837 ヴィヴィオの誘拐(?) 後編(1/7) sage 2008/04/25(金) 23:43:30 ID:3lnrKagj
838 ヴィヴィオの誘拐(?) 後編(2/7) sage 2008/04/25(金) 23:44:57 ID:3lnrKagj
839 ヴィヴィオの誘拐(?) 後編(3/7) sage 2008/04/25(金) 23:46:04 ID:3lnrKagj
841 ヴィヴィオの誘拐(?) 後編(4/7) sage 2008/04/25(金) 23:47:05 ID:3lnrKagj
842 ヴィヴィオの誘拐(?) 後編(5/7) sage 2008/04/25(金) 23:48:10 ID:3lnrKagj
843 ヴィヴィオの誘拐(?) 後編(6/7) sage 2008/04/25(金) 23:49:03 ID:3lnrKagj
844 ヴィヴィオの誘拐(?) 後編(7/7) sage 2008/04/25(金) 23:50:25 ID:3lnrKagj

ヴィヴィオが誘拐されて監禁されている部屋(ヴィヴィオ本人は全くそんな事は思っていないが)

「ねえ、おじさん」
ヴィヴィオが暇をしないように、誘拐犯(兄)はどこからか持ってきた大量の童話を読んでいたヴィヴィオが言った。

「頼むから、お兄さんって呼んでくれよ。俺まだ26なんだけどよ」

「トイレ行ってもいい?」
「ああ。こっち女の子は奥だからな。案内するぜ」

そういって扉を開け、ヴィヴィオは廊下に出た。歩いている途中に建物を見回す。

建物は木造りで粗末ではあるが、最近、補修がしっかりされた跡があり、長年大事に使われてきたのがわかる。
廊下の窓から昼下がりの木漏れ日が零れ落ち、すっかり秋だというのに日だまりができて非常に暖かい。

そして用を足して廊下を戻っていると不意に子供たちが現れた。

「あっ〜、ドンタコスのアニキその子誰だよ?」
「かわいい女の子〜」
「もしかして新しい仲間?」

詮索される事であせったのか話題を変えた。
「お、おい、お前ら今日の夕食当番だろ!!」

「でも毎日裏の畑の野菜じゃ飽きちゃうよ。母ちゃんはもっとおいしいもん作ってくれたのに・・・」
「母ちゃんいないんだからしょうがいないよ。アニキも給料少ないし」

「でも昨日言ってたじゃん『もう少しでお金が手に入る』って。そしたらおいしいもん食えるって!!
『あいつら』も2度と来なくなるらしいし」

「お金・・・?」
ヴィヴィオが不思議そうな顔をすると、あせったのか不意に声をあげた。

「ほら、さぼってないでさっさと行きやがれ!!」
「は〜い」
「ふぅ、すまねえな。騒がしくて」
「おじさん、ここって学校?」

「いや・・・孤児院なんだ。俺もムーチョもここで育った・・・でも2年前に母ちゃん、いやここの孤児院の院長が
亡くなっちまってよ。管理してるのが俺らみたいなチンピラだから色々と大変なわけよ」

