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リンディ・ハラオウンの憂鬱

489 名前:リンディ日記 ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/18(木) 20:48:14 ID:+n/k7ref
リンディ・ハラオウンの憂鬱

今日は久しぶりの早番だった。
フェイトも丁度任務明けで帰ってきていてお休みだし、親子水入らずでお茶でもしようかしら
この前なのはちゃんから貰った宇治茶の良いのがあったはずだし。

そんな事を考えながらスキップして帰り道を行く。
「おう、そこ行くお姉ちゃん。
ごきげんだね、何か良いことでもあったんかい?」
そんな中、道端で唐突に威勢のいい声が上がった。

えぇと・・・・

辺りを見回す

道行く人内訳
男性、二名 子供、一名 お爺さん、一名

・・・・わたし?

わたしは驚いたように呼ばれた方を振り向き、自分を指さす。
振り向いた先には、魚八と言う屋号の付いたエプロンをしたおじさんの姿があった。
「そうだよ、あんただよ、あんた。緑色の髪の別嬪さん」

お姉ちゃん・・・別嬪さん・・・

そうよね、わたしだってまだ4×歳ですもんね

まだまだ肌だってピチピチだし、胸だって垂れていないんだし
「鯛の良いのが入ってんだけど一尾どうだい?」
「いただくわ」
即答だった。

490 名前:リンディ日記 ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/18(木) 21:11:45 ID:+n/k7ref
包んで貰った鯛を手に家に戻ってくる。
ついつい買っちゃったけれど・・・いいわよね?

今晩は豪勢に鯛飯にでもしましょう。

そう決めて、家の扉を開ける。

「ただいま〜・・・・あら?」
返答が無いことにわたしは首を傾げた。
靴はあるから帰ってきてはいるはずなんだけれど・・・部屋にいて聞こえなかったのかしら?

そう言えば、なのはちゃんの靴も一緒にあるから
きっと二人で部屋でお喋りでもしてるのね

後でお茶とお菓子でも持っていって上げましょうか

「でも丁度良かったわ・・・二人で一匹は流石に多いものね。なのはちゃんにも食べていって貰いましょう」
とりあえずは鯛を冷蔵庫へとしまい込み、水を一杯口にする。
すると、何だか上の階からガタガタと何かが揺れる音が聞こえてきた。
「部屋の片づけでもしているのかしら?」
気にせずにお茶の準備を始める。

えぇと・・・お茶葉の缶は・・・たしか・・・

音はしばらくしていたかと思うと急に止まって、またしばらくすると鳴り出す。
それは、大きい音から小刻みな小さな音まで様々。

でも、わたしは目の前でゆっくりと湯の中に染み出していくお茶の姿に釘付けで
そんなものは大して気にもならなかった。

492 名前:リンディ日記 ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/18(木) 21:41:27 ID:+n/k7ref
数分後

お茶の急須と3つの湯呑み、そしてお茶請けの紅葉饅頭をセットでお盆へ乗せる。

あ・・・いけないいけない、ちゃんとミルクとお砂糖も用意しておかないと。

ミルクとお砂糖も忘れずに、これで準備は完璧だった。

「“女の子”同士お茶を楽しみながら三人でお話でもしましょう」
誰も居ないのでちょっとだけサバを読んでみる。

少しだけ満足感に浸ると、わたしはお盆を手に取り
フェイトの部屋へと向かった。

音は未だに続いている。

二階へ上がってすぐの部屋がフェイトの部屋だった。
わたしはお盆を片手に移すと、ノックするために拳を握る。
中からは僅かに話し声が聞こえてきていた。
居ることを確かめて、戸を叩こうとすると
「あンっ・・・ふ・・・んん・・・なの・・・はぁっ」
中から、はっきりとしたフェイトの声が聞こえてくる。
それも、普通の話し声ではなく・・・

嬌声・・・・だった。
「(///////////)」
わたしは慌ててドアに向けて振り降ろそうとしていた手を止める。
このままノックして開けていたら、家庭内で凄く気まずい空気を作るところだった。
わたしの顔は真っ赤に染まり、心臓の動悸は急激に加速する。
それは、久しく感じることの無かった感情だった。

493 名前:リンディ日記 ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/18(木) 21:58:12 ID:+n/k7ref

娘の生活をある程度把握しておくのも母親の務め・・・よね?

