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Hello, Again 20



329 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 19:57:40 ID:E53JJvw9


*  *  *



なのはがアルフに通信を入れてから一週間が過ぎた。
時が経つのは早いものだな、と、ありきたりだが切実な気持ちのなのは。
席に座りタッチパネルを操作しながらフゥと溜め息をつく。
「もう七日か……」
そう呟くと、両肘をデスクの上に付き額に手を当てて考えた。


『後見人って言ってね、ヴィヴィオと私が法律や色んな事で困らないように責任を持ってくれていたんだけど』
『今その後見人になってくれる人が他にいなくて、今も書類上そのままになってしまってるの』

こうやってフェイトちゃんに話して別の後見人を探すしかないのかな……
それとも……

『フェイトちゃんに責任負わせないようにするから、今のまま――』

紙の上での肩書きだけでも繋げていさせて?

……そんなのって…………間違ってるよね……

そんなこと言いたくてフェイトちゃんに話すんじゃないのに……
私たち三人は書類上の代替え家族なんかじゃない……
それをどうやったら受け入れてくれるんだろう……?

……こんなんじゃ駄目だなぁ……

アルフさんにはああ言ったけど、やっぱりまだ――



「高町教導官、ご来客です」

「はい?」
なのはが顔を上げると同僚の一人が部屋の入り口を指差していた。
なのはが視線を向けると、そこにはアルフが立っていた。
「なーのはっ」
ニコニコと八重歯を見せながらアルフはなのはに向って大きく手を振っている。
なのはは席を立ち、早足でそこへ向った。
「こんなところにどうして?」
「んー?あたしがハラオウン総括官の家の子だって知ってる警備員がいて通してくれたんだよ」
「いや、そういうことじゃなくて……」
アルフの顔を見れば、わざとなのはを焦らして言っていることが解った。
アルフは異常なほど上機嫌だ。





330 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 19:59:20 ID:E53JJvw9


「何かいいことでも……?」
「えへへー実は大ニュースがあるんだ!」
そう言うとアルフは尻尾をバタつかせてなのはの肩をポンポンと叩いた。
そんなアルフの様子になのはは何処となく嫌な予感がする。
「な、なんでしょう……」
恐る恐る尋ねると、アルフはあっけらかんとこう言った。

「じゃーん!なんと今日ヴィヴィオをこっちに連れて来たんだ!」

「え……   え!?」

「あはは、びっくりしたかい?なのはとフェイトを驚かせようと思ってさ」
「…………え!?え!?…………ヴィヴィオをミッドに!?」
「そうだよ!」
「……い、今何処っ!?」
「今頃家の中だよ。玄関の扉の前までアタシが送って行ったんだけど、
そこから先は邪魔しちゃ悪いと思ってアタシはこっちに来たんだ」


なのはの表情は瞬く間に凍りついた。







書斎でティアナに教わった本に目を通していると、なにやら声が聞こえた。
なんだろうと思い一階に下りると、フェイトはそれが聞こえてくる方へと向った。

「ママーっ!!ママーっ!」

只管そうやって玄関の扉が叩かれる。
どうやら小さな子どもが外にいることが解った。

「ママ!」

頼りない、それでも力一杯に叩かれる扉をフェイトは急いで開いた。

ガチャン


「……フェイト……………………ママ……?」


足下を見れば、目を丸くして驚いた様子の女の子がフェイトを見上げていた。





331 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 20:01:07 ID:E53JJvw9






「ど、どういうこと、アルフさん!!なんで!?」

なのははアルフの肩を掴むと、驚いて後退していくアルフとの距離を詰めた。
「だってもう通信を貰ってから七日経ったから」
ヴィヴィオを迎えに行くって言っただろう?と、アルフは不思議そうに言った。
「あんたたちに会えるよってヴィヴィオに伝えたら、そりゃもう大喜びしてね、
今すぐ行くんだって聞かなくてさ。あ、けど迎えに行く手間が省けただろう?」
なのはの青い顔を見て、漸くアルフにもどうやらマズいことがあったのだと解った。
「……ヴィヴィオに……記憶のこと話したの……?」
「い、いや?フェイトにヴィヴィオのこと話してるなら問題ないと思って……」
アルフは、額に手をあてて俯いたなのはの顔を恐る恐る覗き込んだ。
「……まだ………」
なのはは震える声でポツリと呟いた。

「駄目なのに……!!」

アルフが腕に触れようとした次の瞬間、なのはは教官室から駆け出ていった。







「……ママ?君はママを探してるの?」
「……」

ヴィヴィオはフェイトから目を逸らさず、じっとその風貌を伺っている。
まるでフェイトを初めて見るかのように……

「私の名前知ってるんだね」
「……え……」
「君は誰なのかな?」

ポトリ、とウサギのぬいぐるみがヴィヴィオの手から地面に落ちた。
フェイトの言葉を聞いて、赤と緑のその両目はみるみるうちに様々な色に揺らぎ始めた。
疑念、不安、絶望、それから拒絶の色に。

フェイトにはどうすればよいのかも、少女の動揺の理由も、何も解らなかった。





332 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 20:03:50 ID:E53JJvw9





――ウソでしょ!?

