[27] 名無しさん@ピンキー sage 2007/12/26(水) 18:59:56 ID:zzXiDIDs
[28] 名無しさん@ピンキー sage 2007/12/26(水) 19:01:05 ID:zzXiDIDs
[29] 名無しさん@ピンキー sage 2007/12/26(水) 19:01:59 ID:zzXiDIDs
[30] 名無しさん@ピンキー sage 2007/12/26(水) 19:02:31 ID:zzXiDIDs

「お待たせしました……あれ? プレセアさん……と、なのはさんにヴィヴィオまで。どうしたんですか?」
 しばらくして、エリオとキャロが戻って来る。
「たまたまプレセアちゃんと会ってね。そこで色々お話聞いたら2人達も一緒だって聞いたから、どうせなら合流しちゃおうって思ってたんだ」
 それまでいやらしくなのはとヴィヴィオに弄られていたフェイトも、その少し前にタイミング良く開放され、最悪の事態は免れていた。
 もっとも、その時既に事は終えていたので、なのはとヴィヴィオも満足顔で2人を迎えていたのは言うまでも無い。
「そうだったんですか……それなら、僕達まだ回っていないアトラクションがあるですけど、良ければなのはさん達も一緒にいかがですか?」
「そうだね。パレードまでしばらく時間もあるし、ヴィヴィオもまだ遊びたいみたいだから一緒に行こうかな」
「わーい! みんな一緒一緒!」
 その横で駆け回りながら飛び跳ね、全身で喜びを表現しながら答えるヴィヴィオ。
「プレセアちゃんも大丈夫だよね? フェイトお姉ちゃんには私から連絡しておいてあげるから」
 なのはが目で合図をしながら、子供の姿でプレセアと名乗っているフェイトにも再確認をする。
「うん……じゃなくて。はい、お願いします」
「プレセアちゃん。フェイトお姉ちゃんと話す時みたいに普通でいいよ」
 途中で口ごもったフェイトの手をフォローの言葉と合わせながら優しく掴む。
 そして、逆の手にぶら下がっているヴィヴィオの姿。
「それじゃあ行きましょう」
 それに負けずとエリオの手を取り、先に進みだすキャロ。
 その後には手を繋いだなのは達と、まるで保育園の遠足の様な光景であった。
 歩いている途中、次に乗るアトラクションについて話し合った結果、やはり皆同じ事を考えていたらしい。
 ジェットコースター等の激しいアトラクションは既に乗り終えていて、残るアトラクションは観覧車を代表とするゆったりとした物ばかりであった。
 その中で順番を簡単に決めて実行に移り、最後に観覧車と良くある王道パターンのアトラクションにたどり着く。
「全員で1台は無理そうですけど、どうやって分けましょう?」
 残りのアトラクションを全て回り、最後の観覧車になった時にエリオがこう切り出した。
「私達と合流前のメンバーで良いんじゃないかな? プレセアちゃんはどう?」
 なのはが躊躇いも無く切り返すと、握っていたフェイトの手を離しそのまま後押しするように背を押した。
「あ、うん。それで良いかな」
 フェイトもなのはの気遣を察し、エリオとキャロのグループに加わった。
「それでは、先に乗りますね」
 小さな集団が先駆けて観覧車へと足を運び、誘導員にの指示通りに乗り込む。
 
