意味か(笑)。「スピード」っていうから「車」なのかと思った(笑)。

一同:(笑)

本谷:違う違う違う!!やっぱ車でしょ!?地方と言えば車ですよね。で,車で曲を聴くっていう。J-POPがちょうど栄えて,小室ファミリーがすごく栄えて,私が東京に出てきたくらいになんか段々J-POP売れなくなってきてるなー,みたいな。

速水:本谷さんの「グ,ア,ム」っていう小説では妹さんがいわゆる上京しない…お姉さんは上京してまぁ自分探し系のフリーターな訳ですよね。それで妹の方が地元で就職してそれこそ車を買って,っていう。それで自分の本の話をすると,あれは僕の本の中でいうと「ヤンキー」なんです。「ケータイ小説的」に出てくる「ヤンキー」の定義は,僕はいわゆる不良少年ではなくて,上京しないで東京に憧れない人,地元の繋がりっていうか地元の仲間を大事にする。で,早く大人になりたい,早く成熟したいっていう感覚を僕はヤンキーと呼んでいて,これはまさに「グ,ア,ム」ニ出てくる妹の方なんですよ。で逆に,さっきも言った上京の話で言うと,お姉さんっていうのは,大学に,なんとなく上京して行ったんだけど,そのまま就職しないでロスジェネ世代っていうので,自分探しを続けるっていう役ですよね。

本谷:そうですね。

charlie:あのー…一応ちゃんと説明をするとだなぁ(笑),「新潮」の一月号に載った「グ,ア,ム」っていう新作の小説の話で,本谷さんはほとんどの作品で上京,それもおそらくご出身の地域に近い所から上京してきたっていう設定に近い方が結構出てくるんですけど,メールでもいただいているのがですね,ラジオネーム「スティルライフ」さん。

メール:今回のテーマが「地方」,そして本谷さんがゲストといえば,鬱屈した田舎と上京への夢がひとつのモチーフになっている「腑抜けども,悲しみの愛を見せろ」の話を是非してほしいです。本谷さんという新しい才能の誕生に衝撃を受けた思い入れの深い作品です。去年観た映画版では,自転車を必死にこいでいるスミコの後ろに大きな自然風景を移したカットが,鍵括弧付きの「田舎」という巨大な圧力,それに対してちっぽけなスミコの力なさや焦燥,逃げられない感を表しているようなシーンが特に印象的でした。私自身は東京都心育ちですが,現在は郊外に住んでいて,やたらスペースがありすぎる事に得も言えぬ無力感と不安を感じます。ゲストのお二人や地方出身のパーソナリティの方々もそのような感覚を覚えていたのでしょうか。自分にとってはゴミゴミした都会の窮屈さや,清濁混じり合った雑多さが妙に安心するし,人々の活気に力づけられます。都会にはどんな人間や文化でも受け入れる包容力を感じます。

charlie:…ということで,去年,サトエリさんの主演で映画化された「腑抜けども,悲しみの愛を見せろ」という,これはデビュー作というか旗揚げの作品でもあるんですよね?

本谷:戯曲だったのを…はい,二十歳の時に書いたやつかな…。はい。

charlie:これもやっぱり上京というか,上京していたのが,さっきの話の仕送りが止まって地元に帰ってきて,っていう。

本谷:はい。女優を目指していたお姉ちゃんが,帰ってくる…「あの姉が帰ってくる!!」みたいな感じで。でもそこで書いたのは本当にど田舎で,それこそ携帯が圏外であるような。

charlie:村中圏外っていう。

本谷:そう。それで村の人がみんな知り合いで,っていうような。何の私の実体験も入っていないのに,なんか最近,「本谷さんの田舎はあーゆー所なんでしょ?」っていうイメージがすごいあるんですけど,実は全く私のイメージする「閉鎖感のあるど田舎ってこんな?」っていう…なんかファンタジーみたいな感じで。実はなんか全然関係無いんですよね。私はむしろ地方のそれこそ郊外みたいな感じの方が近いので。

charlie:それだとさっきの「グ,ア,ム」の話につながるんですけど,さっきちょっと速水さんに紹介してもらった「グ,ア,ム」にはお母さんとお姉ちゃんと妹が出てくるんですけど,そのお姉ちゃんっていうのがやっぱり上京して,ジャズピアノバーに勤めるんだよね。

本谷:東京っぽいでしょ?

