スローライフ14



僅かしかない時間の中、思慮を巡らす
どうにかして、あの凶器を奪わなくてはならない
男の中の1人が下卑な笑みを浮かべて服に手をかける
がむしゃらに止めろと叫びたい衝動を押し留める
そんな事をしても逆効果、あいつらを増長させるだけだ
かと言って、体を大の男二人に上から押さえつけられている状況だ
もちろん、自分の鍛えた体は熟知している
はねのける事は出来るだろう
ただ、そういった動作にかかる時間は、アクション漫画の主人公並みに早い訳ではない
てこずっている間に、アイツが首にナイフを突きつけられてる、いわゆる人質の体になっている可能性は高い
こうなってしまった場合、多分、俺は完膚無きまでに叩かれ、蹴られ。
…想像はしたくない
……多分、こうしなければ駄目だった
多分……最悪の選択だった
不器用な自分には合っていたのだが



「なぁ」
軽いトーンな声をかける
視線がこちらを向く
「怪我さ、どう?」
少しの沈黙、当たり前だ
この状況、とてもじゃないがこんな言葉が出てくるハズが無い
服に手をかけていた男も手を止め、こちらを見ていた
「……」
言葉に悩んでいるようだ
まぁ、俺だって悩んだ末に出した言葉だし、相手もそれ相応に考えてくれないと割りに合わない
「……まだ殴られ足りない?」
…相場、といった受け答え
「ん…心配してんだよ、俺の腕と違って鍛え方が足りなかったみたいだから」
ははは、と笑い飛ばす
視線だけでなく体がこっちを向いた
更に続ける
「いやー、俺ってつくづく凄いよな?県大会優勝だけじゃなくって全国も優勝しちゃうぜ?」
右腕に視線を送る
最も、地面に押さえつけられているので肩しか見えないのだが
「……その右腕、そんな大事なん?」
クイッと手で俺を押さえつけている男二人に指示を出す、体が起こされた
両脇を二人が抱えている形ではあるが、幾分はねのけ安くなっただろう
「まだ、足りなかったみたいだな…優勝、出来なくしてやるよ」
俺の前に来て、笑いながら言う
「な、何……!?」
言葉を出す
表面は怯えながら
……内心は笑いながら


じくりと腕に激しい痛み
痛みと同時に動き出す


相手の武器は
こちらの体で確保した



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2008年02月06日(水) 20:54:57 Modified by katzenveit_c0162




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