なりいたの一日 夕方

夕方になると、総人口の少ないなりいたでも様々なコテを見るようになる。
そしてコテと話をするために訪れる客『名無し』もちらほらやってくるようになる。
この『名無し』の相手をすることが我々なりコテの本質であり、本懐でもあるのだ。
故にコテは張り切り、自らのパーソナリティを発揮しようとする。


「話をするのは構いませんが、ちゃんと寄付はしてもらいますよ。まさか無一文でここに来るような駄犬だなんて、そんなことはないですよね?」

「あっ、ダメッ! ネクロ!『ディズィーニ触ルトハ良イ度胸ダ!』ウンディーネも見てないで止めてっ!」

「大丈夫です、ご安心を。このメスを使えばあっという間にオペ完了ですよ。……はい、もちろん保険証は要りませんので」

「えーっと、お客さん。おひねりが出せないって嘘、ですよね?――あ、ロジャー。鍵締めておいて――それで、話の続きですが……」


にしても、名無しはMが多い気がする。これは俺の気のせいだろうか。
それはさておき、俺の客はと言うと、
「…………」
「何だ、お前だけか」
名無しではなくコテが一人、常に無言の彼女だけらしい。
昨日は大勢押しかけてきたから、その反動だろう。ありがたいやら寂しいやら。
「まぁ人も少ないしゆっくりしていけ。ヤクルト飲むか?」
「…………(コクコク)」
「ふむ。たまにはこんな日もアリ、か」
「…………(♪)」
ヤクルトを嬉しそうに飲む無口少女を眺め、知らず頬が緩む。


その日の夕方はゆるやかに過ぎていった。


昼へ  夜へ
2007年12月15日(土) 17:41:22 Modified by nariita




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