「あのー、プレセアさん?」
 エリオとキャロが隣同士、フェイトがその逆で向かい合う形で座り、観覧車が上昇中で景色がまだ見難い間に最初に口を開いたのはキャロだった。
「ん、何かな?」
「成り行きで一緒に来て貰っちゃいましたけど、ご迷惑だったらすいません」
 そう言って丁寧に頭を下げる。
「ううん。全然迷惑なんかじゃないよ」
「でも、私達と一緒に遊んでても何かそわそわしてて……もしかしたら誰かを探してるんじゃないかって思ったんですよ」
「あ、ああ……うん。もしかしたらフェイトお姉ちゃんが来てくれるかなって考えてたの」
 それはあなた達が心配だから! とは口が裂けても言えるわけが無く、図星を突かれても必死に嘘をついて誤魔化した。
「フェイトさんも行きたいって言ってました?」
 すかさずエリオが口を挟む。
「行きたいとは直接言ってなかったけど、きっと複雑な気持ちだったのかな……」
 そのまま真剣に聞き入ってる様子を見て、フェイトが再び喋りだす。
「きっと心配で一緒に行きたいと思う気持ちと、私達だけでもこう言う所に行けるようになって欲しいって思う気持ちで一杯だったんだと思う」
 あたかも本人と言うか本人なのだが、本音を交えて子供の視線から言っている口ぶりでそう答えた。
「そうか。前にフェイトさんが仕事が入るかもしれないって言ってたときに、僕たちでも大丈夫ですって言ったから……」
 悔いるように考え込むエリオと一緒になって、キャロも残念そうな表情でそれを見つめていた。
「なのはさん達も来るって解ってたらフェイトさんも呼ぶべきだったね……」
 やはりこの2人は本当に良い子だ。
 今まで忙しくてほとんど構ってあげられなかったのに、自分の事を気遣ってまでくれる。
「えっ? プレセアさん! どうしました?」
「大丈夫……ですか? 私達何か酷いことしちゃったかな?」
「うっ……ううん。私も同じ事を考えてたら、フェイトお姉ちゃんが可哀相だなって思って……」
 思わず感謝の気持ちで涙ぐんでしまったフェイトを見て、大慌てで様態を心配してくれるだけでも、当人が感激して余計に悪化してしまったのは当然の結果であった。

「落ち着きました?」
 フェイトの隣に席を移り、嗚咽で呼吸が整わない背中を優しくさすっていたキャロが顔を外の景色へと向けた。
「綺麗な夜景ですよ、プレセアさんも見ませんか?」
 キャロと同じ方向へ顔を向けると……。
「わぁ……凄い……」
 星よりも規則正しく、そしてまばゆいばかりの光達が地平線を境に辺り狭しと散らばっていた。
 こんな景色を見る機会は、地球からミッドチルダに移り住んでからはほとんど無かった。
 もっぱら出動は昼の挙句、魔導師が必要な事件が起きるのは大抵地方であり、大都市の夜にそう言った事が起きるのは皆無である。
 それに、こちらでは空を飛ぶにも飛行許可が必要であり、ゆっくりと空から景色を眺める事は難しい。
「こう言った形で見る夜景って僕たちも初めてで……なんか新鮮です」
 フェイトと同じ理由でエリオもすっかり夜景に見入っていた。
 
