501 〜ソラノカケラ〜・外伝1(65)(1/3) sage 2008/03/11(火) 07:37:43 ID:6K/5qMmE
502 〜ソラノカケラ〜・外伝1(65)(2/3) sage 2008/03/11(火) 07:38:14 ID:6K/5qMmE
503 〜ソラノカケラ〜・外伝1(65)(3/4) sage 2008/03/11(火) 07:39:02 ID:6K/5qMmE
504 〜ソラノカケラ〜・外伝1(65)(4/4) sage 2008/03/11(火) 07:39:35 ID:6K/5qMmE
686 名前:〜ソラノカケラ〜・外伝1(66) 1/3 [sage] 投稿日:2012/01/24(火) 08:02:09 ID:FvQoot1A
687 名前:〜ソラノカケラ〜・外伝1(66) 2/3 [sage] 投稿日:2012/01/24(火) 08:03:24 ID:FvQoot1A
688 名前:〜ソラノカケラ〜・外伝1(66) 3/3 [sage] 投稿日:2012/01/24(火) 08:04:27 ID:FvQoot1A

 第97管理外世界の極東地区日本。
その首都東京の近郊、中山競馬場のスタンドでゴールを迎えようとしている馬群を見つめている一人の女性の姿があった。
丸い眼鏡に金色の瞳、薄いこげ茶と茶色のチェックのつば付きの帽子をかぶり、カーキ色のトレンチコートを羽織った、
黒いワンピースの茶色い2本のお下げの少女――クアットロは、周囲から沸きあがる怒号を聞きながら、競馬新聞を握りしめた。
「いけー!そこー!」
と、彼女も叫ぶが――ゴール板の前を駆け抜けた馬群の順番は、3と13のゼッケンのついた1番人気と2番人気の馬であった。
はぁ、と落胆するその新聞と一緒に持っていた馬券の馬番連勝は4番−14番、当たれば倍率は800倍以上であったが、勿論ハズレである。
「当たらないものねえ……」
心底悔しそうに敗戦の感想戦をしている周囲の親父達には目もくれず、不満そうに馬券を見つめる。
書かれている金額は1万円となっているから、博打としては痛いはずであるのだが――。
「ま、いいわ」
とそう言って馬券を手の平でなぞると、その数字が3−13に変わった。
(ふふん、機械で読み取らせる仕組みになんてしてるから、やりたい放題よぉん)
確定のランプが掲示板に灯ったことを確認してから踵を返すと、散らかったハズレ馬券とマークシートを遠慮なく踏みながら、スタンドを後にして清算へと向かう。
勿論、もっと巨大な金額にしてもいいのだが、いくらなんでも不審がられるのは嬉しくなかった。
こんな辺境世界の法律なんて守る気など欠片もなかったが、何かやる度にほとぼりが冷めるまで待つのは面倒なので、
遊んで暮らせるだけのお金を、その日の気分によって方法を変えて調達する事にしているだけの話である。
この東京という都市、身元のはっきりしない、だがお金の工面に困らない彼女には、非常に優しかった。
誰にも干渉されず、お金さえあれば好きなところに泊まれて大概の物は手に入れることができる――
怪しまれずに潜伏するのにこれ以上の場所は無い。
挙句彼女の能力――シルバーカーテンを使えば、お金に困る事などなかった。
元手は自販機に残っていた100円玉であったが、パチンコ、スロットは言うに及ばず、中途半端な仕組みの機械の絡む代物であれば、
どんなものでも手玉に取って、結果として軽々と大金を得て悠々自適に暮らしていた。
(さて、次はどこに行こうかしらね――)
清算機から出てきた数枚の万札を白い財布に押し込むと、駅へと向かいつつ思考を巡らす。

