なりいたの一日 朝

さて。時は変わって十二月十四日午前八時。いや、単に八時間寝ただけだが。
昨日の夜騒いでいた面子は静かになり、打って変わって別の連中が騒ぎ出す時間だ。
この時間だと学生が一番多いだろう。そう、例えば、


「ごめんねー、今から学校♪ ハチはどうでもいいけど雄馬を待たせるわけにはいかないの。レスは帰ってきて、ちゃーんとするから♪」

「ほら、キョン! パンのバターなんてどうでもいいから早く来なさい! あんたがバター塗ってるロスタイムでチャイムが鳴ったらどうしてくれるのよ! 三分以内に出ないとやばいのよ!」
「待て待て、冷静に考えるんだハルヒ。俺がパンにバターを塗るという行為に、インスタントラーメンを作る必要条件や全身タイツ巨人の活動限界諸々に並ぶ時間を要するとは到底思えないわけだが、違うか? 違わないだろう。加えてだな、十分な朝食を取るという行為は、時間拘束の極めて長い学校という箱に収められる囚人もとい学生である俺達の諸活動を考慮すれば非常に貴重な――」
「ああ、もう五月蝿い! あんたが抗弁垂れてる内に三十秒も経ったじゃない三十秒! さっさと行くわよ、キョン!」


このなりいたで代表的な学生連中といえば、あいつらだ。
渡良瀬はともかく、SOS団の連中は近所迷惑と断言できるレベルでやかましい。まったく……。
「…………」
渋面を作りながら涼宮達を見送る俺の前を、一人の少女が無言で通り過ぎる。
長門、だったか? あいつもSOS団のはずだが……。
「いいのか? 遅刻がどうこうと涼宮達は騒いでいたが」
「…………平気」
相も変わらず要領の掴めん奴だ。


学生でもなく特に外出する用事も無い俺は、学生連中の後姿を見ながら自室へ戻ることにした。
今日は久々のフリーだ。名無しの客も見当たらないし、のんびりさせてもらうとしよう。
コテに割り当てられているワンルームの自室へ戻り、先程入れておいたコーヒーを一口。
そしてテーブル上にあるバームクーヘンへ手を伸ばし、

◎<キシャー
「…………」

そうだよな。これがなりいたなんだよな……。


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2007年12月15日(土) 18:08:11 Modified by nariita




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