なりいたの一日 プロローグ

なりいたの一日とは、それは奇妙な一日だ。

何が奇妙かと言えばまぁ色々と奇妙だが、真っ先に思いつくのは『時間』だ。
〜の一日といった場合、大抵は始点が存在するものだが、このなりいたにははっきりとした始点が存在しないのだ。
理由は当然、ある。
なりいたには数多くのコテが在住し、彼らの生活スタイルが千差万別であるからだ。
皆がバラバラに動くから中心の定めようが無いとでも言おうか。
現に、俺の部屋の時計が午前0時を示しているにも関わらず、俺が今から寝ようとしているにも関わらず、


「煩いぞ、ハヤテ! 私はまだレアアイテムを入手していない! 手に入れるまで寝るものかっ! 
……いいか、お前も寝落ちするんじゃないぞ! 主人が起きているのに執事が寝ることなど許されないのだ!」

「こんな夜中に話をしに来るなんて、本当におばかさんねぇ」
「いいじゃない♪ 私と銀ちゃんの仲でしょ♪ 真夜中の逢引って恋人同士ならとうぜんよね♪」

「秋葉はいない、よな…………ったく、アルクェイドの奴。こんな深夜に呼び出して――」
「呼び出されて、断ろうともせず出掛ける、と……。当主である私に黙ってこっそりと」
「いいっ! あ、ああ秋葉! ななな何でこんな時間に!」
「あはっ♪ 詰めが甘いですね、志貴さん。名無しさんから密告があったんですよー♪」


……とまぁこの様に、やかましいことこの上無い。
三千院家ルームでは今日もネトゲ中毒のお嬢様が不幸執事を引っ張り回し、
ローゼンメイデン・水銀燈ルーム(『あ〜んど、姫菜♪』というシールが下に貼り付けてある)では百合を連想させる会話が端々に聞こえ、
遠野家ルームからはとうに聞き飽きた痴話喧嘩が繰り広げられている。
あいつらだけではない。俺の部屋からは離れているため聞こえないが、
金に五月蝿いYOYO少年煙草の煙で部屋が変色している100歳越え等、ギルティギアの面子も一部起きているはずだ。
あいつらは夜ステージでの勝負がある場合、深夜まで活動しているからな。
ウルトラマンはどうだろう? 正義のヒーローに時間は関係ないというし……いや、あいつは普通に寝ていそうだな。
そう言えば砂袋の奴は深夜でも客がいれば対応(殴られる・ブリス等)するのだろうか?


数百というルームがあるこの『なりいた』に住む面子のことを考えたら切りが無いが、一つだけ言える事がある。
それは、なりいたが寝静まることは決して無いということだ。
全く以って、やれやれである。


とりあえず、の視点で描かれるこの『なりいたの一日』。

始点は現在、十二月十四日午前0時とでもするとしようか。


朝へ
2007年12月15日(土) 18:06:20 Modified by nariita




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