 ほぼ、同時刻、東京都千代田区に存在する電気街、通称秋葉原――。
そのとあるビルの一角、抵抗やコンデンサー、ヒューズなどが立ち並ぶ店頭に、腰までの白いジャケットとその内側に足元まで落ちる桜色を小奇麗に纏った、
ナンバーズ12番の末っ子、茶色く癖の無いロングストレートの少女、ディードの姿があった。
彼女の目線の先にあるのは、ガラス管のチューブ、いわいる真空管と呼ばれるかなりアナログな代物である。
何故、こんな所に彼女がいるかというと――その姿を見つけて駆け寄ってきた、
こちらはデニムのジャケットとタイトスカートに横縞青白ストライプと黒いストッキングを合わせたタイプゼロのファースト、
ギンガの用件が事の発端であった。
彼女の父親、ゲンヤが何を血迷ったか97番管理外世界でいうところのジャズ――に強烈に惹かれて、
本格的なオーディオ環境を構築し始めた所まではよかったのだが、なかなかにいい趣味をしていて、
再現性は求めてねえ、味のある音が聞きてえんだ、と技術の進歩しまくっているミッドチルダの只中でアナログデバイスに凝り始め、
ミッドで入手する事のできるパーツだけでは物足りず、こんなところにまで娘が出向く羽目になっているのであった。
ちなみに本当に原音を忠実に再現するだけであれば、データ量も技法も地球の技術レベルからすれば及びもつかないレベルの物品がいくらでも存在し、
それ以前に脳内に信号として直接送る事も可能であるわけで、ある意味伊達と酔狂の極みとも言えたが、
実際にゲンヤが作り上げた音を聞かされたギンガがそのどこか人間味を感じる音の柔らかさに感銘を受け、快く引き受けた経緯である。
「あった?」
そうギンガが問いかけると、うーん、と少しだけ唸ってから、これかな、と重なっていた細長い白い箱を取り上げると
完全に依頼した型番と一致していた。
「これですか?」
「あ、うん。それだね。じゃ目的達成かな」
「はい!」
そしてそう元気よく答える彼女が、ギンガはまだしも、何故同伴しているかというとそれなりに複雑な事情があった。
ミッドチルダ地上を震撼させた、クアットロの自爆テロ事件から約3週間後――
真っ先に嘱託試験に合格し、隔離を解除されたウェンディとディードであったが、
管理局地上本部に新しく設立された治安専門部隊に配属されて稼動を開始した後は、東奔西走、粉骨砕身とも呼べる熱心さで事件を解決しつづけ、
八面六臂、大車輪の大活躍で、この半年で検挙率は約10倍、彼女達2人が捕まえた犯罪者は月平均でも3桁を優に超えていた。
あまりの苛烈さにいくつかの犯罪者集団が根を上げるほどで、中にはディードに会いたいが為に軽犯罪を犯すものまで出始めていたが、
ここで一つの問題が発生していた。
元より長時間稼動、不眠不休性を達成する為に開発された彼女達であるから、いつ何時事件が起きても余程の事が無い限り対処は可能で、
勿論必死に働こうとしている2人がそれに応えない訳は無く順調に犯罪は減少していたのだが、問題はメンテナンススタッフの側であった。
具体的に言ってしまえば、彼女達のメンテナンスを担当しているマリエル・アテンザ技官以下部下達の方があまりの稼動の激しさに
ついていけなくなってしまったのである。
元よりタイプゼロのセカンド、スバルが夢の叶った特別救助隊で元気一杯に――むしろ無駄に元気過ぎる勢いで――働いていたところへ、
さらに2名が追加されたわけで、いくら優秀な彼女達とはいえひとたまりもなかった。
そこで休暇を出そうかという運びになったわけであるが、ウェンディは兎も角ディードは非番を言い渡しても仕事に関わろうとしてしまうが為に、
ここは無理矢理用件を作って異世界にでも行かせようか、との治安部隊上層部からの相談を受けたギンガが、
ゲンヤの目的を達成する良い言い訳が見つかったと喜んで、一緒に連れてきた次第である。
レジに頼んで、簡単に包んで貰ってから受け取ると、これからの予定を話し合う。
ギンガから話を振られるディードであったが、勿論土地勘も知識も無く、方針の立てようが無く答えに窮した。
「これからどうしよっか?」
「うーん……」
一応それなりに遊ぶお金も貰ってきているわけであるが、衣料品も部品もほとんどがミッドで揃う為に、特に欲しいものもない。
だが来る途中で見かけた街の景色がどこか特殊で、それが気になってはいた。
「適当にぶらついてみよっか?」
ギンガの無難な提案に動機が重なり、素直に頷く。
街を見て回る――こんなささやかなことにも僅かな楽しい自由を感じながら、
ディードは未だ隔離されている姉達との別れの事を思い出していた。



