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5-027-4

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20 名前: ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/09(火) 10:10:59 ID:X0vRjLkF
高町なのは編


「うん
フェイトママのいうことをちゃあんと聞いて、良い子でまっててね」
わたしがそう告げると。
ヴィヴィオは渋々ながらもフェイトちゃんの手に掴まって、部屋へと戻っていった。
それを手を振りながら見送ると、話を中断したままのお母さんの方へ向き直る。
「ごめんね、お母さん
待たせちゃって
それで、お父さんが・・・」
そのまま話題を振り直そうとすると

「なのは」

お母さんの有無を言わせないような雰囲気に、言葉を遮られた。

「お父さんは、同意書を書くにも条件があるって言っているの。
その内のどれでも良いから、好きなものを選びなさいって
でも、それ以外の選択肢を選ぶなら絶対に自分はサインをしない
そう、なのはに伝えて欲しいって」

それだけを伝えると、お母さんは懐から取り出した一枚の紙をわたしに渡して
ヴィヴィオ達の前で微笑んでいた時とは打って変わった雰囲気を纏ったまま
この場から去っていった。

立ち竦むわたしを

独り残して

21 名前: ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/09(火) 10:39:00 ID:X0vRjLkF

そのまま廊下に取り残されたわたしは
しばらく経ってから、やっとのことで自身を取り戻す。
そして、先程のお母さんの言葉を反芻していた。

あんなお母さん、初めて見た・・・

わたしの記憶に残るお父さん達は、優しくて、笑顔で、暖かいイメージ
たまに怒ることはあっても、そんな時でも心の底には暖かいものが感じられたのに

さっきのお父さんにも
今のお母さんからも
冷たい水に浸けられたような感じしか受けなかった。

「わたし・・・何かいけないことしたのかな・・・」
ヴィヴィオを連れてフェイトちゃんと一緒に海鳴へ帰ってきた時は、お父さんもお母さんも暖かく迎えてくれた。

お父さんもお母さんも、ヴィヴィオの事は好きでいてくれている・・・と思う。
ヴィヴィオに向けられる視線は、わたしが受け取ってきたものと同じだったから

だから・・・わからない

何が悪いのか

そんな事を考える中、手に持つ紙がふと目に入る。
渡されたことすらすでに忘れかけていた自分に、苦笑しながら

わたしは書かれた文章へと目を落とした。


22 名前: ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/09(火) 11:16:40 ID:X0vRjLkF
紙の上には、お父さんの男らしい字が踊る。
あまり上手くは無いと思うけれど、子供の頃からずっと
不器用な手つきで大袈裟に書く
そんなお父さんの字が大好きだった。
しかし、紙に書かれた文面を目で追ううちに
そんな淡い気持ちは書き消え、別の気持ちが心を塗りつぶしていく。

書かれた条件は三つ
全てではなくいずれかをクリアすれば養子縁組を認める
そう言う文面からそれは始まっていた。
一,好きな相手がいるならばその相手と所帯を持つこと

一,お見合いを行いその相手と婚約もしくは結婚すること

一,管理局を辞め実家に戻り、結婚相手を探すこと

そして最後に
婿入り嫁入りは問わない、とだけつけ加えられている。

「結婚しないなら、認めない・・・って・・・そう言うの?」
わたしは誰に聞かせるでもなく、ぽつりと呟く。
好きな相手、その文に目がいった時
何よりも先に思い浮かんだのは

フェイトちゃんの顔・・・だった

わたしはその顔を振り払うように首を振る。
わたし達は女の子同士だから日本でもミッドチルダの法律でも結婚は出来ない。
それに、わたし達は恋人同士でも何でも無くて

『友達』だから

23 名前: ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/09(火) 11:47:26 ID:X0vRjLkF

子供の頃

わたしは結婚の事を
仲の良い二人が、ずっと一緒に仲良しで暮らすこと

だと思っていた。

それが、違うと気付かされたのは小学校の五年生になってからの話
フェイトちゃんと出会った日から、二年以上も後のこと

保健体育の授業で

子供は
男性と女性の間で作られるもので
だから、結婚は男女の間で行われる

と習ってからだった。

その授業のすぐ後、わたしは先生に訊ねた。
「なんで女の子同士じゃ結婚できないんですか?」
その質問に先生は困った顔で
授業で説明した子供の出来る手順や、生物の役割とか難しい事を言っていたような気がするけれど
内容は良く覚えてない。

その時わたしの胸に宿っていた思いは

好き同士でも、フェイトちゃんとわたしは
結婚してずっと一緒に居ることは出来ないんだって

ただ、それだけだった。

64 名前: ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/10(水) 09:28:58 ID:5FSAAG24

夜になり、目の前で眠るフェイトちゃんの顔を見つめる。

幼い頃、何度も二人で一緒に眠ったベッド

ヴィヴィオも入れて、今は三人だから
ちょっと狭く感じるけれど
その分、吐息まで届くような距離にフェイトちゃんを感じられて、少しだけ嬉しかった。

こうやって・・・ずっと三人一緒に居られたら良いのにな

わたしと、フェイトちゃんとヴィヴィオの三人で、ずっと一緒に・・・

フェイトちゃんにこの事を言ったら、どんな反応をするんだろう
いつものようにわたしに優しい笑顔を向けてくれて、わたしもだよ、って言ってくれるんだろうか

それとも・・・困った顔をさせてしまうんだろうか

聞くのが、少しだけ怖かった。

フェイトちゃんは優しいから、優しすぎるから

わたしには

本当の気持ちがわからない

65 名前: ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/10/10(水) 10:05:05 ID:5FSAAG24
10年前に二人が『友達』になったあの日から、フェイトちゃんはずっとわたしの傍にいてくれる
いつでも優しくて、わたしの事を助けてくれて、悲しい時は抱き締めてくれて

8年前の墜落事故でわたしが入院を続けた時も
その身を投げ打ってわたしの看病をしてくれて
そのせいで・・・夢だった執務官の試験に二度も落ちることになった。

その時の事は今でも良く、覚えている。

わたしの、『罪』の記憶・・・

「あれ・・・少しだけ・・・明るい?」
わたしは瞼に触れる僅かな光で、目を覚ました。
枕元の時計に目をやると、夜中の3時を指し示している。
病院の消灯は10時のはずだから、本来ならば廊下のわずかな常夜灯を残して、全ての灯りが消えているはずだった。
不思議に思い、身体を起こそうとすると
「ごめん、なのは
起こしちゃったかな。今、消すから」
部屋の隅からフェイトちゃんの声が聞こえ
微かな人が動く音と共に、部屋は元の暗闇に包まれた。
「執務官試験の、お勉強してたの?」

「ううん、ちょっと目が覚めて本を読んでただけだよ」
暗闇の中で話しかけると、フェイトちゃんはそう言って否定するけれど

わたしは知っていた。
フェイトちゃんがわたしの眠っている間やリハビリの間に、頑張って勉強を続けていることを。


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2007年10月27日(土) 16:06:54 Modified by yotsubato




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