charlie:そうそう「東京っぽいでしょ」っていうそこそこそこ(笑)。まぁいいんだけどさぁ。その上京してジャズピアノバーで,まさに「東京っぽいでしょ」っていうだけで多分勤めてるんだと思うんだけど彼女は。そこで,地元にいた時はマックの匂いをプンプンさせていた私が,「あの辺出身なんですよ」っていうと色白な事もあってなんか凄い文化の香りを漂わせて勘違いされる,と。で,それに合わせて自分を「私はなんかそういう人間」みたいな感じで演出していくじゃないですか。なんかそれを見た時に,東京と地方で,地方にいる時の「東京と地方」,東京に来てからの「東京と地方」って多分すごく変わってくるんだと思うんですよ。

本谷:そうですね。だから地方の中にいる時はやっぱり地方をすごいダサいものとして,それで東京をイケてるものとして憧れて来てるけど,以外に東京に来たら,「金沢」っていう響きが結構ウケるな,と思って。モテることばかり考えていたので,意外に「金沢」って男ウケがいいな,っていう。

charlie:「石川」って言うよりは「金沢」って言う方が…

本谷:「石川」はダメなんですよ。私実は金沢の出身じゃないけど,嘘ついてましたもん。「金沢」って食いつきがここまで良いのはなぜだ,っていう。

charlie:あのねー,すごい分かる。「腑抜けども…」の映画を観た時も思ったし小説を読んでてもそうなんですけど,僕,昔,まさに金沢「周辺」出身の姉妹と付き合ってた事があって,で,僕は姉貴の方と付き合ってたんだけど,その妹の彼氏と四人暮らししてた時があって,結構地元の言葉で喋るじゃないですか。あの時の感覚を思い出してすごくこう…懐かしい気持ちになりつつ,そこに俺が見出していたのは「金沢」っていうブランドイメージだった事を今,劇的に思い出しました。

本谷:そうそう!そう!ブランド力があったんですよ,金沢。今もあれ?やっぱ男の人は「金沢」どうですか?弱いですか?

仲俣:俺行きましたよ,一人旅に。

一同:(笑)

本谷:やっぱちょっといい女がいそうな?

仲俣:そしたら,大学の先輩に当たるようなやつで,やっぱ旅行に行って気にいって住んじゃったやつがいて,「いいよー」なんて言われて,なんとなく住みたいな,と思ったんだけど,帰ってきましたけども。でもやっぱり東京の人間が考える地方都市の内で,京都を筆頭にいくつかあるブランド感のある都市の一つですよね。単純にその「都会と田舎」っていうのと,「東京と地方」っていうのとでは実は軸が違っていて,だから金沢なんていうのは好感度高いですよね。名古屋とは違いますよ。

charlie:なんかね,結構土地土地で固有名を出しだすとあーでこーでっていうイメージがあると思うんですけど,今やっぱり東京に出てくるとこうで,出てこないとこうで,っていう話でですね,実は今日お電話でつながっている方がいましてですね,現役で地方に住んでいる人の話を聞こうということで。Lifeとの繋がりでいうとですね,実は最近知り合った方で,Lifeがギャラクシー賞を獲った時にですね,同じくその第45回ギャラクシー賞で,DJパーソナリティ賞を受賞された,RCC中国放送「秘密の音園」のパーソナリティ,青山高治アナウンサーに今電話がつながっております。青山高治さんは1972年生まれ,広島県尾道市出身,高校,大学も広島で,県外に出ることなく,広島の放送局で,地元の中高生に熱烈な支持を受けているという方です。まぁちなみに,お会いした時には黒幕・長谷川プロデューサーとマッドチェスター話で盛り上がったかなりの音楽好きだということが判明して僕は結構面白かったんですけど,その時以来ですね。じゃ,お電話をつなぎましょうか。もしもし,青山さん?

青山:もしもしこんばんはー。

charlie:どうもこんばんは,遅い時間にすいません。

青山:いえいえ。この流れ大丈夫ですかぁ?完全に地方に住んでるものを馬鹿にしようという感じでは無いですかぁ?

一同:(笑)

charlie:無いです!!(笑)

青山:大丈夫ですか私?

charlie:今の所大丈夫です!!(笑)

青山:相当ビビってますけど…

charlie:いやいやいやそんなにビビらないでください,大丈夫ですよ。いやいやちょうど今話をしていたのは,東京に出てくると地方の見え方も変わってくるよね,っていう話なんですけど,青山さんはずっとそちらにいられて,広島で放送の仕事をやられていて,地元の子たちとずっと接していると思うんですけど,どうですか,その広島の子たちから見て,例えば広島っていう都市や,あるいは東京って。

青山:そうですねぇ。さっきからずっと番組を聞きながら,…あ,広島でもTBSラジオ入りますよ,びっくりしました。

charlie:すごい!電波入ってるんですね?

