スローライフ16



怖かった、ただ怖くて仕方なかった
自分の結末、大事なあの人の結末
それがよく解ったから


そこに…あの人は現れた
……来てしまった
嬉しかった、嬉しくて嬉しくて
………途方もなく自分が憎らしかった
当然のように男達はあの人を殴り付ける
必死に止めてと叫び続ける
目を覆いたくなるような光景、手を縛られていなければだが



ひと通り殴り終わると
視線がこちらを向く
あぁ、私の番だ
すごくスムーズにそう思うことが出来た
男の1人がこちらに歩き、私の服に手をかける
抵抗はしなかった、私の番。そう思ってしまったからかもしれない


ふと、静寂の中で声が響く
男の手が止まった
分からなかった、なんで、そんな事をするのか
……気付いた、だけど遅かった
声が出ない
代わりに
本当に不器用なんだな…と思う


低く呻き声が上がる
それと同時に、動き出した


閃光のような蹴りが首謀者を捉える
そして直ぐ様こちらに駆け出し、私を犯そうとしていた男を倒す
そしてまた1人、2人。
本当に強い
片手が使えないというハンディもあるのに
なんで、どうしてこんなに強いんだろう




私の隣にへたりと腰を降ろす
顔がこっちを向いた
「…ごめんな…怖かっただろ?」
謝らないで欲しかった、だって謝るのは私の方なんだから
答えることが出来ない
「側についててやれな…」
「違うよ」
言葉を遮るように続けようとする
「私…」
だけど出てこない
「あ、そうそう」
思い出したように彼が上着を探る
出てきたのはくしゃくしゃになった箱
「……うわ…」
困った顔
私は何も言えずただ箱を見続ける
「あー、そのな、誕生日…だろ?だからこれ…」
くしゃくしゃの箱をが私の前に来る
「それとさ、昼メシ、すごい美味かったから……っと…お、おい?」
泣いていた、感情が泣かない事を許さない
彼に抱きついて、いとおしくて
ごめんなさい…
嗚咽混じりのそんな安っぽい言葉しか出てこなかった



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2008年02月19日(火) 19:49:02 Modified by ID:IrOa8HEmTQ




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