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リリカルカラオケ

291 名前:リリカルカラオケ ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/11/16(金) 18:22:25 ID:GzgYhiRb
ミッドチルダ地上本部近辺には、周囲の景観からあからさまに浮いた怪しげな店がある。
機能美を重視し、落ち着いたデザインを好むミッドチルダの建築物に対し、それはまったくの異端だった。

マイクがハートに突き刺さっていると言う不思議な形のごてごてした装飾。
赤、青、緑の派手な光を周囲に撒き散らすネオンライト。
看板には、デカデカと店舗の名前が書かれている。

『カラオケボックス“ブロークンハート”』

もちろんながら、それにも原色をふんだんに使っており、嫌がらせかと思うほどに目に優しくない。
この店が出来てからと言うもの、近隣の住民のほとんどがこの場所避けて通るようになり、客足どころか道を通り掛かる人影すらもまばらだった。

普通ならば、すぐに経営が立ち行かなくなり閉店してしまうことだろう。
しかし、この店はそんな状況下に置かれても尚・・・近隣の住民の期待を裏切り、一向に潰れたりはしなかった。

何故ならば・・・この店には足しげく通うVIP客が数名おり。
それで経営が成り立っているのだ。
客足はほとんどなくとも、夕暮れ時には決まって部屋は満室だった・・・

1と言う番号が割り振られた部屋では、ピンク色の髪をした女性がマイク相手に格闘していた。

「テスタロッサ、わたしは・・・お前が好きだ。愛している」

そこで一拍間を置く。

「お前が・・・欲しいっ!!!」

女性は烈迫の気合いを篭めて愛の言葉を叫んだ。
告白にしては気合いが入り過ぎている気がするが、女性はいつものように満足そうに響く声の余韻に酔いしれている。
言うまでもないことではあるが、このカラオケボックスの各部屋は完全防音の密室である。
女性はいつも、誰にも聞かれることの無いこの場所で日頃溜まった色々なものを発散していた。
ピンク色の髪の女性・・・・いや、機動六課ライトニング隊副隊長シグナムは、この店の経営を支えるVIP客の一人なのだ。

303 名前:リリカルカラオケ ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/11/16(金) 20:36:10 ID:GzgYhiRb
「ふぅ・・・」
しばらくして流石に叫び疲れたのか、シグナムはマイクを置いた。
しかし休んだりはせず、代わりにリモコンを手に取ると慣れた手付きで操作を始める。

そもそも・・・明らかに不釣り合いとしか思えないようなこの場所にシグナムが通うようになったのには、訳があった。

それは・・・数ヶ月程前
久しぶりに海鳴へと戻った時の事・・・
シグナムは主の付き添いで初めてカラオケボックスと言うものを訪れた。

その席で

「シグナムは、歌わないんですか?」
「あぁ、わたしは歌など歌ったことが無いからな・・・」
「そうなんですか・・・残念。 シグナムは良く通る綺麗な声をしていますから、歌ったらきっと素敵だと思ったんですけど」
「・・・・・そ、そうか(////////」
「でも、無理なら仕方無いですね。 すみません、変な事を聞いてしまって」

そんなやり取りがあったのだ。
この時ほど、シグナムが後悔した事は無かった。
愛しのテスタロッサとの距離を縮める折角のチャンスを、フイにしてしまったのだから・・・
その時からシグナムは人知れず歌の練習を始めた。
我流ではあるが地道に声のトレーニングもしている。
しかし、日本と違ってミッドチルダにはカラオケボックスのような空間で歌を歌うと言う習慣は無く、施設や店舗も無い。
かと言って、隊舎内では何処で誰に聞かれるかわかったものではないし・・・
そんな風に困り果てる中、偶然この店の存在を知ることがあり
その日以来、今日に至るまで通い続けるようになったのだった。

因みに・・・まず最初にテスタロッサへの愛を叫んでいるのはシグナムなりの発生練習でもある。
日頃から慣れていないと、いざ想いを告げるとなった時にどもったり声が出なかったりでは情けない。
その辺りもしっかりと考慮している。
烈火の将と呼ばれるだけのことはあり、万事抜かりは無いのだった。

