753 名前:この青い空の下、手をつないで共に歩こう [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 19:44:27 ID:sgKx6NNY [2/9]
754 名前:この青い空の下、手をつないで共に歩こう [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 19:44:58 ID:sgKx6NNY [3/9]
755 名前:この青い空の下、手をつないで共に歩こう [sage] 投稿日:2010/05/30(日) 19:45:45 ID:sgKx6NNY [4/9]

この青い空の下、手をつないで共に歩こう


 身と心を苛む絶望に打ちひしがれながら、なのはが思い出したのは最後にユーノと過ごした時間だった。
 抜けるような青い空、陽光を浴びて輝く雲、どこまでも続く緑の草原。
 自分は彼と手を繋いで歩いた。
 それはデートとも呼べないような、少年と少女の淡い付き合い。
 まだお互いに告白もしていない、恋人になったわけじゃない、でもお互いに好意を抱いているのはどことなく察していた。
 いつか想いを告げて彼の恋人になれたら良い、そんな事をぼんやりと考えていた。
 でも現実は残酷で、あまりにも残酷で……今のなのはに、その過去は絶望的なまでに遠かった。


「ひぃ、あああああッ!!」


 少女の口から、悲痛な叫びが漏れた。
 だが彼女を陵辱する男たちは攻めの手を休めるどころか、むしろその声により一層の興奮を得て嗜虐性を増す。
 前に立ち、なのはの膣に己の陰茎をねじ込んでいた男は内臓まで貫通させん勢いで突き上げ、彼女の柔肉を味わい。
 後ろに立ち、肛門を容赦なく抉る男もまた同じく、あらん限りの力で突き上げて快楽を貪る。
 無論、そこになのはに対する考慮など欠片もない。
 男たちはただひたすらに己の法悦のみを求めて彼女を嬲っているのだ。
 本来なら愛する男に捧げる筈だった純血は、無残にも下衆共の手で蹂躙され尽くされた。
 だが、なのはに抵抗する術はない。
 彼女が持っていた愛用のデバイスは、撃墜された時に失っていた。
 場に満ちた特殊な魔力結合阻害フィールド、魔導師の力を封じるそれが、無敵のエースオブエースをただの少女と化していた。
 そして、ここにいる男達は何の抵抗もできないなのはを嬲り辱めても何の負い目も感じない外道ばかりだった。
 

「いぎぃ! あ、つぅいい」


 体内に注がれる灼熱に、少女が苦痛の滲んだ声を上げた。
 相手が妊娠するかどうかなど構わない、気にも留めない膣内射精。
 次いで後ろで菊座を貫いていた男も達し、陵辱の為に何度も洗浄されたなのはの直腸にどくどくと精を注ぎこむ。
 一体幾度流し込まれたのか、血と交じり合った白濁は泡を立てて溢れ出し、床にぼたぼたと落ちて幾重にも歪なアートを刻んでいた。
 なのはを陵辱していた二人の男は一度達し、彼女の中に進入させていた己の男根をずるりと引き抜く。
 途端、支えを失った少女は床に倒れ伏す。
 床に落ちた痛みより、ようやく終わった陵辱に心は平穏を感じる。
 が、それも一瞬だ。


「おい、なに休んでんだ?」


 言うや、後ろに控えていた別の男がなのはの髪を掴んで引きずり起こし、滾りに滾った己の肉棒を突きつけてくる。
 それも一人や二人ではない。
 男の脇には、少なくとも十人近い全裸の男達がギラギラとした欲望の眼差しを少女に向けていた。
 まだ始まったばかりの陵辱の宴に、なのはの思慮にまた過去への追想が過ぎる。


(ユーノ、くん……)


 それは自分が好きだった、いつか想いを告げたかった少年の事。
 そして、彼や友人と過ごした日々の事だった。





「うわぁああ!」


 ほとんど絶叫に近い声を上げ、ユーノ・スクライアは目を覚ました。
 彼を苛み覚醒を促したのは、かつて彼が愛した少女が地獄の陵辱の中で悲痛にのたうつ悪夢。
 あの日から延々と繰り返し見続けている、ユーノの心に刻まれた深い傷跡だった。
 シーツに包まり、青年は震える汗だくの裸身を掻き抱く。
 早く脳裏に蠢く悪夢の残影を消し去ろうと、ユーノは汗に濡れた金髪を掻き毟った。