そんな事をヴィヴィオに言っていると

「ドンタコスのアニキー!!!!!!」
「おっ、ムーチョのやつ帰ってきたか」

「ママ・・・その子のママ・・・」
「ママがどうした?というか何だよ、そんなこの世の終わりみたいな顔してよ」

2人が話しているとヴィヴィオは泣きそうな顔になって、こう言った。
「おじさん・・・ママいないんだ」
「お、おい気にすんなって!!」

「ヴィヴィオもね、最近までママいなかったの。今のママが私のママになってくれたの」
「嬢ちゃん・・・孤児だったのか?」


「ママがいて私本当に嬉しいし、感謝してるんだ・・・」
「・・・」

ヴィヴィオの言葉を誘拐犯2人は黙って聞いた。

「ママがいなくなったら・・・本当に悲しい。おじさん達もママがいなくてさみしかったら
困っていたらヴィヴィオ、おじさん達を助ける!!」

「嬢ちゃん・・・」



そして誘拐犯(兄)の方はヴィヴィオに言った。
「・・・嬢ちゃん、もうそろそろ家に帰る時間だぜ」

不意にそう言われて
「えっ?もう?ママの仕事もう終わったの?」

「ア、アニキ!?」心変わりに弟は驚いた。
「お前もいいな」

「あっ、ああ。早いとここのコのママが気づく前に、そうしないと俺たち!!」
「何、無意味にあせってんだよ。それじゃあ行くか」
「あの、おじさん!」

「お兄さんだ!!まあそれはいいとして、どうした?またトイレか?」
「あのね」

そう言ってパタパタ監禁されていた部屋へと戻り、一冊の本を持って戻ってきた。
「これ持っていっていい?」

ヴィヴィオは先ほどまで読んでいたウサギの童話だ。

「ああ、もう、ここの孤児院のガキ達は読み飽きたみたいだしな」
「ありがとう!おじさん達本当にいい人、ヴィヴィオ大好き!それじゃあ」

ヴィヴィオは玄関へ行くと、誘拐犯たちの方を向いてペコリとおじぎをしてこう言った。
「ありがとうごいざいました。お世話になりました」


そんなヴィヴィオを見て誘拐犯(兄)はつぶやいた。

「お世話になりましたか、誘拐した子があんなイイ子でよ。悪い事ってのはやっぱできないように
世の中なってんのかな?」
「アニキ・・・」

すると孤児の一人が玄関から飛び込んできた。
「大変だ!!あいつらが、借金取りが来た!!」



誘拐犯とヴィヴィオが表に出ると、巨大なブルドーザーがエンジンをうならせて止まっていた。
ブルドーザーの巨体が夕闇に不気味にそびえたっていた。

借金取りは叫んだ。
「おい、ガキ共!さっさとここを出て行け!もうお前らのババアの親戚から今日中にここを明け渡す契約結んでるんだよ!」

そんな借金取りを見て誘拐犯(兄)舌打ちした。
「ちっ、タイミングが悪すぎるぜ」

そう言って誘拐犯は側にいた孤児にこう言った。
「おい、そこのお前ら、そこの女の子を安全なところまで逃げろ」
「あっ、アニキたちは?」

「俺たちはここを守る。大切な母ちゃんの孤児院だからな」

そしてヴィヴィオの方を向いて言った。
「嬢ちゃん、本当にすまなかったな。こんな事になっちまってよ。こいつらがママのところまで送ってくれるぜ。それじゃ
ママのところに戻ってもイイ子でな」
「おじさん・・・」

ヴィヴィオは誘拐犯を見ると、ブルドーザーに向かって歩いていった。
「お、おい嬢ちゃん?」

そしてヴィヴィオは孤児院とブルドーザーの間に立ってこう言った。
「ねえ、おじさん達もみんなも困ってるの。それにみんなもおびえている。やめてください」

そんなヴィヴィオに対して借金取りは
「何だてめえは?誰に向かってモノ言ってるんだ?」
「お願いします、私、おじさん達やみんなを助けたいから」

そうしてヴィヴィオは借金取りに頭を下げた。
「へっ、最近の孤児院のガキはしつけもなってねえな。かまわねえガキごと孤児院をやっちまえ!!」

そう言ってブルドーザーはヴィヴィオに向かっていく。

「「嬢ちゃん!」」
誘拐犯2人はそう叫んだ。



そうしてヴィヴィオは言った。
「ママが・・・やったようにやれば!!」

そうして眼を閉じてなのはが砲撃魔法をくり出す様を思い浮かべる。そしてヴィヴィオの足元に虹色の魔方陣が展開され
ヴィヴィオの周囲に虹色の光球が4つ出現した。

同時にブルドーザーは巨大なプロテクションに阻まれ、エンジンを全開にしているにもかかわらず、後ずさりを始めた。

「いけぇぇぇ!!」

ヴィヴィオの声と共に4つの小さな球が放たれた。球は高速で向かっていく。
そしてブルドーザーを拘束していた、プロテクションは不意に解除され、ブルドーザーは真正面から球にぶつかる格好となった。

そして小さな球は無数にはじけて拡散し、ブルドーザーの巨体にぶち当たった。

その威力はすさまじくブルドーザーの巨体を軽々と吹き飛ばし、まっすぐに借金取りのほうへ落ちていく。
「うわぁぁぁぁ!」

絶叫する借金取りにブルドーザーがぶち当たり孤児院の空き地で大爆発が起こった。

「あっ・・・やりすぎちゃった・・・」
テヘっと頭に手をやってヴィヴィオは舌を出して、呆然とする誘拐犯2人に振り向いた。
その光景を見て誘拐犯は腰を抜かし、こうつぶやいた。