309 名前:リリカルカラオケ ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/11/16(金) 21:08:14 ID:GzgYhiRb
その頃隣の部屋では・・・

赤い髪の少女、ヴィータが画面を見ながらニヤケていた。

『ヴィータちゃん・・・ヴィータちゃん・・・ヴィータちゃん・・・』

目の前の画面にはなのはの姿が映っている。
しかしそれがリアルタイムで無いことを示すように
画面の中のなのはは、何度も何度も繰り返しヴィータの名前を呼び続けていた。
良く見れば録画した同じ場面を何度もループ再生しているのだとわかる。

シグナムとは違う理由で、ヴィータもまたこの店を利用しているのだ。

『ヴィータちゃん・・・大好きだよ。ヴィータちゃん・・・大好きだよ。ヴィータちゃん・・・』
「あ、あたしだって・・・・そうだ。なにょはの事が、大好きだ」
やがて画面の中のなのはの台詞が変わり始める。
編集技術が足りず、微妙に前の言葉と後ろの言葉の音量や口調が合っていなく聞こえるのはご愛敬。
そんな事は当人にとっては大して気にならないのか、ヴィータは画面の中のなのはに対しわずかにどもりながらも言葉を返した。

もう何度も練習して繰り返していることなのに、未だに慣れることが出来ない。

やがて再生が終わり、画面は暗転する。
ヴィータはリモコンを手に取ると、また最初の場面まで巻き戻した。
また同じことを、何度も何度も繰り返すのだ。
慣れるまで・・・なのはに向かってはっきりと言えるようになるまで
誰の邪魔も入らないこの場所で、ヴィータは今日も練習を続けていた。

告白への道のりは・・・まだまだ長い。

340 名前:リリカルカラオケ ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/11/16(金) 22:04:34 ID:GzgYhiRb
そのまた隣の部屋は・・・・

前の二つの部屋とは打って変わって薄暗かった。
モゾモゾと何かが動く音と、ピチャピチャと大きな水音だけが部屋に響く。

「ほら、フェイトちゃんの下のお口が歌いたがってるよ」
「あ・・・あんっ・・・ンんっ・・なの・・・は・・・ダメだよ、マイク・・・んうっ・・・近付けないで」

普段なら大して気にもならない小さな水音も、マイクによって拡大されると途端にとても恥ずかしいものへと変化する。
フェイトはなのはの舌による愛撫を受けながら、自分の秘所から出る大きな水音を聞かされているのだ。
フェイトの顔は、もう羞恥心で完全に真っ赤だった。
なのははもっともっと虐めようと、猫がミルクを舐めるようにピチャピチャと更に大きな音を立ててフェイトの秘所を攻め立てる。

「フェイトちゃんのココ、いつもよりもずっと濡れてるよ」
「なのはが・・・変なこと・・・するからっ!」
「違うよ、これはフェイトちゃんがとってもエッチだっていう証拠なの」

ヴィヴィオが六課にやってきてからと言うもの、寝る時はいつもヴィヴィオと一緒になってしまい
ベッドの中でいつものように愛し合えなくなったなのはとフェイトの欲求はどんどん溜まってしまっていた。
普通の男女カップルならば、ホテルなり何なりを利用すればいいのだろうけど女性同士である場合はそうもいかない。
それに、ただでさえ二人ともミッドチルダではかなり顔が売れているのだ。
ある程度は黙認や許容されているが、ホテルから二人で出てくるところを目撃されでもしたら、下手すればスキャンダルにもされかねない。
他に何処か・・・
そんな時だった。この場所を見付けたのは。
完全な防音で密室、ソファーもある。
それに表向きはただのカラオケボックス、何もやましく思われる場所ではない。
それからと言うもの、二人は仕事を終えるとここへ入り浸るようになったのだった。


外には既に夜の帳が降り、カラオケボックスのネオンライトは辺りを照らし始めた。

今日もまた・・・いつもと変わらず、ミッドチルダには静かな闇夜が訪れる・・・
2007年11月17日(土) 02:26:20 Modified by nanohayuri




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