406 或る執務官と騎士の系譜 sage 2008/03/29(土) 02:45:24 ID:QSPD5nKw
407 或る執務官と騎士の系譜 sage 2008/03/29(土) 02:46:01 ID:QSPD5nKw
408 或る執務官と騎士の系譜 sage 2008/03/29(土) 02:46:34 ID:QSPD5nKw
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414 或る執務官と騎士の系譜 sage 2008/03/29(土) 02:50:26 ID:QSPD5nKw

彼女のようになりたいと、心から願った。

物心ついた時には、仕える者としての生き方が身の上に在った。
そのような人生に、とりたてて何某かの不満を抱いているわけではない。

仕えるべき主は、心より尊敬できる騎士であったし、
待遇に不満も無く、手間のかかる弟分とともに、日々穏やかに過ごす。

― 音もなく匂いもなく智名もなく勇名もなし。

そのような境遇に通じる所があったせいだろうか。

色々と不躾な対応、不穏な視線の飛び交う教会の只中で、
微塵も臆する事無く凛と立つ、その濃緋の騎士に魅かれたのは。

― 夫れ忍の本は正心也。忍の末は陰謀佯計也。

その人が、幼かった私を見て時折、誰かを思い出すような素振りを見せる事があった。
聞けば、以前より交友の有る若き剣友と、歳が近いせいだなと答える。

音に聞く、不屈の名を冠する若きエースの親友で、その性質は真逆に在ると言う。
幾度折れようと必ず立ち上がる、強く、気高い魂の持ち主であると語る。

フェイト・T・ハラオウン

永きを渡る騎士シグナムをして、生涯唯一振りの刃と言わしめた存在。
知らず覚えた嫉妬という感情に、僅かばかりの驚きを得た。



『或る執務官と騎士の系譜』



世界が閃光に満たされて、鼻先を魔力刃が掠めて通り過ぎます。
軽く視界を眩まされ、蹈鞴を踏んで距離をとりました。

物見に集まっていた修道会、騎士団の面々の、畏怖とも、呪詛ともつかぬ感嘆の声が聞こえます。

聖王教会敷地内の野戦場、小さく、四角に区切られた練武の場に立つ姿は二つ。

光刃なる大剣、バルディッシュ・ザンバーを構えるミッドチルダの魔導師に相対するは、
双剣たる旋棍、ヴィンデルシャフトを携えた自分、修道女シャッハ・ヌエラ。

翻る外套、身を包む黒衣、風に流れる金髪、「黒の死神」「金の閃光」などと、数多の異名を持つ、
フェイト・T・ハラオウンと、決闘紛いの模擬戦を行っているのには、些かに理由があるのです。

それは新暦71年、レリックと名付けられた遺失遺産の回収の折、幾つかの穏やかならざる騒動の、
顛末の事後報告を兼ねて本日、騎士シグナムが教会を訪れた事に端を発しました。

端的に言えば、騎士シグナムが面通しを兼ねて伴ってきた金色が、視界に入った瞬間に思わず、
およそ今までの人生に比類なき速さで、その顔面に手袋を叩きつけて、以下略、来ました。

のんびりと考え事をしている隙はありません、間を外したら一息に斬りつけて、剣撃数合。
探りでも入れているのかと、軽く振るわれる剣閃に合わせるように、左棍を回し、刃を鳴らします。