「……ユーノ、大丈夫?」


 そんな彼に、傍らから澄んだ声音が不安げに響く。
 視線を向ければ、ユーノと同じく一糸纏わぬ裸身を彼と同じシーツに包んだ少女がルビーのような紅い眼差しを向けていた。
 

「大丈夫だよ……フェイト」


 そう言ってユーノは自分を案じる少女にぎこちなくも微笑みかけ、彼女の黄金の髪を優しく撫で梳く。
 彼の愛撫に、フェイトは主人に愛される子猫の風情で心地良さそうにそっと目を細めた。
 だがそれでも胸裏に湧き上がる不安、ユーノを想う健気な思いやりは消えない。
 愛撫の心地良さに身を委ねながらフェイトは彼の心に刺さった棘にそっと触れた。


「また、なのはの夢?」

「……」


 問いへの答えは言葉よりなお雄弁に肯定を意味する無言。
 彼のその反応に、フェイトは眉尻を下げた。 
 なのはがいなくなってから一日とてあの喪失の痛みがユーノの心から消えた事はない。
 少女の問いに痛みが喚起され、青年のエメラルドグリーンの瞳を涙が潤す。
 唇からは嗚咽を漏らし始め、ユーノは再び身を震わせた。
 そんな彼を、フェイトは優しく抱きしめてやる。
 まるで母親が幼子をあやすように。


「いいよ、私の胸で好きなだけ泣いていいよ」


 自分の胸に顔を埋めて涙を流す青年にそう告げ、彼女は静かに背中を撫でてやった。
 それは高町なのはが失踪してから三年たった今、半ば日常化した一つの光景だった。





 高町なのはは死んだ。
 正確に言うならば、失踪から三年が経ち死亡が認定された。
 受理された死亡宣告の書類を前に、フェイトは自分が涙を流さない事が少し悲しく思えた。
 でも、それは仕方がないのかもしれない。
 三年前、フェイトは出せる涙は全て流し尽くしたのだから。
 そんな時だった。
 送られてきた書類を手にして自宅のソファで沈痛な面持ちをするフェイトに、ふと後ろから声がかかる。


「フェイトママ、どうしたの?」


 振り返れば、オッドアイの瞳をした少女が小首を傾げてこちらを覗いていた。
 既にテスタロッサの姓を受けて一年以上経つフェイトの娘、ヴィヴィオである。
 ヴィヴィオに不安を感じさせまいと、無理矢理に笑みを作り、フェイトは微笑みかけた。


「なんでもないよ、ヴィヴィオ。ほら、もうすぐパパが帰ってくるんだから、ご飯の準備しよ」

「うん!」


 二人はそうして台所に向かうと、揃って夕飯の支度を始める。
 初めて出会った時から随分と成長したヴィヴィオは、慣れた手つきでフェイトの手伝いを行う。
 夕食の美味しそうな匂いが漂えば、それに釣られたように玄関から帰宅を告げる声が響いた。

 
「ただいまー」


 スーツ姿に眼鏡をかけた青年、ユーノ・スクライアが疲れた顔で帰宅する。
 台所の二人は笑顔を零して駆け寄り、一家の主を出迎えた。


「おかえりユーノパパー!」

「おかえりなさいユーノ。晩御飯できてるよ」

「うん、ありがとう」


 自分に笑顔を向けてくれるフェイトとヴィヴィオに、ユーノもまた笑顔で応える。
 そして三人は仲良くテーブルを囲み、共に夕食を楽しんだ。
 それは温もりだった。
 喪失の痛みを忘れるくらいの、幸せだった。
 高町なのはが任務中に撃墜されて失踪した三年前のあの日から、もう日常化しつつある光景だった。