青山:入ってますねー。あのー,「地方を考える」というテーマでずっと考えていたんですけど,地方にいると「地方」って考えられないですね。

charlie:あー。やっぱりそうですか。「「地方」って言われても」…って感じですか?

青山:そうですね。やっぱり広島って広島のことが大好きな人が多いと思うんですよ。まぁ,単純にプロ野球のカープもいればサンフレッチェもいて,夏は海水浴ができて冬にはスキーもできて,みたいな県って割と珍しいらしいんですよね。そこそこなんでも揃っていて,そこそこちょうど良い感じっていうのが。まぁだからその広島に住んでる人はもちろん広島が好きなんですけど,自分は広島県の中でも「尾道市」という田舎町だったんですね。尾道に住んでる高校までの18年間っていうのはもう出たくて出たくて仕方なかったですね。

charlie:あー。でも出て行ったのは広島ですよね?

青山:まぁ受験に失敗したという非常に生々しい理由はあるんですけど。尾道に住んでる時はそれこそ高校くらいまではコンビニもなかったですし,あのー,あれですよ。演歌歌手のポスターがいっぱい貼ってあるようなレコード屋さんで,「すいません,あの,Guns N' Rosesのアルバムを探しているんですけど…」とかって言う,その屈辱感とかを味わいながら,「いつかこの街から俺は出てやる」と。で,とにかく目標は,「尾道よりも大きな街」,そこで「一人暮らし」っていうだけだったんですよ。それで,第一志望の大学とかも横浜とか,あとはまぁ大阪受けたりとか,まぁ色々大学も受けたんですけど,結局広島の大学に行くことになって,それで広島で一人暮らしを始めたら,まぁあの楽しかったんですよね。住むマンションもワンルームマンションですごく狭い部屋だったんですけど,六階建てとかで,「あ,尾道には六階建ての建物は無い」とか思いながら,それだけでもう都会感を味わっていたんですよ。だから広島市内の最大の繁華街の紙屋町とか八丁堀とかに行った時にも,「わぁ,原宿みたいだなぁ」と思って。まぁ原宿行ったことはないんですけどね。まぁ広島で満足しきっている自分がいて,そうなんですよね。

charlie:でも広島市内まで出ればガンズは置いてあったわけですか?

青山:いやもうだから,いまだに初めて輸入盤を買った時の感動とかは凄い覚えてますね。

charlie:一応じゃあそれは広島市内まで出ればあったので,不満を抱くこともなく?

青山:いやでも尾道から広島までっていうのは距離にすると電車で一時間半くらいは掛かるんですよ。まぁ新幹線だったら30分くらいで行けるんですけど,やっぱり中学生高校生の頃はそんなに気軽に遊びに行ける距離ではなかったですね。だから,住んでる時には,割とまぁ「大っ嫌いな街」まではいかないですけど,「そんなに好きじゃないぞ,尾道」っていう感じだったんですけど,これが尾道を一回出て,広島で大学に通い,そのまま就職をして働いていたりすると,「出身どこなの?」って聞かれて「広島ですよ,尾道市です」って言うと,「尾道いいよね」とかっていうのを結構言われるんですよ。映画の街っていうのがあって。特に女の子ウケが良くてですね,男が金沢に弱いように,女の子は割と尾道に弱いんですよ。「わぁ,一回行ってみたい!」みたいな話になって。だから実家に帰らないのに尾道にちょこちょこ女の子連れて帰ったりとか割としてたんですけど。

charlie:それはズルいぞ!!

青山:結構風景とかは綺麗なんで。

charlie:「映画で観たのと一緒」みたいな感じですよね。デートコースもばっちりだ,みたいな。

青山:だから出てからは尾道のことがすごく好きになりましたね。

charlie:それはありますよね。だから田舎っていうのも変だけれども,自分がいた時に見えているものと,出てきてから外の目線を自分の中に取り込んで見える地元ってまた違いますよね。

青山:そうそう,全然風景が違いましたね。「わぁ,こんなに綺麗で良い街に住んでいたんだ」と思いましたね。

charlie:なんかさっき,広島の人達は広島のことが大好きだっていう話がありましたけど,そういう意味では広島の人達ってあれですかね?やっぱり外から色々見られることが多いから自分達の街の良さみたいなものをすごく自覚するっていう感じなんですかね?