認めません、文鎮を入れた手袋を顔面に受けて、あぅ、とか可愛く言われても認めたくありません。

見れば構えはネーベンフート、刃を後ろに流した下段の脇構えから、
身を引きながら放たれた切り上げの斬撃が、ヴィンデルシャフトの弾撃を弾き、

互いの挟間にある大剣の間合い、須らくを占有されました。

後日談になりますが、

ネーベンフートからの水平、切り上げの斬撃は後に、フェイト葬らんと呼称され、
週に一度のペースで無限書庫司書長を本棚に叩き込むために使用されているそうです。

ともあれ振りぬかれた魔力刃の、終になる形は左のオクス。

刀身は眼前、柄を持ち上げる両腕が頭の横で交差され、切っ先が私の顔面を狙ってきます。
たしか、牡牛の角を連想させる剣勢が名の由来です。

一拍、オクスより放たれたは刺突ではなく、外に弧を膨らませた剣閃、逆袈裟の斬撃。
私のヴィンデルシャフトには鍔が無く、ならば受ける事は難しいとの判断でしょうか。

油断が見えました。

受けます、下から右の刃を打ち上げてあわせ、双剣を交差、左の刃を鍔に見立てて、
剣閃に逆らわず、下より横に滑らせるようにして、刃の上をとります。

鍔が無いなら作れば良い、油断につけこむように大剣を絡めとり、一息に踏み込めば、
顔面が触れ合うほどに間合いを詰め、遅ればせながら気が付きました。

受けたはずの刃に、力が無い。

まるで、シーソーの片端に力を入れているように無抵抗に、ザンバーと呼ばれた光刃は、
右手を支点として下げられて、刃の上を取り返され、交差した双剣が鍔元に押し込められて、

刹那、視界に整った顔立ちと金髪が流れ、鼻先を掠めて通り過ぎるとともに、衝撃。
捩じ首に似た、左の柄尻による打撃、握りこんだ拳に首筋を強打されて、吹き飛ばされました。

咄嗟に蹴撃を入れますが、飛ばされながらでは威力は期待出来そうにありません。
それを裏付けるかの如く、即座の追撃は下段、ネーベンフートからの水平撃。

あわてて飛びのいて、間合いを広げました。

峰刃による刺突めいた斬撃に、飛び退いて、刃流れ、刃を返さず主刃による斬撃、さらに飛ぶ、
腕の交差で刃を返し、逆袈裟に曲斬り、飛び退く、そのままに昇撃、飛び退けば後がありません。

流水の如く鮮やかに、構えから構え、連撃を繋げる技量に内心で舌を巻きます。
認めざるを得ません、油断をしていたのは、私でした。

切り上げて、交差した腕は頭の横、今度は右のオクス、では無く、
アインホルン ―― その角は牡牛ではなく、切っ先を斜めに天を突く、一角獣の構え。

間を置かず繰り出された一撃は、刃を翻し、軽く外に膨らむ袈裟の斬撃。
考える間もあらばこそ、踏み込み、腕に沿わせた右刃で受けます。

踏み込みとともに刃を滑らし、鍔元の上を取ってカウンターを狙う、までを読まれましたか、
斬撃の弧がやや強く、縦に斬るよりも横に打ち払うかの如くに振り払われる、はずなので、
刃の下にもぐり左でカウンターをとる、のを見透かされ、蹴りつけるような強い踏み込みで、
受けた刃が一息に鍔元まで捻じ込まれ、押し倒されるような形で斜めに吹き飛ばされました。

ベルカの闘士がミッドチルダの魔導師に、近接の読み合いで不覚をとる。
理不尽ではありますが、身を捩って転げまわるほどの屈辱です。

いや、実際に身を捩って転げて逃げまわっている最中なのですがね。
とは言え、屈辱に浸っていては勝機を逃します、冷静に思考しましょう。

これだけ受ければ間違えようはずもありません、あれは確かにベルカの剣です。

斬撃のために振るわれる刃は、時として私の攻撃を打ち返し、弾き、距離を詰める事を許しません。
踏み込みは常に剣閃と軸を違え、回避するがために剣を振るい、剣を振るうがために回避をします。

