[455]さばかん つかいまなのなのは1<sage> 2007/03/18(日) 20:36:38 ID:b3xBQWj/
[456]さばかん つかいまなのなのは2<sage> 2007/03/18(日) 20:37:49 ID:b3xBQWj/
[457]さばかん つかいまなのなのは3<sage> 2007/03/18(日) 20:39:12 ID:b3xBQWj/
[458]さばかん つかいまなのなのは4<sage> 2007/03/18(日) 20:40:28 ID:b3xBQWj/
[459]さばかん つかいまなのなのは5<sage> 2007/03/18(日) 20:41:18 ID:b3xBQWj/

 前回のお話。
 時空管理局から逃げ出したフェイトだったが、武装局員に見つかってしまう。
 追い詰められたフェイトを助けたのは、なんとはやてだった。
 なんか適当な魔法を駆使し、どうにか窮地を逃れるのだった。
 今回は、その少し前の話。

 ユーノに最後の一撃が落とされる。
 元々傷だらけの体に大きな傷が刻まれる。
 血はゆっくりと、だが、確実に地面に広がり、床を赤に染めた。
 クロノは乱暴に冷たくなるユーノの体を放り投げた。
 どすっ。ユーノの体はピクリとも反応しない。
「適当な場所に捨てておいてくれ」
 適当な武装局員に声をかけたクロノは、たったいま起き上がったなのは
を見つめていた。
「腐ってる」
 なのはの声は、子どもとは思えない。怒りの感情に支配されたものだ。
 身震いする程の殺気をクロノは平然と受け流す。
「何が腐ってるのか・・・教えてもらおうか」
「彼を・・・ユーノくんを殺す必要は無かったはず。それをっ!!」
「甘い意見だ。勝利を確定するには相手を殺す。それだけの事だろう。
特に殺し合いとなれば尚の事。背中を向けた瞬間、人生が全て終わるなんて
事が当たり前にある。・・・これは当然の行為であり、礼儀だ」
「礼儀?」
「彼を真の漢(おとこ)と認めた。と言うことだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 暫く黙ったなのはだが、
「ねぇ、クロノくん知ってる?恋は乱暴に言えば3パターンに分けられるって
お前の望んでる『お手軽』なのとどっちでもいい『ノーマル』と最後の一つ
はお前なんかに教えて、あげな〜い!!!!!!!」
 突然消えたかと思うと低く屈んだなのはがクロノにハイキックを当てようと
するもかわされる。
「『ジレンマ』とは・・・随分マニアックな歌を。だが、不意打ちに関して言えば
0点だ。僕はこの拳を武器にすると決めた日から、一度も気を抜いた事が無いんでね。」
 クロノはゆっくりとなのはの元に歩き出し、
「僕が不意打ちのなんたるかを教えてあげるよ」
 段々と距離は縮まり、なのはの体が緊張で満たされる。
「なのは、知ってるかい?恋は乱暴に言えば3パターンに分けられる。お前の
望んでる『お手軽』なのとどっちでもいい『ノーマル』と後のひとつは、」
 クロノの体が肉薄し、距離がゼロになる。
 さあ、どこから来る?蹴りか?肘か?膝か?拳か?
「お前なんかに教えて、」
 来る!
「あげな〜い」
 クロノはそのままなのはの横を通り過ぎる。