 戦闘機人の姉妹達――ナンバーズが研修を受けている隔離島の船着場に、彼女達の姿はあった。
海に突き出した形の波止場にくくりつけられた連絡用のボートは、天井こそついているもののさほど大きくは無かったが、
快晴の青空の下、青い水の上でゆらゆらと揺れていた。
ウミネコの鳴き声だけが響く。
もう既に出発の準備は出来ており、持っていく荷物も無いウェンディとディードはギンガの傍らで
いつもの研修時と変わらない服装で、姉達に別れを告げようとしていた。
姉を代表して、最年長の最低身、チンクが沈黙の中へ切り込む。
「私達の刑期はまだまだ長いが、頑張ってな」
「はい、チンクお姉様もお元気で」
「ういっす!チンク姉達の分まで頑張るっす!」
前者は少しだけ寂しそうに、後者はいつも通り元気良く答えると、今度は9番の赤毛、ノーヴェも照れながら一言付け加える。
「まあ、なんだ……うまくいえねえけど、頑張れよ」
「はい!」
「了解っす!……でもノーヴェはすぐこっちに来れそうじゃないっすか?ギンガさん」
「そうね。次はノーヴェが試験を受ける事になりそうだし、すぐに合流できるかも」
「え?そ、それは早くなくてもいいけど……チンク姉と離れるのは嫌だし……」
そう視線を落とす9番の脇腹に、名を出された眼帯の人の肘が軽く刺さる。
「何を言っている。私など気にしなくていいから、さっさと外で働け」
「う、うん……わかってるけどさ」
「ウェンディとディードが頑張ってくれれば、お前やオットー、セインは思ったより早く出れるかも知れんぞ?どうかな、ギンガ殿」
チンクに話を振られて、肯定の頷きを返すギンガ。
「うん。成果次第ではすぐに配属して欲しいって言われるかも知れない。なんせ人手が足りないから……」
普段ほとんど喋らない茶色い髪を後ろで細くまとめた10番、ディエチもそこで一言だけ2人に言葉を残す。
「……私達の分まで、頑張って欲しい」
「はい!」
「ういっす!めいっぱい頑張って、ディエチもチンク姉も速攻で出れるようにするっすから期待してて下さいっす!」
ウェンディのはりきりように、仕方なさそうに10番の人も微笑む。
6番の青い髪、セインも話しかけようとしているのだが、さっきから手の平を目に当ててぐすぐすと泣いているばかりであった。
送り出される側であるはずのディードの方から優しく話しかけられる。
「セインお姉様、そんなに泣かないで下さい」
「だ、だってよ、悲しいじゃんか。でも、でも、お姉ちゃん嬉しくてさ」
「もう、セインは泣き虫っすねー」
「う、うるさいよ、妹達の門出に感激して何が悪いのさ」
「それはそうっすけど……」
少しだけ涙を貰ってしまった、茶色いロングストレートの末っ子から、もう一度別れを告げられる。
「セインお姉様もお元気で」
「うん、ディードもウェンディも、しっかりね……」
う、ぐす、と再び涙を堪え始める彼女の隣で、オットーは静かに佇んでいた。
「オットーも……元気で」
「ああ」
とびきり寂しそうに双子の片割れにも別れを告げるが、相変らずの無表情で静かに答えただけであった。
「じゃ、そろそろ行こう」
「はい」
「ほいじゃいってくるっすー」
こんな時までまるで隣町まで買い物に行って来る様な11番の赤毛の軽さに返って救われつつ、ボートに乗り込む2人を見送る姉達。
どどどど、と低いエンジン音が響き始めて、係員によってともが解かれると、ゆっくりと離岸していく。
涙を浮かべながら小さく手を振るディードと、ぶんぶんと勢いよく腕を振り回す笑顔のウェンディに手を振りながら、
姉達はそのボートが視認できなくなるまで、じっと海を見つめていた。



