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第七十二景 巻藁(まきわら)

あらすじ

源之助は若き頃、師虎眼より太平の世における武芸上覧の心得を聞いた。それは、たとえ木剣といえど、まともに当てれば脳汁が漏れてしまい、貴人はそれを好まぬと。卒忽な技を用いることなく、間合いを詰めるのみにする、そこで行司役の止めが入るので、後は貴人がお気に召すように口上仕るのみと。腕より弁という太平の世の流れは、魔人虎眼といえでも無視できなかった。

4月中旬、笹原邸の源之助を訪れたのは密用方沼津彦次郎。このたびの上覧試合の心得を持参し、源之助と三重の前で長々と読んだ。長文の中に、上覧試合の際、真剣使用の義務が差しはさまれていたが、一聴しただけでこれを理解するものは稀であると思われた。沼津は下しかねたでござろうと源之助に尋ねるが、源之助は凛とした顔でただ一言わかり申したと漏らすのみだった。
同じ頃、伊良子清玄も岡倉木斎から、上覧試合の心得をきいていた。伊良子も一聴しただけで理解し、駿府の庭先が虎の血で汚れるのが残念でならならないと、ただつぶやく。

魔を持って魔を制す。主家より拝領した妖刀を、御前試合で使用することを決意したのは三重、そして神妙に受け取る源之助の姿。
清玄の元には、江戸虎眼流となった金岡雲竜斎が刀を持って訪れていた。刀工は備前長船光忠、刀銘「一(いちのじ)」。それは見たこともないようなほぼ直刀の野太刀で、清玄の無明逆流れには最適とも言える形であった。刀を抜いた清玄は、青白き刃の芳香を吸い込んだ。するとえも言われぬ高揚が全身を貫き、沸き立つ血液と天空へ上り詰める感覚に、清玄の肉体が震えた。清玄の野心は、ついに翼を得た。

笹原邸の土蔵にどす黒く変色した畳が積み重ねられており、源之助はそれを利用し複数の巻藁を作った。妖刀を試すように、流れで巻藁を見事に切断した源之助だったが、その切り捨てた巻藁の切断面を見て清玄の首と三重の首を想像した。
とたんに嘔吐する源之助。心配し駆けつける三重。季節は春真っ盛り。
舞台
岩本道場(回想)、笹原邸(土蔵、庭)、岡倉邸
道具
上覧試合心得、七丁念仏、一、畳、青竹、巻藁
主要単語
武芸上覧、卒忽、密用方、江戸虎眼流、野太刀、天下人、畳表
詳細

掲載ページコマ文字
チャンピオンRED 2009年9月号
単行本14巻
30ページ123コマ文字

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最終15巻

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