 ただ、それだけだった。

「え?」
 なのははクロノの方に振り向くとクロノは薄く笑っていた。
「どうだ?精神的に大ダメージ(はあと)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあああぁぁあ!!!!!!!!」
 拳と蹴りの連撃をクロノは全てかわす。
「あちゃーなのはちゃんすっかり挑発されてるなー」
 遠くから見ていたはやてが呟く。
「だねー。ってか何?さっきの心理戦っぽい奴」
 とエィミィ。
「まぁまぁ、たまにはそんなこともあるって」
「そー言えば私達、敵同士のはずなのに妙に親しげ・・・これで、いいのだろうか?」
 困ったエィミィにはやてが大丈夫と肩を叩く。
 そのほのぼのとした場面から少し離れると殺気の海が広がっていた。
「ふっ!」
 なのはの高速の拳が飛ぶ。鳩尾を狙うそれはしかし、
「・・・・・・・・・・・・・・・甘い」
 あっけなく体を横にしてかわすクロノに体を横に回転させながら一歩詰める
という器用な技をこなしながら裏拳、後頭部に当たるはずだったが、それも後にかわす。
素早く肉薄し、なのはの左肘がクロノを襲う!!!
 しかしそれも首を傾けかわしたかと思えば、なのはのバリアジャケットを掴み、脳天から
地面に叩きつける。柔道もへったくれも無い、純粋な力技である。
 ごんと生々しい音がしたのと同時にクロノは手を放す。
 なのはが脳天を軸にして蹴りを放ったからだ。
「脳天直撃で速攻とは・・・随分と丈夫で」
「いたた〜。コブできるよコブ」
 コブができる位ではすまないと思うが、例外はどこにでもあるものだ。
(しかし、どうもおかしい。幾ら動体視力がいいからといってあそこまでギリギリまで引き付けて
かわす事をそう簡単にできるとは思えない。しかも、反撃したのは唯一隙のある攻撃だった。)
 出来すぎていた。綺麗過ぎた。戦闘とは計画通りにいかないと経験で分かっていたなのはは、クロノの鮮やかな体裁きに疑問を抱く。
 だが、そんな疑問をほっとくように、さっきまでの硬かった表情が消え、クロノは笑い出した。  
「くっ、あはははははは!!!!!!!!!!!滅茶苦茶だな君は。ははははははは!!!!」
「え?」
「ははははは、は。いや、君の滅茶苦茶さには慣れてるつもりだったが。
なのは、矢張り僕は君の事が、
                   好きだ!」 
「えー、そうなんだ・・・え?・・・えーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
「なんか告ってるよクロノくん」
 ついていけないという顔のエィミィ。
「あー・・・意味不明や」
 はやては傍観を決め込む。
「?何がおかしい。 好きっていうのは人間としてだ。君にとって僕はたった数回しか合っていない他人だろうが僕は違う。君の戦闘を全て見ている」
「・・・真坂」
 さっきすべての技をかわされた違和感の鍵穴に発想の鍵が突き刺さり、廻る。
「そう、君の攻撃パターンは全て把握している。人にはすべからく癖というものがある。
その癖を覚えてしまえば・・・君の攻撃を全てかわすことも容易い。
 僕は色んな人の動きを暗記してきたが・・・君ほど真っ直ぐな拳は見たことが無い。
 心から君が好きだ」
 はやてがエィミィに訊ねる。
「なんて言っとるけど、そんな事ができるん?」
「できるよ。呆れる程の時間と鍛錬をついやすれば。
クロノくんはね、自分の事を過小評価してるんだ。自分には才能が無い。特出すべきところもない。
 凡人に出来ることはひとつ・・・努力を重ねる事。そう考えたクロノくんは誰よりも訓練し、誰よりも
食事に気を遣い、誰よりも確実に敵を倒す事を考えた。考えた結果が、あれさ」
「敵の癖を、暗記する」
「そう。クロノくんはなのはちゃんの戦闘を機械に記録させ、癖を見抜くため仮想戦闘を繰り返した。
 クロノくんの師匠は一度覚えたことを彼は忘れないと言ってたけど、それは違う。
 忘れたさ、何度も。ただ、彼は凡人ではありえない程繰り返す。だから覚えているんだ。
彼は凡人なんかじゃない。れっきとした大天才だよ」
 彼女の言う大天才はオーバーだと思ったはやてだったが、エィミィの自信にあふれた表情を盗み見して
それがはったりでないと感じる。
「好きって言われて嬉しくない女の子なんていないよ・・・でも、」
 なのはは足を少し浮かせて
「場をわきまえないと!」
 ど〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!
 なのはが地面を強く蹴る。頑丈な床に穴が大きく穿たれささくれ立ち、周りには瓦礫の山が出来ていた。
 クロノのダメージといったら飛んできた砂塵くらいだ。
 なのはは大きく跳躍し、再び地面を蹴る、また跳び地面を蹴る。ただ繰り返す。
その度に砂塵がまかれ、クロノの視界を封じる。
(成る程、僕の回りの地面を蹴っているのは砂塵で視界を封じて撃つ為・・・がっかりだよ