それは、カートリッジすら無い時代に産声をあげ、その大部分が失伝されて久しい稀有の技法。

アルターリッターリヒクンスト ―― 即ち、古きベルカ騎士の剣技。
察するに、騎士シグナムから手ほどきを受けたのでしょう。

嵐の如き連撃が周囲に吹き荒れました。

身も世も無く避け続け、避け続け、時として魔力を帯びた一撃で打ち返せば、
即座に尋常でない速度の斬り返しが襲い掛かってきます。

刃を重ねて上下を取り合えば、容易く押し込まれ、飛び退いて逃げて、逃げます。

良い所無しでこう判断すると、まるで自惚れの如く聞こえてしまうのが悔しいのですが、
近接戦闘での実力は伯仲しています、いや本当です、信じて。

管理局の結界の中に無策で飛び込む、剛毅な性格の騎士様のおかげで誤解されがちですが、
古来、ベルカの戦技は防御と回避を念頭において組まれていますので、逃走も立派な技術です。

ではなく、伯仲しているが故にデバイス、魔力刃による大剣の最大の利点、遠心力の軽減、
軽量故の異常なまでの斬り返しの速さの前に、打つ手が無いという事態が生じています。

ただでさえ大剣と旋棍では間合いが不利だというのに、なんですかあのデバイス、チート?

結論として、近接戦闘では圧倒的に不利と出ました、笑えません。
逃げます、逃げの一手です、せめて考えが纏まるまでは距離を取らなくてはなりません。

雨霰と射撃魔法が降り注いできました。

何か物理法則を勘違いしているような速度で迫る光弾を、足を止め双剣を振るって打ち、砕き、
悉くをなぎ払ってみせた所、呑気な観客たちから拍手と感嘆が、うわぁすごいムカつきますよ。

金色馬鹿も驚いたのか、何か呆れた風味に固まっていて、いや、呆れたいのは私です。

とはいえ中距離、今回は想定外ですが遠距離での魔法戦、考えるまでも無く勝機は皆無です。
ベルカ式の練武場は狭いので何とか凌げていますが、ミッド式ならば瞬殺されかねません。

聞いた話、騎士はやてと二人のコンビで、管理局のトリガーハッピーズとか呼ばれているとか。
F&Hトリガーハッピーコンビネーションは、秒間512発の射撃魔法を実現すると聞きます。

正直、想像も出来ない世界です、無茶にもほどが有ると思いませんか?

ならば残るは、ゼロ距離、近接格闘に勝機を見出す他に無く ――

うわ突っ込んできた貴女、本当にミッド式の魔導師ですか!?

足止めを期待した牽制で旋撃、刹那に握りをゆるめて放つ回転撃で上段に打ち込めば、
王冠、切っ先を下げた刃を掲げるように持ち上げて、弾かれ、即座に反撃が飛んできます。

下げた切っ先を持ち上げるように突き上げる、刺突、過たず顔面を狙い、浮いて、
咄嗟に海老の如く反らせた身体の、鼻先を魔力刃が掠めて過ぎて、そのまま下げられました。

慌てて組んだヴィンデルシャフトで、なんとか受け止める事が間に合ったおかげで、
顔面焼印だけは免れたものの、そこに飛んできたものは、足。

蹴り飛ばされました。

かなり痛かったのを我慢して、眼前で爆煙を作り、さらに距離を取れば、逡巡。

なるほど、先ほどの捩じ首のやりとりでも気になりましたが、近接戦闘にも精通している割に、
打撃から取れず、蹴り足も取れずでは、密着での格闘を避けている節が見受けられます。

他の形態ならばいざ知らず、大剣のようなものを振り回す以上、無理も無い事でしょう。

それなのにデバイスの構造からハーフグリップ、刃を握ることが出来ない点は見逃せません。
そうでなければ先ほどの刺突が、火掻き棒の如く顔面に突き込まれて終わっている所です。

結論として纏めれば、あのミッド式の騎士風味は、柄から身体の間に付け込める隙があります。

とりあえず一足の間合いに五度の切り返しを入れ、刺突の的を絞らせないままに、間合いを維持。

ならば狙いは単純、あの斬撃を掻い潜り、死角から異常な速さで飛んでくる打撃を避け、
蹴りよりも殴打よりもさらに近く、肌を重ねるほどに密着すればって、難易度高すぎます。