 第二十三管理世界ルナ・アルマシ。
 管理世界と銘打ってはいるが、その実不安定な治安が混迷を極める危険な国家が乱立している。
 そしてここは、三年前に高町なのはが失踪した地域でもあった。
 当時彼女は時空管理局本局所属のとある一個中隊の教導件指揮官としてこの地に降り立ち、現地機関の要請により治安維持任務に就いていた。
 ほとんど犯罪組織と化した反政府軍から現地政府の高官を護衛する、なのはに取ってはそう難しい筈のない仕事だった。
 こちらの武装局員の数も十分だったし、訓練もよく行き届いていた。
 なにより、彼女自身の実力がずば抜けていた。
 だが、得てして予想や望みとは裏切られる運命にある。
 その日襲撃に駆り出された敵の手勢が尋常な数でなかった事。
 その日JS事件の後遺症である魔力発揮値の低下が酷かった事。
 その日敵の手にした武装の中に、犯罪組織に流れたガジェットとそれらが生み出したAMFがあった事。
 そして、現地政府治安機関の内部に敵の内通者がいた事。
 諸々の悪しき要素が同時に起こり、最悪の事態は起きた。
 部下を庇ったなのはは、敵勢力の放ったロケットランチャーの爆炎に飲み込まれ、堕ちた。
 後に残されたのは、半壊した彼女のデバイスとバリアジャケットの切れ端のみ。
 死体は発見されず、消息も不明……そのままなのはは行方不明扱いとなる。
 当時彼女と恋仲寸前だったユーノはその事に酷く打ちのめされ、一時はまともに仕事も出来ない状態が続いたという。
 そんな彼を慰め癒したのは、同じくなのはを失って傷ついていたフェイトだった。
 フェイトにとってもなのはは最も大事な親友であり、心に負った傷は同じく深い。
 同じ傷を持つ者同士二人は互いを慰めあい、いつしか深い関係を築く。
 いつかなのはがひょっこり戻ってくるのではないかと、期待と不安に駆られながらもユーノとフェイトはお互いを求め合った。
 そして先日、ついにその死亡が認定され、二人は正式に婚約した。
 大切な存在を亡くした二人は、その傷痕を礎に新しい絆と家族を築き上げようとしていた。
 時同じ頃、ルナ・アルマシの首都郊外、反政府組織の拠点となっていた廃ビルの現地政府の特殊部隊が突入した。
 目的は言わずもがな、テロリストの逮捕及び排除である。
 魔導師と通常歩兵の混成部隊は予定通り完璧な建物内クリアリングを敢行。
 抵抗する敵は容赦なく殺害し、投降する敵は捕縛した。
 敵勢力の全てを無力化した部隊は、資料確保の為に全ての階層の全ての部屋を捜索する。
 そんな中、隊員の一人が地下に続く隠し通路を発見した。
 トラップを警戒しつつドアエントリーし、内部を探索する。
 最奥部で見つけたのは、酷くすえた臭いのする一室だった。
 何人もの人間が入り乱れ、汗と精液と愛液が混ざり合った空気。
 乱雑に床に敷かれたマットの上には一人の女の姿。
 一糸纏わぬ裸体に付着した白い液体は、おそらく男の精だろう。
 彼女がここでどんな扱いを受けていたか、それは想像するまでもなく明らかだった。


「君、大丈夫か?」


 助け起こすと、女性は朦朧とする意識を覚醒させ、隊員の顔を見て目を見張る。
 自分が救出されたのだと認識し、驚いているのだろう。
 隊員は自分の防弾ベストを女性の身体に掛けながら、質問した。


「君、名前は? この国の人間か?」

「わたし……わたし、は……」


 血色の悪い唇がわななき、呟くような声音で彼女は答えた。


「高町、なのは……時空管理局の局員、です」


 高町なのは、と、彼女は告げた。


 ユーノの見た悪夢と寸分違わぬ地獄の中を生き抜いたなのはの帰還。
 かくして運命は回りだす。
 喜劇のように悲劇が歌う、残酷な戯曲が今始まろうとしていた。

 

続く。


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目次:この青い空の下、手をつないで共に歩こう
著者:ザ・シガー

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