あまりにも拙い考えだ)
 クロノは目を瞑り、神経を集中させる。
(空気の流れが分かれば、どこから攻撃されるか予測するのは容易い)
 空気の流れが変わる。
 なのはの跳び蹴りを横にかわすクロノ。だが、それがなのはの狙いだと気付いた時にはもう遅かった。
 裁いた足は地面につかず、クロノはバランスを崩して転ぶ。その間、なのはの拳がクロノの腹に直撃する。
「ぐあっ!!!」
 どうにか腕を使い、体制を立て直す。視界が晴れ、なのはの目的が見える。
 地面がボコボコでささくれ立ち、マトモに歩ける状態ではなかった。
(ちっ、これではまともにかわすことができない)
 地面が劣悪になり、バランスを保つのがやっとのクロノにお得意の体裁きはできない。
 しかし、なのははバランスを崩さず突進し、クロノの頬をぶん殴る。
 ふら付いたクロノに鳩尾を打ち、脇腹に渾身の蹴りを放つ、更に蹴った足を軸にして体を捻り、耳に
裏拳を打つ!!!!
「あっ!!!」
 跳躍し、一定の距離を保つクロノは必死に劣勢なこの状況を思考し、打開しようとする。
(ちっ、左の耳が聞こえないし呼吸もしにくい。しかし、何故こんな劣悪な床でマトモに歩けるんだ)
 なのはの足元の地面を見るとそこには大きな穴が穿たれている。
 なのはは、劣悪な地面を踏み潰していたのだ。
(なんつーばか力。だが、冷静に考えれば!)
 再び大きく跳躍し、まともな地面に飛び移る。
「残念だったな。ここは広いから広範囲の床を崩すことはできない。しかもここのは丈夫でね、君も
強化に相当の魔力をついやしたはずだ」
「くっ!だああああああああああああああ!!!!!!」
 突進し、再びクロノに拳を打ったなのはだが、かわされ、クロノの魔力のこもった手が腹に優しく触れる。
「ブレイク、インパルス!!!」
 瞬間、鋭い爆音が響き、なのはの胴を鮮血で染める。
「ぐああああああああああああっ!!!!!!!!!!!」
 なのはは倒れ、クロノはその刹那の過程を見つめた。
「なのはちゃーん!!!!!!!あっ、そ、んな。あんなに強いなのはちゃんが、負けるなんて」
 はやての絶対の自信が瓦解し、青ざめた表情が心をそのまま映す。
 だが、それと同じ位の絶望が、床を崩す。
「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」
 クロノは床を殴りつけるを膝をつき、慟哭する。
「君なら!君なら絶対に崩せると思った!!こんな矮小な、卑怯で汚らしい、技とも呼べないものを
僕は、君に勝てないから、君の拳を、汚した!!!!!!!!!!!」
 クロノはそう思っているようだが違う。エィミィがさっき言った通り、彼は自分の事は過小評価しているだけだ。
 クロノは床を数回殴り、起き上がる。
「・・・すまない、君にも、なのはにも」
「勝ちは勝ちや、でも、自分で納得してないならそれは勝利と呼べるんやろうか?」
 絶望したはやても少し落ち着いていた。クロノの嘆きを聞いたからである。
「・・・微妙かもな」
 薄く笑って答えたクロノは咳払いをし、話を変える。
「さて、なのはは倒れ、残るのは君だけだが・・・抵抗するかい?」
 はやては静かに首を振る。
「そうか、君はジュエルシードを良く集めてくれた。本来教える必要は無いが、報酬を払うのが
雇い主の義務だ。
 訊ねるが、君がジュエルシードで望みたかったのは、なんだった?」
 突然の問いかけ。それは既に訊ねられ、答えた記憶があった。
「家族を、生き返らせる」
「ジュエルシードにそんな力は無い。あるとしてもそれは一時的なものであって無いに等しい。
 ジュエルシードに衝撃を加えると次元断層が起こる、それを利用して上は消したい世界があるらしい」
「そう、でもそれしか道が無かったから・・・」
「ユーノに誤情報を流し、集めさせたのも僕だ。後一つ・・・これは本来教えてはいけない事なんだが・・・
君は記憶を喪失している」
「え?」
 以外な言葉に呆けた声しか出せない。
「君は過去に犯した過ちを自ら封じ、記憶を都合よく改変した・・・偽りの記憶で死ぬのはイヤだろう」
 そう言ってはやてに魔術を施す。
「記憶を取り戻すのは辛いだろう・・・だが、世界はこんなはずじゃない事ばかりで、だれだって
悲しみを背負う!」
 クロノははやてが自ら施した魔法陣を破壊し、自分の記憶も加えてやる。
「これで前よりもその状況がよく見渡せるはずだ」
 はやては記憶を段々と取り戻し、涙を流し、叫ぶ!!!!
「ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
 蹲(うずくま)り、恐怖から逃れようとするはやての叫びに、白い魔法使いは目を覚ました。
つづく

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目次:つかいまなのなのは
著者:さばかん

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