「じょ・・・嬢ちゃん、魔導師だったのか・・・」
「は、はは・・・さすが、魔王の娘だ・・・俺たちやっぱとんでもないコを誘拐してたんだ」



数時間後、近隣の住民からの通報で、管理局の魔導師たちが現場を囲んでいた。

「前からお前らをマークしてたんだ。ずいぶん違法な取立てをしていたようじゃないか!!」
「今回は丁寧に偽の契約書も作ってるとはな・・・」

そう言って局員は無傷の借金取り(ブルドーザーがぶつかる寸前、ヴィヴィオが自然と相手に防御魔法を張っていた)
は引っ立てていった。

そして奥から「ヴィヴィオ!!」と叫ぶ声が聞こえた。
「ママ・・・ママ〜こっち〜!」

教導官という魔導師最高峰の資格を持つもの。誘拐犯(弟)はどんな屈強な女傑が出てくるものかと思っていたが
やじ馬をかき分けてやってきたのは。若い女性であった。

自分達よりも年下、10代くらいに見える。非常に美人である。
想像と違って驚いていると、現場を指揮していた隊長が駆け寄ってきた。

「高町教導官、この2人がヴィヴィオさんの側にいました」
そして隊長は部下に2人を連れてこさせた。
「あなた達は・・・?」

隊長は部下に合図をし、明らかに2人を捕縛する用意をしていた。

孤児達も自分達が慕う兄達を不安そうに見守る。

なのはの問いに、誘拐犯(兄)は申し訳なさそうにこう言った。
「俺たち、実は・・・」


「いい人なの!」
誘拐犯の言葉をさえぎってヴィヴィオは言った。

「おじさん達ね、ヴィヴィオとずっと遊んでくれたの!それにね、ここの孤児院のみんなのパパなの」
「そう・・・なんだ・・・」

そしてなのははヴィヴィオの眼を見て、言葉を聞き、そして2人を見た。

2人は背中に冷や汗を走らせる。
「よくも私の娘を!!」そんな言葉が帰ってくると思いきや。

「ヴィヴィオが大変お世話になりました」
「「えっ?」」


誘拐犯と周囲の管理局員は驚いた。

「娘も本当に楽しかったと思います。私が忙しいばっかりに2人に迷惑をかけてしまって。それにこの子を喜ばせる事なんて
頑張って毎日母親をしている私でも難しいですから」

「教導官!こいつらは明らかに!」
隊長が何かを言いかけようとするが

「まっ、そういう事だ。僕らの心配も杞憂に終わったという事だよ」
不意に隊長の背後で声がした。気配を全く感じさせない声の主はヴェロッサであった。

「偶然にも指名手配中の借金取りも逮捕できたんだ。無駄足でなくて良かったじゃないか、それに実際、教導官殿もそう言っているわけだし」
「むぅ・・・」


「娘がこの人たちがいい人というのなら、私は信じてもいいと思うんです」
「ママ・・・」
「ヴィヴィオのお母さん・・・」
この人はわかっている。自分達が何をしようとしていたのかわかっているはずなのに・・・


そんな2人になのはは優しく微笑み言った。

「色々大変なこともあっただろうけど、でも、2人ならこれからも立派にパパをつとめていけるはずです」
なのはの視線の先を誘拐犯たちは振り返った。奥には孤児院の子供たちがいた。

誘拐犯たちはなのはに頭を下げた。

「それじゃあ、ヴィヴィオ帰ろう!!フェイトママも、ユーノ先生も、みんなも待ってるんだよ」
「うん!!あっ、おじさん、この本借りていってもいい?」

「ああ、いいぜ。みんな読み飽きたみたいだしな」

「じゃあね、おじさん!また来るね〜」

そうして2人の親子は夕焼けの中に消えていった。

end



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目次:ヴィヴィオの誘拐(?)
著者:44-256

このページへのコメント

感服いたしました。なかなかこのような話に触れることがありませんので……。

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Posted by 時代遅れの追随者 2009年10月06日(火) 23:55:50 返信

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