そもそも、隙と呼べるほど確固とした穴だとは思えませんし。

それなりに心得があるからこそ理解できますが、容易く振るわれる一太刀も、踏み込みも、
淀みなく繋がる連撃も、どれもこれもが、飽くなき地道な鍛錬に裏打ちされた代物です。

魔力、身体能力、これほどの規格外の才能に恵まれながらも、なお一切に驕る事無く、
異様としか形容し難い執念を持ってして鍛錬を重ねた騎士の剣は、素直に尊敬を覚えます。

油断が無い、ならばこそ密着戦闘にも、何某かの備えがあると見て間違いが無いでしょう。

でもやらざるを得ません、踏み込みながら、考えましょう、考えろ。
考えながらも刺突と上下に狙いを絞らせないよう、慌しく反復横跳び。

古き騎士の剣技は攻防一体、甲冑の上から叩き潰すだけの威力を前提に、
回避と防御に重点を置き、それに速さも加わった今、まさに手のつけようが無い技術。

ならば、剣での仕合に付き合う事自体が間違っているという事ですか。

飛んできたのは横移動の行動を塗りつぶす、横殴りの水平撃、誘いに乗った、わけもなく、
そう、このミッドチルダの騎士が、安易な斬撃など振るうはずもない。

―― 狙うは想定の外、剣での対応に無い攻め方、近代ベルカに有って古代ベルカに無い技術。
古流の太刀筋に存在しない、近代で発達した技術、例えば ――

水平撃を外して背を向けられる、これは誘い、本命は次、転身して繰り出される回転斬撃。
信じて半歩、僅かに踏みとどまり、切っ先がバリアジャケットを切り裂き、通り過ぎました。

刹那です、刃を流す斬り返しまでの刹那、この一瞬以外に仕掛ける機会は、ありません。

通り過ぎた刃に重ならないように、右のデバイスを振り抜きます。
仕掛ける技は逮捕術から、即ち ―― ヴィンデルシャフトの投擲。

剣こそが命、そのような古代に於いては、およそ不名誉な奇策としか受け取られませんが、
逃走する犯罪者への警棒、旋棍の活用法として体系づけられた投擲術に、金色の騎士は驚愕し、

足元に飛来した旋棍を飛び越えて、不用意な回避、今こそが千載一遇の好機と見て、

旋迅疾駆、一直線に踏み込み、吼える。

脇腹を魔力刃が掠めても、踏み込む、鍔がめり込む、踏み込む、空中にある身体を掴み、
腕を押さえ、胸倉を引き寄せるかのような形で、頭突き、視界に火花が散ります。

打たれ反り返る身体を離さず、残った双剣の、柄の部分をみしりと、外から脇腹に突き込み、
くの字に折れて硬直した身体の顎先に、真下から肘、拳が乳房を弾き、身体を再び反り返す。

指先が漆黒のバリアジャケットを千切り取る、白い肌が視界に入り、既に棍は回る。
風斬りの音を切り裂いて、放たれた必殺の斬撃は、しかし、何かに弾かれ絡め取られました。

意外です、それは外套。

咄嗟にバリアジャケットの外套を投げつけて、一撃を防いだと理解しました。

なんとまあ、古風な。

我知らず畏敬の念を覚えつつも、腕を引き、外套に生じた死角から膝頭を蹴りつけて、
そのまま足に沿わせながら踵を落とし、つま先を踏み砕きます。

動きを縫い止め、改めて致命の一撃を見舞おうとして、耳朶にデバイスの声を聞きました。

「Blitz Action」

ノーモーションなどと生易しい話ではなく、容易く音の壁を打ち破る、魔法仕掛けの高速拳撃。
外套を投げつけた腕が加速され、刹那に数える事の出来ないほどの連撃を身に受けて。