 再び、秋葉原のとあるビルの屋上。
そこに2つの黒い人影があった。
比喩ではなく黒いジャンパーに黒いズボン、挙句目も口も開いていない黒い覆面をしているのだから、明らかに怪しい風体でしかない。
だんだんと傾き始めている陽を正面から浴びながら、その片方が眼下を歩いている人の群れと
妙にアニメのキャラクターやゲームの絵柄の多い街並を見ながら、呟いた。
「歪んでいるな、この街は」
「そうか?欲求に素直なだけに見えるがな」
しばらくの沈黙。
しかし本来の用件があるのか、ここで会話を止めるわけにはいかず、再度言葉が漏れる。
「人間といえども動物だ。それを否定しても仕方があるまい」
「そうだな……で、本当にやるのか?」
「ああ」
その黒い手袋が開かれた中から現れたのは、小さい菱形の赤い石。
宝石というほどの輝きは無かったが、どこか神秘的な力を秘めているように見えた。
「4番の足取りがようやくつかめた。存在を確認するにはこれが手っ取り早いだろう」
「騒ぎを起こせば、出てくる、か。いい迷惑だな」
「ふん、たまにはよかろう。リアルなアトラクションも世の中には必要さ」
そういってその赤い石を親指に乗せてぴん、と弾くと陽に煌きながら街の只中へと落ちていった。

 雑多な街の片隅で、小さな爆発が起きたとき一瞬だけ衆目が集まったが、見た目にあまり代わりがなかった為に、
すぐにそれは忘却の彼方へと押し流された。
店員が見ていなかったこともあり、ぬいぐるみの入った箱が数箱消えていることに気づいたものは誰もいなかった。
――ショップの軒先をちら見して歩いていたディードを除いては。
魔力反応――?!
一際目立つロングストレートの髪と容姿は少なからず視線を集めていたが、こういうときは鬱陶しい。
さりげに人目を撒いて、反応があったと思しき建物の裏まで辿り付くと、すっ、と屋上に飛んで登った。
偶然見た者がいたとしても、気のせいか目の錯覚と思うだけだろう。
頑丈な鉄の扉がぽつんと屋上には設置されていたが、ツインブレイズを手に取ると鍵を切り、いとも簡単に扉は開いた。
街中とは思えない静けさの非常階段を下りていく。
(あれ――?)
閉鎖された店舗なのかフロアには大きな鉄製の棚の列があるだけで、商品は全く置いていなかった。
人気も全くない。
(つぶれちゃったのかな)
魔力反応のあると思しき下の階へとゆっくりと降りて行く。

 ほぼ同時刻、懐かしい反応を探知してクアットロは、とあるビルの最上階を思わず見上げた。
黒と茶のチェックの帽子を被った金髪のおさげの人は、にやり、と邪悪な笑みを浮かべる。
(この物静かな反応は双子のどっちか……ディードちゃんかしらね。オットーは当分でれそうにないし…)
ふっ、と物陰に隠れて姿を消すと、文字通り自分自身を不可視へと変える。
(さて…付き添いが誰か分からないけど、魔力反応も気になるし、ちょっと様子を見させてもらおうかしら)
ひょい、っと先ほどまでディードがいた屋上まで飛び上がると、こっそりと後をつけはじめた。

