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5-345

345 名前:単発ネタ ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/09/29(土) 20:12:38 ID:BspuAWmD
筆休めに短いのを


「わたしは・・・それでも、わたしだけのために
なのはに、わたしの傍に居て欲しいんだ!」
そう言い切ると、わたしは踵を返し部屋の入り口へと向かう。
なのはは、唐突なわたしの告白に戸惑っている様子だったが
とにかく引き留めようと席を立ち上がり、口を開く
「待ってるから・・・あの場所で」
でも、その口から言葉が紡がれるより早く
わたしは、そう最後に一言だけ告げて
扉を閉めた。
なのはは、それ以上追いかけては来なかった。


なのはは優しい
誰にでも優しい
誰にでもあの笑顔を、愛情を向け
誰のことをも救おうとする
わたしには、それが辛かった

でも、それでも
わたしだけがなのはの特別なんだと思っていたから、耐えられた
なのはの泣き顔も、少し甘えるような態度も
わたしだけの物だったから

でも、ヴィヴィオが現れて
そのわずかな自信も脆く崩れ去る

特別なのは、わたしだけじゃなくなってしまったから・・・
そう、わたしは
ヴィヴィオに嫉妬していたんだ

347 名前:単発ネタ ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/09/29(土) 20:23:42 ID:BspuAWmD
だから、なのはに迫った

わたしかヴィヴィオか、どちらかを選んで欲しい

って

幼稚な独占欲、そんな事はわかっている
でも、それでも

誰に見損なわれようと、蔑まれようと、罵られようと

わたしは、あの青い瞳に

わたしの姿だけを映して欲しかった

初めて出会ったあの時のように

わたしを救うため、手を伸ばしてくれたあの時のように

約束を、交わしたあの日のように

わたしだけを、見つめて欲しかった。

海鳴臨海公園

この約束の場所で、わたしはなのはを・・・待っていた。

348 名前:単発ネタ ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/09/29(土) 20:46:26 ID:BspuAWmD
1時間が過ぎ

2時間が過ぎ

3時間

4時間

5時間が過ぎる

陽は落ち、辺りは暗闇に飲み込まれ始め
街灯には光が点り、ぼんやりと公園内を照らし始めても
なのはは、姿を見せなかった。

「・・・雨、かな」僅かに肌に水滴が落ちたのに気付き
空を見上げる

空には・・・ただ一つの星も、見えなかった。

厚い雨雲が、月の光さえも隠し空を蹂躙する。
程なくして、僅かに感じていた雨粒は小雨になり、やがて大雨となって大地に降り注ぐ。

わたしは、それでも一歩も動かずにそこに立っていた。

時計は夜の12時を指し示す

雨は・・・どんどんその強さを増し
わたしの服を濡れ鼠にしていく


それでも、なのはが姿を現すことは・・・無かった。

350 名前:単発ネタ ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/09/29(土) 21:09:36 ID:BspuAWmD

「フェイト、大丈夫?」
気付くと、目の前には心配そうにするリンディ母さんの顔があった。

朝方になっても帰ってこないわたしを心配に思って、あちこち駆け回った後
公園で倒れているのを見つけて、大急ぎで家まで運んだのだ
と言う母さんの説明を聞いて
わたしは理解した。
なのはは、来てはくれなかったのだと

わたしは、選んで貰えなかったのだと

大粒の涙が瞳から流れ始める
「フェイト・・・どうしたの・・・何処か痛むの?!」
母さんはあたふたと慌てるけれど

体は何処も痛くなかった

ただ、心だけが・・・今にも死んでしまいそうなくらいに、痛かった

プレシア母さんに捨てられた時
理想の夢の世界を捨てた時

そのどちらの時に感じた痛みよりも、遥かに
「母さん・・・母さん・・・」
わたしは、ただ縋って泣いた。リンディ母さんの胸の中で


そうでもしなければ・・・この痛みに、押し潰されてしまいそうだった

353 名前:単発ネタ ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/09/29(土) 21:34:04 ID:BspuAWmD
数年後

わたしは提督となり、艦隊を任せられる身となった。

あの日以来、なのはと顔を合わせることは一度も無い。

初めの内は、何度かなのはの方から連絡をつけようとしていたらしいのだけれど
わたしは艦隊勤務に進んで志願し、休みは自ら返上、そんな風に時間を忙殺して
本局からも距離を置き、無視し続けていた。
最初の年は数十回に渡った連絡も

二年目には半分になり

三年目の末以来
今はもう、途絶えたままになっている

仕事一筋で、趣味もなく、浮いた噂の一つもない
そんな風に働くわたしは、同期の中でも変人扱いされていたが
その分出世する速度も桁違いに早くなった。
既に役職ではクロノを追い抜き、将来の最年少執務官長になるだろうとも期待されている。

そんなわたしにも

毎年1日だけ
どんな任務があっても休暇を取り続けている日があった。


あの日、約束したあの場所で

わたしはまだ、待ち続けていた・・・

355 名前:単発ネタ ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/09/29(土) 21:56:32 ID:BspuAWmD


15年後

わたしは、その日も毎年と変わらず
海鳴臨海公園に居た。
仕事はいつものように執務官長補佐のティアナとシャーリーに任せてきたので問題はなし

前線から退いて、もう結構な時が経っているため
近年は一日中立っているのは辛くなって、近くのベンチに腰掛けながら
静かに海を見つめている。

最初にこの場所を訪れたのは、もう25年も前のこと
それから10年後、毎年訪れるようになり
今年で連続15回目になる

今はもう、未練があるのか惰性で続けているのか
良くわからなかった
でも、きっとわたしは
最期までここに来続ける

それだけは・・・はっきりとわかっていた

360 名前:単発ネタ ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/09/29(土) 22:28:19 ID:BspuAWmD
少し・・・眠ってしまったようだった。
陽はちょうど西へと沈もうとしており、辺りは一面赤く染めあげられていた。

でも、その中にポツンと小さな青が見える
「ちょっと・・・待たせちゃったかな」
綺麗な、深い青色はわたしへ向けて言葉を紡ぐ
「ううん、全然待ってないよ」
「でも、フェイトちゃん
そんな風にしてたらおばあちゃんみたいだよ?」
「・・・なのはが待たせるから、こうなっちゃったんだよ」
格好つけて言った言葉を撤回し、意地悪な言葉には意地悪な言葉を返す。
「うん・・・ごめんね」
なのはの服は、昔と変わらない教導隊の制服だった。
でも・・・今はもう、階級章や所属を示すマーク等が全て取り払われている。
なのはの青い瞳は、夕焼けの赤に染まる世界の中で
ただ、わたしだけを見つめていた。

沈む夕陽が最後の輝きのひとかけらを残す中で

二つの影は

自然と

一つになった



わたしだけの、あなたに

あなただけの・・・わたしに


362 名前: ◆34IETlJpS6 [sage] 投稿日:2007/09/29(土) 22:39:32 ID:BspuAWmD
おしまい


ヴィヴィオが5歳とかいう話だったので
こうなりました

本当はもう少しスペースで間をつけたかったんですけど
改行制限がすげー辛いorz

まとめサイトに行ってからちょっと手直しかけるかもです。
2007年09月29日(土) 23:08:45 Modified by ID:BcHEca2AAg




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