「ありがとう、2人とも。おかげで落ち着いたよ」
 観覧車の軌道も終盤に差し掛かり、夜景がビルの山によって見えなくなる高度になるとフェイトが喋りだす。
「いいえ、綺麗な夜景が一緒に見れて良かったです」
「だね。でも、フェイトさんも一緒に居れば最高だったのにね」
 お互いに頷く様子を見て、また胸を貫かれるフェイト。
「本当に……2人ともお母さん思いなんだね」
「えっ? お、お母さんだなんて……そ、その……」
「そっ、そうだよね? フェイトさんに……お、お母さんって言ったら馴れ馴れしいもん……ね?」
 何気ないフェイトの一言に対し、不意を突かれた様にたどたどしくなる2人だが、キャロの最後の一言を聞いてその理由を確信した。
「馴れ馴れしくなんて無いよ。だって、フェイトお姉ちゃんは2人の事を大切な息子と娘だって言ってたよ?」
 正体さえばれてなければこうも強気になれるのかと思わせるほど、積極的に語りかけるフェイト。
「ほっ、本当ですか!? ……それ」
「うん、いとこの私が言うんだから信用して大丈夫。だから、今度いきなりフェイトお姉ちゃんに【お母さん】って呼んであげるといいよ。きっと凄く喜ぶから」
「そっ……そうですか……今度やってみます。ありがとうございます、プレセアさん」
 反応に困りながらも、エリオは丁寧にフェイトへお礼を言っていた。
 間もなくして、観覧車が1周して乗り場へと戻る。
「良い夜景だったね……久しぶりだよ。プレセアちゃん達も見れた?」
「うん、良い夜景だったよ」
 続くエリオとキャロも同じ返答であった。
「じゃあ、パレード見てから夕ご飯食べて帰ろうか?」
「はい、そうですね」
 フェイトがなのはの元へ行き手を繋ぎ、全員で観覧車に乗る前の構成に戻りつつ歩き出した。
「あれ……? もしかして事故!?」
 最初にそれに気が付いたのはキャロだった。
 直後に、それを見ていた観客達から悲鳴と怒号が響き渡る。
「ジェットコースターが……止まってる!?」
 キャロの見上げつつ指を差すその先に、まずなのはが状況を把握した。
「ロングアーチ、聞こえますか? 遊園地場にて高所の救助活動が必要な為、これから飛行状態にて作業を行います。
 なお、緊急を要するので飛行許可を待たずに作業を開始しますので申請を早めにお願いします」
 この状況の中、てきぱきと通信機を使って本局と連絡を取り、救助活動を宣言するなのは。
「レイジングハート!」
《All Right》
 まずはなのはがデバイスを起動して、バリアジャケットを身に纏う。
「プレセアちゃんも、フェイトお姉ちゃんに連絡を!」
 そして、実際にフェイトが子供の姿で目の前にいる事を承知している上でこう言った。
 つまり出撃して欲しいと言う合図だ。
《Axel Fin》
「スターズ1、高町なのは一等空尉。救助活動を開始します」
 そう言い残し、最も高度の高い所で逆さ吊りになった状態で止まっているジェットコースターへ飛び立った。
「キャロ! フリードは?」
「飛行許可は貰ったけど……こっちに飛んでくるまでしばらくかかるみたい」
 普段ならいつもキャロと一緒に居るはずのフリードも、都合悪く訓練の疲れで部屋で休養中だった。
 そしてエリオ単体の飛行法では救助には向かず、こちらの2人は八方塞だ。
 更に付近で高所救助が出来る係員がいるとも思えない。
 居たならばすぐに駆けつけて救助を開始するはずだからだ。
 そう考えると現在救助に向かえるのはフェイトだけと言う結論になる。
 だが、現在はやてに行使してもらった子供化の魔法の解除法が解らないし、このまま変身してしまうと2人正体がバレてしまう。
 バレない位置まで行って変身してから救助に向かうと言う手段も考えたが、時間をロスしてしまう上どの道救助活動中に見られてしまう。
 その挙句にデバイスモードで活動をしようものなら、流石に魔力の感知に不慣れな2人でもその正体がフェイトだと簡単に解ってしまうだろう。
(フェイトちゃん、急いで!)
 なのはからの念話と共に観客達から更なる悲鳴が響いた。
 宙吊りになった子供が1名落下し、重力に耐え切れなくなった人達が今にも転落しそうな体勢になっている。
 落下した子供は辛うじて到着前のなのはに抱きとめられた。
 そのまま逆さ吊りのジェットコースターの真下にシールドを展開するが、そこでなのはの動きが止まる。
 シールドの規模と地上までの距離を考えると、なのは1人ではシールドを維持しつつ乗客を安全な位置へ移動するにはリスクが大きすぎる。
 ジェットコースターと言っても規模は200人乗りで、全長は100mを優に超えている。
 その状況で本来ならば術者の手から展開されるシールドを、距離を離した状態でかつ直径100m規模で1片たりとも欠ける事が許されない条件で維持しなければならない。
 高度な防御魔導師でもこれほどのシールドの維持は厳しいし『不屈のエース』の二つ名を持つなのはでもこればかりは無茶な条件であった。
「ロングアーチ、こちらフェイト・T・ハラオウン。聞こえますか? どうぞ」
「はい、こちらロングアーチ」
 その様子を見た瞬間、既にフェイトは本局へ連絡を入れていた。
「私もなのはと一緒に救助活動を開始します。同じく飛行許可を申請しておいて」
「はい、了解しました……けど、本当にフェイトさんですか? 声紋が微妙に一致しないんですが……」
 通信に応対したシャーリーが不信な様子で返答をする。
「あ……ごめん。私の入隊直後の声紋を使ってみて。理由は後で話すから」
 子供化の影響がここでも出ていて、更に不便さを感じた瞬間だった。
「あ、あの……本当にフェイトさんなんですか?」
 不意の出来事に今までで一番驚いていたらしく、通信機を使った直後からずっと硬直していたエリオが質問を投げかけた。
「うん……これが終わったら全部話すからちょっと待っててね」
 フェイトが手早くポシェットから自分のデバイスを取り出し、空へ掲げる。
「バルディッシュ!」
《Yes Sir》
 バルディッシュの応答と同時にバリアジャケットが展開されるが……。
「わっ!」
 突然フェイトの視界が塞がれた。
 何が起きたのかと、近くの観客までもが事故現場よりもその様子を凝視していた。
 インパルスフォーム、つまり大人サイズのバリアジャケットが展開され子供のフェイトになだれ込んでいた。
「ごめん、バルディッシュも混乱してたみたいだね……」
《Sorry》
「うん、これでよし。ライトニング1、フェイト・T・ハラオウン。救助活動を開始します」
 インパルスフォームを縮小すると言う手段もあったが、この際なので昔のライトニングフォームを展開し、懐かしさに触れながらもフェイトが飛び立った。