 一方ディード。
――いた。
ぬいぐるみが4体、真新しい箱から飛び出してふわふわと浮いている。
転送してここまできたのか、カウンターの前辺りには飛び出したあとの箱が無造作に打ち捨てられていた。
――あれ、箱は5。1体足りない。
ただでさえ一瞬で蹴散らせるのは2体までなのに、1体所在不明では相手がしずらい。
元より反撃されるのは苦手な上に、白い上着も桜色のワンピースも汚したくなかった。
――せめて戦闘服なら、一か八かで4体を一瞬で蹴散らせるのに。
どうしようかと物陰に隠れつつ様子を伺うが、5体目が出てくる気配もなく無為に時が過ぎる。
正直困ったな、と思いつつここは思い切って一か八かを仕掛けることにする。
一刀で2匹は倒せる、その後はなるようになれ、だ。
意を決して飛び出すと、同時に4体が一斉に反応する。
――遅いっ!
2体に対してツインブレイズを振るうと、ぱん、とあっけない音がして布の骸と化した。
やった――。
と思ったのも束の間、残った2匹が作り出だすは魔力スフィア。
近距離で発射された複数の玉をかろうじて躱すと、再び鉄製の棚の影に隠れた。
しかし、一度感づかれてしまうと動くに動けない。
――困ったな。どうしよう
スフィアを浮かべて、追撃体制を取っている2体に対して突っ込むのはかなり無謀だ。
ただでさえ打たれ弱い上に、服も汚したくない、1体居場所がわからない、では不利にも程があった。
試しにほんの少し顔を出したら、即座に発射されるスフィア。
慌てて顔を引っ込めると、2、3発が床に落ち煙をあげた。
相手が回りこんでくる気配はないが、自分からも動けない。
意地で切り込んでもいいが、被弾は避けられないであろう。
こんなときギンガさんだったら突っ切るんだろうなあ、そもそも逃げないかな、と考えつつ、策を巡らすがいい案は浮かばなかった。
とその時――突然、ディードの目の前に戦闘服姿のディードの幻影が作られた。
――え?何故?
幻影なんて作った覚えはなかったが、その幻影に殺到する魔力スフィア。
無論幻をすり抜けた球形の弾はもうもうと煙を上げた。
――今だ!
撃ちつくした感を感じ取った彼女は、本能的にその煙の中に突っ込み、そして躍り出た。
案の定、反撃する術を持たない2体は、一瞬で布の骸と化す。
やった、今度こそ。
と安心した瞬間、カウンターの中から特大の十字型のもこもことしたぬいぐるみが飛び出してきた。
しまった――後1体残っていた。
ツインブレイズをクロスさせて受け止めようと試みるが、吹っ飛ばされるのは目に見えていた。
「危ない!」
が――先にかっとんできたのは横からのドリルの一撃。
飛び込んできたのは深く青い長髪の女性。
「ギンガさん!」
小さなシールドを作って抵抗したぬいぐるみだったが、あっさりと割られる。
「おおおおおお!」
ぶす、とドリルが刺さったところでぬいぐるみは動きを止めた。
そのまま薙ぎ払うと、床に叩き付けられて、完全に沈黙する。
「全くどこにいったのかと思って探してみれば――怪我はない?」
「はい、平気です」
「それならいいんだけど……これは一体?」
「魔力反応があったから、ここに来てみたんですがふよふよと浮いていました。4体ほど片付けました」
「なるほど――元凶はなんだろう。――あ」
からん、と最後のでかいぬいぐるみから赤い小さな宝石が落ち、それをギンガが拾い上げる。
「これは――ジュエルシードの亜種……」
「ご存知なんですか?」
「うん。ベルカの過激派が時々使う代物なんだけど……何でこの世界でこんなものが」
2人で顔を見合わせるが、もちろん見当などつくわけがなかった。
「とりあえず、持って帰って報告しましょうか」
「はい」

 雑踏を駅へ向かって歩くと、ディードはふっ、と金髪のお下げの人とすれ違った。
顔だけ振り返ると、根元が白く緑色の先端が2つに割れた――ネギのぬいぐるみをくるくると回す背中が見えた。
(そっか、さっきの幻影を作ったのは――クアットロお姉様だったんだ)
意味合いに気づいて、彼女はそっと微笑んだ。


目次:〜ソラノカケラ〜・外伝
著者:どっかのゲリラ兵

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