頭が弾け、呼吸が止まり、視界が狭まる。

踏みしめる両足に力を込める、ごきりと音がして、ごきりと音を聞きました。
足の下、肋骨、顔面、そして打ち込まれる拳に。

正気じゃない、この連撃、自らの腕まで砕いて。

しかし効果は致命的、肺が押しつぶされ、呼気の最後の一滴までをも吐き出させられました。
酸素欠乏に苦しみながら、比べれば遅々とした動きで、踏みつけていた足で足元を掬います。

体勢を崩し宙に浮く閃光、重心を落とす、落ちる、視界に地面が映る、腕を振った。
振り回し、弧を描いた左の、ただ一振り残ったヴィンデルシャフトの一撃。

鼻腔に、視界に、火薬が充満して弾けて騒いでいます。

思考は完全に停止して、ただ、身体だけが幾万と繰り返し染み付いた動作を再現し、
見えるものも見えず、聞こえず、勝手に動く肉体の感触に愉悦を感じ、

ほとんど消え去りそうになっている意識の片隅で、思いました。

このまま打ち倒し、押さえつけ、タコ殴る。

けどしかし、叩き付けるように振るった一撃は空を斬り、そこには誰も居ない様でして。

嘘でしょう、呼吸、そして頭を上げます。
僅かに回復した視界の端に、金色が入りました。

跳んで避けたのか、違います、空中を斜めに踏みしめて静止してい、ます。

苦痛を堪えるように顰めた表情は、まだ呼吸をしていないのか、青く染まり、
羅刹の如き表情の、しかし瞳に怒りは無く、全身が表現しているものは

ええ

頭上、凍りついた時間の只中で、確かに視線が交差しました。

 愉しかったですね

既に剣勢は刃を後ろに流す上段、ツォルンフート。

  そういえば、空戦魔導師でしたか

「Jet Zamber」

憤怒の名を冠する構えより放たれた光刃が、過たず私の意識を刈り取りました。



(付録:医務室の会話)



そんなこんなで、医務室に横たわる馬鹿二人。

「えーと、鼻血がはなでぃが、えふ、えふっ、いや、騎士フェイト?」
「あれ、ミッドの人だから騎士じゃにゃああぁぁ、指が爪がぁ!」

「貴女が騎士で無ければ誰が騎士ですかああぁぁ、眼が眼がぁ!」
「フェイトでいいよぉ脇腹が脇腹がああぁぁぁ…」

僅かでも身じろぎしようものなら、途端に身体の何処かが激痛に軋む末期の様相。
治療はするが麻酔をケチられるという、聖王教会独自の献身行を強制実践中であった。

「それはあまりにも、あ痛たた、慎みの無いたた、じゃあっ、フェイト執務官で」
「みぎゃぁ、足つった、足つった、うん、じゃ私はシスターシャッハと呼ぶね、ぬぁ」

「はい、内臓が内臓がああぁぁ」
「ぬぎゃあぁぁぁ」

実芭蕉の皮が窓際に置かれ、林檎の皮はシャリシャリと音を立てながら床に落ちる。

「まあなんだ」

怪我人と言うよりはむしろ、包帯の塊と形容した方が近いような有様の二人に対し、
見舞いに持参した果物を威風堂々と捕食しながら、烈火の将が声をかけた。

「貴様らのような大馬鹿どもと知り合えて、私は本当に幸運だよ」

断末魔の悲鳴が響く医務室の寝台脇、ウサギに剥いた林檎が置かれていた。



余談になる。

およそ異名と言うものは、その実情よりも、行為と機会によって付けられるものであろう。

鑑みれば射撃、砲撃に関しては「管理局の白い(まだ)悪魔」高町なのはに劣り、
徒手格闘に関しては「聖王教会のベルカ忍者」シャッハ・ヌエラの後塵を拝し、
その剣技に於いても「おっぱ(飛竜一閃)「剣の騎士」」シグナムには及ばない。

それでもこの一戦を機に、ベルカ自治領で彼女はこう呼称される事になる。

フェヒトマイスター ―― 即ち、「剣の達人」フェイト・T・ハラオウン、と。

(終)



著者:33スレ263

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