孤島事件簿序章2

どれほど揺られていただろうか、水平線の淵に島の輪郭が見え始めた。
まさに絶海の孤島と呼ぶに相応しいほどに周囲は海と空の青色で彩られている。


しだいに島の影が大きくなり、クルーザーは既に減速を始めていた。
この船が止まると思しき港と言うにはあまりにも粗末な船着場を見ると、一人の少女が控えめに手を振っていた。


「着いたぞ」
船が止まると運転席からやや疲れた面持ちの男が姿を現し、そう告げる。

「いやっははは、やっと到着かい? Nくん、運転おつかれぃ!」
一人の少女が晴れやかな笑顔で運転手の背中をバシンと叩き、船から真っ先に飛び降りた。

「ぐっ! あまり調子に乗るな姫菜。 こちとら何時間も孤独に船を走らせていたもんで疲労困憊中だ」


少女に続き優雅に降り立ったのは翼の生えた小さな人間もとい巨大な人形。
「毎度毎度ご苦労さんねぇ…」
皮肉とも同情とも取れる眼差しで男を一瞥し、何事も無かったように歩き出す。

「うむ…」


今度はシスター姿の少女もとい少年が降りる。
「運転お疲れ様です! あとでおひねり渡しますね」
「…一応貰っておこう」

「む?そういえば熊はどうした?」
「ロジャーですか? お留守番ですよ。 ホラ、人間1人になりたい時ってあるじゃないですか! ロジャーもきっとそうなんですよ」
「どういう理屈だそれは…」」



さらに船から続々と見知った顔ぶれが姿を現し、久しく目にした固い地面を求めるかのごとく次々と降りてゆく

「ふう、やっと着いたか〜。 よっ! お疲れさん! (バシッ)」
「……やれやれだぜ。 お疲れ (ボコッ)」
ド派手な山吹色の道着の男とヘッドギアの男が続けざまに背中を叩いていった。

「いやお前ら何故殴る…?」



「へ〜っ。 間近で見ると結構大きい島だなぁ」
「綺麗なところね」
続いて、片やミニスカにマント、片や背中に2頭の竜というファンタジーな装いの男女が素直な感嘆を漏らす。
 
「とりあえずこいつらは無害か…」
最後に運転手の男が溜め息混じりに船を降りる。


「む? わざわざ出迎えに来てくれたか。 お前も楽しみなようだな」
「……………(こくこく)」
「さて、では粗方の説明をしておくか。 …コホン、集合! こっち来ぉ!」




「さて、ウェルカムトゥマイアイランド! さしより船の長旅ご苦労であった。 一番ご苦労被ったのは他ならぬ俺だが…
 まあいい、今回ここに招待されたのはアシュトン、水銀燈、ソル、姫菜、ブリジット、ヤムチャ、レナ…で、間違いないな?」
 わかっているとは思うが3泊4日の孤島ライフを満喫してもらうべく諸君らを招待したわけだが…
 まあここで立ち話もなんだ、館の方へ移動しつつちょくちょく解説を入れていくとしよう」




ミーンミーン……

かまびすしい蝉の声に夏の香りを感じつつ、一団はのんびりと移動を開始した。



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2007年12月12日(水) 00:39:18 Modified by ID:IrOa8HEmTQ




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