――まだ何も説明していないのに!


『すぐには無理なんだけど一週間後にはちゃんとフェイトちゃんに説明します』


いつヴィヴィオを迎えに行くのかと問われ、
なのははそう答えたのであって、一週間後に迎えに行くとは一言も言っていない。
しかし今はそんなことを主張している時間も意味もない。
ただ急ぐしかなかった。


――お願いだから説明をさせて

――ちゃんと言うから

――だからそれまでは……!


廊下ですれ違う局員たちにぶつかるのも気に留めず、なのはは兎に角走った。
ゲートを抜け、帰路を急ぐ。


――まだ出会わないで……!









334 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 20:08:05 ID:E53JJvw9


「待って」

肩を固くして一歩引き下がったヴィヴィオにフェイトは言った。
「怖がらなくていいよ」
笑顔を見せてやると、なんとかヴィヴィオはその場に踏み止まった。
フェイトが何も言わなければきっとヴィヴィオは逃げ去っていただろう。
そしてその見ず知らずの少女を追わずにいることも出来たのに、フェイトはそうしなかった。

母親を探しているのだろう小さな女の子。
知らない場所に放って置かれたように不安でいっぱいの子ども。
まるで自分のようなその子を、フェイトは放っておくことが出来なかったのだ。


自分と同じならば……きっと求めるものも同じはず。


フェイトはその場にしゃがむと地面に落ちたぬいぐるみを拾い上げた。
それからヴィヴィオの前でぬいぐるみを動かし、優しい声で言った。

「コンニチハ、君の名前は何て言うの?」

怯えていたヴィヴィオの表情は、驚きへと変わった。
ぬいぐるみに、ではなく、さっきまでとは違った強い興味がフェイトに向けられた。
「はじめまして、私の名前はフェイト。ああ、もう知ってるんだっけ?」
随分と困惑しているようではあるが、それでも少女がもう逃げ出さないとフェイトは感じた。
そして何か話してくれはしないかと、さらに質問を続けた。
「お母さんを探しているんだよね?君のお母さんはだぁれ?」
やや時間があって、口を噤んでいたヴィヴィオが漸く答えた。
「……なのはママ」

「へ?」

当然今度目を丸くしたのはフェイトの方だった。
ぬいぐるみを動かす手はピタリと止まった。
「え……なのはって……なのはが君のお母さん??」
ヴィヴィオはフェイトの手からぬいぐるみを奪うとそれを握りしめて頷いた。
相変わらずフェイトに近寄ろうとしないヴィヴィオだが、それでも目を逸らさないでいる。
この人が誰なのか、ヴィヴィオは懸命に模索しているようだった。
「なのはが……?」
ヴィヴィオは再びコクンと頷く。
「……そう……なんだ……?そう……だよね、だからここに来たんだね」

事情は解らない。
沢山のことが疑問だ。
けれどフェイトには不思議とそんなことは今どうでもいいような気がした。
例えばこの子となのはが本当に血が繋がっているとかいないとか、
なのはの年齢を考えると変だとしても、そんなことはあまり重要ではないと思えた。
何故ならリンディとフェイトは本当の親子なのだから、
この子となのはが本当の親子であってもおかしくないのではないだろうか。





335 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 20:10:15 ID:E53JJvw9


「……そっか、なのはがお母さんなんだ……」
フェイトは自然と微笑んでいた。
目の前の少女がなのはの娘なんだと思うと、なんだか無性に優しい気持ちになるばかりだった。
「すごく素敵なお母さんだね」


抱きしめると心地よくて華奢で温かい人。
優しくて強くて、とても綺麗な人。
触れたくて、一緒に居たくて、フェイトの胸をいっぱいにした――
その素敵な人がしてくれたように、今度は自分がこの子を大切にしたい。
そんなふうにフェイトは思った。


「ねぇ、聞いてくれる?」
問い掛けながらフェイトがヴィヴィオの頬に触れると、ヴィヴィオはピクンと肩を震わせた。
ヴィヴィオは不安そうにフェイトの言葉を待つ。
「君は私のことを知っているのかもしれないけれど、私は君を知らないんだ」
フェイトがそう言うとヴィヴィオはついに一筋の涙を零した。
「……忘れちゃったの……?」
それはなのはが怖れた通りの反応だった。
どうして、いやだ、そんなふうにヴィヴィオは震える声を発した。
涙の理由は怒りからか、悲しみからか、困惑からか、もしくはその全部だろううかとフェイトは思う。
「ごめん……」
「やだ……!」
こんなふうになってほしくなくて、なのはは二人を会わせられなかった。
しかし無情にもヴィヴィオはフェイトの手を払い退け、叫んだ。
「そんなのやだっ!!」
ヴィヴィオは真一文字に結ばれた口の中で歯を食いしばり、フェイトを睨みつけた。
それなのに……

