Love Again 1
Hello, Againの作者と別人が書いた番外編です。
533 名前: ヘロアゲ番外1 [sage] 投稿日: 2008/09/28(日) 22:34:29 ID:AV/hX5xh
「フェイトちゃん、これずっと私が持ってたんだけど今まで渡さなくてごめんね」
ある日の夜、フェイトが書斎で勉強をしているとなのはが鞄ほどの大きさの紙箱をどこからか持ち出してきてこう言った。
「ん?なのは…それは何?」
「フェイトちゃんの…… 職場の私物。シャーリーさんから預かってたんだ」
その白い平たい箱は資料室でフェイトが意識不明に陥った後、執務官辞職が成立した際になのはに預けられたものだった。
なのはは記憶を失ったフェイトが執務官という職業に固執していなかったこと、今の生活に慣れようとしているフェイトに余計な負担を与えたくなかった事から、長い間その箱の存在をフェイトに知らせていなかった。
「うん……ありがとう、なのは」
素直にフェイトは礼を述べた。
― Love Again ― Hello, Again番外編
ヴィヴィオが家に戻り、三人での暮らしが新たな関係で始まってからかなりの日々が過ぎた。
普段、ヴィヴィオは学校、なのはは職場へ、フェイトは自宅で勉強と魔法の訓練を続けるという一見、穏やで平和な日々が続いていた。
しかし、フェイトは過去の自分に触れる機会があるたびに、必要の無い焦燥を感じていた。
早く、周りから認められたい、そしてなのはにも―
執務官を辞して後、フェイトには確たる社会的立場というものは存在しなかった。職業資格は全て剥奪となり、民間資格である運転免許も自主的に返納していた。乗っていた車はシグナムに譲ってしまっている。
運転の仕方を再度覚える事は考えていなかった。今のフェイトの生活では、車はまったく必要の無いものだった。
ただひとつの例外として、魔導師ランクだけは試験を受け、ミッドチルダ式空戦AAAランクを取り直していた。
管理局がフェイトを臨時嘱託魔導師として局への登録を継続要請したためである。
登録継続にあたり、3ヶ月の短期訓練を受けていた。訓練教官はフェイトにとっては残念な事になのはでなく、機動六課解散後、戦技教導隊入りしたヴィータだった。
ヴィータいわく、「スピードはさすがだが、戦う気持ちがまだまだ甘い」とのフェイト評である。
もとよりフェイトは実戦に参加するつもりなど無く、戦う気持ちなど持ちようがなかった。
ランク取得後は、義務である年二回の合同演習に参加するだけだった。
――世界はおおむね平和だった。
ある年の合同演習で、なのはが偶然に一度だけフェイトの仮想敵を務め、周囲からあの”エースオブエース”と”金の閃光”がどんな戦いをするのか大いに注目を集めたことがあったが、
ろくに撃ち合う前にあっさりとなのはにバインドとスターライトブレイカーで撃ち落されてしまった。
フェイトの身に何が起こったかを知る人は少なくなかったが、否が応でも周囲からは過去の自分と比較されていることを感じ取り、仕方ないと思うと同時に悔しい気持ちがフェイトを支配した。
演習終了後、フェイトちゃん頑張ったよ、となのはは声をかけたが、フェイトは小さく頷きを返すだけだった。
じゃあ反省会があるから先に帰っててね、と言い、同僚と去っていく白と青の鮮やかな教導隊の制服に身を包んだなのはを見送れば、
夜にはただいまといって家に帰ってきてくれる人なのに、とても遠い存在のように感じた。
自分はもう、全て失ってしまったんだろうか―
ヴィヴィオとなのはのの後見人は、なのはとも話し合った結果、リンディに引き受けてもらっていた。
同様にエリオとキャロの保護者は現在はティアナになっていた。ただし二人とも来年中には保護者の要らない年齢になる。
暖かい家庭にいて、なのはやハラオウン家、八神家の人々に見守られていても、外へ一歩出れば何の評価も受けない、一般市民に限りなく近い存在。それが今のフェイトだった。
通信教育で学校教育を受け、なのはに隠れて勉強している執務官への道も、まずは補佐官適正考査試験に合格しなければならず、
執務官になるまでにあと何年かかるかフェイトには見当がつかなかった。
なのはの隣を歩いていきたい、なのはとヴィヴィオを、大切な人たちを守れる存在になりたい――
その想いはすぐには叶いそうになかった。
それに――― それに、なのはは今の私の事、どう思ってるんだろう……?あの指輪は?私の片想いだったのかな……?二人はどんな関係だったんだろう…?
