なりいたの一日 昼1

深夜の喧騒も朝の喧騒も完全に収まった頃。大体、午前十一時くらいか。
名無しもコテも数が減ってくるこの時間帯。けれども残っているコテはかなりの曲者揃いだ。
なんせ基本的に『時間に縛られない生活』を送っている奴ばかりだからな。今日に限っては、俺もその一員なわけだが。


「ね、ね。志貴見なかった?」
なりいたロビーで新聞を読みながらくつろいでいた俺に、吸血鬼のお姫様が話しかけてくる。
早速曲者一号のお出ましだ。
「遠野兄は学生だから、普通に考えて学校だろう」
新聞から目を離し、至極もっともな回答をする。
「んー、そっかぁ。志貴ったら昨日の私とのデート、すっぽかしたんだよね。ガッコーに行って、ガツンと言ってやらなくちゃ」
喜色満面、天然の笑顔でアルクェイドが宣言する。
しかしその笑顔の先にあるのは遠野兄の修羅場だけだろう。可哀相なことに。
「そうか。お前も大変だな」
しかし俺は止めない。所詮は他人事で、更に言うなら自業自得だからだ。
遠野兄の慌てふためく顔を想像しながら新聞をパラリと捲る。
その一瞬後には既に、アルクェイドは視界から失せてしまっていた。行動の早い――速い、でもあるか――奴だ。
視点を誰もいないロビーから新聞に戻す。すると、
「あのー」
と、一行読む間も無く、再び呼び掛けられる。
ロビーにいるのが悪いのだろうか? しかし新聞はここでしか読めんし……。
「何だ」
顔を上げる。視界に写ったのは、

(´・ω・ω・ω・`)

「うお! 驚かせるなっ!」
すごいのがいた。とにかく見た目がすごい。
様々なコテ情報に精通している俺だが、こいつは全く心当たりが無い。一体何者なのだろうか?
「なりいた避難所って、どこでしょうか? あっちも自由に部屋を借りれると聞いたもので」
「避難所なら向こうのしたらばエレベーターから行け。検索機に「なりいた 避難所」と入力すれば自動で検出し、行ってくれるはずだ」
「そうですか。どうもありがとうございます」

……行った、か。しかし、本当に何者なのだろう。


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2007年12月15日(土) 17:34:21 Modified by nariita




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