ヴィヴィオの目に映るフェイトの微笑みは果てしなく優しい。

「ごめんね……君と前にどんな関係だったのか私には解らないんだ」
はね除けられた手を、フェイトはそれでもヴィヴィオの頬に伸ばした。
「だけど――」
フェイトは指先でヴィヴィオの涙を拭い、こう続けた。

「これから君のこと覚える。そしたら仲良くなれないかな?」

きっと前よりずっと仲良しになれるよ、
そう言ってヴィヴィオの前にそっと手を差し出した。
ヴィヴィオは泣くのを止め、驚きに大きな瞳をパチパチとさせた。

「私は君と友だちになりたいんだ」

フェイトは言った。

「だから名前を教えてくれないかな」





336 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 20:13:34 ID:E53JJvw9






息を切らせて我が家まで辿り着いたとき、既にアルフがヴィヴィオとここで別れてから随分と時間が経っていた。
今更遅いことは充分承知だが、それを認めたくない気持ちがなのはに祈らせる。
どうかリンディか誰かがアルフの行動を察知してヴィヴィオを連れ帰り、まだ家に入っていないようにと。


震える手で扉を開けるとなのはは様子を伺うように小さな声で、ただいま、と言った。
「フェイトちゃん、居る?」
深呼吸をしながらゆっくりと廊下を歩く。
「……ヴィヴィオ、居るの?」
静まりかえった家の中には足音も二人のうちどちらかの声も聞こえなかったが、
注意深く耳を澄ませば一歩進むにつれて、ほんの僅かだが別の音が聞こえる。
それは音楽のような誰かのしゃべり声のような、雑音とも呼べるものだった。
「フェイトちゃん、何処に居るの」
リビングまで辿り着くと辺りを見渡してみたが誰も居らず、返事は返って来ない。
ただ耳に届いた雑音の正体だけははっきりとした。
何故かテレビがついたままになっており、画面には何やら子ども向けのファミリー映画が映っている。
そこから聞こえる小さな音だけがなのはを出迎えてくれたようだ。


フェイトは外出したのだろうか……?
ヴィヴィオは来ていない……?

一体何処に行ってしまったのだろう?


「居ないの?フェイ――」
二階を見に行こうと一歩足を踏み出したその瞬間。
なのはは思わず両手で口を押さえた。

……テレビの正面にあり、なのはからは裏側を向いた、いつもフェイトと二人で座るソファー。
そのソファーの背もたれに僅かに掛かる金色の髪……
明るく輝く、透き通るような色、それとも仄かに茶掛かった柔らかい色なのか、見分けがつかない。

波打つ心臓の、痛いほどの鼓動を堪えながら、なのははソファーに近づく。
回り込んでその姿を確認する。

なのはの目に映ったのは――


すやすやと眠るフェイト。
そしてその腕の中で気持ち良さそうに寝息をたてるヴィヴィオ。





337 名前: Hello, Again [sage] 投稿日: 2008/09/13(土) 20:15:52 ID:E53JJvw9



「う……ん……」
身じろぎしてフェイトにしがみつくヴィヴィオの安心しきった寝顔。
大切なものを抱えるようにヴィヴィオを包むフェイトの穏やかな寝顔。
ローテーブルの上には絵本が、すぐ下の絨毯には幾つかのオモチャが転がっている。
それらはどれも娘のお気に入りで……

それはなのはにとってこの世の何よりも幸福な光景だった。

なのははそれをじっと見つめ続けた。
時が過ぎるのも忘れ、飽きることなくずっと……




――あぁ

……もう、大丈夫なんだ

何が起きても、私たちはもう大丈夫

もう何も心配することない

すべて上手くいく

私たちならきっと―――




やがて視界がぼやけ、自分が泣いていると解った。
もう泣かないと誓ったのに。
けれど涙は止めどなく押し寄せ、ポロポロと瞳から落ちていく。

なのはは二人の寝顔を永遠に見ていたくて、必死で頬を拭う。
今は視界を邪魔する涙なんか欲しくない。

だけど……永遠に見続けるなんて不可能だ。
それはけして叶わない願い。

何故なら――



じきに二人は目を覚ますから



そしてきっと、二人は愛らしい笑顔をなのはに向けるから


*  *  *  *  *





Hello, Again 21
2009年08月30日(日) 17:47:23 Modified by coyote2000




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