誰に言うでもなく自分の心に言い訳すると、わたしはフェイトの部屋の戸に耳を当てた。

「なのは・・・ダメだよ、もうこれ以上は・・・腰がっ」

「だって、今回は2ヶ月もおあずけだったんだよ? 家だとヴィヴィオがいるからなかなかこういうこと出来ないし・・・」

だからといってわたしの家をラブホ代わりに使うなと言いたい。
でも、大体の事情は理解できた。

なのはちゃんとフェイトの関係がここまで進んでいただなんて・・・意外だったわ

二人が隠れて(周りにはバレバレなんだけれど)付き合っているのは知っていた。
でも、なのはちゃんは相手の気持ち読むの凄い下手だし、フェイトは・・・・その・・・ヘタレ、だから
わたしはまだ二人とも清い関係のままだと思っていたのだ。

「ねぇ、フェイトちゃん・・・それなら、こっちの方試してみても良いかな?」
「え!?・・・・だって、そっちは汚・・・ひゃうっ」

えぇと・・・うん、これ以上は聞かなかったことにしておきましょう。

わたしはそう心に決めると、そそくさとお盆を手に逃げ出した。

居間へと戻ると、渇いた喉を潤すためにお茶を一杯飲む。

せっかくの宇治茶は、すっかり冷めてしまっていて
あまり・・・美味しくなかった。

494 名前:リンディ日記 ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/18(木) 22:23:20 ID:+n/k7ref


「あの・・・母さん、わたし達何か気に障るようなことしましたか?」
夕食の席でフェイトは困った顔をしてわたしに訊ねてきた。
なのはちゃんもその横で同じように困った顔で笑っている。
「あら、どうしてかしら?」
それに対し、わたしはまるでわからないと言わんばかりの笑顔で対応した。

「でも・・・これ・・・・」
フェイトは自分となのはちゃんの目の前の皿を指さす。

皿に載るおかずは、メザシ一匹に具のないお味噌汁、たくあん二切れ、それだけだった。
逆に、わたしの前には巨大なお櫃が鎮座している。
勿論中身は今日買った鯛を丸ごと使った鯛飯。
「ごめんなさいね。今日買い物を忘れてしまって、冷蔵庫にそれだけしか無かったのよ(棒読み)」
フェイトはそんなわたしの対応に諦めたのか、黙って箸を取る。
「ヴィヴィオちゃんは、お姉さんと一緒にこっちのご飯を食べましょうね〜」
「フェイトままとなのはままは、いっしょじゃないの?」
「ええ、二人とも今日はお休みであまり動かなかったみたいだからダイエットですって」

わたしはヴィヴィオちゃんのお茶碗に鯛飯を盛ってあげると、一緒にいただきますをして食べ始めた。

ハブられた者同士、仲良くしましょうね

495 名前:リンディ日記 ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/18(木) 22:49:21 ID:+n/k7ref

夕食が終わり、お風呂にも入り終わるとフェイト達はヴィヴィオが眠気を催したために早めに部屋へと戻り、わたしは独り居間に残された。
昼間のことを思い出す。

あの子達・・・あんなにも激しく求め合って、愛し合えるなんて・・・
若いって良いわね、ちょっと羨ましいわ

お風呂あがりの一杯を啜りながら、頭の中でそんな事を考える。
何だか、胸の奥が妙にもやもやしていた。

プルルルルル

そんな中、わたしの携帯が着信音を鳴らす。

えぇと・・・この番号は・・・レティ?
「はい、何かしら?」
「あぁ、居たのねリンディ。良かったわ」
久しぶりのレティの声を聞くと、わたしの中のもやもやが強くなった。
「明後日の会議のことなんだけど、出来たらわたしの代わりに出て貰えないかしら」
「良いけれど、何か用事でもあるの?」
「ええ、旦那の七回忌だから・・・一応ね」
普通なら、そこで別れの挨拶を言って終わりになるはずだった。
でも、今日のわたしは昼間のアレのせいか少し変で
「あの・・・ね、レティ。良かったら今度の休みに会えないかしら? 久しぶりにゆっくり話もしたいし」
「ええ、良いわよ。いつにしましょうか?」
気が付いたら、会う約束を取り付けていた。

497 名前:リンディ日記 ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/18(木) 23:00:11 ID:+n/k7ref
わたしの心の中のもやもやが、変化して火のような形を取る。
それは遙か昔に消えたはずの炎の残り火

でも・・・今なら、またあの頃みたいに・・・・なれるかしら

一番傍にいて、彼女と笑い合った

肩を寄せ合い、一緒の夜を過ごした

あの頃のように

ついぞ忘れていた昔の思い出に浸りながら

わたしは少しだけ、胸の中に宿ったこのもやもやに身を委ねてみるのも悪くない気がしていた。

だって
「わたしもまだまだ若いんだから」

その気持ちを忘れないようにと、今日の出来事を日記に綴る。
明日も明後日も、幸せな一日の記録をつけられることを、願いながら・・・

499 名前: ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/18(木) 23:05:38 ID:+n/k7ref
おしまい

あれ・・・筆休めのつもりなのになんでこんなに長くなってるんだ?
リンディさんが
自分の家でギシギシアンアンするなのは達やエイミィ達に対しての恨み言を延々と書き連ねるだけのネタだったはずなのに・・・・
2007年10月20日(土) 09:19:29 Modified by nanohayuri




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