「お疲れ様、フェイトちゃん」
「うん、お疲れ。なのは」
 すぐにフェイトが補助に入ったおかげで、結果は怪我人0の素晴らしい救助であった。
 なのはがシールドで乗客を保留させている間に、フェイトが機動力を生かして絶え間なく地上に降ろす作業を行う見事な連係プレイだった。
 はやての言っていた通り、魔力面では大人の時と全く変化が無かったので円滑な救助活動が出来たのも不幸中の幸いだ。
 ただ、物理的な面での不便さだけはどうにかならない物かと困っていたフェイトであった。
「エリオ……キャロ……嘘までついてて本当にごめんね」
 謝罪の言葉と共に、フェイトは正体を告げていなかった2人に向かってただひたすら頭を下げ続けていた。
「いえ、良いんですよ。良ければ理由だけ聞かせてください。僕たちはそれで十分です」
「そうだね。わたしもフェイトさんがどうしてそんな姿で私達の所に来たのか知りたいかな」
 フェイトを慰めるように両肩に手を乗せ、顔を上げるように仰ぐエリオ。
「一言で言えば心配だったんだ……それでさっきも言ったと思うけど、突然仕事の予定が無くなって一緒に行きたかったけど、2人で行くって決めてたし……それなら私がでしゃばらなくてもきちんとできるかなって思って……」
 その言葉を聴いたエリオは、キャロと顔を合わせると同時に2人はほっと方を撫で下ろした。
「それなら僕たちも謝らないといけませんね」
 フェイトが顔を上げると同時にエリオとキャロが同時に頭を下げた。
「えっ、そんな。悪いのは私だよ?」
 否定するフェイトに対してキャロが首を横に振りながら答える。
「本当はフェイトさんも誘おうと思ってたんですよ。でも、仕事があるかどうかすら聞かないで行っちゃったんです。だからおあいこですよ、フェイトお母さん」
「そうですね……おあいこって事にしましょうよ。フェイトお母さん」
 不意の【お母さん】攻撃に胸を打たれ、思わず目に涙を浮かべながらそのまま2人を両脇に抱き寄せる。
「ありがとう……本当にありがとね……エリオ……キャロ」
 外から見れば子供達がスクラムを組んでいるようにしか見えないが、3人にとってはとても深い家族愛を感じた瞬間だった。

「そうか、それはずいぶんと苦労をしたな。テスタロッサ」
「うん、でもまだ約束があるからしばらく続きそうなんだけどね」
 その後フェイト達はイルミネーションが動き回るパレードを見た後、レストランで夕食を食べ宿舎に戻り、ヴィータへのプレゼントをシグナムに先渡ししながら雑談をしていた。
「約束?」
 シグナムが眉を上げながらそう呟く。
「しばらくこのままで居て欲しいってなのはがね……」
「そうか……しばらくはそのままなのか……」
 語尾が聞き取りにくくなるにつれ顔を赤らめるシグナム。
「シグナム! また顔緩んでる緩んでる、顔!」
「……すまない。ただ、その様子だと主はやてにもしばらく弄られるだろうな……」
「うーん、そうだね。弄られるのは良いんだけど、私がこんな姿だと他の人達が馬鹿にされないかなって心配で……」
「フェーイートーちゃん♪」
 リズム良い呼び声と共に、後ろから突然なのに抱きかかえられシグナムに述べていた心配事を中断させられるフェイト。
「あ、なのは……」
「探したよ。今夜は約束通り最後まで楽しませて貰うから、今夜は寝かせないよ?」
 お姫様抱っこにシフトされ、そのままお持ち帰りモードで連れ去られそうなのでシグナムへ目で助けを求めるが……。
「シグナムさん」
「なのは……」
 お互い名前で呼び合った後、少し経ってから頷く2人。
「それでは後で……よろしく頼む」
「うん、シグナムさんは後でって事で」
 間違いなく念話でなにやら怪しいやり取りが行われていた様で、フェイトの救援むなしくシグナムはなのはに買収されてしまったようだ。
 しかも自分を使った取引なのは言うまでも無い。
 ひょんな所から始まったフェイトの受難はまだまだ続きそうである。



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目次:再び機動6課の休日
著者:39スレ641

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