青山:そうですね,もちろん郷土愛が強いというか,まぁ少し話のベクトルがずれますけど,県として背負っているDNAが少し他の県と違っている所があるんですね。僕は中高生向けの音楽番組をやっているんですけど,今この時期ちょうど,高三だったリスナーが,大阪とか東京に行ったリスナーがお盆で帰ってきてるんですよ。で,久々に番組にメールを送ってくるんですけど,「青山さんびっくりしました。東京じゃ(大阪じゃ)8月6日が原爆の日って誰も知らないんですよ」みたいなメールが毎年来るんですよ。僕らって登校日が8月6日で,いつも学校に行って平和記念式典を見たりとかで,だからまぁ8月6日,8時15分っていう,原爆の日,原爆が投下された時刻とかはすごく覚えていたりするんですけど,そういうのを違和感として,カルチャーショックとして,毎回大学一年の子がリスナーで送ってきますね。

charlie:そうですよね。そういう所で少しずつ自分の地元を客観的に見るっていうのも出てくるんでしょうけどね。そういう意味では,中高生の郷土愛の強い子ども達というか若者たちを相手にしながら,人気を誇っているのも,おそらく尾道→広島という距離の中で培った青山さんの多分感覚なのかもしれないですね。

青山:そうですね。あの,同じ県内の中で田舎と都会を経験してるっていう,まぁ世間は狭いんですけどその独特の気持ち良さっていうのはありますね。

charlie:なるほど。なんか話を聞けば聞くほど,前回お会いした時も言ったんですけど,一度広島に行きます。出して下さい。音園出して下さい。是非是非うかがいたいと思いますので,本当に。僕は本当に修学旅行で行ったっきりなので是非是非行きたいと思ってますんで,またその際にはお世話になると思いますのでよろしくお願いします。

青山:はい。また東京行った時はよろしくお願いします。

charlie:是非是非。今度は黒幕と一緒にお酒でも飲みましょう。

青山:是非。僕こんな広島自慢みたいな話で終わっていいんですかね?

charlie:もっとしたい話があったらしても良いんですけど。

青山:いえいえいえ(笑)。広島はいい所なんで来ていただければそれが何よりです。

charlie:はい。あの,「秘密の音園」のHPとかもリンクしときますんで,聞けるという方は是非そちらの方でも聞いていただければな,と思います。

青山:ありがとうございます。

charlie:はい,というわけでまたじゃあお会い出来る機会があることを楽しみにしていますので。すいません,こんな二時過ぎとかの時間に。ありがとうございました。

青山:いーえーこちらこそありがとうございました。

charlie:それじゃ,またよろしくお願いしますねー。

青山:はい,失礼致します。

charlie:失礼しまーす。…と,いうわけで,RCC中国放送,「秘密の音園」のパーソナリティ,青山高治さんにお電話をつないでインタビューを。インタビューというかね,なんかこうお話をさせてもらったんですけど,速水さん。地元のCD屋には演歌しかなくてガンズが置いてない話って。

速水:いやぁ,輸入盤レコードはやっぱり新潟にも…あったんだけど,輸入盤っていわゆる国内盤よりも安いからみんな買うわけじゃないですか。僕の頃,90年くらいまでって新潟にも地方のいわゆる輸入盤屋さんの外資系ってなくて,普通に買うと3500円とかしてたんですよ。輸入盤って早く買えるけど高いんだな,っていうのは,東京に来てそうじゃ無いっていうことがはじめて分かった。

charlie:そういう変なことって起きますよね。僕思い出した。高校生の頃になぜか自分の中でロカビリーブームが起きて,田舎のCD屋でストレイキャッツのCD探して買ったらおいちゃんが,「いまこれ流行ってるの?」って言われて。だって当時ですらもう20年以上前のCDだったから,「これ流行ってんの?」って言われて「いや僕だけだと思うんすけど」って言ってたのを思い出したそういえば。

速水:俺高校時代にストレイキャッツのCDを買うために西新宿に行った。

charlie:(笑)そんなこと起こりますよね。なんか,その東京と東京以外の都市,あるいは都会と田舎で文化が色々格差があって,みたいな話はメールでたくさんいただいているので,ちょっと今日みんな話すことが多いのでメールを挿もうと思っても挿めてないので,ちょっとどんどんメールを挿んでいきましょう。その前に一曲掛けさせて下さい。ええと話の流れ的にはやっぱりこの曲になるでしょう。ラジオネーム「おじいちゃん高校生」16歳からのリクエスト。まぁなんか最近も話題になったので聴いてる人も多いとは思いでしょう。J-RAPのクラシックということで聴いてください,吉幾三で「俺ら東京さいくだ」。
2008年08月18日(月) 20:45:22 Modified by ID:/7XIySpAaQ




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