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彼女は決して私の元へ堕ちてこない

572 : ◆okpddN8iwc [sage] :2008/03/07(金) 18:32:19 ID:rdZYSPu+
122 :彼女は決して私の元へ堕ちてこない:2008/03/07(金) 18:58:12 ID:QG6shEgg
123 :彼女は決して私の元へ堕ちてこない:2008/03/07(金) 18:58:52 ID:QG6shEgg
124 :彼女は決して私の元へ堕ちてこない:2008/03/07(金) 18:59:28 ID:QG6shEgg
125 :彼女は決して私の元へ堕ちてこない:2008/03/07(金) 19:00:05 ID:QG6shEgg
126 :彼女は決して私の元へ堕ちてこない:2008/03/07(金) 19:00:47 ID:QG6shEgg



できた……!
助言通り、注意書き↓

1.>>405の続きのくせにフェイトとなのは付き合ってない
2.久しぶりの三人称。おかしなとこあったらすまん
3.まだ続く。頑張って完結させるから

んじゃ、以下から



「行かんといて、なのはちゃん」

まわしていた腕の力が強まる。それはまるで離しはしないと訴えているようで。

「はやて、ちゃん…」
「好きや」
「えっ?」

俯き気味だったなのはの顔が上がる。後ろにいるはやてからはその表情はうかがえないが、結んだ髪の隙間から覗く真っ赤になった耳がすべてを物語る。
携帯はいつしか鳴り止んでいた。

「なのはちゃんのこと、好きなんや」

再度想いを告げる。一言ずつ、噛み締めるように。

「わ、私は…」
「私のこと、嫌いなん?」

卑怯な言い回しだとは分かっていた。分かっていて、返ってくる応えを予想して、言葉を紡ぎだす。
そしたら、彼女は予想通り慌てたように返事をする。

「嫌いとか…!そうじゃ、ないけど……」

再び俯くなのは。そうすることで、はやての目の前には白いうなじが突きつけられる。その綺麗な肌に吸いつきたい衝動を抑え、代わりに、となのはの耳元に唇を近付けて囁く。できるだけ甘く、艶やかに。

「じゃぁ…私と付き合わへん?」

なのはが素直に承諾するとは思っていない。
だから、

「で、でも私…」
「私のことは嫌いやないんやろ?」

その先を言わせないために、なのはの言葉を遮る。

「うん」
「そして、好きってわけでもない?」
「………う、ん」

はやては思った、まるで誘導尋問だ、と。
なぜなら、はやては既に自分の中でなのはの答えを持っているのだから。
なのはの優しさに浸けこんで、計算して、ある一点に向かって着実に質問を続けていく。
そんな自分が嫌になるけれど、決してそれを止めようとしない事実に苦笑する。

「せやったら、試しに私と付き合ってみたらどや?
だんだん好きになってくるかもしれんし……もちろん、そうやないかもしれん」
「……………」
「それならそれで潔く私を振ってくれてええし、好きになってくれたら万々歳や!」

いつもの八神はやてのように少しだけおどけて言ってみる。なのはの心を柔めて固いガードを解くために。

「でも…」
「…なんや、好きな人でもおるん?」
「好きな、人?」

その言葉に反応して、なのはは首だけで僅かに振り返る。
その拍子に、はやての唇がその柔らかい頬に触れそうになる。触れるか触れないかの絶妙な距離。届きそうで、届かない。
そんなもどかしさが、なのはを手に入れたいという思いを一層強める。

「せや。ユーノくん?クロノくん?それとも予想外に管理局員とか?」

意図的にある人物の名前は入れなかった。この独特の甘い雰囲気の中で、なのはが彼女の姿を思い描くことが許せなかったから。

「…好きとか、そんなんじゃないよ」
「んじゃ、問題あらへんな♪」

僅かに眉を顰めながら言うなのはに、にっこりと笑って告げる。

「で、でもそんな簡単に決めちゃうものなの?その…付き合う、とか…」

頬を染めて、徐々に声が小さくなっていくなのは。そんな彼女を愛おしく思いながらも、はやては真剣な顔をしてなのはに話しかける。

「あんな、なのはちゃん」
「………?」

なのはを包んでいた腕を解き、肩に手を置いたまま正面を向かせる。

「なのはちゃんは、私と一緒におってただ楽しいと思ってくれたらええねん。
最初のうちはな、付き合ういうても今まで通りでええ。そこから私が努力して先に進めるんや。
なのはちゃんを笑顔にして、幸せにして、ずっと私の傍にいたいって思えるように」

ただそれだけや、とはにかむように笑う。なのははその様子を暫くじっと見つめ、やがて小さく頷く。
それを見たはやては、これ以上ないほどの笑みでなのはに勢いよく抱きつく。

「なのはちゃん!」
「わっ!は、はやてちゃん?!」

なのはの柔らかい身体を十分に堪能してから、パッと離れる。その顔には笑顔が終始絶えない。

「まぁ、これは一種の勝負やて思ってくれてええよ。なのはちゃんが私のこと好きになってくれたら私の勝ちや!」

グッとガッツポーズを決めてみせるはやてに、なのははキョトンとしていたが、すぐに笑みを零した。

「はやてちゃんらしいね」

それから暫くクスクスと互いに笑いあって、チラリと時計に目を向ける。

「なのはちゃん、そろそろ行かな間に合わないんちゃう?」
「あっ!急いで行かなきゃ」

慌ただしく玄関へと向かうなのは。
はやてはそれをどこか寂しそうに見つめながららも、玄関まで送る。
玄関で靴を履き終えたところで小さくなのはを呼んだ。

「なぁに?はやてちゃん」

顔だけ振り向いたなのはの頬に、ふわりと優しい感触。
それが何かを理解しない内に、それは離れて行って。
驚いてはやてを見上げると、そこには満面の笑みがあった。

「また、学校でな♪」
「う、うん…またね」

小さく手をヒラヒラさせるはやてに、なのははどこかぼんやりとしながらも八神家を後にした。


はやてはなのはが去った後も玄関に立ちつくしていた。
頭の中でなのはに放った自分の言葉が蘇る。


―――なのはちゃんが私のこと好きになってくれたら私の勝ちや!


だがこの勝負、なのはにとっては勝ちも負けも存在しない。
たとえはやてのことを好きになろうと、それはなのはにとっての幸せだ。
逆に好きにならずとも、なのはには何の支障もない。
もっとも、はやてが振られて傷つくことになのはも傷つくことはあるだろうが。

はやての脳裏に一人の少女が浮かび上がった。
顔を顰めギュッと手を握り締めながら、はやては呟く。

「勝負や…………フェイトちゃん」

負けないよ、とフェイトが言った気がした。


つづく
2008年06月03日(火) 18:01:47 Modified by sienn1




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