今は私はヴィヴィオと同じように、なのはの子供みたいに思われてるのかな―――
Love Again 2
533 名前: ヘロアゲ番外1 [sage] 投稿日: 2008/09/28(日) 22:34:29 ID:AV/hX5xh
「フェイトちゃん、これずっと私が持ってたんだけど今まで渡さなくてごめんね」
ある日の夜、フェイトが書斎で勉強をしているとなのはが鞄ほどの大きさの紙箱をどこからか持ち出してきてこう言った。
「ん?なのは…それは何?」
「フェイトちゃんの…… 職場の私物。シャーリーさんから預かってたんだ」
その白い平たい箱は資料室でフェイトが意識不明に陥った後、執務官辞職が成立した際になのはに預けられたものだった。
なのはは記憶を失ったフェイトが執務官という職業に固執していなかったこと、今の生活に慣れようとしているフェイトに余計な負担を与えたくなかった事から、長い間その箱の存在をフェイトに知らせていなかった。
「うん……ありがとう、なのは」
素直にフェイトは礼を述べた。
― Love Again ― Hello, Again番外編
ヴィヴィオが家に戻り、三人での暮らしが新たな関係で始まってからかなりの日々が過ぎた。
普段、ヴィヴィオは学校、なのはは職場へ、フェイトは自宅で勉強と魔法の訓練を続けるという一見、穏やで平和な日々が続いていた。
しかし、フェイトは過去の自分に触れる機会があるたびに、必要の無い焦燥を感じていた。
早く、周りから認められたい、そしてなのはにも―
執務官を辞して後、フェイトには確たる社会的立場というものは存在しなかった。職業資格は全て剥奪となり、民間資格である運転免許も自主的に返納していた。乗っていた車はシグナムに譲ってしまっている。
運転の仕方を再度覚える事は考えていなかった。今のフェイトの生活では、車はまったく必要の無いものだった。
ただひとつの例外として、魔導師ランクだけは試験を受け、ミッドチルダ式空戦AAAランクを取り直していた。
管理局がフェイトを臨時嘱託魔導師として局への登録を継続要請したためである。
登録継続にあたり、3ヶ月の短期訓練を受けていた。訓練教官はフェイトにとっては残念な事になのはでなく、機動六課解散後、戦技教導隊入りしたヴィータだった。
ヴィータいわく、「スピードはさすがだが、戦う気持ちがまだまだ甘い」とのフェイト評である。
もとよりフェイトは実戦に参加するつもりなど無く、戦う気持ちなど持ちようがなかった。
ランク取得後は、義務である年二回の合同演習に参加するだけだった。
――世界はおおむね平和だった。
ある年の合同演習で、なのはが偶然に一度だけフェイトの仮想敵を務め、周囲からあの”エースオブエース”と”金の閃光”がどんな戦いをするのか大いに注目を集めたことがあったが、
ろくに撃ち合う前にあっさりとなのはにバインドとスターライトブレイカーで撃ち落されてしまった。
フェイトの身に何が起こったかを知る人は少なくなかったが、否が応でも周囲からは過去の自分と比較されていることを感じ取り、仕方ないと思うと同時に悔しい気持ちがフェイトを支配した。
演習終了後、フェイトちゃん頑張ったよ、となのはは声をかけたが、フェイトは小さく頷きを返すだけだった。
じゃあ反省会があるから先に帰っててね、と言い、同僚と去っていく白と青の鮮やかな教導隊の制服に身を包んだなのはを見送れば、
夜にはただいまといって家に帰ってきてくれる人なのに、とても遠い存在のように感じた。
自分はもう、全て失ってしまったんだろうか―
ヴィヴィオとなのはのの後見人は、なのはとも話し合った結果、リンディに引き受けてもらっていた。
同様にエリオとキャロの保護者は現在はティアナになっていた。ただし二人とも来年中には保護者の要らない年齢になる。
暖かい家庭にいて、なのはやハラオウン家、八神家の人々に見守られていても、外へ一歩出れば何の評価も受けない、一般市民に限りなく近い存在。それが今のフェイトだった。
通信教育で学校教育を受け、なのはに隠れて勉強している執務官への道も、まずは補佐官適正考査試験に合格しなければならず、
執務官になるまでにあと何年かかるかフェイトには見当がつかなかった。
なのはの隣を歩いていきたい、なのはとヴィヴィオを、大切な人たちを守れる存在になりたい――
その想いはすぐには叶いそうになかった。
それに――― それに、なのはは今の私の事、どう思ってるんだろう……?あの指輪は?私の片想いだったのかな……?二人はどんな関係だったんだろう…?
今は私はヴィヴィオと同じように、なのはの子供みたいに思われてるのかな―――
Love Again 2
2009年08月30日(日) 17:51:57 Modified by coyote2000